トップ > ニュース
ニュース
ニュース
1999/02/04
「平成11年度における公債の発行の特例に関する法律案に対する代表質問/中川議員
記事を印刷する

民主党 中川 正春

 民主党の中川正春です。

 平成11年度における公債の発行の特例に関する法律案について、民主党を代表して、総理大臣、並びに関係大臣に質問します。

 99年度末には、日本の国債残高は、327兆円に達する予定であります。これは、単年度の税収入約50兆円の6倍以上にあたり、将来世代に対して大きく負担を強いるという事は言うまでもありません。また、それ以上に、日本の貨幣「円」に対する信頼と国家そのものの権威にまでひびが入る可能性をふくんできました。多くの国民は、来年度の予算を称して、「破れかぶれ予算」、別名「世紀末予算」とよびます。



 こうした大きなリスクを背負いながら、現在審議を進めている予算でありますが、まず最初に質問しなければならないのは、深刻な景気の回復に対して、この予算がどこまで本当に効き目があるのかということであります。国民の多くは、今回の予算もまた、一時的な麻薬効果でしかないといいます。

 つまり、構造改革の視点に欠けており、相変わらずのバラマキ型、一部の業界への利誘導型予算の編成がくりひろげられているのであります。中には、改革を先送りするような逆効果の予算付けも目につき、本当の景気回復には、つながらないことがはっきりしてきました。後には、赤字国債の増発だけが残り、それがまた国民に不安感を与えるという、景気に対する国民心理の悪循環を起こしているのであります。



 政府は、ここ数年来、同じあやまちを何回も繰り返してきました。バブル経済崩壊後、8度にわたり、事業規模で合計105兆円を超える経済対策を講じてきたのであります。過去をふりかえれば、日本の公債残高が100兆円から200兆円に達するまでに11年を要しました。しかし、200兆円を超えて、300 兆円に達するまでは、わずか5年しか、かかっていません。

 こうした、異常ともいえる財政出動にもかかわらず、最終的に97年以降の経済成長率は3年連続のマイナスとなり、政府の景気対策は、全くの無駄遣いに終わっているのであります。こうした、厳しい現実にもかかわらず、いまだ自民党政権の中身も、従って、その予算の本質もなんら変わっていないということが、日本の危機的状況の根本原因であります。

 国民の切実な声を代表して、あらためて、小渕総理にお尋ねします。根本的に予算の組み替えをする意思は、ありませんか。同時に、ここまで膨れ上がった、債務をどのように返済していくのか、国民の不安を解消する意味でも、明確なビジョンをきかせていただきたいと思います。



 次に、金融関連の60兆円の公的枠組みについてお尋ねします。

 昨年の金融国会で枠組み合意のできた金融関連の60兆円にのぼる公的資金が、いつ、どのような形で、実行され、具体的な公債となって計上されてくるのかということであります。60兆円の内訳は、資本注入が25兆円、破綻金融機関処理のために18兆円と、後は、預金保護を目的とする17兆円であります。

 まず、資本注入の25兆円枠については、現在の金融再生委員会における議論を踏まえて、それぞれの金融機関がどれくらいの資金投入を希望しており、それに対して、最終どれくらいの資金投入になるのか答えていただきたいと思います。



 次に、破綻金融機関処理の18兆円枠と預金者保護の17兆円の枠についてもここで明らかにしていかなければならないことが幾つかあります。

 まず、預金保険機構が問題であります。

 日本銀行からの借り入れが8兆円を超える額になり、日銀のバランスシ−トをこれ以上悪化させないためには、これの返済がせまられているわけであります。これを前提にして、預金保険機構は、独自に10兆円規模の債券発行を希望していると聞いております。しかし、一方で、大蔵省の金融審議会が、金融機関の要請によって、預金保険料率を引き下げる方向で検討をはじめたということが昨日の新聞報道であきらかになっております。

