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1999/04/23
周辺事態法案外二件に対する本会議質問(角田議員)
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民主党・新緑風会 角田 義一  

私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま提案されました周辺事態法案外二件につきまして、小渕総理並びに関係大臣に質問いたします。

総理は明日から、十二年ぶりにアメリカを公式訪問するとうけたまわっております。我が国にとって、日米関係の安定をめざすことは、きわめて重要な課題であります。この首脳会談において、総理は、日本の国益のために、いかなる基本的立場に立ちまた何を主張してくるのかについて所信を承りたいとおもいます。

 コソボ問題は誠に悲惨・深刻であります。日本政府としての基本的立場をどう主張なさるのか、特にNATOの空爆についてどのような立場をとられるのか。またロシア等の和平交渉、調停工作をどう評価し、我が国として和平にどう貢献するおつもりか、さらに、難民救済について我が国はいかなる貢献をするのか総理の見解をうけたまわりたい。


 さて民主党は、自民、公明、自由の三党により修正された「周辺事態法案」には反対であります。

 民主党は、この新しい日米防衛協力が、憲法九条の専守防衛と個別自衛権の範囲、自衛隊の公海や領土外での武力行使の禁止、また日米安保条約の枠の堅持、さらに国会の事前承認を軸にシビリアンコントロールの確保が担保できる法律案にしなくてはならないと言う観点から「八項目の修正」を政府、自民党に提案しました。

このことは、日米安保条約に基づく日米協力や国連の平和活動参加は、我が国の平和と安全を確保する安全保障政策、防衛政策に関わる問題であり、可能な限り与野党が一致して法案成立をはかることが、我が国の重要な国益であるからであります。その立場で民主党は真剣に、国会審議に参加し、意見を述べ、最終的に修正案を提出したのであります。

 しかし、自民党は、国民的合意を広範に得ていかねばならない安全保障、防衛政策という極めて重要の法案を、野党第一党である民主党の修正要求を棚上げし、訪米する小渕総理の手土産として、かっての国対政治顔負けの自民、自由、公明三党により修正し、衆議院で可決させました。

 しかも、そのために合意できなかった自衛隊の「船舶検査」の項を法案から削除し、今後、自民、自由、公明三党で船舶検査のための法案を策定するというのです。こうして、この修正法案は自衛隊の三活動の一つであった「船舶検査」が削除される欠陥法案といえます。

これを政府としてやすやす受け入れるとすれば、小渕内閣は理念と見識をすべて放棄し、政策の軸など何もないことを内外に明らかにする様なものであります。政権維持のために汲々として総理の訪米前に何が何でも成立させようとしたことに始まり、三会派が各々の党利党略を最優先させました。ガイドライン審議を政策論争ではなく、政局論争におとしめたことの責任、とりわけ政府自民党を代表する総理の責任は極めて重大であることを申し上げなければなりません。

 これは議会制民主主義の否定であり、決して国民に理解されるものではなく、結果的には日米関係を傷つける可能性さえあり、誠にもって遺憾千万であります。総理の所信をうけたまわりたい。


 多くの国民は「冷戦が終わりすでに10年も経過したのに、どうして日米安保体制の強化が必要なのか」と感じています。しかし、今日までの政府の答弁や説明は、この素朴な疑問に明快な答えを示していません。

 また、今回のガイドライン関連法案によって、日本が求めない戦争に巻き込まれ、より深くアメリカの世界戦略に組み込まれていくのではないかという、国民の不安が消えていません。さらに、アジアの周辺国には、新ガイドラインは日本の軍事大国化につながるのではないかとの懸念が絶えません。

 これらの疑問や不安に応えていくのが、政府の責務であると考えます。国民が納得できる説明をする責任が政府にあります。私は、こうした観点からいくつかの問題について、政府に質していきたいと思います。


 第一に、まず政府は、国民に対して、冷戦終結後すでに10年近く経過したという状況下にありながら、新たに日本の周辺事態と称して、アジア太平洋地域にアメリカが展開する軍事行動に、なぜ日本が支援し協力しなければならないのか、という合理的な説明が必要です。

