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1999/02/09
1999年度地方財政計画及び地方交付税法等の一部を改正する法律案、地方税法の一部を改正する法律案、地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案に関する質問/土肥議員
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民主党 土肥 隆一

 私は、民主党を代表しまして、ただいま議題となりました1999年度地方財政計画及び地方交付税法等の一部を改正する法律案、地方税法の一部を改正する法律案、地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律案に関して、総理及び関係大臣に質問致します。



 財政問題に入る前に二、三、地方分権に関連してお尋ねします。

 「戦争と革命の世紀」といわれたこの百年間は、国家が主役となって覇権を競い、人々に付託された以上の力をふるってきた時代でもありました。一九〇〇年代の最後の年となった本年、欧州では、国家としての代表的な仕事であるはずの通貨発行が国家を超えた共同体、すなわちヨーロッパ連合に委ねられる事業が進んでいます。

 他方、わが国においては、国の権限を縮小・再編し、地域住民の共同体である自治体に分権する改革が進められようとしております。いずれも、ボーダレス化する時代にあって国家の役割と任務を再定義し、国民が平和で豊かな暮らしを実現するために、さまざまな権限の再配分を行うことは避けて通れないのであります。この重大な転換期に、国会に議席をおく私たちの任務は重く、真に分権改革の名に値する制度として仕上げるために、その責任を共有したいと思っているところであります。

さて、小渕総理。橋本前総理が意欲的に検討を指示された公共事業の権限移譲について、関係省庁は地方分権推進委員会のヒアリングにも応じないなど非協力的であったと伝えられています。

 小渕政権になって、分権推進への総理のバックアップがなくなったからだといわれていますが、これは事実でしょうか。総理は、地方分権に熱意をもっておられないのでしょうか。わが国の近現代史を画する改革案にできるかどうか、総理のリーダーシップにかかっていると思うのですが、総理の時代認識と地方分権へのご決意を聞かせてください。



 政府が準備している地方分権推進の整備法案について、事務の定義等が国の関与を強める内容になっているようでありますが、地方分権推進委員会の勧告や地方分権推進計画よりも後退することは許されません。地方への税財源移譲のように、勧告や計画で不十分なところはそれを超えた方策を打ち出すべきですが、まちがっても中央省庁の裁量の余地を拡大するような法案にはしないことをここで確認しておきたいと思います。総理の明確な答弁を求めます。



 自由党を代表して入閣された野田自治大臣にお伺いします。他ならぬ自治大臣のポストに就かれた理由はなんでしょうか。自由党は地方分権を政策の重要な柱に掲げており、地方分権整備法がいよいよ制定されるという局面で、自治大臣の役割は重大であると思いますが、ご決意と覚悟を聞かせてください。



 続いて、地方財政及び税制についてお伺いします。

 1999年度の地方財政の大きな特徴として、地方税の税収が前年にくらべ8.3%も減少したことが挙げられます。これは、地方交付税制度はじまって以来、最大の落ち込みです。そこで、一般財源を確保するため、交付税で手当をしているわけですが、その結果、自主財源の比率がますます低下して財政の歪みは限界に達しているのであります。



 ご承知のように、地方税の減収は、不況と減税対策によってもたらされたものです。わが党はこれまで、緊急経済対策においても構造改革につながる税制改正をすべきだと主張し、個人住民税の減税はすべきではないと訴えてまいりました。地方分権にふさわしい財政構造にするには、自主財源を増やすことが不可欠であり、地方税減税はこれに逆行するからであります。

 今回の地方税法改正案では、低公害車への優遇措置など環境に配慮した改正が盛り込まれるなど評価できる面もありますが、個人住民税の最高税率引下げを始めとした減税策は、地方財政の悪化に拍車をかけるもので、認めるわけにはいきません。



 個人住民税と並んで自治体の基幹的な税である法人事業税については、外形標準課税が長年の懸案となっています。自治体が提供するサービスに応じて、利益のあるなしにかかわらず企業も応分の負担をするのは、企業が社会の一員として必要なことではないでしょうか。

 もちろん、ベンチャー企業への優遇措置など新規の起業家への支援は別途対策を講じるべきだと思います。今回の法人事業税の税率引下げの機会に、外形標準課税に向けた将来の方向性は打ち出すべきではないでしょうか。総理のお考えをお聞きします。



 景気の停滞は、国主導の社会的なセーフティネットが極めて不十分で、機能不全に陥っていることと無関係ではありません。人々が消費を控えているのは将来への不安からであり、景気回復のためにも税財源を地方に移譲し、地域の中にこそセーフティネットを張って福祉、特に介護、医療、教育などの社会サービスがしっかり提供できるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 基礎年金保険料を税法式に移行することとあわせて地域のセーフティネットが機能するようになれば、事業者の社会保障に対する負担が軽減され、先に述べた法人事業税の外形標準課税にも理解が得られるものと考えます。

 これらの点について、総理と自治大臣の見解をお伺いします。



 陳情が要らない財政制度を!私が、地方への税財源移譲を主張するのは、こういう気持ちからでもあります。住民が選んだ首長や地方議員が、時間とカネをかけて東京に出てきて霞が関の官僚諸君に頭を下げなければいならない現状は、どう考えても納得できません。

