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2000/03/16
企業組織の再編における労働者の保護に関する法律案
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目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 企業組織の再編における労働者の雇用の安定に必要な措置等
 第一節 企業組織の再編を理由とする解雇の制限(第三条)
 第二節 労働契約の承継等(第四条―第九条)
 第三節 労働協約の承継等(第十条)
 第四節 労働組合等との事前協議等(第十一条・第十二条)
第三章 雑則(第十三条―第二十一条)
第四章 罰則(第二十二条―第二十四条)
附則



第一章 総則


(目的)
第一条
  この法律は、企業組織の再編が行われる場合における労働者の解雇の制限、労働契約の承継、労働条件の不利益な変更の制限その他労働者の雇用の安定に必要な措置等を定めることにより、労働者の保護を図ることを目的とする。


(企業組織の再編の定義)
第二条
  この法律において、「企業組織の再編」とは、事業主の合併、分割(商法(明治三十二年法律第四十八号)第二編第四章第六節ノ三及び有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)第六章の規定による新設分割又は吸収分割をいう。以下同じ。)、営業又は事業の譲渡又は譲受け(以下「営業の譲渡等」という。)その他政令で定めるものをいう。



第二章 企業組織の再編における労働者の雇用の安定に必要な措置等



第一節 企業組織の再編を理由とする解雇の制限


第三条
  事業主は、企業組織の再編が行われること又は行われたことを理由として、その雇用する労働者を解雇することができない。


第二節 労働契約の承継等

(合併が行われた場合の労働契約の承継等)
第四条
  事業主について合併があったときは、合併存続事業主(当該合併後存続し、又は当該合併により設立される事業主をいう。以下同じ。)は、当該合併の時に合併消滅事業主(当該合併により消滅する事業主をいう。以下同じ。)が雇用する労働者に係る労働契約を承継する。

2 事業主は、合併をするときは、合併の契約が締結された日から労働省令で定める日までの間に、その雇用する労働者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
 一 合併存続事業主の名称及び住所
 二 合併をする時期
 三 その他労働省令で定める事項


(分割が行われた場合の労働契約の承継等)
第五条
  事業主について分割があったときは、分割設立事業主等(当該分割により設立され、又は営業を承継する事業主をいう。以下同じ。)は、当該分割の時に分割事業主(当該分割をする事業主をいう。以下同じ。)が雇用する労働者であって当該分割設立事業主等に承継される営業に主として従事するものとして労働省令で定めるもの(以下「承継営業に主として従事する労働者」という。)に係る労働契約を承継する。

2 事業主は、分割をするときは、分割計画書(商法第三百七十四条第一項(有限会社法第六十三条ノ六第一項において準用する場合を含む。)の分割計画書をいう。以下同じ。)又は分割契約書(商法第三百七十四条ノ十七第一項(有限会社法第六十三条ノ九第一項において準用する場合を含む。)の分割契約書をいう。以下同じ。)が作成された日から労働省令で定める日までの間に、その雇用する労働者であって分割設立事業主等に承継される営業に従事するものに対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
 一 分割設立事業主等の名称及び住所
 二 分割をする時期
 三 前項の規定により分割設立事業主等にその労働契約が承継される労働者にあっては、その旨
 四 営業の一部を承継させる分割が行われる場合における承継営業に主として従事する労働者にあっては、第七条第一項の規定により労働契約の承継について同意しない旨を通知することができる旨及び同項に規定する期限日
 五 その他労働省令で定める事項


(営業の譲渡等が行われた場合の労働契約の承継等)
第六条
  事業主について営業の譲渡等があったときは、営業譲受事業主(当該営業又は事業の譲受けをする事業主をいう。以下同じ。)は、当該営業の譲渡等の時に営業譲渡事業主(当該営業又は事業の譲渡をする事業主をいう。以下同じ。)が雇用する労働者であって当該営業の譲渡等に係る営業又は事業に主として従事するものとして労働省令で定めるもの(以下「譲渡営業に主として従事する労働者」という。)に係る労働契約を承継する。

2 前条第二項の規定は、事業主が営業又は事業の譲渡をする場合について準用する。この場合において、同項中「分割計画書(商法第三百七十四条第一項(有限会社法第六十三条ノ六第一項において準用する場合を含む。)の分割計画書をいう。以下同じ。)又は分割契約書(商法第三百七十四条ノ十七第一項(有限会社法第六十三条ノ九第一項において準用する場合を含む。)の分割契約書をいう。以下同じ。)が作成された」とあるのは「営業又は事業の譲渡の契約が締結された」と、「分割設立事業主等に承継される営業」とあるのは「営業譲受事業主に譲渡される営業又は事業」と、同項第一号中「分割設立事業主等の名称」とあるのは「営業譲受事業主の氏名又は名称」と、同項第三号中「前項の規定により分割設立事業主等」とあるのは「第六条第一項の規定により営業譲受事業主」と、同条第四号中「営業の一部を承継させる分割」とあるのは「営業又は事業の一部の譲渡」と、「承継営業に主として従事する労働者」とあるのは「譲渡営業に主として従事する労働者」と読み替えるものとする。


