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1999/07/13
大蔵大臣の財政演説に対する質問(中野寛成議員)
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衆議院本会議
大蔵大臣の財政演説に対する質問
民主党 中野 寛成

 私は、民主党を代表して、大蔵大臣の財政演説に対し、総理及び関係大臣に質問を行います。


(災害対策について)

 質問に先立ち、去る六月広島県を中心とした集中豪雨によって亡くなられた方々とそのご遺族に対し心から哀悼の意を表します。また被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。毎年のように繰り返されるこのような災害を日本の宿命とすることなく、政府が万全の対策を講じるよう強く要求し、総理の答弁を求めます。


(総理の訪中について)

 次に、今回の総理の訪中についてお尋ねします。総理は、朱鎔基首相、江沢民国家主席と会談し、大きな成果をあげたと強調していますが、歴史認識にしても、ガイドラインにしても両国の相互理解が深まったとは思えませんし、米中関係の修復について提案したと聞いていますが行動力の伴わない口先だけの行動としか映っていません。こうした批判に対する総理の答弁をいただきたい。


(現状の経済認識、今後の景気見通しについて)

 次に、現在の経済認識及び今後の景気見通しについてお尋ねいたします。

 今年一月から三月の国内総生産は、六期ぶりのプラス成長となり、前期に比べて実質一・九%増加、年率換算では七・九%の大幅なプラス成長になったとされております。日本銀行が発表した六月の企業短期経済観測調査でも企業の景況感を示す業況判断指数の改善が見られるようであります。

 しかし、これに反して国民の生活実感は未だ厳しいものがあります。一〜三月期の好調な数字は、内需が増加したことが大きく貢献していますが、民需の自律的回復にはほど遠く、実態は景気対策や金融緩和というカンフル注射の政策効果によって人為的に引き上げられたものです。

 一・九%の成長率のうち、公共投資の寄与度は〇・九%で全体のおよそ半分を占めています。住宅建設や設備投資の伸びも、異常な“ゼロ金利政策”の恩恵を受けたものであり、継続しうる本物の景気回復と言えるものではありません。

 失業率も依然として四・六%の高水準にあり、今後さらに企業がリストラを加速させ、雇用や所得に下方圧力が働くことは避けられません。経済の基調は若干変化してきたように見えますが、さらに積極的に対策を講じる必要があります。

 小渕内閣は今年度〇・五%成長の達成を国内外で公約していますが、政府がこれまで何度も景気見通しで誤りをおかしてきたことを国民は身にしみて知っています。多くのエコノミストは反動で四―六月期に減速する可能性があると指摘しています。

 今日の経済危機はあくまでも日本の構造問題が原因であり、橋本・小渕政権が経済構造改革を後退させてきたことに鑑みれば、日本経済が本格的な景気回復軌道に乗ったとはとても言えません。

 現下の経済状況、今後の景気見通しに関する政府の認識はあまりにも甘すぎると考えますが、総理の御所見をうけたまわりたい。


(早期に補正予算編成を余儀なくされた政府の責任について)

 先の通常国会において、民主党は、平成十一年度の当初予算によって、政府公約の実質〇・五%経済成長を達成するのは不可能だと主張し、予算の組み替えを求めました。にもかかわらず、政府・与党は聞く耳を持たず、原案のままがむしゃらにその成立を強行しました。

 史上最速の成立と自慢していましたが、ついでに史上最速の失敗による補正予算とでも自慢するのでしょうか。当初予算が執行されてわずか三ヶ月ちょっとで補正予算提出を余儀なくされたことは、当初予算が欠陥予算であったことを如実に証明するものであり、加えて、すでに第二次補正の話まで公然と行われているようでは、小渕真空内閣の責任は極めて重大であります。

 ゆえに年度後半に日本経済が失速するのは必至と言われていますが、恥も外聞もかなぐり捨てて、やっぱり第二次補正予算も編成するのですか。それならいっそのこと予算制度をやめたらどうですか。総理からはっきり答弁をいただきたい。


(政府が提出した補正予算について)

