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1998/12/04
宮沢蔵相の財政演説に対する質問/参議院本会議 直嶋正行
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民主党・新緑風会 直嶋 正行

 私は、民主党・新緑風会を代表して、宮澤蔵相の財政演説に関連し、総理並びに関係大臣に質問いたします。

(金融問題・景気対策の一体的取り組みの必要性について)

 先の臨時国会はさながら金融国会とも言うべき国会でした。しかし金融問題が貸し渋り等で景気の足かせとなり、一方で景気低迷が不良債権の傷口を広げ、金融機関の体力を弱めるという意味では、景気と金融はまさに表裏の関係であります。
 総理も「不況の環」という言葉で同様の関係を表現されています。そうした認識があるならば、会期を延長してでも先国会で金融対策と併せて、同時に恒久減税を含む本格的な景気対策に取り組むべきではなかったのですか。しかし景気対策については、今臨時国会を待たねばなりませんでした。その間四〇日余、一刻の猶予もない我が国経済にとってけっして短い時間とは言えず、事実、経済は深刻さを増しただけであります。
 しかも最も重要な所得税・法人税減税の具体的姿は今国会では示されておりません。
 先国会の所信表明演説で総理ご自身が減税の意向を表明され、八月はじめに宮沢大蔵大臣が七兆円減税を打ち出すなど早い段階から大枠は決まっていたはずです。準備期間は十分あったはずです。秋から暮れにかけての税調論議を受けて税制改正という従来通りのやり方とスケジュールでやっているだけではないのでしょうか。口では「緊急」とか「非常時」と言いながら実際はいつも通りのペースで、しかも小出しにしかでてこない。こうしたやり方こそが経済不況を深刻なものにしてきた根本的な原因だと思いますがいかがでしょうか。
 総理、本来はこれらの政策を一体的に実施すべきであったと考えますが、なぜ出来なかったのか、その間何に時間を費やしてきたのかご説明ください。
 また経済認識を誤り、後手後手の対策で不況を加速させた前内閣と同じ過ちを小渕内閣も繰り返そうとしているのではありませんか。総理は前内閣のこうした点をどう反省し、自らはどのように考えておられるのかお考えのほどをお聞かせください。

(財政構造改革法について)

 次に、財政構造改革法についてお尋ねします。
 昨年九月二十九日、政府は財政構造改革法を国会に提出、十一月二十八日に参議院で可決成立しました。まさにその審議のさなかに、拓銀や山一証券が破綻し、すでに大不況の芽は出ていたのであります。
 国会でも大議論になりました。しかし政府・与党は野党の反対を押し切ってしゃにむに成立させたのであります。それからわずか一年の間に、改正案、凍結法案を提出するとは、結局財政構造改革法とは何だったのでしょうか。あの大議論の二ヶ月間とその後の一年間は何だったのでしょうか。この日本経済にとって貴重な時間を浪費した責任と、その間に財政構造改革法のもとに執行された緊縮予算が経済を悪化させた責任について、当時外務大臣として内閣の一員であった小渕総理はどのようにお考えでしょうか。
 また度重なる景気対策の結果、今年度末の公債残高は二百九十八兆円になると見込まれています。財政構造改革で公債残高を減らすはずが、逆に増やしてしまい益々財政を悪化させ、そればかりか大手格付け会社が日本の国債の格付けを引き下げたことに代表されるように、国家信用を失墜させた責任は極めて重大であります。
 経済を落ち込ませ、財政を悪化させ、国家信用を失墜させた自民党政権の責任をどうとるのか総理の明快なご答弁を求めます。

(今後の公共投資と地方財政のあり方について)

