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1999/03/05
政府提出特例公債法案、同税2法案及び民主党・新緑風会提出税2法案に対する質問(浅尾議員)
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民主党・新緑風会 浅尾慶一郎

 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいまの政府提出に係る平成11年度特例公債法案、同税2法案及び民主党・新緑風会提出に係る所得税法改正案等2法案について、総理、関係大臣及び提出者に質問いたします。


今後の景気動向と特例公債追加発行の可能性について

 まず、初めに、平成11年度予算案では、過去最高の21兆7,100億円の特例公債発行を見込んでおります。建設公債とあわせた公債発行額は総額31兆 500億円で、3度の補正予算を組んだ今年度予算(公債発行額34兆円)に匹敵するものです。この予算で景気が自律的な回復軌道に乗っていけば、成功といえるでしょう。

 しかしながら、私はそのような楽観的な見通しは到底持つことができません。なぜなら、政府がいくら「構造改革」という言葉を強調しても、平成11年度予算案は公共工事中心のバラマキという従来の構造を何ら変えるものでなく、一時的には需給ギャップを埋めて景気が上向くことがあっても、自律的な回復をもたらすものではないからです。

 小渕総理にお尋ねいたしますが、途中でスタミナ切れした場合、リリーフが登板する、つまり補正予算が組まれるのですか。また、その場合、特例公債発行額はさらに上積みされるのですか。


将来の財政再建プランについて

 万が一特例公債発行額がさらに上積みされた場合、国債の格付けはもう一段引き下げられ、長期金利は上昇すると予想されます。従って、私は特例公債発行額の上積みの余地は断ち切るべきだと考えます。もちろん、真に景気が回復する予算に組み替えたうえでの話です。

 ここで一つ例え話をいたしますと、特例公債発行額が21兆7,100億円であるのに対し、国債費の中の利子及割引料は11兆3,682億円となっております。これは借金の利息を払うために借金を重ねる、すなわち利息の追い貸しを受けていることを意味しています。一般的に、銀行から追い貸しを受ければ、その貸出は少なくとも第2分類債権に分類されます。つまり、平成11年度予算案は第2分類予算というわけです。

 健全な予算にするには、少なくとも特例公債はなくすことが必要であり、そのためには行政のムダや非効率な部分をなくし、歳出を切り詰めることが必要です。財政構造改革法の凍結により、財政規律は忘れ去られたようですが、不況の原因の一つが将来に対する不安であることははっきりしています。

 政府は今こそ財政再建の長期的ビジョンを示すべきであり、公債の発行残高を減少させるための具体的な行政改革等の方策を検討して、必要な措置を講ずるべきであります。小渕総理のご見解をお聞かせ願います。


日債銀再建問題における不明朗な覚書

 平成11年度予算案では、金融機能早期健全化勘定の借入金について、25兆円の政府保証限度が定められており、近く総額7兆4,500億円の資本注入が実施されるとの報道がなされているところです。しかし、金融不安が解消できるかどうかはまったく疑問です。ところで、97年春、経営破綻寸前にあった日債銀を救済するため、日銀及び民間金融機関に奉加帳を回しました。

 その際、大蔵省幹部は一部の金融機関に対し、日債銀の再建を保証するかの如き内容の「確認書」なるものを差し入れましたが、思い起こすと、かつて住専に対する融資に関して大蔵省と農水省の間でも似たような覚書が交わされ、世間から批判されました。

 なぜ同じようなことが繰り返されるのか、大蔵大臣の反省の弁を求めます。


優先株の取得方式について

 私は、昨年三月に行われた所謂佐々波委員会での優先株取得の反省に立ち、再三、今後行われる優先株式の取得については、減資が行われる際には経営に責任のある普通株式から減資をすることを予め優先株引き受けの条件にすべきと指摘をしてまいりました。

 これは、議決権のない優先株主は今までの経営に対して責任がないし、また経営にチェックを掛けようがないことにも鑑み、万一不良債権を消却する際に資本の減資が必要となる場合には、当然普通株式から資本の毀損をすべきであり、又、このことは国民の財産たる公的資金投入の当然の前提条件であるからであります。

 商法222条並びに345条、346条の規定に従い、事前に定款にてその旨定めるか、減資の際にその旨の格別の定めをすれば良い訳でありましてその旨も指摘させて頂いております。

