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1999/07/08
中央省庁等改革関連法案に対する反対討論(福山哲郎議員)
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参議院本会議
中央省庁等改革関連法案に対する反対討論
民主党・新緑風会 福 山 哲 郎

私は民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました政府提案の中央省庁等改革関連法案に対し、反対の立場から討論を致します。

私たちが本法案に反対する理由は単純明快であります。政府は今回の行政改革を通して、「簡素・効率・透明」な行政を実現すると国民に約束をしてきたにも関わらず、実際に政府が提出した法案は、この公約から余りにかけ離れた内容であり、これをおよそ行政改革と称することはできないことが、国会審議を通じて明らかになったからであります。
昨日の特別委員会審議において、まさに私たちが本法案に反対する理由を総務庁長官自身自ら説明して頂きました。同僚の江田議員の「今回の本法案において権限・財源・人間の内、どれがどれくらいスリム化されるのか」という質問に対し、長官は「この法案で直接スリム化が実現するということでなく、行政改革を実現するシステムがビルトインされたということだ」と答弁されたのです。この答弁からも明らかなように、政府自身でさえ今回の本法案で行政のスリム化を実現するとは考えていないのです。
それでも今回の本法案によって、本当に行政改革の実現を期待できる組織が構築できるなら、まだ理解できます。しかし、我々はこの本法案が「行政改革を推進するシステムをビルトイン」しているとも考えていません。ここでは以下の6点に絞って問題点を指摘いたします。

第1の問題点は、本法案における基本理念の欠如です。「何のために省庁再編を行うのか。この省庁再編の向こう側、つまり21世紀の日本が一体どこに向かうかが」が全く明らかにされていません。行政改革会議が最終報告で理念として掲げた「肥大化し硬直した政府組織を改め、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしく、簡素、効率的、透明な政府を実現」とは程遠い内容であり、のちに述べる国土交通省や総務省の出現など全く逆行しています。
明治時代に構築された基本形を維持したままの行政制度・体制では、その後に大きく変化した行政ニーズに対応出来ないことが明らかになったからこそ、現在、行政改革が求められているのです。来たる21世紀には、経験したことのない少子高齢社会を迎え、一方ではグローバルな大競争社会に放り出される我が国が、いかにその荒波の中でも国民の生活、安全を守っていけるような効率的で国民の信頼に足る行政組織を構築するかが、私たち立法府に課せられた大きな課題なのです。しかし本法案にはこのような社会の基本的な構造変化を意識した、行政改革に対する理念が感じられません。

第2の問題点は、手順の問題です。そもそも省庁半減という役所の大括り再編から議論をスタートさせた今回の省庁再編は、その結果数あわせが至上命題となり、この実現にこだわるあまり、実質的な行政改革がおざなりになったのです。あるべき手順と全く逆になっています。本来なら、まず社会の変化を踏まえた上で、新たな官民関係の基本を定める。次に公的部門が負うべき範囲を定め、地方が負うべき分野については地方への権限移譲とこれに見合った財源の移譲を進める。そしてさらに中央政府が担う事務の内、外部化した方が効率的なものを定める。こうして残ったものが中央政府が自ら実施しなければならない分野なのであり、そういった作業の後に、省庁の再編に取り組むべきなのであります。
審議の過程においては、政府もこの手順が本来の手順であることは認めています。しかし基本理念、手順を間違えたために、その結果もとんでもないものになってしまったのです。その代表的なものが「国土交通省」と「総務省」です。この巨大な省庁のどこが「簡素」であり、「透明」であり、「効率」なのか、審議において再三明確な答弁を求めましたが、結局政府は何ら回答をしていません。

第3の問題点は、まさにその国土交通省の誕生です。建設、運輸、国土、北海道開発庁の4省庁を統合したその巨大官庁には地方整備局という大きな問題を抱えています。国土交通省の巨大な出先機関である地方整備局が、事業の決定権を持ってしまえば、国民の代表である国会がチェックすることさえ困難になるのです。現在全国のあちこちで公共事業を進めようとする国と地元住民の間で摩擦が生じていることから見ても時代に逆行していると言わざるを得ません。こういった巨大官庁を認めることは、国会の存在を否定しているようなものです。

第4の問題点は、財政と金融の分離問題です。小渕総理はわれわれ民主党との合意を破り、その結果提出された本法案は改革という名にまったく値しないものになっています。公党間の合意を平気で踏みにじるという小渕総理の政治姿勢は許せるものではなく、財政と金融の完全分離及び金融行政の一元化という命題を不完全な決着に終わらせることは、我が国の金融システムにとって大きな禍根を残すことは明らかであります。財政と金融の規律が曖昧なまま、またぞろ公的資金の投入を繰り返すと言うことになれば、只でさえ危機的な状況にある我が国財政は、完全に破綻への道を歩むことになるでしょう。真の行政改革の進展を阻むだけでなく、将来の世代にも大きなツケをもたらしているのです。

第5の問題点は、定数削減のごまかしです。小渕総理が昨年政権を引き継いで以来、この行革について唯一リーダーシップを発揮したのが、「公務員の25%削減」と「行政コストの30%削減」であります。しかしこの公約もまた「見せかけの公約」と言われても仕方のないものです。公務員の削減については、昨年の基本法にある10%削減と実質的には何ら変わることがなく、独立行政法人化される機関の職員を削減の内数とすることによって、見かけ上の削減割合を増やしただけのものであり、また行政コストの削減については、その内容が抽象的で、これでは検証のしようがありません。このように公約を掲げること自体、国民を欺くに等しい行為であると考えます。

第6の問題点は内閣総理大臣のリーダーシップについてです。日本の内閣制度の機構と運営の実態は、同じように議院内閣制度を採用しているイギリスやドイツとは似て非なるものとなっております。そもそも、議院内閣制度は、「内閣を通じて政治がリーダーシップを発揮するための装置である」という認識が基盤にあって成り立つ制度であるにもかかわらず、本法案は「はじめに行政ありき」という明治憲法下の変則的な内閣制度の残滓をそのまま引きずっています。
本法案では内閣総理大臣の指導性の明確化は、単に従来から当然の権利とされている閣議における内閣総理大臣の発議権を明記したにすぎず、一方で事務次官会議、閣議の全会一致制、分担管理の原則など、官僚支配の温床となっている制度はそのままとなっており、政治のリーダーシップを発揮しようがありません。さらに、内閣の補佐機構である内閣府についても、予算、人事や組織体制を統轄していないなど、政治的リーダーシップにより各省庁をコントロールする仕組みとしては極めて不十分と言わざるを得ません。
以上、この欠陥だらけの法案、政府自身が行政のスリム化を実現できないと言う法案に対して、反対の意志を明らかにすると共に、「既得権益温存」「官僚依存」の現政権に代わって、国民主役に適った行政体制の実現に邁進することを国民にお誓い申し上げ、私の討論を終わらせていただきます。

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