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1999/05/18
中央省庁等改革関連法案趣旨説明に対する代表質問(田中議員)
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衆議院本会議
中央省庁等改革関連法案趣旨説明に対する代表質問
民主党  田中 慶秋

 私はただいま議題となりました「中央省庁等改革関連法案」に対し、民主党を代表し、質問いたします。


 この本会議場にいる殆どの同僚議員が選出された平成八年の総選挙には、まさに「行革選挙」と言えるほど行政改革について、多くの議論がなされました。

 それは国民も、国民の信任を得るべく日夜活動した我々も、わが国の行政の行き詰まりを実感として感じていたからだと考えます。

 以来二年半以上の年月をかけた成果が今回の法案であります。

 まず率直に感じるままを申し上げれば、政府案は我が国の閉塞感を取り払うものにはなり得ません。

 それどころか我が国の行き詰まりを更に深刻なものにしてしまうのではないかと、深い危惧の念を抱いております。

 総選挙で国民に約束をしたものはいったい何であったのか、国民が七兆円もの公共事業予算を期待していたのか、国民が三十万人もの公務員を抱える大省庁を願っていたのか。

そんなことはあり得ません。

 橋本前総理、そして小渕総理が本来、改革の対象であるべき官僚にこの行政改革をまかせた為、すなわち「まな板の上のコイ」に包丁を持たせてしまった結果「行政改革」がいつの間にか「行政改悪」にゆがめられてしまったのです。


 私は、我が国にとって行政改革が避けて通れないものになっている基本的な理由は三つあると考えます。


 まず第一が少子高齢化の進展、これに伴う労働人口の急激な減少という基本的な部分の変化です。これは納税者の減少、経済成長率の低下、同時に社会保障関係費の増大につながることは明らかです。

 平成十一年度三十一兆円の国債を発行し公債依存度が三十八%にもなる予算、国債残高が今年度末で三百二十七兆にも達し、今後も毎年三十兆円もの発行が必要となっている財政状況を考えれば、行政の抜本的改革により行政の効率化、スリム化を図ることは不可欠であります。

 第二は、新しい行政ニーズへの対応であります。

 我が国の行政システムは、先程述べました財政、さらには組織的にも旧来のシステム、すなわち既得権益に縛られ、新しい行政ニーズに柔軟に対応できる体制になってはいません。

 これを抜本的に改革していく必要があるのです。

 第三は民主主義の再確立であります。

 民主主義は戦後形式的には我が国に根付きましたが、その本来的な機能を果たしてきませんでした。

 これを回復する為には、改めて政治と行政の線引きを明確にし、そして政治の指導力を強化するという行政改革が不可欠なのです。

 このような観点から政府案を見ますと、これは全くの見かけ倒しであり、行政改革とは到底言えるものではありません。

 中央政府のリストラが全く進んでいないことから、財政上の好転は全く見込めず、肥大化した省庁が国民ニーズを迅速・柔軟に反映するはずはなく、政治の指導力強化は現在のシステムでも行いうることを法律化しただけであります。


 そこで総理に伺います。

 総理は就任直後の所信表明演説においても、今国会冒頭の施政方針演説においても、行政改革については非常にあっさりとした物言いに終わっています。

 報道等を拝見しても私は総理が自らの言葉で行政改革に対する理念、熱意を話されていることを聞いたことがありません。

 政治の場にいる私でさえ総理の言葉を聞いたことが無いのですから、国民からみれば全く総理の考えは分からないと思います。

 そこでこの機会に改めて総理はなぜ行政改革が必要だと考えているのか、今回提出されている法案によって何を改革しようとしているのか、法案のどの部分で行政を簡素化し、どの部分で透明性を確保し、どの部分で効率性を高めようとしているのか、国民に対して、分かりやすく具体的に説明していただきたいと思います。


 さらに総理は昨年の所信表明で「行政コストの30%削減」を明言されました。

 当然これを実現するための手段が、今回の法案に盛り込まれていると考えます。

 そこでまずこの「行政コスト」とは一体何なのか、人件費なのか、事務費なのか、或いは事業費を含む全体なのか、この「30%削減」と今回の法案の相関関係についてお伺いします。


 さて次に法案の具体的な内容について伺います。

 まず、内閣機能の強化についてです。

 私たち民主党は、政治主導のもとに内閣が行政をコントロールできるよう、内閣の運用については柔軟性を持たせるとともに内閣総理大臣を強力に補佐する首相府を設置し、また内閣主導による各省庁間の政策調整のための補佐機構として内閣府を設置する法律案を提出する所存であります。これこそが戦前から続く「最初に行政ありき」という我が国の内閣制度を根本から変革し、政治が行政を十分にコントロールする議院内閣制の本来機能を確立するための第一歩となるものであり、日本の政治を再生させるための唯一の手段なのであります。

 政府案では、内閣総理大臣の指導性は、実際には現状と全く変わらないと考えますがいかがでしょうか。総理にお尋ねします。


 次に省庁再編に関する部分であります。

 民主党は現在、霞ヶ関に集中する権限・財源を「市民へ・市場へ・地方へ」振り分けた上で、それでもなお中央に残らざるを得ない事業について、より機能的に実施できるように再編することが省庁再編のあり方だと考えています。