(労働契約の承継について同意しない旨の通知)
第七条
  営業の一部を承継させる分割又は営業若しくは事業の一部の譲渡が行われる場合において、承継営業に主として従事する労働者又は譲渡営業に主として従事する労働者が、第五条第二項(前条第二項において準用する場合を含む。)の通知がされた日から分割事業主又は営業譲渡事業主が定める日(分割又は営業若しくは事業の譲渡の手続の態様に応じて労働省令で定める期間内の日に限る。以下「期限日」という。)までの間に、第五条第一項又は前条第一項の規定による労働契約の承継について同意しない旨を当該分割事業主又は営業譲渡事業主に対し書面により通知したときは、分割設立事業主等又は営業譲受事業主は、これらの規定にかかわらず、当該労働者に係る労働契約を承継しない。

2 分割事業主又は営業譲渡事業主は、期限日を定めるときは、前項の通知がされた日と期限日との間に少なくとも三十日間を置かなければならない。

3 分割事業主及び営業譲渡事業主は、承継営業に主として従事する労働者又は譲渡営業に主として従事する労働者が第一項の規定により労働契約の承継について同意しない旨を通知したことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


(労働契約の解除)
第八条
  第四条第一項の規定によりその労働契約が合併存続事業主に承継された労働者、分割事業主の営業の全部を承継させる分割が行われた場合において第五条第一項の規定によりその労働契約が分割設立事業主等に承継された労働者又は営業譲渡事業主の営業若しくは事業の全部の譲渡が行われた場合において第六条第一項の規定によりその労働契約が営業譲受事業主に承継された労働者は、合併、分割又は営業の譲渡等が行われたことを理由として、当該合併存続事業主、分割設立事業主等又は営業譲受事業主との間で締結されている労働契約を解除することができる。


(労働条件の不利益変更の制限)
第九条
  合併存続事業主、分割設立事業主等及び営業譲受事業主(以下「合併存続事業主等」という。)は、企業組織の再編が行われたことを理由として、この節の規定により当該合併存続事業主等に労働契約が承継された労働者の労働条件を不利益に変更することのないようにしなければならない。



第三節 労働協約の承継等


第十条
  合併存続事業主は、合併消滅事業主と労働組合(労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第二条の労働組合をいう。以下同じ。)との間で合併の時に締結されていた労働協約を承継する。

2 分割事業主又は営業譲渡事業主と労働組合との間で締結されている労働協約に、労働組合法第十六条の基準以外の部分が定められている場合において、当該部分の全部又は一部について当該分割事業主又は営業譲渡事業主と当該労働組合との間で当該分割設立事業主等又は営業譲受事業主に承継させる旨の合意があったときは、当該分割設立事業主等又は営業譲受事業主は、当該分割又は営業の譲渡等の時に、当該合意に係る部分を承継する。

3 前項に定めるもののほか、分割事業主又は営業譲渡事業主と労働組合との間で締結されている労働協約については、当該労働組合の組合員である労働者と当該分割事業主又は営業譲渡事業主との間で締結されている労働契約が分割設立事業主等又は営業譲受事業主に承継されるときは、当該分割又は営業の譲渡等の時に、当該分割設立事業主等又は営業譲受事業主と当該労働組合との間で当該労働協約(同項に規定する合意に係る部分を除く。)と同一の内容の労働協約が締結されたものとみなす。



第四節 労働組合等との事前協議等


(労働組合等との事前協議)
第十一条
  事業主は、企業組織の再編を行おうとするときは、あらかじめ、労働省令で定めるところにより、その雇用する労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と、労働条件その他労働者の保護に関し必要な事項について協議しなければならない。

2 前項の協議に際して、事業主は、労働条件その他労働者の保護に関し必要な情報を提供しなければならない。


(委員会等の設置)
第十二条
  合併存続事業主等は、合併消滅事業主、分割事業主又は営業譲渡事業主が労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(平成四年法律第九十号)第六条に規定する委員会その他の労働条件の整備等に資するものとして労働省令で定める機関を設置していた場合において、当該合併存続事業主等が当該機関を設置していないときは、当該機関を設置するように努めなければならない。



