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1999/03/05
都市再開発資金法等一部改正法案に対する質問(山本議員)
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民主党 山本 譲司

 私は民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました「都市開発資金の貸し付けに関する法律等の一部を改正する法律案」につきまして、総理ならびに関係大臣に質問いたします。

 今日、都市再開発事業は多くの困難な課題を抱えており、事業のあり方自体が見直されるべき時期にきていると思います。再開発事業のもっとも大きな問題は、事業計画から施行、完成まで10年、20年といった気の遠くなるような時間を要するケースが多いことであります。なぜ、このような事態に陥ってしまうのでしょうか。

 住民合意を取り付けるのに、あまりにも多くの時間と費用がかかることが原因だと指摘する人もあります。しかし、本当にそれが原因なのでしょうか。私は、住民の合意がなかなか得られないのは単なる住民エゴではなく、再開発計画自体に問題があるためではないか、そのために権利変換や転出が思うように進まず、事業の長期化につながっているのではないか、と思うのであります。

 今回の改正案では、事業促進の観点から組合設立の早期化や、都道府県知事の組合設立認可の早期化を図るための制度改正を行おうとしています。先ほども申しましたように、事業の長期化が大きな問題としてあり、是正が必要なことはその通りだと思います。法律上は地権者の3分の2の同意で設立が可能な組合も、現実には自治体の指導で100%近い同意を求められているケースも多いと聞いております。しかし、大方の同意を取ってほしいというのは、具体的に事業にかかわる当該自治体にとっては、ある意味では当然の希望でありましょうし、地方分権の視点で見るならば、むしろ自治体の判断は尊重されるべきとも思えるのであります。

 私は、全体の同意が取れないことが事業の進まない根本原因と考えるよりはむしろ、これまでの事業計画に魅力がなかったから同意が得られなかったと考えるべきだと思います。

 近年、全国各地の都市で駅前の再開発ビルとその周辺の風景が、非常に似通った、味気ないものになってきました。これは、再開発事業や土地区画整理事業が、国の細かい指導のもと一律に進められている実態をよく表していると思います。今日の地方分権の観点から見るならば、このような国主導の都市開発はあらためられるべきであります。全国それぞれの地域の特色を活かした街づくりを進めるためには、自治体に計画の裁量権を与え、国は金は出しても口は出さないという姿勢に徹するべきなのです。

 しかし、今回の改正案では、新たに創設される「事業用地適正化計画」の認定権者が、自治体の首長ではなく建設大臣となっていることなどからも、中央の関与がますます強まる内容に思えてなりません。この点について、建設大臣はいかがお考えでしょうか。


 また、再開発計画の問題点としてあげられるものに、事業計画の大規模化があります。かつて右肩上がりの時代によく見られたような、高層建築物中心の再開発事業が、今も計画の中心になっています。高層建築物は建築コストがべらぼうに高くつき、坪当たり100万を超えることもめずらしくありません。そのため当然、保留床の価格も坪当たり数百万といったものになってしまう場合もあるのです。バブル経済のころならいざ知らず、今日の長期不況の時代に、こんな無茶苦茶なコストを払ってまで高層ビルに店を出そうとする事業者は少なく、これが保留床が売れない大きな原因ともなっています。しかも管理費も当然、大変な額になるため、もともとの地権者も入れないような事態を招いてしまっているのです。

 高度利用型の事業は、確かにデベロッパーには魅力的なものかも知れません。しかし、再開発の目的は、あくまで魅力的な居住環境や経済活動の場の創出であり、開発そのものが目的ではありません。都市の再開発が、民間投資を誘発する効果が大きいという理由で進められているのであれば、事業のための事業という批判の多い大規模公共事業と、本質的には同じ過ちを行っているのではないでしょうか。そもそも現在の事業のように、再開発後はもともとそこにいた住民の大部分がいなくなるということ自体、異常だと思えるのです。

 今回の政府改正案では、再開発事業及び土地区画整理事業に対する、都市開発資金からの無利子貸付制度の創設・拡充や、保留床管理法人への無利子貸付制度の創設が盛り込まれております。しかし、このような制度も現在の再開発計画を根本的に見直さない限り、あまり効果的な施策とも思えないのであります。

 都市計画の先進国であるドイツにおける再開発を見ますと、都市景観や都市文化の保全が再開発事業の重要なポイントとなっています。また、再開発される地域の建物をできるだけ撤去せずに、これまでの居住機能を残したままで都市機能の更新を図る手法も採用されております。もともとそこにある地域社会の機能をどう残すかが、計画の基本となっているのです。また、フランスでも各地域ごとのイニシアティブの発揮や、情報公開と住民参加の制度化とともに、企業活動の活性化にも寄与するよう各種手続きの緩和や単純化が図られております。

 総理。わが国もそろそろ都市再開発政策を抜本的に見直すべきではないでしょうか。今回の法改正のように、都市政策の周辺部分をさわる程度では、もはやなんの効果も期待できないと思います。

 わが国においても、これからの再開発事業は地方分権という視点を明確にしたうえで、地域社会を基本とした、人の交流を生み出すようなものにしていくべきであると考えます。そのためには、建設コストのあまりかからない小型建築物を中心に、高齢者施設や保育・教育施設と専門店街が効果的にリンクした再開発事業が計画されるべきであると考えます。そして、補助金制度などの細かい規定を見直し、自治体の裁量を拡大したうえで、補助金の使い方については組合などの施行者で考えるというスタイルに切り換えれば、事業も進めやすくなると思います。地方分権推進委員会の勧告にもある統合補助金制度は、再開発業務にもっとも適していると考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。見解をお伺いいたします。


 本法案に関連して、住都公団改革についても伺いたいと思います。今国会では住宅・都市整備公団の改革法案も審議が予定されております。住都公団が分譲住宅業務から撤退することは当然と思いますが、今後は賃貸住宅業務の他に都市基盤整備業務に重点をシフトするとしています。賃貸住宅業務の継続も議論のあるところですが、新公団の行なう都市基盤整備業務とは、はたしていかなるものなのでしょうか。住宅供給としての役割を終えた公団が、今度は民間のデベロッパーを圧迫するというのでは、全く意味がありません。また、低利用地・未利用地の土地取得業務などは民間都市開発機構も行っており、公団が関わる必要性はないように思われます。都市再開発事業における公団の役割とはいったいなんなのか、建設大臣にご答弁をいただきたいと思います。

 また、今回の改正案では、住都公団に対する無利子貸付制度の創設が盛り込まれております。しかし、まもなく廃止になる公団に対し新たな制度を創るというのは、にわかに理解し難いのであります。政府の住都公団改革法案は、現時点では国会審議の日程にものぼっておらず、新公団としての存続すら決まっていないのです。にもかかわらず、先行する別の法案で、先に手当をしておくというのは、あまりにも姑息な手法ではありませんか。新制度の議論を行う前に、まず公団の存続について十分な国会審議を行うべきであります。

 この件についても併せて建設大臣にご答弁いただき、私の質問を終わりにいたします。

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