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1999/02/04
経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律案」、「租税特別措置法及び阪神淡路大震災の被災者等に係る国税関連法律の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案」に対する代表質問/末松 義規
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民主党 末松 義規

 民主党の末松義規です。議題となりました三法案につき民主党を代表して総理、大蔵大臣、自治大臣に質問いたします。

 それら法案の中で、法人減税、住宅ローン減税などの問題につきましては、我々民主党が従来から是正を要求し、ほぼそのラインで是正されてきていますので、ここでは所得減税問題を中心に質問いたします。



 ただ、その前に、私がどうしてもお聞きしておきたいのは、小渕総理が、「あるべき日本の姿」として繰り返し胸を張って主張しておられる、「富国有徳」というコンセプトです。施政方針演説においても、小渕総理は内閣の存在のキーコンセプトは富国有徳だと言い切られました。

 小渕内閣の根本哲学である「富国有徳」という言葉は、今後、小渕内閣の隅々にまでしみ渡っていくコンセプトであるだけに無視できません。勿論、昔から政治の根幹をなすと言われている、税制の面でも適用されるでありましょうから、この際、その意味を掘り下げてみたいと思います。



 ご存知のように、明治政府においては富国強兵、つまり官僚国家をつくり、軍事力で列強諸国と勝負するという国策を全面に打ち出していました。小渕総理の富国とは、明治政府の富国と同じものなのでしょうか、また、その内容として、国の経済力、つまりGNPを引き上げるということだけなのでしょうか。

 さらに明治政府の富国強兵という言葉と比べると、今回は、「強兵」が「有徳」に変わっただけです。ということは、表では政府スリム化と言いながら、明治政府の官僚主導の国家経営ということを裏では維持するという決意をあらわしたということでしょうか。「国民中心・市民中心」を掲げてきた民主党の立場からすれば、ここはどうしても富国ではなく「富民」という言葉を選ぶことになるでしょう。まさに、この点にこそ民の力をかかげる民主党と、国家主義を中心とする自民党政治の最大の対立軸がはっきりするのです。小渕総理があえて「富国」にこだわった理由をお聞かせ頂きたいし、率直にいって、小淵総理にとって、クリントン大統領がいったように、People First(国民が先)なのか、または明治政府のように国家が先なのか、どちらが主と従なのか、はっきりと位置づけていただきたいと思います。



 次に、有徳と言う言葉は私も好きな言葉ですが、基本コンセプトの有徳とは一体何なのか、明らかではありません。自分の言葉で述べて頂きたい。そしてそれは、国民に有徳の人々になってもらいたいというメッセージなのか。或いは海外に対し、日本が有徳の国だと思われたいという海外へのメッセージなのか。さらに有徳の「徳がある」という場合の主語は誰なのか。政府なのか、或いは国民なのか。さらに、小渕内閣のキーコンセプトである「有徳」の部分は総理の意向として、意識して本年度予算の中で表現されているのかいないのか。特に、国家統治の基本である税制の中で有徳の思想を具体化していくという指導を行ってきたか、或いは行っていくつもりか。これらにつき、小渕総理の明確な答弁をお願いします。



 具体的に言えば、有徳の考え方にあったNPO活動に対し、実際にわれわれが寄付したいと思っても、米国のような寄付控除システムがないこともあり、NPO育成についてのインセンティヴについては極めて不十分な状況です。

 これからの日本は、総理も有徳という言葉で述べられたように、我々日本人一人一人の個性や長所を十分に開花させながら、心豊かな人生が送れるということが極めて重要になって来ます。そうなると、生活のためにだけ働くのではなく、人生の目的である自己実現・自己創造を行うために、さまざまな活動が行えるシステムづくりを早急に政治がつくっていくべきです。

 税制についても、国家第一主義一点張りではなく、人々の自己創造を助けるような仕組みにすることが望ましいのです。したがって、自分の徳をのばすという点で、自分がよかれと思う活動をしているNPO等に対する活動や寄付金提供については、米国等で行われているような寄付金控除システムが早急になされるべきであると思いますが、小渕総理及び宮沢大蔵大臣の考え方をお尋ねいたします。



 次に、所得税減税についてお聞きします。

 総理は、衆議院本会議で民主党の羽田幹事長の問いに答えて「税負担バランスの中立化や、景気配慮の観点から、課税ベースや課税方式の抜本的見直しを伴わずに行う減税方式としては定率減税が適当」と答弁されました。

