第145回通常国会 衆議院本会議
民主党 松崎 公昭
私は、民主党を代表して、ただ今議題となりました内閣提出の年金改正案、並びに山本孝史君ほか4名提出の年金改正案の両案に対し質問をいたします。
(社会保障トータルビジョン)
現在、日本経済は未曾有の長期不況に陥っており、国民は不安な気持ちで生活しています。こうした状況を作り出したのは、まさに、政府・自民党が甘い経済見通しをし続け景気対策を後手後手に回し、経済構造改革を後退させて、経済危機をいたずらに拡大してきたからにほかなりません。さらに、公的年金や医療制度改革に対する政府・自民党の中途半端な取り組みが、国民の不信・不安を増大させ、その結果、経済的マインドを冷え込ませ不況をさらに悪化させるという悪循環になっているのであります。
このような閉塞状況から脱出するには、小手先の施策を積み重ねるだけでは不十分で、思い切った政策展開が必要となります。とくに年金、医療など社会保障制度については、21世紀少子高齢時代に適合するシステムに改革し、誰もが安心して暮らせるセーフティネットを築くことが重要ではないでしょうか。
いま年金や医療、介護など老後生活に対する国民の不安は極めて大きなものとなっています。国民生活を安心して送るために国がなすべきことは、少子高齢時代における社会保障の全体像を明示し、それに向けた不断の改革を確実に進めていくことだと考えます。来年度から介護保険が始まり、高齢者医療制度の再構築とあわせた高齢者の負担が将来どのようになるのかが、まったくわからない状況の中で、果たして年金だけで考えていいわけがありません。総理の施政方針演説の「安心への架け橋」の中にも、将来にわたる信頼できる安定した社会保障制度を確立すると述べられております。小渕総理のお考えになる社会保障のトータルビジョンを明確にお示し下さい。
また関連して伺いますが、政府が何年間もずっと先送りし続けている「医療制度および医療保険制度の抜本改革」については、果たして政府はやる気があるのでしょうか。国会が開かれるたびに「今国会でやる」と、ずっと主張されていますが一向にその気配がありません。これらは大変重要な課題であり、これ以上の先送りは許されません。関係法案の今国会提出を公約すべきと考えますが、総理のご決意を伺います。
(経済戦略会議の答申)
ところで、小渕総理の諮問機関である「経済戦略会議」が先般、最終答申を出されました。そこには、全身衰弱している日本経済を再生させるための具体的な提言がなされていますが、果たして小渕総理は、この答申を今後どのように扱われるのでしょうか。
答申によれば、「年金については基礎年金部分を税方式に移行し、報酬比例部分は完全民営化をめざす」とあります。それはそれで一つの考え方でありますが、政府・自民党の「年金制度改正案大綱」における考え方や、この間、厚生大臣がご答弁されているように、「基礎年金の国庫負担は2分の1が限度であるし、報酬比例部分も将来とも維持する」という考え方とは大きくかけ離れたものと思います。総理直属の諮問機関と政府・厚生省の年金ビジョンがこうも違うと、国民の将来への不安は募るばかりですし、年金制度に対する不信感が増大するだけではないでしょうか。
小渕総理は、将来の年金制度に対し、経済戦略会議と政府案大綱のどちらの考え方を採っていくお考えなのか、明確なご答弁をお願いします。
(経企庁国民生活選好度調査について)
先月、経済企画庁から「国民生活選好度調査」が報告されました。調査結果によれば、社会人としてスタートしたばかりの20代の若者でさえ、54%もの人が老後の不安を訴えています。堺屋長官は、こうした若年層の将来への不安をどのように受けとめておられるか、ご見解を伺います。
また、経済企画庁の経済研究所が発表する調査研究では、基礎年金の税方式が提唱されてもいますが、そうした研究成果は具体的施策にどのように活かされているのでしょうか。堺屋長官に伺います。
(政府案の位置づけ)
次に、政府案について伺います。本案は、毎年引上げられる国民年金の保険料を来年度以降その引上げを凍結するという、たったそれだけのものです。保険料の引き上げ凍結は、その解除時期やその後の保険料引き上げ計画、自自合意等で打ち出している基礎年金国庫負担の引き上げと密接に絡む問題であり、今後提案されるであろう年金改革案と一体として提案すべきであると考えますが、なぜ凍結案のみを切り離して先行提案したのか、厚生大臣の見解を伺います。そういった意味から、本案は年金制度全体の将来のあり方とどのような関連があるのか全くわかりません。本案の位置づけについての説明もあわせて伺います。
(政府の年金改正案大綱)
先日、政府・自民党で合意された年金制度改正案大綱について伺います。大綱によれば、「基礎年金は2004年までの間に、安定した財源を確保し、別に法律で定めるところにより、国庫負担割合の2分の1への引上げを図るものとする」とあり、さらに、「基礎年金の国庫負担割合の引上げ及び保険料引上げの凍結解除は同時とし、できるだけ速やかに実施する」とあります。
厚生大臣に伺いますが、凍結解除の時期はいつでしょうか。また、どのような条件が整えば解除されるのかお尋ねします。
具体的に、消費税率が引き上げられない限り、国庫負担割合の引き上げは実現しないという考えなのか、答弁を求めます。さらに、結局、消費税率が引き上げられない限り、2004年以降も国庫負担割合は上がらず、保険料だけが引き上げられることもあり得るのかどうか、厚生大臣の明確な答弁を求めます。
基礎年金の財源問題については、94年の前回改正時にも同様の議論があり、その結果、法律の附則に検討条項が盛り込まれ、また、本院の附帯決議では、「所要財源の確保を図りつつ、2分の1を目途に引上げることを検討すること」と政府に対し注文をつけているわけです。一体、政府はこの5年間、何をされてきたのでしょうか。結局、今回も財源を詰められずに先送りでしょうか。当面、2分の1への引上げに必要な額は約2兆2千億円と言われております。思い切った行財政改革や無駄な公共事業の見直しを行えば、ひねり出せない数字ではないと考えますが、いかがでしょうか。また、そういった真剣な検討がなされたのでしょうか。総理の答弁を求めます。
(民主党案について)
さて、民主党提出の年金改正法案について伺います。本改正案によれば、来年度から基礎年金の国庫負担割合を現在の3分の1から2分の1に引き上げ、その分保険料を引き下げるとあります。
基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げればどのようなメリットがありますか、お尋ねします。また、税か保険かという議論の中で、民主党はかねてから基礎年金の税方式化を主張しておられますが、なぜ税方式が良いのか理由をお聞かせ下さい。
また、民主党は、今回の年金改正に対してどのような姿勢で臨んでおられるのかこの際お伺いをしておきます。
(抜本改革の必要性)
年金制度を運営するにあたって重要なことは、長期的視点に立って年金財政を安定させることだと思います。ところが、政府案のように将来の年金制度の方向性を示さないまま、場当たり的に保険料の引上げを凍結するのでは、将来の年金財政に不安を与えるのみならず、国民の年金制度に対する不信感を増大するだけではないでしょうか。
したがって、私は、安定した年金制度の確立が国民の老後生活への安心感を高め、わが国経済に好影響を与えるとの立場から、制度全般にわたる抜本改革、つまり年金制度の土台である基礎年金の抜本改革を速やかに行う必要があると考えます。
年金制度は、一人の個人にとっても拠出と受給を含め60年の長い関わりを持つ超長期の制度であります。好況不況に関係なく、安心のもとに守りつづけられる基本原則を国民に示してこそ年金制度に対する不信、不安が解消するのだということを申し上げ、私の質問を終わります。
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