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1999/03/04
主要食糧の受給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する質問(小平議員)
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民主党 小平 忠正

 私は、民主党を代表して、ただいま議題となりました「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案」について、総理ならびに関係大臣に質問いたします。


 まず、同法案の内容についてお尋ねする前に、今回の法案提出に至るまでの政府の姿勢について、伺いたいと思います。

 ガット・ウルグアイラウンド農業交渉において、わが国は「基礎的食料については、食料安全保障の観点から所要の国内生産水準を維持するために必要な国境措置を講ずるべきである」と主張し、いわゆる「例外なき関税化」について受入れられないという姿勢を明確にしました。

 そして、困難な交渉の末に、特例措置としてのミニマムアクセスを受入れたのであります。私自身、その当時与党に身を置いた一人として、まさに「苦渋の選択」でありました。

 当時の政府の判断については、もちろん議論があるところであります。しかし、総理もご承知のように、当時、この問題については国会の内外で国論を二分する大議論が展開され、その結果、関税化を拒否し特例措置を受入れるという結論に至ったのであります。しかしながら今回の関税化受入れについての政府決定に至るまでの過程は、おおよそ国民的合意の形成からはかけ離れたものであり、政府与党による密室協議と、形だけの極めて短期間の農協組織討議を経て、まさに駆け足で関税化の受入れを決定したのであります。

 これほどの重大問題にも関わらず、農業団体との事前協議のみで事たれりとし、国民の代表である立法府には事後報告的に了解を取り付けようとする政府の姿勢に、私は怒りの念を禁じ得ません。

 しかも、このような批判が各方面からあがっているにもかかわらず、政府は今後も自民党と農協との三者会議なる場で、WTOの対応を協議するとしております。国会軽視もここに極まりの感があります。

 今回の関税化受入れ決定の過程で示された、このような立法府軽視の態度を、政府は今後も改めることなく貫くのであるのでしょうか。この点について、まず総理の見解を伺います。


 次に法案の内容に関連してお伺いいたします。
 まず、政府が採用しようとしている基本税率についてであります。今回、政府は関税化導入にあたり従量税を採用し、関税相当量を1kgあたり402円とし、これに基づき99年度の二次税率を351円に設定するとしています。しかし、当然の疑問としてこのような高率関税が輸出各国に認められるのかということであります。先に来日した米国通商代表部のフィッシャー次席代表は、今回の関税率について懸念を表明しており、あの悪名高いスーパー301条の復活も伝えられております。今後、輸出各国から対日圧力が一段と強まることが予想されますが、政府としてどのように対応していくお考えでありますか。

 また政府は、仮にWTO加盟国からの異議申し立てで譲許表の修正が4月1日までにできない場合でも、国内法の改正で関税化の移行は可能としておりますが、譲許表は条約にあたり、条約と国内法が食い違った場合は条約が優先するとみるのが一般的ではありますまいか。これらの点について、政府の考えをお聞かせいただきたい。

 関税化に移行した場合のミニマムアクセスの継続も大きな問題であります。今回政府が関税化に踏み切ろうとしている主な理由が、ミニマムアクセス米の過剰にあることは誰の目にも明らかであります。関税を導入し、ミニマムアクセスがなくなるか段階的に削減していくのなら関税化も一つの手法と思われます。しかし、関税受入後もミニマムアクセス米の輸入量は2000年まで増加し、その後も国内消費量の7、2%で固定されるというのであれば、わが国の農業にとって、依然として厳しい状況が続くことは明々白々であります。

 今後の交渉において、関税化導入後のミニマムアクセスの引下げは可能とお考えであるのか。また、今後のミニマムアクセス米処理について、政府はどのように対処するのか。農水大臣のご見解をお聞かせいただきたい。

 農家経営安定対策も重要な課題であります。関税化に移行した場合、仮に政府が予定する高率関税が実現しても、その後は漸次削減されていくことが予想されます。これまで自由化されてきた多くの農産物の生産農家がそうであったように、稲作生産農家も極めて厳しい状況に置かれることは想像に難くありません。