 しかるに、金融再生委員会からは学説上そのことが許されないとの返答が来ております。商法上明確に可能であると記述されており、専門家並びに解説書においても可能と記載されていることを、学説上不可能と政府が口頭で返答することは不適切と考えますので、この際、かかる行為が不可能と金融再生委員会において解釈した根拠となる説を唱える学者がいるならばその名前を挙げて頂き、その論拠を示して頂くことを金融再生委員長に求めます。

 さらに、その人の署名入りの答弁書を提出頂きますように金融再生委員長に重ねて求めます。法律上可能と明確に記載されておることを、不可能と主張されるのですから、その論拠を明らかにして頂きたい。


地方団体間財政調整制度の問題点について

 さて、現在、我が国の地方自治体は軒並み財政状況が厳しくなっておりますが、特に東京、大阪、神奈川、愛知等の都市部の自治体が財政上危機的な状況に陥っております。

 先般、私は47都道府県について住民一人当たりの地方交付税と国庫支出金の額を調査させて頂きましたところ、47都道府県で交付金額がもっとも少なかったのは神奈川県の一人当たり4万円、ついで東京都の4万3千円でした。逆に最も多かったのは島根県の43万円でした。

 4万円対43万円のこの格差についての小渕総理のご所見並びに、地方交付税等の交付金額の少ない自治体が財政危機に陥っていることの小渕総理のご所見を伺います。


国から地方への税源移転の必要性について

 私共は、現下の地方自治体の財政危機を睨み、又、自治体毎の財政上の自主性豊かな運営を考慮し、所得税のうち納税者全員に掛かっている最低税率の10%分を地方に委譲することを提案させて頂いております。そして、将来的には、自治体毎に自由に税率を変更出来る様にすることが、豊かで効率的な自治体運営にも繋がると考えております。この様に国から地方への税源の移転は、財政危機から地方自治体を救うのみならず、様々な効能があると考えますが、小渕総理並びに自治大臣のご所見を求めます。


居住地ごとの所得税納税額データの必要性について

 かかる所得税の地方自治体への移転の議論をするに当たり、当然居住地毎に一人当たりでいくら、所得税を納めているかのデータは必要となります。税率を委譲した場合にどうなるかのシミュレーションを行う為に必須のデータであり、宮沢大蔵大臣もその様なものが必要であると決算委員会で答弁をされております。

 しかるに、現行の源泉徴収制度のもとでは、年収が500万円以下の方については源泉徴収義務者から税務署へ、その名前の報告義務がないため、このデータが頂けないようであります。大変重要なデータであり、かつ年収が500万円以上と以下で政府が差別的な対応をするのは問題であると考えます。

 この際、源泉徴収義務者にすべての納税者の名前及び住所を税務署に提出させてかかるデータが算出可能とすべきと考えますが、小渕総理のご所見を伺います。


法人税率引き下げについて

 次に、政府提出の所得税・法人税負担軽減法案について総理にお尋ねいたします。

 まず、法人税関係ですが、昨年税率を34.5%に引き下げた時点で、政府・大蔵省は、法人税率は米国以下の水準となるため、これ以下に引き下げる考えはなく、あとは地方法人課税の見直し、特に法人事業税の外形標準課税化を図ることにより税率を引き下げ、国・地方あわせた実効税率を40%程度にすると表明してきたと承知しております。

 これに対して民主党は、昨年1月来、法人課税の実効税率を40%程度に引き下げるためには国の法人税率をもう一段引き下げて30%とすべきであると提案してまいりました。

 今回の法人税率引き下げは昨年来の民主党の主張が採用されたものと理解しておりますが、政府は、1年前に素直に民主党提案を受け入れて今回の改正内容を提案すべきだったのではありませんか。

 このように短期間の間に政府の方針がころころと変わり、結果的に場当たり的な政策の小出しになってきたことが、景気浮揚を遅らせてきたとは考えませんか。
 小渕総理のご所見を求めます。


所得税の将来方向と展望について

 次に、所得税関係についてお尋ねいたします。総理は、これまで本会議等で「定率減税は、納税者ごとの税負担のバランスを歪めないで減税を行うことができるという長所があり、今回のように、景気の現状に配慮して、課税ベースや課税方式の抜本的見直しを伴わず、恒久的な減税を行う方式としては定率減税が適当と考えられる」と答弁しておられます。この考え方は、その通りであると私も考えます。

 しかし、そうであるならば、まさに政府が定率減税と合わせて提案している課税ベース等の抜本的改革を伴わない最高税率のみの引き下げは、納税者ごとの税負担のバランスを歪めるものにほかならず、不適当だというべきではありませんか。総理は、ご自身の説明の矛盾に気づいておられるのですか。

