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1999/02/10
平成11年度政府予算案に対する反対討論
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民 主 党 海江田万里  

私は、民主党を代表して、ただいま議題となっております、平成11年度予算3案に反対、民主党提出の組み替え動議に賛成の立場から討論を行います。

今日家を出ると、隣家の梅の花を見てまいりましたが、まだつぼみでありました。例年でしたら、予算が衆議院を通過する頃は梅の花は満開ですが、今年はつぼみのままでございます。
この予算の審議中、院の内外で景気回復のために一日も早く予算を通過させるべきだとの声がありましたが、はたしてそうでしょうか。政府の予算が真に景気回復につながるものであれば、私どもも予算の成立に協力をして、一日も早く成立させることはやぶさかではありませんが、今度の政府の予算案は景気回復につながるものとは私どもは思えません。しかも、この予算、歳出の規模は81兆円を超える大変大型なものですが、その財源を31兆円の新規の国債の発行に頼るわけです。このツケを次の世代に残すということ、このことを私は今度の予算を議論するにあたって真剣に考えなければいけないと思います。
そこで以下具体的に、私どもが政府予算に反対する理由を申し述べます。

政府予算に反対の第一の理由は、最大の課題である景気回復に十分応えておらず、政府公約の実質0.5%の経済成長は到底不可能な内容となっていることであります。
わが国は未曾有の長期不況に陥り、国民は不安な気持ちで毎日を送っています。右肩上がりの経済成長、官主導の経済システム、年功序列・終身雇用制度が揺らぎ、日本経済の仕組みそのものが瓦解しつつあります。
 橋本内閣、これに続く小渕内閣は甘い経済見通しを続けて景気対策を後手後手に回し、経済構造改革を後退させて、経済危機をいたずらに拡大してきました。さらに年金・医療制度、国家・地方財政などに対する国民の不信・不安が経済的マインドを冷え込ませ、不況を倍加させる悪循環をつくり出しています。
私たちは、現下の経済危機の原因が単なる循環的なものではなく、冷戦構造崩壊や大競争時代の到来による世界経済の大転換、成熟・少子・高齢時代を迎えた社会構造の変化などにわが国の経済システムが適合できなくなっていることにあると考えます。

