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2000/03/28
児童手当法改正案に対する質問
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民主党 古川元久


 私は、民主党を代表して、ただいま議題となりました「児童手当法の一部を改正する法律案」について、厚生大臣ならびに大蔵大臣に対してお伺いいたします。
 法律案の中身に入る前に、まず、政府が現在の少子化の問題についてどのような認識を持っておられるのか、お尋ねしたいと思います。

(少子化社会への対応)

 先日、総務庁が発表した99年10月現在の我が国の推計人口によれば、15歳未満のいわゆる年少人口は1874万2,000人で、総人口の14.8%と統計開始以来初めて15%を割り込んだとされています。一方、65歳以上の高齢者人口は2118万6,000人で、総人口に占める割合が16.7%と過去最高を記録し、改めて少子高齢化の実態がデータの上からも明らかになりました。
 政府は、「少子化対策」として、新旧エンゼルプランの策定や、緊急少子化対策など実施されていますが、これらの施策からは「少子化」をどのようにとらえ、どのような社会を作ろうと考えておられるのか、今一つ明確に伝わってきません。この点、厚生大臣のご見解を伺います。


(少子化対策臨時特例交付金の効果・検証について)

 次に、小渕内閣が昨年夏の補正予算において2,000億円盛り込んだ「少子化対策臨時特例交付金」の効果について質問します。
 これは、保育所の入所待機児童の解消と、雇用・就業機会の創出という両面を持って交付されたものでした。その交付金の使い道について、労働組合の連合が実態調査をしています。それを見ると、シンポジウムの開催やビデオの作成、あるいは有識者を招いてのキャンペーンなど様々です。これで果たして保育園の入所待機を解消できるのかと首をかしげたくなる内容と言わざるを得ません。
 もともと待機児童は大都市部中心に多く見られ、その解消を図るには地域を限定し、集中的にお金を使った方が効果は大きかったはずです。全国の自治体にあまねく交付し、交付された方もその使い道に困るようでは、まさに「バラマキ」以外の何物でもありません。
 その後、厚生省は、保育所の定員要件引き下げや賃貸方式を認める規制緩和を打ち出しました。いみじくも保利自治大臣が、「そうした政策が特例交付金が交付される前にあれば、市町村もやりよかっただろうという点は否定できない」という答弁をされたように、目先の結果にこだわるあまり、政府全体としての整合性ある政策がとられていません。
 厚生大臣は、この交付金の政策、効果をどう判断されているのでしょうか、ご見解を伺います。


(政府改正案の中身について)

 さて、児童手当法改正案について、以下、順次質問させて頂きます。
 まず、今回の児童手当見直しと来年にも予定される抜本改革との関係についてであります。
 政府案によれば、今回の見直しは「当分の間」の措置とされています。与党間の合意によって「2000年度中に見直す」とされているために、このような一年限りの見直し策になったようですが、児童手当のあり方について、今後抜本的な見直しが行われる予定なのであれば、そのための手続きや、検討期間などを法律で明らかにしておく必要があるのではないかと考えますが、厚生大臣いかがでしょうか。

 さらに、来年にも抜本的な見直しが予定されているにもかかわらず、政府が、今回あえて「竹に木を継ぐような」改正を行おうとする意味は何なのでしょうか。今次改正の意義、目的を国民に明らかにする必要がありますし、来年に行われる抜本的改革との関係も明確にして頂きたいと考えますが、厚生大臣の答弁を求めます。

 そして、その抜本改革の方向性についても伺いたいと思います。
 そもそも児童手当法の第一条によれば、「児童を養育している者に手当を支給することにより、家庭における生活の安定や、次代を担う児童の健全育成及び資質向上に資すること」をその目的としています。しかし、実際問題として、月5,000円で「家庭における生活の安定」や「児童の健全育成、資質の向上に資する」のでしょうか。なぜ児童手当を支給するのかを明確にするとともに、法が規定する効果が期待されるレベルはどの程度か、何歳まで支給するのか、支給対象は子ども本人か扶養義務者かなど、児童手当の基本となるそのあり方を巡って、国民的な議論が必要ではないでしょうか。
 側聞するところ、与党間協議ではその辺りの議論が全く深まっていないようです。児童手当の抜本改革について、ぜひ厚生大臣のご見解をお聞かせ頂きたいと思います。


(支給対象年齢について)

 次に、今回、小学校入学前の子どもにまで支給の範囲を拡大される点について伺います。
 私は、児童手当が子育てに伴う経済的負担を軽減するという趣旨のものであるならば、小学校入学前の6歳までではなく、むしろ教育費などの負担が重くなる、学校に通っている子どもを持つ家庭に支給する方が、むしろ制度の必要性は高いのではないかと考えます。児童手当のx給範囲がなぜ6歳までとされたのか、この点、厚生大臣に答弁を求めます。


(手当額の水準)