 個別的自衛権のもと専守防衛に徹するという憲法9条の趣旨・解釈を逸脱し、日米安保を集団的自衛権による集団的安全保障体制に質的転換を図ることになるのではないかと言う危惧に対する国民の不安感の払拭が不可欠です。

 この問題に臨むに当たって、我々が決して忘れてならないことは、憲法前文にうたわれた崇高な一文、すなわち、日本国民は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」し、この憲法を制定したことであります。この日本国民の決意に反するような、それを踏みにじるような、いかなる政策も我々は断固拒否いたします。

 小渕総理、今あなたが目指している周辺事態対米支援・対米協力は、この決意にもとることはないか、そうした仕組みをつくることによって、再び国民に惨禍をもたらすことはないと、一点の疑いもなく断言できるのか、国民に向かってはっきりと語っていただきたい。総理の所信を伺いたいと存じます。


 第二に、周辺諸国のあいだには、日米安保の新ガイドラインは、日米協力の枠組みを拡大させ日本が専守防衛から一歩踏み出し、アジア太平洋地域で覇権を求めようとしているのではないか、との懸念が存在します。

 念のため確認しておきますが、「専守防衛とは相手国から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう」、これが政府のいう「専守防衛」であります。

 「相手国から武力攻撃を受けたとき」とは、通常考えられるのは我が国領域に対する武力攻撃があったときであります。それに対して自衛隊が受動的にとる防衛行動、それが「専守防衛」の意味するところであります。

 ところが、この周辺事態法案では、自衛隊は我が国の領域内に限らず、周辺地域という公の海・公の空にまで出かけて、そこで積極的に対米支援・対米協力をし、その結果として、事態の状況いかんによっては武器使用があり得ることを想定しているのであります。これが果たして、受動的な防衛戦略の姿勢といえるでありましょうか。「専守防衛」に徹した自衛隊の行動といえるでありましょうか。このような自衛隊の行動は国民の理解が得られるでしょうか。

 要するに、政府が今行おうとしている周辺事態対米支援・対米協力の選択は、専守防衛の一線を踏み越えることになりはしないか、小渕総理の明快な答弁をもとめるものであります。


第三に基本計画の国会承認問題です。民主党は、緊急時には措置実施後ただちに国会承認を求めることがあっても、あくまで事前の国会承認を基本とし、周辺事態の認定、基本計画、自衛隊の出動の総てを含む基本計画の承認を求めてきました。

 総理は、周辺事態の基本計画の決定・変更について、国会承認を必要としないと判断しておられました。

 衆議院の答弁では、1.武力行使を含まない、2.国民の権利義務に直接関係しない、3.迅速な決定が必要、の三原則を強調して国会承認に反対されていました。そして、特に迅速な決定ができなくなることを問題にされていました。

 しかし、ガイドラインでは、周辺事態の項で「日米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう、外交上のあらゆる努力を払う。」また周辺事態が予測される場合は「日米両国政府は、事態拡大を抑制するため、外交上のあらゆる努力を払う」と記載されています。

 つまり、日本の平和と安全に重要な影響をあたえる周辺事態は、ある日、ある時、突然に発生するのではなく、ガイドラインにあるように、周辺事態の未然防止と事態の拡大抑制をはかる政府の外交上の努力が必ず先行することは当然のことです。

 あらゆる外交上の努力も空しく周辺事態が発生することがあっても、その間に国会論議を経て、国会の事前承認を迅速に行う事は十分可能であります。


 周辺事態の認定、基本計画、自衛隊の出動といった全体が国会承認の対象にならなければ、国民が期待している国会のシビリアンコントロールが十分機能いたしません。国会のシビリアンコントロール確立に対する総理の決意を承りたいと存じます。


