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1999/07/15
平成二年度補正予算二案に対する反対討論(肥田美代子議員)
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衆議院本会議
平成二年度補正予算二案に対する反対討論
民主党 肥田 美代子

 私は、民主党を代表して、ただいま議題となっております「平成11年度補正予算二案」に反対し、民主党提出の組替え動議に賛成の立場から討論いたします。

 第145通常国会は、57日間もの長期延長国会となりました。それにも関わらず、平成11年度補正予算案の予算委員会審議は、7月14、15のたった二日間をもって終わりました。

 小渕内閣は、「数の力」に頼って、怖いものなしとばかりに、急げや急げで、この補正予算案を成立させようとしております。平成11年度予算成立後、わずか三か月で、補正を組まざるを得なくなった事実と、早くも、秋の第二次補正が取リざたされている現実は、当初予算のみならず、この補正予算案までもが、重大な欠陥を持つ予算であることを示しています。見通しが甘く、何の先見性もないまま、国の予算を扱う小渕内閣の責任は、極めて重大です。それにも関わらず、小渕内閣には、予算編成の誤りに対する認識と反省が欠けております。私はまず、そのことを指摘しておきたいと思います。

 今回の補正予算案が、充分な市場調査の上にたって、考えに考えを童ねたものであるならば、前向きに受けとめることもできましょう。しかし、本日までの予算委員会審議の過程では「まず予算額ありき」で、そこから計数を査定するという「やっつけ作業」で編成したものであることが明らかになりました。

 たとえば、緊急地域雇用特別交付金の対象となる事業例の中では、小・中・高等学校へのコンピューター技術者や、語学の知識を持つ者などを派遣することが提示されております。しかし、求職者のなかで、これに応じることのできる人たちは、どの位いるのか、また、受け入れることのできる学校は、どのくらいあるのか、そうした基本的なことは何も示されておりません。学校職員のように将来にわたって、社会的ニーズが高く、腰を落ち着けて、子どもと付き合わなければならない仕事を、一時的な雇用の受け皿にすることは、まさに「場当たり的対策」の見本といえましょう。

 教育は、わが国の未来を決定します。崇高な教育にかかわる学校職員を増やすのであれば、しっかりとした教育の将来像と、あるべき学校の未来図を描き、安定した雇用関係のもとで、二十一世紀を担う教育者として養成しなければなりません。補正予算案にみる緊急少子化対策に関しても同じことが言えます。わが国の合計特殊出生率は、急速に低下し、人口を長期的に維持するために必要な水準を、大幅に下回る状況となっております。「少子社会」の抱える問題は、これまでの固定的な男女の役割分業や、雇用慣行の見直し、男女共同参画社会の実現など、社会全体の構造改革と深く関連しております。

 国際的にみれば、女性の働く環境が整っている国ほど、子どもの生まれる率が高いという傾向が出ており、育児と仕事の両立を可能とする社会システムの整備が、政治の責任として問われています。しかし、補正予算案は「少子社会」における「子育て理念」や「社会ビジョン」を明確にしないまま、駅前保育ステーションの設置、幼稚園の預かり保育、保育ママの支援など、まるで、おもちゃ箱をひっくり返したような事業例を、思いつくままに羅列しています。子どもは、個性豊かな人間であって、コインロッカーに預ける手荷物や小荷物ではありません。私は子どもたちを、いち時しのぎの「見識なきバラまき予算」の対象とすることに対して、大きな怒リを感じております。

 もし、子どもと親が直面した緊急な課題を、政治の力で解決するというのであれば、保育所の拡充はもとより、入所ができず、じっと自分の番を待っている四万人の子どもたちを、入所させる政策こそ急ぐべきです。さらには、学童保育事業や延長保育・休日保育の拡充など、共働きの人たちの強い要望に応えることこそ、緊急な課題ではありませんか。私は、今回の補正予算に対して、子どもや教育を、雇用対策や景気対策の道具に使っているのではないかという疑念さえ持たざるを得ません。

 民主党は、政府の補正予算案に対して組み替え動議を提出しました。この組み替え動議は、予算額を一兆円規模とし、二十一世紀を展望して福祉、環境、住宅、情報関連分野における雇用の創出と定着を目指しております。さらに、新しい雇用を産みだすために、エンジェル税制の拡充、女性起業家への徹底支援、ベンチャー企業の育成、中小企業活性化のための新しい制度づくりなどを提唱するとともに、今日の経済危機や雇用不安を解消するためには、メリハリの効いた財政出動が必要である、と主張しております。私たち民主党の組替え動議は、質量ともに、きわめて不十分な政府提出の補正予算案とは違って、経済や社会の構造改革につながる内容を盛り込んでおります。

 いま、ここにある経済危機と雇用不安は、政府の失政によってもたらされました。その結果、昨年一年間の自殺者は三万人をこえ、なかでも経済や、生活問題による自殺者は七〇%に達しております。これは、自らの意思に反して、職を失うことは、人間の尊厳さえもが、奪い取られるという厳然たる事実を、私たちに突き付けています。私がいま、この演壇に立っている瞬間にも、生きることに絶望した人が、日本のどこかで、自らの命を断つ最後の決断をしているかも知れないと思うとき、私は、政治の重い責任を痛感いたします。

 今回の補正予算は、子どもの尊厳を守り、国民が眼のあたりにしている切実な状況に対して、真剣に応える内容になっておりません。私は、そのことに強い憤りを感じます。

 私は、国民の痛みを共有できないまま、編成された政府提出の補正予算案に「反対」の意見を表明し、他方、民主党提出の組み替え動議には「賛成」であることを申し上げ、私の討論を終わります。

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