 民主党は、未来への不安を解消し、将来の構造改革につながる景気・雇用対策の実現を主張しており、その一環としての効果的な補正予算を編成すべきと考えます。

 さる六月八日、民主党は政府に緊急失業・雇用対策の実施を申し入れ、社会的ニーズの高い分野での一〇〇万人以上の雇用創出、ベンチャー・新規事業の育成、民間やNPOなどを活用した地域主体の雇用拡大、全国延長給付の適用要件の緩和など失業給付の拡充、若年層の雇用対策の充実などを提唱いたしました。

 不十分ではありますが、政府が私たちの申し入れ事項の一部を取り入れ、補正予算に盛り込んだことは認めます。しかし、一〇〇万人以上の雇用を創出するためには、ホームヘルパーの増員、ショートステイ・デイサービス施設の拡充、緊急森林整備及び国際協力要員と開発人材の育成などをきちんと担保する措置が必要であります。また、補正の五分の二を占める少子化対策臨時特例交付金も子育て支援にはなっても、ほとんど雇用対策には貢献せずましてや駅前保育所程度で少子化対策とは笑止千万であります。また、緊急地域雇用特別交付金を含め五〇〇〇億円のうち四〇〇〇億円がばらまき対策としての印象が否めません。

 以上の諸点に照らせば、緊急雇用対策としては、政府が提出した補正予算は質量ともに不十分と考えますが、総理及び大蔵大臣の御所見をうかがいたい。


(産業活力再生特別措置法案について)

 次にまもなく提出が予定されている産業活力再生特別措置法案についてお尋ねいたします。

 民主党は、緊急の雇用対策に加えて、新規事業・ベンチャー企業を育成し、将来に向けた新しい雇用創出にも力を入れています。私たちは、およそ40項目の施策からなる「デモクラット 起業家倍増プラン99」を提言しています。

 私たちは、第一段として、調査段階から商業化まで段階を追ってハイテク中小企業を支援する本格的なSBIRの確立、女性起業家支援のための財政措置、エンジェル税制の拡充などを柱とした「起業家支援法案」をとりまとめ、近々提出いたします。

 新しい企業を育てて雇用を増やそうとする民主党とは全く逆に、政府は従業員のリストラを推進して既存企業を守ろうとする「産業活力再生特別措置法案」を提出する予定だとうかがっております。借金に相当する優先株を発行して銀行に渡す「債務の株式化」、設備投資の廃棄に際しての優遇税制などが盛り込まれるものと聞いておりますが、雇用対策、労働政策が欠落し、皮肉にも国民がおさめた税金で勤労者の失業を促進し、特定産業の既得権益や役所の権力拡大につながる悪法との批判がもっぱらです。

 政府は、法案の目的は、わが国産業の効率性・競争力を高め、将来における発展の基盤を構築して、雇用機会の維持・創出を図ることだと宣伝していますが、逆に労働法制を骨抜きにして勤労者の首切りを促進するものではないかとの不安が広がっています。しかも、事業者の事業再構築計画を所管大臣が認定して優遇措置を講じるという枠組みで組み立てられており、役所の権益を拡大し、公正な社会づくりに逆行するものであります。事業再構築計画には経営者責任などの厳しい条件が求められているわけではないと聞いております。

 この法案に対するこれらの疑問と不安にどう答えるのか、総理の答弁を求めます。


(当面の歳出削減及び財政再建の道筋の確立について)

次に、財政問題についてお尋ねいたします。

この補正予算では剰余金の活用などにより、新規国債の発行は行われていませんが、国、地方あわせて今度年末におよそ六〇〇兆円の借金を抱えるわが国の財政事情を見過ごすことはできません。OECDは、九九年暦年で日本の国・地方債務残高はGDP比で一〇七・二%という数字になると予想していますが、米国の五四・二%、英国の五五・二%のほぼ倍の数字であり、わが国の財政事情は異常を極めています。

 大規模な赤字国債の発行が金利の上昇をよぶことは明らかです。当初予算で大量に国債が発行されることが明らかになった途端に長期金利が上昇しましたが、日銀が短期市場に大量の資金を投入、「ゼロ金利」を強行して、長期金利の上昇を抑えているのが実態です。