 言葉を換えれば霞ヶ関の役所を組み合わせることではなく、それ以前の「市民へ・市場へ・地方へ」振り分けることこそが本来の行政改革であります。

 特に大蔵改革こそが行革の中核であるという考え方のもとに、財政と金融の完全分離及び金融行政化の一元化が求められております。

 しかし政府案ではこの最も重要な過程である中央政府のスリム化に何ら手を付けることなく、既存省庁の切り貼りに終始しているのです。

 事実、今回の行革で霞ヶ関本体から出ていったものは何一つありません。これで現在ある一府二十一省庁を一府十二省庁に統合すれば、各省庁が肥大化することは誰が見ても明らかです。


 行政改革会議の最終報告書には「中央省庁の行政目的別大くくり再編成により、行政の総合性、戦略性、機動性を確保すること」とありますが、三十一万人の総務省を設置することが行政の総合性や機動性を高めることになるのでしょうか。更に総務省に関して言えば、総務庁・郵政省・自治省・さらに公正取引委員会という全く性格の違う省庁を統合することの一体どこが「行政目的別大くくり再編成」なのでしょうか。

 また、公正取引委員会が総務大臣の指揮下において郵政行政に公正な職務を執行できるのでしょうか。

 この省庁再編成を行政改革と称することは、まさにごまかしではないかと考えます。今申し上げた総務省に関する当たり前の疑問点について、総務庁長官の答弁を求めます。


 この総務省に並んで、この再編で最も問題なのが国土交通省であります。

 まず総理に伺います。公共事業による財政、環境への悪影響が顕著になる中、本当にこのような巨大開発官庁が我が国に必要なのでしょうか。

 7兆円という莫大な予算を抱えた巨大な象が、我が国の破壊に向かって暴走する恐れがないと本当にお考えでしょうか。

 政府はこのような各界からの指摘に対して地方の出先機関に権限・財源を移す事によって霞ヶ関は企画立案に限定するという回答をしております。政府はこのことを地方分権のように言っておりますが、国が国の出先機関に権限を移すことのどこが一体、地方分権なのでしょうか。

 それどころか大臣のチェックが全く届かないところに権限や財源をおくことの方が民主主義の形骸化に繋がると考えますが、いかがでしょうか。

 更にこの出先へ権限・財源等を移す意味ですが、これは地方出先機関にあたかも交付金のように予算枠を配分し、この枠内で出先機関が裁量的に予算を執行できるという意味なのでしょうか。これは総務庁長官に伺います。

 次に建設大臣に伺います。

 今回の地方分権一括法案では、国土交通省に関連して国が果たすべき役割は「全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施」とされています。

 しかし現在の建設省の担っている事業の範囲はこれを大幅に超えていると考えられます。

最大の公共事業官庁である建設省として、この定義に即した建設省事業のリストラをどのように行っていくのか伺います。


 次に設置法の最後は縦割り行政についてです。省庁再編の大目的に「行政目的別大くくり」がありましたが、実際は環境関連行政が環境省に一元化されることなく、厚生労働省や国土交通省に残っています。

 また地域振興は各省の縄張り争いの結果三省の共管となっており、原子力やODAも従来の各省割りの構造がそのまま新省庁に引き継がれています。これでは今までと変わらぬ「縦割り」そのままであると考えますが、総務庁長官の所見を伺います。

 次に独立行政法人について伺います。

 中央省庁の事務を企画と実施に区分し、実施部門については外部に独立行政法人として出して中央省庁のスリム化を図るという考え方については我々も賛成です。

 しかし政府の現在までの説明では、これを実現することによって一体どの程度スリム化が実現できるのかが、全く不明確であります。

この点について総務庁長官の答弁を求めます。

また独立行政法人という機関創設の大前提は、特殊法人の整理です。

 「独立した法人として運営し、その効率化を図る」ことはまさに特殊法人の設置目的であり、なぜ特殊法人の独立行政法人化が検討されないのか、これも総務庁長官の答弁を求めます。

 また政府は現在独立行政法人化によって公約である「国家公務員定員の25%削減」を実現しようとしていますが、独立行政法人の職員もその殆どがやはり国家公務員であります。

 これでは25%国家公務員が削減したというのは、明らかにまやかしであると考えますが、総理の所見を伺います。


 最後に自治大臣に伺います。

 昨年の通常国会で「中央省庁等改革基本法案」を審議した際に大臣は公務員制度、政策の立案執行体制、財政投融資、公共事業のあり方などに一切メスが入っていないとして、我々と共に反対の立場をとられていました。

 まさに国家観そのものを問われるようなこの法律について自由党が変節をしたとも思いません。また一方で自由党が入閣したことによってこの法案が大きく変わったという印象も持ちません。

 これについて自治大臣の所見をお伺いします。


 ここまで指摘しましたように、政府案は行政改革とは名ばかりで、仮にこの法案が成立しても我が国の将来展望も開けなければ、中央政府のスリム化も全く見込めないものであります。

 このような法案を「行政改革」と言い張り、また国民を欺こうとする政府、なかでも総理の姿勢こそが政治不信を招く最大の理由と考えますが、この点について総理のご所見を賜って、私の質問を終わらせて頂きます。

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