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1999/06/15
住民基本台帳法の一部を改正する法律案及び同修正案に対する反対討論(古賀一成議員)
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衆議院本会議
住民基本台帳法の一部を改正する法律案及び同修正案に対する反対討論
民主党 古 賀 一 成

 本日採決することとなりました「住民基本台帳法の一部を改正する法律案及び同修正案」につきまして、民主党を代表して、反対の討論を行います。

 本法は、四月十三日、この本会議において付託となり、以来、地方行政委員会で審議、参考人の意見聴取等を重ねてまいりました。

本改正案のねらいは、第一に、これまで市町村が固有事務として作成してまいりました住民基本台帳をコンピューター化し、都道府県を経由して中央の指定情報機関とオンラインで結び、全国民の本人確認情報について全国ネットワークを構築しようとするものであります。

 本人確認情報とは、国民一人一人につけられる住民票コードという名の番号と氏名、性別、生年月日、住所とされているところであります。

 次に、全国センターに集められました本人確認情報は、十六省庁の九十二事務にわたりまして本人確認業務に提供されることとされているところであります。

また、今回の改正により、市町村は自治省令で定める様式と条例により、八千字のICメモリーを持つ住民台帳カードを発行できることとされているのであります。

 我が国初の国民通し番号導入を図ろうとする本改正案で、我々民主党が常に問題視し、質議を重ねてまいりましたのは、まず何よりもプライバシーと人権の問題、すなわち、個人情報漏えいの危険性、個人情報保護の必要性でありました。

 システムホールと呼ばれる情報漏えいの穴があちこちにあるサイバーネットワークでありまして、全国民の情報をゆだねる危険性というものは決して小さいものではありません。このシステムホールから大量の国民の情報が漏れる危険性はぬぐえないのであります。

 特に、住民票コードが漏えいし、検索ナンバーとして集められれば、行き着く先は民間の名簿屋によるデータマッチング、あるいは企業による名寄せであり、プライバシーが侵されてゆく危険性は極めて大きいと言わなければなりません。また、国民の個人情報が次々と行政機関によって集約、管理される国民総背番号制の第一歩ではないかとの強い懸念も指摘されたところであります。 

 これからの情報化社会のキーワードは、「速い」あるいは「便利」ではもはやありません。ここまで進化し、拡大してきた情報化社会のキーワードは、「セキュリティ」あるいは「個人情報の保護」そのものであらねばならないと思うのであります。

 政府が言う、住民票の写しが他市町村でもとれる、こういう便利さ、これは個人情報の漏えいや、データマッチングの恐ろしさに比べれば、ささやかな、しかもめったにない便利さにしかすぎません。

 本改正案の審議中にも、NTTと宇治市市役所という二つの公的機関で大きな情報漏えい事件が発覚をいたしました。住民票コードという国民通し番号は、名簿屋や企業から見て、データマッチング、名寄せのキーナンバーとして極めて魅力的であり、これまで以上に漏えいが怖いと覚悟を決めて、万全の措置を講ずる責任が政府にはあるのであります。

 本改正案の第一の論点、個人情報漏えいの危険性については、工夫してはあります。しかし、総体としては決して十分でない、それが審議を行った上での我々の結論であります。

 具体的にその危険性を指摘したいと思います。

 第一に、十六省庁九十二の事務に提供される本人確認情報の漏えいの危険性であります。

つなげば漏れる、漏れたら瞬時に大量の情報が漏れる、これはサイバーネットワークの世界の常識とも言われております。本法案では、まず、一般公衆回線を使わざるを得ない市町村間のデータやりとりが危険であります。指定情報機関のコンピューターから国民の本人確認情報をもらう十六省庁のコンピューターが各部局の多数のコンピューターと接続され、それがさらに一般公衆回線とつながっている現実があり、ハッキングによる情報の漏えいの危険性はぬぐえないのであります。

 また、本法案は、本人確認情報を得た官庁が自分で利用するだけではなく、他へ提供することを許しており、極めて危険と言わざるを得ません。さらに指定情報機関の業務委託先もあります。あちこちで無造作に個人情報のファイルがつくられ、そこから情報が漏えいする危険は大きいのであります。特に、住民基本台帳のコードの一覧は、不注意で漏れるだけではありません。必ずねらわれる、そういう存在と覚悟をしなければならないものであります。