 財政運営にとって重要なのは、政府自らが汗をかく歳出削減を行い、財政規律を守り、将来に向けた財政再建の見通しを立てることであります。

 今、民間企業では血のにじむようなリストラ、また家計では苦しいやり繰りが行われているにもかかわらず、政府は巨大官庁をつくり、看板のすげ替えによるニセの行革に終始し、自ら汗をかく行政改革に取り組んでいません。

あわせて、景気回復の見通しを立てつつ、中長期的な財政再建の道筋を確立すべきです。凍結するはめになった硬直的な財政構造改革法に代わる、斬新な財政再建策を確立すべきです。政府は、可能な限りの国有財産の売却、毎年改定する中期経済・財政見通しの策定、行政経費削減とアウトソーシングの徹底など新しい施策に取り組むべきです。

以上の私たちの提言に政府はどう応えるのか、総理及び大蔵大臣の答弁を求めます。


(将来の経済ビジョン、新しい経済社会の構築などについて)

 最後に将来の経済ビジョンの確立、新しい経済社会の構築について質問いたします。

 一昔前に比べますと最近は、政府の経済計画やその他の経済ビジョンに対する関心度が失われている印象を受けます。

 小渕総理は、経済戦略会議、産業競争力会議、「二十一世紀日本の構想」懇談会など次から次へと新しい組織をつくって作業をさせ、経済審議会には「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」をとりまとめさせました。しかし、あっちこっちで文章をつくらせ、自ら骨抜きにしている小渕内閣は一体どんな経済社会を目指すのか、いかなる哲学、理念に基づいて改革を進めるのか不明であります。総理の見解をうかがいます。

 間もなく、新しい千年紀が幕開けします。紀元の始まりから一〇〇〇年までは、人間が自然を神とあがめ、それにおののき支配されてきた千年でありました。紀元一〇〇〇年の終末思想の呪縛を解き放ち、人類は自然開発と都市建設に励み、ルネッサンスによる人間復興を確立しました。その後二〇〇〇年までは、人間が自然を征服したかのごとき思い上がった千年だったと言えます。

 新千年紀を迎えるにあたり、私たちは人間どうし、人間と自然が共存する、共生、友愛の理念に支えられた経済社会をつくっていかなければなりません。

 これまで、人間は自分の生活を支えるだけの労働を続けてきましたが、対価を求めない無償労働も社会に根づいています。そこで私たち民主党は、NPOやボランティアが重要な位置を占める「共生経済」を確立していきたいと思います。また、人間が地球を食い潰してきた二十世紀型の経済体制を大胆に転換し、環境・資源を守る農林漁業を育成し、自然との共生で新ビジネスが育つ「グリーン経済」をつくっていきたいと考えます。

 千年という時間にも関係しますが、法隆寺の改修を行ったある宮大工の方がこのような言葉を残しています。

 「今の時代、何でも規格を決めて、それに合わせようとする。合わないものは切り捨ててしまう。人間の扱いも同じだと思います。法隆寺が千年の歴史を保っているのも、みなクセ木を上手に使って建築しているのです」

 新しい千年紀は、この「クセ木」にあたる一人一人の個性を重んじ、人間の尊厳を大切にする時代としなけらばならないと考えます。

 さて、小渕内閣が続く限り、現下の経済危機克服も、未来につながる経済改革も達成不可能と言わざるを得ません。小渕内閣の退陣こそ最大の景気対策です。新世紀・新千年紀のスタートを語るには小渕総理はいかにも似合いません。

 総理は今、自自公連立政権を目指しておられるようでありますが、自称、真空総理、オープン自民党は何でも呑み込むつもりでしょうが、世の中には食い合わせの悪さもあります。

 選挙制度改革、年金改革、介護保険、船舶検査などどれをとってみても、その三党の政策には整合性がなく、そのような数合わせの奇妙キテレツな政権を国民が認めるのかどうか、国民のプライバシーを犠牲にする盗聴法、国民総背番号法など重大な法案を拙速に成立させようとする強権政治を定着させるのか、まず国民の審判をあおぐべきであります。総理の所見を求めて私の質問を終わります。

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