 次に、児童手当の支給額についてお聞きします。現在、第1子、第2子について月額5千円、第3子以降は月額1万円となっており、今回改正案でも、その支給金額は変更しないとされています。
 ところが、この支給水準では、ヨーロッパ諸国に比べてかなり少なく、はたして子育て家庭に対する経済的支援として、何らかの効果が期待できる金額と言えるのかどうか大いに疑問があるのではないでしょうか。保育園の保育料だけをとって見ても、例えば中間所得層の共働き世帯では月数万円もかかっており、かなりの負担感があります。せめて保育料の負担がかなり軽減される金額であれば、それなりの効果があると思われますが、手当額の水準について政府ではどのような検討がなされたのでしょうか。また現在の金額で十分効果が期待できるとお考えなのか、厚生大臣に伺います。


(所得制限)

 次に、児童手当を支給される世帯の所得制限に関して伺います。ヨーロッパ諸国では、子どもを平等に扱うという観点から所得制限はありません。また、後ほどお聞きしますが、今回の財源措置が、実質的に年少扶養控除の10万円減額で賄うことになることなどを考慮すれば、所得制限は設けるべきではないとも思われます。
 この所得制限について、それを設定する理由、およびその水準について、政府の考え方を説明していただきたいと思います。

 関連して、今次改正案では、新たに支給範囲が拡大される部分に対する給付財源はすべて公費負担となっています。しかし、夫婦子ども2人のモデルケースについて、サラリーマン世帯と自営業者世帯とでは、その所得制限額が異なっており、奇異な印象を受けます。すなわち、モデルケースのサラリーマン世帯が年収670万円であるのに対し、自営業者世帯では432.5万円と、実に237.5万円の差があります。なぜこのような格差が生ずるのか、厚生大臣にその理由を伺いたいと思います。


(事業主負担のあり方について)

 現在の費用負担は、被用者、自営業者、公務員と雇用形態の違いによって異なっています。すなわち、被用者の場合、事業主が全体の7割を負担し、残り3割を国と地方自治体が負担しており、自営業者の場合は、国と自治体で分担、そして公務員は所属庁が負担することになっています。
 今回の見直しでは、0歳から3歳までは現行通りとなっていますが、3歳から6歳までの拡大分は、すべて公費で賄うこととされています。
 この費用負担のあり方について、制度本来の理念からすれば財源は全額公費で賄うべきとの議論もありますが、政府は、この事業主負担のあり方についてどうあるべきと考えているのか、公費との負担割合の考えとあわせて、厚生大臣の見解を求めます。


(扶養控除の見直し)

 さて、今回の児童手当見直しにあたって、政府は、その実質的な財源として、16歳未満の扶養親族に係る年少扶養控除を10万円引き下げる税制改正を予定されています。しかし、政府は、この年少扶養控除については、昨年度の税制改革において、子育て減税と称して10万円増額したばかりです。子育て減税と言えば、厚生省は、就学前の乳幼児に係る特定扶養親族控除の創設を、昨年要望しています。その時に、児童手当の増額については検討されなかったのでしょうか。この件については、先日の本院予算委員会において、わが党同僚議員が厚生大臣に質問いたしましたが、明確なご答弁がありませんでした。この点、再度、厚生大臣にお伺いしたいと思います。

 ほんの一年前に、政府は、児童手当の増額ではなく、年少扶養控除の増額を選択したのです。にもかかわらず一年経って10万円増額した年少扶養控除を、また10万円引き下げて元に戻す、これこそまさに「朝令暮改」ではありませんか。
 これまで、わずか1年で「恒久減税」策を元に戻したことはありません。扶養控除の歴史を振り返ってみても、極めて異例な措置であります。そこには理念も政策の一貫性もなにも感じられません。税制に対する国民の信頼さえ揺るがせるものであります。なぜ今回のような政策転換をされたのか、大蔵大臣から明確なご答弁を頂きたいと思います。

 しかも、6歳から16歳までの子どもを養育する世帯や、3歳未満の子どもを持つ世帯にとっては、実質増税となることは大変な問題です。子育てに対する経済的負担の軽減が必要であるならば、このような結果を招く制度変更が果たして適当なのかどうか、この点に関して、政府内で十分な検討がなされたのでしょうか。実質的に増税となる子育て家庭に対する明確な説明とあわせて大蔵大臣のご答弁を求めます。


(年少扶養控除について)

 ところで、扶養控除は、その収入が課税最低限以下の低所得者にはその恩恵がなく、また、税額控除でなく所得控除であるために、収入が高いものほど有利な制度となっています。扶養控除を廃止して、その代わりに手当を支給することは、財源と給 付の両面において、合理的かつ公平な政策を確立する見地から、十分意義があると思 いますが、扶養控除の見直しなど、そのあり方について大蔵大臣のご所見をお聞かせ下さい。


(最後に)

 児童手当制度は、少子化問題への対応や、税の児童に係る扶養控除制度との統合・調整の問題など、広く国民的議論が必要な課題だと思います。
 また、そもそも、児童手当のような現金給付制度をとるのか、保育や雇用環境など、社会的サービス・制度を充実させる現物給付を選択するのかも、十分に検討しなければなりません。
 子育て支援と言ったときに、とかく福祉分野だけを考えがちですが、労働、住宅、環境、意識改革、税制そして社会保障と様々な分野で、不断の改革を行わなければ、少子化問題に対応できません。
 そうした状況の中、政府が、「竹に木をつぐ」、いかにも拙速な児童手当の見直し案を提出してきたのは、あまりにも無定見で責任ある姿勢とは思えません。そのことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。

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