 第四に、「事前協議」についておたずねいたします。日本有事の場合を除き、日本を基地とする米軍と他国との戦争に日本が巻き込まれぬために、在日米軍の配置や装備に重大な変更があるとき、並びに日本の基地から米軍が他国を攻撃するために直接発進するときは、日本政府に事前協議を義務づけたものです。なぜ、「事前協議」の字句が削除されたのか、日本政府としての見解を聞かせてもらいたい。


 米国としては、冷戦後、日本国民の在日米軍、わけても在沖縄海兵隊の段階的撤収を求める声の高まりを封殺し、朝鮮民主主義人民共和国の「核疑惑」以来、朝鮮半島有事を想定して、その時には、自衛隊を中核とした国を挙げての後方支援態勢の確立を求めるためではないか。そして在日米軍基地から朝鮮半島有事で出撃するとき「事前協議は行わない」としようとしているのだ、という意見もあります。事前協議についての政府の明解な見解を求めます。


 また、政府の周辺事態法案提案の真意は、朝鮮有事の米軍を想定した自衛隊をはじめ国を挙げての後方支援態勢確立にあるのではないかという懸念もあります。総理の見解を聞かせてください。


第五に沖縄問題があります。周辺事態に出動する米軍の拠点に沖縄がなるでしょう。沖縄県民は大変な不安にかられております。


 この新ガイドラインと懸案である沖縄基地の整理縮小に関する日米協議は、橋本政権下で同時並行で進められてきたのではありませんか。しかし、普天間飛行場の移転をはじめ、基地の整備縮小問題の多くが難航しています。嘉手納基地では、周辺自治体と住民の反対を押し切り、すでに移転が決まっているパラシュート降下訓練が実施されて県民の怒りと不安を高めています。都合のいい日米安保ガイドラインだけを具体化し、都合の悪い沖縄基地の整理縮小は置き去りにすることになりませんか。

 小渕総理の見解と沖縄基地の整理縮小について沖縄担当大臣である官房長官の答弁を求めます。


 第六に日本の外交戦略の問題であります。新ガイドラインによる周辺事態法案において日本が外交戦略とそのための装置をほとんどもたないまま、米国との軍事協力が決められようとしている事です。

 たとえば、先ほども議論しましたが、朝鮮半島有事を例として考えてみればよくわかります。

 米国は、朝鮮民主主義人民共和国との間に、米朝関係の基礎である「枠組み合意」があり、米朝会談や四者会談という正式の外交装置を維持し、外交と軍事が一体化した米国の国益確保の戦略をダイナミックに展開しています。

 それに比較して、日本には長期間の外交的無策の結果、朝鮮半島の緊張事態にイニシャチブを発揮できる装置もチャンネルもありません。  

 このように日本が、周辺事態という軍事衝突回避のための戦略とそれを実行するための外交装置をもたないまま、領土外での米軍との軍事協力の議論に踏み込むことは極めて危険であります。


 内閣総理大臣による「周辺事態の認定」も、日本独自の判断であると政府は強調しています。しかし、そのためには、その以前の段階で日本政府が独自で相当程度、情勢が熟知できるような外交力量を持たなければ、結局、米国の決定の後追いに終始せざるをえなくなります。

 総理、日本は独自の判断で「周辺事態」を認定できる外交力量が積み上げられていますか。日本と朝鮮半島を含む安全保障を確立するための我が国の外交戦略は何か。この際、ぜひとも明らかにしていただきたい。


 最後に私は、要は、周辺事態法案が必要となるような事態を、我が国周辺に作り出さないようにすることが、最も重要であることを強調したいのであります。そのためにも、政府には一層の外交努力が求められるのであります。当面、対応を迫られている朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化にむけてどのような外交努力をしていくのか、総理の決意をお聞かせ願います。

 
 いずれにせよ、我が国自身が、今一度、改めて冷戦終結後における自らの国益をしっかりと確認し、その観点から、新ガイドラインに基づく対米協力では、専守防衛の枠組みをあくまでも堅持しつつ、その範囲内の協力に留めるべきであることを再度強調しまして、私の質問を終わります。

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