 小渕総理もそれこそ膨大な量の地方の陳情を多数受けておられると思いますが、どのような感想をお持ちでしょうか。



 自治体関係者が予算の陳情をするのは自主財源が少ないからであり、中央省庁のさじ加減で左右される現状があるからではないですか。総理は、1月21日の本会議で同僚の横路孝弘議員の質問に答えて「地方税財源の充実確保は、地方分権を推進する中で極めて重大な課題」と述べていますが、今求められているのは、どのような税を、どのような配分方法に変えるのか、その具体策に踏み出すことではないでしょうか。



 民主党は現在、「未来への投資」として、自治体に約四兆円規模の財源を交付する法案と税源移譲の法案を提出する準備を進めています。

 地方自治体投資促進法案は、人口割で交付金の額を決め、すべての都道府県、市町村が、少子高齢化や情報化、環境などに対応した事業に、自主的、主体的に取り組めるようにしたものです。

 また、税源移譲法案は、当面、国と地方の税収割合を1:1にすることをめざし、国税である所得税の一部を地方に移譲しようというものです。納税者の負担は変わりません。地方分権にとって財源的な裏付けは不可欠であり、これがなければ分権も絵に描いた餅になってしまいます。地方の首長や議員、住民が創意工夫し、成果も挙げれば、又失敗したら責任をとるという地方財政制度にすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。総理のご所見をお伺いします。



 野田自治大臣、自由党は、公共事業補助金の地方への一括交付金化や所得税、住民税の半減を掲げていますが、地方税財源の確保について大臣としてどのような取り組みをされるのか聞かせてください。



 次に、財源不足についてお尋ねします。

 99年度地方財政計画のもう一つの大きな特徴は、13兆円にも上る巨額の財源不足です。恒久的な減税の影響は地方税が1兆700億円、地方交付税の減少額が1兆5000億円で、これを補てんする措置として、たばこ税の地方への一部移譲、法人税の交付税率引上げ、地方特例交付金の創設など制度改正が図られています。

 従来の減収補てん措置とくらべると、財源の地方移転という点で改善はみられますが、わずかなものであり、10兆3700億円にもなる通常収支不足については従来の手法によるつじつま合せに終わっています。すなわち、交付税特別会計からの借入金、財源対策債の発行などで補てんしているわけです。

 通常収支不足はすでに六年続いており、その額も昨年の二倍以上、交付税総額の五割という前代未聞の数値となっています。地方交付税法第6条の3第2項は、「三年以上連続して交付税総額の一割以上の財源不足を生じた場合、地方行財政の制度改正か交付税率の引上げを行うこと」と解されていますが、今回の措置もまた明らかにこの規定に違反した「改革なき惰性」であり、「後世へのツケ回し」の延長にあります。この法律違反の状態をいつまで続けるのでしょうか。総理及び自治大臣の明快な説明を求めます。



 相次ぐ減税対策と公共事業への動員で、地方財政は破綻の危機に瀕し、東京や大阪、神奈川、愛知など比較的富裕な自治体が財政危機宣言を出すまでに至っております。交付税の不交付団体を含めて地方税減収を補うための地方特例交付金6400億円を交付することにしていますが、そのうち東京都に交付される額は1000億円といわれています。都道府県で唯一の不交付団体である東京都まで一種の財政支援を必要とし、政令指定都市も今年度、ついに不交付団体がゼロになりました。

 3300もの自治体があるなかで、たとえ厳しい経済情勢とはいえ自前で賄えるところがないというのは異様であり、実質上の地方交付税制度の破綻といえるのではないでしょうか。ここまで財政破綻を深刻化させた事態の責任をどう認識しているのか、総理にお伺いします。



 最後に、地方債の問題について伺います。

 先ほども述べましたように、政府の景気対策への付き合いで、地方負担を急増させ、借入金残高は99年度末に176兆円と見込まれています。減税とハコもの重視の公共事業を中心にした景気対策は効を奏することなく、自治体には、国以上に過酷な重荷をもたらしています。その端的な表れが地方債の信認の低下という兆候です。

 地方財政に占める公債費負担が伸びているなか、地方債の利回りが上昇すれば、財政圧迫をいよいよ強めることになります。

 今回の財政計画では、「高金利時代に発行された地方債の繰上げ償還や借り換えを認めよ」というわが党の主張が一部取り入れられた公債費負担対策が盛り込まれており、この点は率直に評価しますが、これは応急措置であります。

 地方債の信認低下を防ぐ手立てを早急に講じる必要があると思うのですが、いかがでしょうか。抜本的な対策はやはり、税財源を移譲して自治体の自主税源を高めることしかありません。さらに、財政投融資改革の中で、資金運用部や公営企業金融公庫が引き受けてきた地方債を今後どうするのか検討を急がなければなりません。

 総理及び自治大臣のお考えを聞かせてください。



 以上、鏤々述べてまいりましたが、地方財政のどの課題を取り上げても、解決策のポイントは税財源の移譲に行き着くのであります。

 小渕総理は、EU諸国のユーロ導入について「世界史に新しいページを刻む偉業」「強固な政治的意思と厳しい構造改革の努力を通じてなし上げられたことにつき、感銘を受けた」と述べておられます。ぜひ、わが国の分権改革においてもこの財源問題を看過することなく、強固な政治的意思を発揮して、人々に感銘を与える偉業を成し遂げていただきたいと申し添えて、私の質問を終わります。

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