 生産性の向上にむけた農家の経営努力にも限界があり、経営安定対策は抜本的に改革する必要があります。しかし、関税化後の農家経営安定策について、政府の考え方は未だ明確ではありません。また、伝えられるところによると、政府が現在検討している中山間地のデカップリング政策は極めて限定的な支払額と対象地域であるとも言われております。これでは、稲作経営農家の不安は大きくなる一方であり、もし関税化に踏み切るとするならば、平地・中山間地に関わらず、農家の不安を払拭するような大胆な所得補償政策を打ち立てるべきであると考えますが、政府はどのようにお考えでありましょうか。総理大臣ならびに農水大臣の見解を伺います。


 最後に、WTO次期農業交渉に臨む政府の姿勢と「新たな農業基本法」について伺います。

 今後、WTO農業交渉においては困難な外交交渉が予想されます。米国は96年農業法に基づき国内農政改革を進め、EUも「アジェンダ2000」に基づく「共通農業政策」改革を急ぐなど、各国は次期交渉に向けた国内の体制整備・強化を固めつつあり、本番の交渉には万全の体制で臨もうとしております。

 一方わが国は、確かに今国会で「新たな農業基本法」制定に向けた協議が行われようとしていますが、デカップリングや農地制度の改革といった個別重要政策については先送りされており、WTO農業交渉前の国内体制の強化という観点からは弱腰の感は否めません。

 国際交渉の模様眺めをしながら、国内政策を詰めるという姿勢では、厳しい外交交渉に勝ち抜くことはでき得ません。政府は、わが国がとるべき農政の方向について断固たる姿勢を明らかにし、そのうえで次期農業交渉に当るべきであります。

 ご存知のように、WTO農業協定は一部の食料輸出国の利害が強く反映されております。それは、食料輸入国に対してはミニマムアクセスのような輸入義務を課し罰則を設けながら、食料輸出国が輸出の禁止や制限をする場合には、単に関係国への通達や協議をするだけで、なんのペナルティーも課さないという協定内容からも明らかです。

 このように食料輸出国の権利は守り、輸入国の権利は否定されるWTO農業協定体制下で、わが国のような食料輸入国は、主権国家としての大胆な農業政策を打ち出しにくい状況が続いてきました。

 しかし、その一方で、深刻な飢餓・貧困、食料不足といった問題は世界中の人々に農業・食料政策の重要性を再認識させ、96年のFAO世界食料サミットにおいては、世界の食料安全保障の確保という共通目標が合意に達しました。そして、昨年11月に開催された列国議会同盟の食料サミット・フォローアップ会議でも、「各国とも食料安全保障を達成し、食料への権利を現実のものとし、世界食料サミットで採択された世界全体の目標と矛盾をきたさない、食料安全保障の国家目標を設定する政策および法的枠組みを整備する必要がある」とする内容の勧告を採択しているのであります。

 私は、このようなFAOの考え方こそ、わが国がWTO農業交渉の場でとるべき態度であると確信します。

 各国が主権国家にふさわしい食料自給目標をかかげ、その達成に向けた農業政策を確立することが、今こそ重要なのではありますまいか。

 欧米先進各国の食料自給率は、70〜80%から100%を超えております。一方、わが国の自給率は、昭和40年には73%という高い数値を示していたものが、平成9年には41%まで落ち込んでいるのであります。昭和36年に制定された現行農業基本法がどのような役割を果たしたか、この数字が雄弁に物語っております。

 政府は今回、新たな農業基本法を国会に提出しようとしております。
 そこでは、現行農業基本法路線からの大転換を図り、食料の安定供給の確保や多面的機能の発揮などを柱とするとも伺っております。

 しかし、WTO次期交渉を睨み、わが国の態度を明確にするためには、法律の目的に「食料自給政策の確立は、主権国家としての当然の権利である」ことを明記すべきであります。

 そして、そのうえで不平等条約ともいうべきWTO農業協定の改正を、わが国政府のイニシアティブで実現していくべきであると思うのであります。

 WTO次期農業交渉に臨む基本姿勢とわが国農政のとるべき方向について、総理並びに農水大臣のお考えを伺い、私の質問を終わります。

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