 さらに、その背後に、2001年3月までが期限となっている預金の全額保護を期間延長してほしいという業界の意向も聞こえてくるのであります。ペイオフは怖いから出来るだけ先のばしをして欲しい。しかし、預金の全額保護にかかるコストは、出来るだけ安くしたい。だから、日銀からの借り入れの巻きかえも含めて、出来るだけ公的資金につけをまわそうという業界にとって、まったく都合のいい力学がここにはたらいているのは、明らかであります。

 こうした最近の一連の議論は、金融業界の自己責任、自助努力の大前提に真っ向から逆行するものであります。安易な公債発行が業界の構造改革を先送りさせる可能性があります。ここで大蔵大臣の意思を改めて確認したいと思うのであります。

 2001年3月までのペイオフ凍結を延期することはないと断言できますか。預金保険料率は、当然それまで、現行のままでいくと確認していいのでしょうか。そして、破綻処理と預金保護の枠35兆円のうち最終的にどれほどが実際使われる見込みなのか見解をきかせていただきたいと思います。



 次に、最近の債券の急落とそれがおよぼす景気回復への悪い影響について、お尋ねします。

 国債の大量増発によって、長期の金利が急騰して、1年半ぶりに2.31%のレベルになりました。また、昨年の11月には、ム−ディ−ズが日本国債をトリプルAからダブルA1に格下げしました。長期金利の上昇はそれぞれの企業に対して、資金調達コストを上げ、収益率を圧迫する形で影響します。

 さらに懸念されるのは、債券価額が下落して、債券の含み損が拡大することにより、破綻に追い込まれる金融機関が出てくる環境をここでも作ってしまうということであります。年度末には、2.7%のレベルまで上昇するだろうという多くのアナリストの予想は、決算期を控えた、企業とって、深刻な状況をつくり出しています。国債の格下げもまた企業の資金調達にマイナスの影響をもたらします。

 現実の債券市場には、いかなる企業の格付も、当該国の格付を超えることは、出来ないという「カントリ−・シ−リング」が存在します。日本の国債の格下げに連動するかたちで、日本企業の社債の格付も低めとなっていくわけであります。

 自動車、電気、金融などの分野で日本の代表的な企業もまた格下げされ、そのためにこれらの資金調達コストが上昇しています。ム−ディ−ズのアナリストは、このまま行けば、日本の国債は、さらなる格下げの懸念もあると示唆していますが、これは、格付機関に言われるまでもなく、国債発行が限界まで来ているという認識と危機感は、我々の中にもはっきりあります。

 そこで、経済企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、こうした不安定な日本の債券の動向とそれが経済に及ぼす影響をどの様に見ているのか所見をきかせていただきたい。

 さらに、純粋に経済専門家として、堺屋長官、あなたは、日本が許容できる国債の発行レベルはどの辺にあると考えますか、この際おたずねしたいと思います。



 私は、ここで政治が的確なメッセ−ジを出さなければいけないと思うのであります。国の将来に関して、ト−タルな財政ビジョンを持ってこそ、時の政権は、国民に対して、本当の責任を果たせるのであります。

 ただの「破れかぶれ予算」は、無責任であります。たとえ、法律では、財革法が凍結になったとしても、小渕総理、総理大臣の口から、改めて、公債発行の限界を明確にすべきであります。さらに、予算編成と行政改革という目の前の課題にたいして、どうして厳しい危機感にたった、構造変革を断行しないのですか。

 国民も市場も、また、アジアの同胞や国際社会も、日本の改革が自・自という新しい政治の枠組みのなかで本当に達成できるのかどうか、厳しく見守っています。

 残念なことに、今、私達の前に出てきている予算案や、行政改革法案の大綱を読むかぎり、時代に深く切り込んで、本当の構造変革を起こそうという小渕総理の政治指導者としての意思が伝わってこないのであります。私達野党の危機感は現在のこの政治の空白にあります。

 国民の不安を唯一克服できるのは、政治が真のリ−ダ−シップを取り戻す時だと信じ、民主党がそれを実現していくようになることをあらためて表明し、私の質問を終わります。

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.