現下の不況は極めて根が深いものであり、この不景気から脱却するためには、小手先の施策を積み重ねるだけでは不十分であります。景気を刺激する大胆なカンフル剤、日本経済の仕組みを丸ごと改革する外科手術が共に不可欠であります。
民主党は、自由・公正な競争を阻害する要因を除去し、高コスト・高直接税負担の構造を是正し、世界に通用する市場の確立こそを優先すべきと考えます。あわせて、国民・勤労者が安心して暮らせるよう、失業に対する万全の措置、実効ある教育・訓練制度によって個人の自立を支援し、「セーフティーネット」を充実すべきと考えます。にもかかわらず、平成11年度予算は構造改革を後退させ、一過性のばらまき景気対策をちりばめています。
政府は、個人所得税、法人諸税等の減税の実施をようやく決めましたが、遅きに失したと言わざるを得ません。所得税減税の大半が定率減税であり恒久減税等の抜本改革を見送ったことは、十分な消費刺激や国民の不安解消につながるものではありません。
民主党は、国民の将来不安解消につながる税制の抜本的な構造改革をできる限り前倒しで実現するという観点こそが重要であると考えております。個人所得課税については、全ての層を対象にした恒久減税を実現すべきであり、その具体策として、所得税率の一律2割引き下げによる累進構造の緩和、最低税率の適用範囲の拡大を図り、納税者番号制度と総合課税化への道筋を明らかにする対案を提出しております。民主党の提案こそが消費拡大にも、勤労者の生活向上にも最良の対策であると確信いたします。
 政府予算における公共事業には多くの問題点があります。5,000億円の公共事業予備費は使途不明金であり、財政民主主義の根幹を否定するものであり削除すべきと考えます。公共事業費は上積みされましたが、大胆な配分見直しに手がつかず旧来型の事業が大半となりました。
 民主党の組み替え動議が求めているように、ダム、臨海開発、ハコモノなどの土木型を中心とする無駄な公共事業を大胆に削減し、コスト削減に努めつつ、省庁別・事業別配分を根本から見直して、国民生活向上や新事業創造につながる分野に絞り込むべきだと考えます。
 さらに、地方自治体が自由に社会資本整備に遣える交付金の創設、都市中心部の国有地利用・PFI化や塩漬けの不良債権担保土地の集約など新しいメニューを実施すべきであります。
政府予算に反対の第二の理由は、少子・高齢社会や失業問題に対するセーフティーネットの整備が不十分なことであります。
 現在、国民の公的年金への不信・不安は限りなく高まっています。制度改正のたびに、現役の保険料水準は引き上げられ、逆に給付水準は引き下げられる、これで公的年金を信頼しろと言われても不信感がつのるばかりで、若者を中心に年金離れは一向に解消しません。
こうした不信感を解消するには、高齢化ピークの2050年までを見通し、給付と負担のバランスがとれた制度構築が必要です。そして何よりも重要なことは、公的年金の土台である基礎年金を抜本的に改革することだと考えます。
具体的には、平成11年度改正において基礎年金の国庫負担率を現行1/3から1/2に引き上げ、年金保険料を引き下げることであります。あわせて、消費税収のうち、地方交付税特別会計繰入れ分を除く収入を国民年金特別会計基礎年金勘定に繰り入れ、消費税の基礎年金目的税化を図る制度を早期に創設すべきであります。これにより現役保険料は抑制できますし、未加入や保険料滞納・免除者の増大で崩壊寸前の基礎年金の財政基盤は安定し、国民生活の安心の基礎を確立できると考えます。
さらに、扶養児童に係る扶養控除を廃止して、社会保障制度上の児童手当に代えて、「子育て支援手当」を創設することが不可欠です。
児童手当は、児童の扶養・育成に必要な費用の半分は社会が負担すべきであるという思想に基づいて西欧諸国で定着している制度であり、わが国でも1970年代はじめにスタートしましたが、財政事情等の都合によって縮小を余儀なくされてきました。民主党は、この児童手当に代えて、手厚い「子育て支援手当」を創設することを提言しています。
政府予算は、労働・雇用対策においても、国民の不安解消に十分資するものではありません。失業給付の対象者に一律90日の給付延長を行う、全国延長給付の実施基準の緩和、昨年11月の『緊急経済対策』で政府が公約した「100万人雇用創出」の具体策、育児・介護休業制給付の所得保障の充実などを是非盛り込むべきであります。
政府予算に反対の第三の理由は、かつてない放漫財政におちいり、将来の財政再建に全く見通しが立っていないことであります。
国債発行高は当初予算では最高で31兆円を上回り、国債依存度は37.9%となります。国と地方の債務残高は来年度末で、GDPの1.2倍にあたる600兆円にのぼる見通しです。OECD(経済協力開発機構)の99年予想でも、債務残高ではサミット参加先進国において日本はイタリアと肩を並べ、財政収支ではワーストワンとなっています。このような状態で果たして、来年度は執行できるのでしょうか。国民の多くは近い将来の大増税を懸念しているのではないでしょうか。
国債増発に伴って長期金利が上昇に向かっていますが、設備投資や住宅建設に冷水を浴びせ、景気対策の効果を減殺してしまいます。大蔵省資金運用部が国債買入れの再開に動くなど一時的に長期金利は低下していますが、資金運用部の資金繰りの悪化にも通じる一時凌ぎの措置であり、安定した効果があるとは考えられません。
政府は、何の見通しもなく財政構造改革法の凍結を行いましたが、今後5年間の経済成長見通しと財政展望を明確にし、凍結期間にこれまでの硬直的かつ固定的な手法に変わる新しい財政規律のあり方、財政再建策をとりまとめるべきと考えます。
政府予算に反対の第四の理由は、行政改革や後退し、税金の無駄遣いが根本から是正されていないことであります。
民間企業や家庭では血のにじむようなやりくりが行われているのに、国会・行政の合理化・経費節減は生ぬるいと言わざるを得ません。98年の一人当たり現金給与総額の伸び率は前年に比べてマイナス1・6%であり、納税者が苦しんでいる時に、無駄遣いは1銭も許されないはずであります。
政府が取り組もうとしている中央省庁や特殊法人の再編は看板のすげ替えだけであり、大胆な歳出削減策や地方分権を欠くものであり、真の行革とは程遠い代物です。自民党、自由党は10年間で国家公務員の定員を25%削減することで合意していますが、平成11年度予算には盛り込まれず、2000年度からという悠長なタイムスケジュールが組まれていることは遺憾であります。
特に、政府開発援助については、今まで以上に不透明・不明朗さが増しています。総額300億ドルで金融支援をする「新宮沢構想」や、昨年11月の首脳会談で約束した中国への3900億円の円借款供与など、最近、日本のODAは大盤振る舞いが目立ちます。しかし、巨額の援助をして、感謝され尊敬されているのか、資金の使途に問題ないか、そんな国民の不満が長引く不景気の中で一気に噴出しています。
また、防衛庁調達本部をめぐる背任及び証拠隠滅疑惑に関連して額賀防衛庁長官が辞任し、秋山事務次官以下多数の処分者が出たことは、北朝鮮のテポドン発射以降、東アジア情勢がますます緊迫しているだけに、日本の安全保障にとって憂慮すべき深刻な事態というべきです。1980年代に日本と同様の事例が起きたアメリカの改革では、調達額が大幅に削減されたと報じられるなど、目を見張る改善策が実行されています。平成11年度予算において調達機構・制度の抜本的改善が真になされたのか、政府は不正事件の真相解明も含めて国民に納得のいく説明を行うべきであります。
小渕内閣はこの本会議場におきまして、橋本内閣から小渕内閣に変わるときに実は自由党の方々の支持は得ていないわけでございます。それが予算を編成して、予算を審議する中で自由党の方々を与党に入れて、予算の審議をやってそして予算委員会の採決を終えたということですが、私どもは決してこの予算が日本の景気回復、そして日本社会の構造改革に資さないものであることを、最後にもう一度強く強調しまして、政府予算に反対し、民主党提出の組み替え動議に賛成すべきだと考えます。
以上を持ちまして私の討論を終わります。

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