 しかしながら、政府が提案している、最高税率のみの引き下げは、納税者ごとの税負担のバランスを歪めるものとなります。例えば、所得税改正後引き下げられた最高限界税率37%が適用されるのはサラリーマン夫婦子供2人のケースでは給与収入約2300万円以上の階層だけで、数にして日本国内ではたった十数万人に過ぎません。それ以下の階層はすべて以前からの同じ限界税率が適用とされます。これは不適当ではありませんか、宮沢大蔵大臣にお伺いします。



 第2に、本当に景気に配慮する決意であるならば、消費性向が相対的に低く、海外での資産活用を行っているといわれる高所得者層に手厚い、最高税率引き下げよりも、むしろ国民の大宗を占める中・低所得者層について税負担等の軽減を図るべきです。

 繰り返し指摘されていますが、政府案ではサラリーマン夫婦子供2人のケースで給与年収793万円以下の世帯、つまり、給与所得者全体の7〜8割を占める国民については、98年の特別減税後よりも負担増になります。これでは大きな不安のある中で、国民が消費拡大に動くはずがありません。宮沢大蔵大臣にお聞きします。

 総理ご自身の言に従っても、景気に配慮した所得税率の緊急是正としては、民主党の提案どおり、各段階の税率を一律に2割ずつ引き下げる方式の方がより適当と思いますがいかがですか。宮沢大蔵大臣にお聞きします。



 次に、民主党提案の「扶養控除見直しと子育て支援手当制度セットの導入」についておうかがいします。

 総理は、先の本会議で制度の違いなどをのべて民主党の提案する「扶養控除見直しとセットでの子育て支援手当の抜本的拡充案」に否定的な答弁をされました。

 扶養控除の成り立ちを見ると、社会保障制度の整備が立ち遅れていた戦前・戦後のわが国において、税制上のあり方としてよりは、むしろ社会政策的配慮から、つまり社会保障制度の代替装置として「扶養家族についての所得控除」が設けられ、拡充されてきたいう歴史があります。

 これは過去についてはやむをえない面があったかもしれませんが、世界有数の経済先進国となった今日、いつまでもこのように税制をいたずらに複雑化する控除制度に対し、社会保障制度の代役を求めることそのものが不適切です。小渕総理ならびに宮沢大蔵大臣にお尋ねします。



 いずれにせよ、今回の減税の一番の問題点は、その場しのぎのバラマキ減税だと言うことです。日本の将来につなげる展望がないのです。財政事情がさらに厳しくなり大幅減税ができにくくなる将来状況を思えば、今ここで将来の構造改革にこの減税を活用していかずにいつ構造改革をやるのでしょうか。

 民主党が主張する構造改革としては、(1)特に課税ベースを広げることを目的に納税者番号制度を入れ、総合課税化を実施していくこと、(2)税制の簡素化を目的に扶養控除を整理し、これらの控除を社会保障政策に切り換えていくこと、(3)中央政府の規模を大幅にスリム化していって、地方主権につなげていくということなどです。こういった構造改革に対してただちに検討すべきと思いますが小渕総理、如何ですか。



 総理はご答弁の中で、国民生活の将来像を示した上で、税制についても抜本的改革案を示すと言われておられますが、はっきりと時期を明示して下さい。まごまごしていると日本経済が危篤状態になってしまいます。また、その抜本改革につきどのような基本イメージをお持ちなのでしょうか。小渕総理と宮沢大蔵大臣にお聞きします。



 次に、自由党を代表する立場から、野田自治大臣にお聞きします。昨年の参議院議員選挙の際、自由党は公約として「所得税と住民税を半分にする」ことを掲げられていました。

 公約は、公党と国民との契約なので極めて大きな重みを持ちます。現在、自民党との連立協議の中で、かつてのこうした主張が消えてしまいました。

 自由党の主張で税制改正について盛り込まれたのは、実質上言葉だけの消費税福祉目的税化、そして課税最低限をさらに引き上げてしまった扶養控除の引き上げぐらいではないでしょうか。これでは自由党が主張してきた「政策本位の自自連立」とは言えないのではありませんか。先の公約の実現は今でも一貫して目指しておられるのでしょうか。

 野田自治大臣の率直なご答弁を求めます。



 最後に、二十一世紀は、二十世紀のように物質的豊かさを競う時代ではなく、私は自立と共生を目指す思いやり社会の中で「自分の存在理由を競う時代」になると思っております。そのような環境作りをリードするのが新しい政治家の役割だと言う事を強調しまして私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

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