第三章 雑則



(事業主の責務)
第十三条
  事業主は、企業組織の再編を行うときは、その雇用する労働者の保護を図るため必要な措置を講ずるように努めなければならない。


(指針等)
第十四条
労働大臣は、労働契約及び労働協約の承継、労働条件の不利益変更の制限その他前章第二節から第四節までに定める事項に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定め、これを公表するものとする。

2 労働大臣は、企業組織の再編を行う事業主に対し、雇用の確保その他労働者の保護のために必要な指導及び助言をすることができる。


(労働基準監督署長及び労働基準監督官)
第十五条
労働基準監督署長及び労働基準監督官は、労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどる。


第十六条
  労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を行う。


(報告等)
第十七条
  都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、労働省令で定めるところにより、事業主その他の関係者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。


(立入検査)
第十八条
  労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、又は帳簿、書類その他の物件を検査することができる。

2 前項の規定により立入検査をする労働基準監督官は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。


(労働者の申告)
第十九条
  労働者は、事業主にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告することができる。

2 事業主は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


(国の援助等)
第二十条
  国は、企業組織の再編において雇用の確保その他労働者の保護を図るため、事業主に対する助成その他必要な援助等の措置を講ずるとともに、労働者の能力の開発及び向上を促進するための措置を講ずるものとする。


(中央労働基準審議会への諮問)
第二十一条
  労働大臣は、第二条の政令並びに第四条第二項、第五条第一項及び第二項、第六条第一項、第七条第一項並びに第十一条第一項の労働省令の制定又は改正の立案をしようとするとき並びに第十四条第一項の指針を策定しようとするときは、あらかじめ、中央労働基準審議会の意見を聴かなければならない。



第四章 罰則



第二十二条
  第七条第三項又は第十九条第二項の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。


第二十三条
  次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
 一 第十七条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかった者
 二 第十八条第一項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
第二十四条
  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。



附 則


(施行期日)
第一条
  この法律は、商法等の一部を改正する法律(平成十二年法律第   号)の施行の日から施行する。ただし、附則第六条から第八条までの規定は、公布の日から施行する。


(経過措置)
第二条
  第二章第二節から第四節までの規定は、この法律の施行の日以後にその契約が締結される合併又は営業の譲渡等について適用する。
2 前項に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。


(労働基準法の一部改正)
第三条
  労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。
 第九十八条第二項中「中央労働基準審議会は」の下に「企業組織の再編における労働者の保護に関する法律(平成十二年法律第   号)、」を、「地方労働基準審議会は」の下に「企業組織の再編における労働者の保護に関する法律、」を加える。


(社会保険労務士法の一部改正)
第四条
  社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
 別表第一中第二十号の二十の次に次の一号を加える。
 二十の二十一 企業組織の再編における労働者の保護に関する法律(平成十二年法律第   号)


(労働省設置法の一部改正)
第五条
  労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
 第四条第三十号中「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」の下に「、企業組織の再編における労働者の保護に関する法律(平成十二年法律第   号)」を加える。
 第五条第十八号の次に次の一号を加える。
 十八の二 企業組織の再編における労働者の保護に関する法律に基づいて、事業主その他の関係者に必要な事項を報告させ、又は出頭させること。
 第八条第一項中「同法」の下に「、企業組織の再編における労働者の保護に関する法律」を加える。


(厚生労働省設置法の一部改正)
第六条
  厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
 第四条第一項第四十一号の次に次の一号を加える。
 四十一の二 企業組織の再編における労働者の保護に関する法律(平成十二年法律第   号)の規定による企業組織の再編における労働者の保護に関すること。
 第九条第一項第四号中「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」の下に「、企業組織の再編における労働者の保護に関する法律」を加える。


(中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
第七条
  中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第百二号)の一部を次のように改正する。
 第八十一条のうち労働基準法第九十八条第二項の改正規定中「、地方労働基準審議会は」の下に「企業組織の再編における労働者の保護に関する法律、」を加える。


(中央省庁等改革関係法施行法の一部改正)
第八条
  中央省庁等改革関係法施行法(平成十一年法律第百六十号)の一部を次のように改正する。
 第五百九十条の次に次の一条を加える。
(企業組織の再編における労働者の保護に関する法律の一部改正)
第五百九十条の二 企業組織の再編における労働者の保護に関する法律(平成十二年法律第   号)の一部を次のように改正する。
 本則中「労働省令」を「厚生労働省令」に、「労働大臣」を「厚生労働大臣」に、「中央労働基準審議会」を「労働政策審議会」に改める。
 第六百八十八条のうち社会保険労務士法別表第一の改正規定中「第二十号の二十」を「第二十号の二十一」に改める。




理 由


 近年における企業組織の再編の状況等にかんがみ、労働者の保護を図るため、企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の解雇の制限、労働契約の承継、労働条件の不利益な変更の制限等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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