 また総理は、自民党総裁就任後の昨年7月25日、新聞のインタビューに答えて「特別減税の恒久化も含めて実質的に増税にならない形での恒久減税の数字を是非はじき出したい」と表明されたそうですが、間違いありませんか。

 そうであるとすると、今回提案されている内容は、総理の当初の公約に反するものとなってしまったのではありませんか。

 さらに総理は、今回の所得減税案について、「将来の抜本的な見直しを展望しつつ・・・」と繰り返し表明し、また個人所得課税の税率構造、課税ベースや課税方式のあり方については、今後の抜本的な改革の中で腰を据えて検討するとしておりますが、将来のどのような抜本的見直しを展望してこのようにおっしゃっているのでしょうか。

 与党と公明党との政策合意の中で、民主党が主張してきた総合課税化や納税者番号制度について導入の方向で検討することを盛り込まれたようですが、総理、これは当然やるという意味と理解してよろしいのですね。よもや「検討はするがやるかどうか分からないという趣旨である」というような無責任な態度ではないのでしょうね。

 ここで小渕総理ご自身の税制についての将来ビジョンを、はっきりと表明していただきたいと思います。


扶養控除制度と児童手当制度について

 次に、民主党が提案している所得税の扶養控除の見直しと児童手当の拡充に関連して、小渕総理及び大蔵大臣にお尋ねいたします。

 所得控除は適用される限界税率が高いほど有利になる不公平な仕組みです。

 所得税法上の所得概念は、一般的に収入金額から必要経費を差し引いた額として把握されていますが、納税者本人の給与所得控除や基礎控除はともかく、本人以外の扶養親族の生活経費は「収入を得るための必要経費」とは言えません。子どもなどの扶養親族の最低生活経費をまかなうための経済的基盤の維持は、社会保障制度の対象としてこそふさわしいのではありませんか。

 欧州諸国では、児童手当と所得税の扶養親族控除の両者を調整し、児童手当に一本化していこうという考え方で整理されてきております。米国では、児童手当はありませんが、クリントン政権下の税制改革で、児童や学生についての税額控除制度が導入されました。これは日本のような不公平な所得控除ではなく、一律上限額の税額控除です。

 わが国でも、児童手当制度創設当時以来、両者を調整して児童手当を拡充すべきだという考え方が社会保障制度審議会の答申等でも提言されてきたと承知しておりますが、小渕総理はこれらのことをどう認識しているのですかお聞きします。

 また、大蔵大臣は、これら両者の調整について前向きのお考えをお持ちとお聞きしていますが、この際、民主党案をもとに検討されてはいかがでしょうか。

 大蔵大臣のご所見をお聞きします。


今後の住宅税制のあり方について

 次に、租税特別措置法等の改正案、とりわけ住宅税制のあり方について大蔵大臣にお尋ねします。

 住宅減税や投資促進税制、環境税制などはいずれも民主党が提案してきたものであり、当然のことと考えます。このうち、かつてなく大幅に拡充された住宅減税は、足元の景気対策としては一定の効果が期待されるものでありますが、その検討過程では、現行のローン残高に応じた一定期間の税額控除ではなく、米国のようなローン全期間を通じての利子控除を導入すべきとの議論も各界から出されており、私もこの方が税制上ニュートラルであると考えます。

 また、住宅税制については、今回のような景気対策の観点のみならず、そもそもの政策目的として持ち家促進なのか、一般的な家計の負担軽減策なのかという議論が横たわっていると思います。

 今後の国の住宅政策とその実施手段としての住宅税制のあり方の関係についてどのようにお考えなのでしょうか、大蔵大臣のご所見をお聞きします。


むすび

 最後に一言現下の経済状況に鑑み、今次提出の二法案について、所見を申し上げさせて頂きます。我が国は、バブル崩壊後国家としての指針を見失っておる様に思います。今回の税制改正並びに特例公債の増発からは景気回復を第一との考えは窺えますが、将来に対して、私の同世代の者が希望を持てる様な、

方向性が見えて参りません。

 今次の法案審議を通じて、少しでも、将来への夢や希望が見える様になること、社会全般に活力があふれてくること、敗者復活戦のないトーナメント型社会から誰にでも何度でもチャンスの与えられるリーグ戦型の社会へ移行することを切に希望して、質問を終了させて頂きます。

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