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1999/02/10
平成11年度予算に対する組み替え要求
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わが国は未曾有の長期不況に陥り、国民は不安な気持ちで毎日を送っている。証券市場は低迷し、金融不安は解消せず、中小企業の倒産が多発している。失業率は上昇し続け、勤労者は雇用不安におののいている。右肩上がりの経済成長、官主導の経済システム、年功序列・終身雇用制度が揺らぎ、日本経済の仕組みそのものが瓦解しつつある。

橋本内閣、これに続く小渕内閣は甘い景気判断を続け、対策を後手後手に回し、不況を加速してきた。自由党が加わった小渕改造内閣も抜本的な政策転換を図ることができず、旧態依然とした平成11年度予算を提出するに至った。

平成11年度予算は、利権誘導を優先したバラマキ手法を取り、将来ビジョンや哲学・理念を欠き、行政改革や経済構造改革を後退させる、景気回復や国民生活建て直しにもつながらない欠陥予算となっている。政府は来年度実質0.5%の経済成長を見込んでいるが、かかる予算では来年度もマイナス成長になる可能性が高く、国内外の期待を裏切るものと断ぜざるを得ない。

公共事業費は上積みされたが、大胆な配分見直しに手がつかず旧来型の事業が大半となった。年金保険料引上げの凍結だけを決め、給付と負担の将来像を明確にする年金制度改革を棚上げしたことは極めて無責任である。

政府は、個人所得税、法人諸税等の約9兆4000億円の減税の実施を決めたが、遅きに失したと言わざるを得ない。所得税減税の大半が定率減税であり恒久減税等の抜本改革を見送ったことは、十分な消費刺激や国民の不安解消につながるものではない。

さらに、平成11年度予算はかつてないほどの放漫財政に陥り、国家破産寸前の状態にまで来ている。国債発行高は当初予算では最高で31兆円を上回り、国債依存度は37・9%となっている。国と地方の債務残高は来年度末で、GDPの1.2倍にあたる600兆円にのぼる見通しであり、先進諸国において最悪の借金大国となっている。国債増発に伴って長期金利が上昇に向かい、景気対策の効果を減殺している。

以上の諸点に鑑みれば、政府予算を原案のまま成立させることは絶対に容認できない。日本経済を早期にプラス成長軌道にのせ、構造改革を断行して国民生活を建て直すために、政府に対して平成11年度予算を徹回し、以下の重点事項に基づいて抜本的に組み替えを行うよう求めるものである。





1.所得税率の一律2割引き下げ(平年度約4兆円)と「子育て支援手当創設・扶養控除の整理」(歳出増と歳入増の差額 平年度約1.5兆円)の創設等

 最高税率の引き下げと定率減税を組み合わせた所得税・個人住民税による減税方式に代えて、所得税の税率を一律2割引き下げて、「10%〜50%」の税率を「8%〜40%」の税率に改め、最低税率のブラケット上限を330万円から400万円まで拡大すること。

 所得税の扶養控除を廃止し(障害者及び70歳以上の老親等除く)、西欧水準並の「子育て支援手当」を創設(児童手当に代え)し、18歳未満(学生等23歳未満)の第1・2子に対して月額1万円、第3子以降に対して2万円を支給すること。


2.基礎年金への国庫負担率引き上げ・年金保険料引下げ(平年度約2.2兆円)と消費税の基礎年金目的税化

 基礎年金国庫負担率を1/3から1/2へ引上げ、保険料を引下げ(国民年金で年間3万6,000円下げ、厚生年金で本人負担分年間2万1,600円下げ)ること。

 消費税収のうち、地方交付税特別会計繰入れ分を除く収入を国民年金特別会計基礎年金勘定に繰り入れることとし、消費税の基礎年金目的税化を図る制度を早期に創設すること。


3.無駄な公共事業の大胆な削減、都市型・生活関連公共事業への重点配分等

 まず、財政民主主義の根幹を否定する使途不明の5,000億円の公共事業予備費を削除すること。

 平成11年度を「公共事業改革中期計画」の元年に位置づけ、ダム、臨海開発、ハコモノなどの土木型を中心とする無駄な公共事業を大胆に削減すること。

 公共事業については、コスト削減に努めつつ、省庁別・事業別配分を根本から見直して、住宅、都市公園、福祉、情報通信、ダイオキシン対策、都市生活関連、新エネルギーなど国民生活向上や新事業創造につながる分野に絞り重点的に取り組むこと。

 都道府県、市町村に補助金を一括交付し、自治体が自由に地域密着型の社会資本整備に取り組める制度を確立すること。自民党の提出した中途半端なPFI法案を実効あるものにつくり直し、都市中心部の国有地利用・PFI化による職住接近の街づくりに資する「緊急事業」、日本版RTCへ塩漬けの不良債権担保土地を集約して利用する「総合事業」を推進すること。


4.再訓練・再教育に重点を置いた雇用対策及び育児・介護対策の充実

 全国延長給付(失業給付の対象者に一律90日の給付延長)の実施基準を緩和し、失業基本給付の受給者数が被保険者と受給資格者数の合計の3.5%(現行4%)を超えた場合に実施すること。

 教育訓練給付制度(雇用保険の被保険者が職業訓練・教育を受講した者に対し20万円を限度に費用の助成を行う制度)が利用しやすいように、受給要件である被保険者期間6ヵ月以上(現行は5年以上)の場合は受給できるようにすること。

 昨年11月の『緊急経済対策』で政府が公約した「100万人雇用創出」の具体策を盛り込むこと。

 育児・介護休業制給付の所得保障を現行の25%(介護休業手当は今年4月より支給開始)から60%に引き上げる等の措置により、仕事と家庭生活の両立を支援すること。


5.ODA(政府開発援助)の厳正化等

 ODA(政府開発援助)は被援助国の自立を支援するとの視点に立って、援助の内容・方法・使途の詳細を明示するとともに、軍事転用に対する監視を強化しつつ、民生向上、環境との調和、民主化促進、市場経済化等に資する援助に重点を置くこと。

 防衛庁調達実施本部不正事件を教訓に防衛装備調達制度の抜本的改革を進めるとともに、抑止力の強化に向けて着実に防衛力の整備を図ること。


6.行財政改革の断行

 今後5年間程度の経済成長見通しと財政展望を明確にし、財革法凍結期間にこれまでの硬直的かつ固定的な手法に変わる新しい財政規律、財政再建策、完全な財金分離策等をとりまとめること。

 無駄な公共事業の削減をはじめ不用不急経費の節約に努め、国債発行を極力抑制すること。

 住民税減税など地方財政に負担をもたらす施策はとりやめ、地方の行財政改革を支援する措置を講じること。

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