 次に問題にすべきは、全国民一億二千五百万人について付番した住民票コード、これを管理するのが一つの財団法人、民間法人ということであります。 

 行政機関の増設はまかりならない、既設機関は廃止することができない、ほかでもやっている財団法人であるならば文句はなかろう、こういう発想でいとも簡単に全国民の基本情報が民間の公益法人にゆだねられ、全国センターの重大任務を担うことになったのであります。それほど国民の情報は軽いのでありましょうか。

 国民とは国家にとって何なのか。全国民の基本情報の重要性はいかばかりのものであるか。これが入ったコンピューターは、誰が所有し、誰が管理すべきか。こういう一番重要な、大切なものを忘れた、本末転倒の論理と言わなければなりません。民間の公益法人が全国民の情報を集約、管理するこの仕組みは、個人情報保護法制が出来ようが出来まいが、本法案に内在する問題点と言えます。

第三に指摘すべきは、地方自治との関連であります。

 本来、住民基本台帳の作成、管理は、地方自治体の固有事務として営々とつくり上げられてまいりました。この間、住民のプライバシー保護を図る観点から、多くの市町村でプライバシー保護条例が論議され、制定を見てきたところであります。まさに地方自治として、住民基本台帳の事務はあったのであります。しかるに、本改正案は、市町村がつくり上げてきた固有事務の成果の上に、指定情報機関という情報の中央集中機関を配置し、都道府県から委託料まで取って十六省庁九十二事務の本人確認業務に提供しようとするものであります。

 委員会の審議の過程では、納税者番号としての活用も視野にある、あるいは今後多くの中央官庁の業務にこれが拡大利用される、こういう方針が大臣から披露されたところであります。ならば、堂々とその将来展望を示し、国の事務として構成し、国の負担と責任においてこのシステムを構築すべきではありませんか。

 本改正案は、総体として見れば、市町村を本人確認情報全国ネットワークの入力端末として位置づけておるものであり、市町村の苦労の上に安易につくられる中央集権型の国民情報ネットワークとやゆされかねないのであります。

 第四に、本法で導入されようとしているICカードの問題についてであります。

 情報化社会にも光と影がある、修正案の質疑に当たって、小渕総理はこのような趣旨の答弁をされました。影の部分を検証しながら光を求めていく、それが情報化社会の道のりと私も考えます。全国のいろいろな地域、企業グループがICカードの試みを行っている、これもその道程の一つであります。

 しかし、今度の法改正で提案されている住民票カードは、住民票コードなど本人確認情報については、自治省令により全国規模で統一されるものであります。八千字のメモリーから見て、今後何が全国的に展開されてくるのがわからない、これが率直な懸念であります。

 各自治体がモデル事業で検証を行い、より安心でより便利な技術とシステムを構築した上で、自主的な地域カードシステムをつくってみる、これが本来のあるべき姿ではないでしょうか。

 以上、主要な論点についてのみ、本改正案に対する懸念と反対の論旨を述べました。

 総括すれば、本改正案は三十時間を超える質疑を行ったとはいえ、論点はまだまだ数多く残され、政府の答弁も決して国民の懸念を晴らしているものではありません。

 最後に、本改正案附則に、個人情報保護に関する所要の措置を将来講ずるとの規定を盛り込む等の修正案が自自公共同で提案をされました。今後の個人情報保護法制の整備についても私から意見を申し述べたいと思います。

 まず、本改正案の施行は、三年以内とされているところであり、一方、本修正案は「速やかに、所要の措置を講ずる」としております。ならば二、三年のうちに包括的個人情報保護法制を整備し、それを前提としたネットワーク法制を今つくればよろしいのではないでしょうか。

 私は、改正法は施行された、しかし、個人情報保護法制は結局できなかった、こういう結果を恐れるものであります。今後、この論点につきましては、国会として注目をし、必ず実行をされることをこの国会が見守っていかなければならない、こう申し上げ、民主党の反対討論を終わります。

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