 次に公共投資と地方財政のあり方についておたずねします。
 先の一次補正予算で追加された社会資本整備事業は、十月末で契約率が二五%と、円滑に消化できていません。その上にさらに今回の対策を追加しても、どこまで消化出来るかは疑問であり、年度内の実施は相当厳しいと考えられます。
 その最大の原因は地方財政の危機的状況にあります。今回の経済対策における地方負担分は全て地方債で負担するとのことですが、公債費負担比率が警戒ラインとされる一五%を超えている地方公共団体が全体の五六%という異常な状況です。さらに地方債の発行を強いる今回の対策は、自治体を倒産に追い込みかねません。
 こうした地方財政の現状を考えると、政府が期待する二・三%の成長率押し上げ効果は絵に描いた餅に終わるのではないかと懸念します。景気浮揚のためには事業を推進しなければならず、かといってごり押しすると地方財政を圧迫するという二律背反に地方は苦しんでいるのであります。
 こうした地方のジレンマを抜本的に解消するためには、民主党が主張しているように、大胆に地方に権限と財源を委譲することが不可欠と考えますが、総理並びに自治大臣のお考えを伺います。

(二一世紀型社会資本整備の具体的内容について)

 次に第三次補正予算が今回の緊急経済対策をどこまで体現しているのかについて伺います。
 総理は緊急経済対策の柱の第一に二一世紀先導プロジェクトを挙げておられますが、今回の補正予算は総理の強調される、省庁の枠組みにとらわれることなく編成された未来を先取りする予算と本当に言えるのでしょうか。
 今回の補正予算もスタートは省庁ごとの予算要望だったと聞いています。こうした手法で出来た予算は、従来型の省庁縦割り予算とどこが違うのですか。横断的な調整があったとすればどの部分で、総理はどのようなリーダーシップを発揮されたのかお伺いいたします。
 また情報通信や福祉、環境といった分野に予算を重点的に配分されたとのことですが、例えば福祉・医療・教育特別対策費の中に、漁港整備事業費があります。これは漁港内の段差をなくすことで高齢者や身障者に優しいバリアフリーの環境を整備する事業等と聞いています。しかし事業自体は紛れもない従来型の事業であり、バリアフリーは漁港整備の中で当然配慮されるべきことで、わざわざ福祉事業と位置づけるまでもないと言えないでしょうか。
 このような看板の掛け替えが多くあります。総理のご認識を伺います。

(雇用対策について)

 次に雇用対策について伺います。緊急経済対策のどこにも書いていませんが、最大の雇用対策は、公共事業投資による建設業中心の雇用確保策ではないでしょうか。しかしこれは従来の雇用構造を温存するものであり、この構造を変えない限り景気対策の切れ目は雇用の切れ目となります。一刻を争う雇用情勢の悪化にもかかわらず緊急経済対策では雇用創設を目指す「産業再生計画」は項目のみで具体化を明年に先送りしています。公共事業による一時的な雇用創出が計画の先送りに猶予を与えるのなら、構造改革にはむしろマイナスと考えますが総理のご所見をお聞きいたします。
 また医療・介護をはじめとする社会保障分野は今後益々拡大していくことが予想され、雇用の受け皿として最も有望な分野の一つであります。
 戦後最悪の雇用情勢を本当に深刻に受け止めるなら、また介護保険制度導入に向けマンパワーの不足が指摘されていることを考え合わせるなら、本補正でも対策が採られて当然であります。しかし、今回の補正予算でも施設の建設計画はあっても、マンパワーについては何も触れていません。これでは社会保障の側面からは、せっかくのハードが十分機能しないという問題が生じ、雇用の側面からもせっかくの受け皿を生かし切れないこととなり、二重の意味で問題と言えます。
 社会保障分野を雇用の受け皿として活用するためのソフト対策にもっと目を向けるべきと考えます。
この点についてどのように考えておられるのか厚生大臣にお聞きします。
 
(税制問題について)

 次に税制問題についておたずねします。
 大蔵大臣のご説明では、つまるところ個人所得課税は形を変えた特別減税にすぎないと言わざるを得ません。政府の対策からは、減税によって一体何をしようとしているのかが見えてきません。今なぜ税制改革が必要かといえば、国民の負担を軽減し、活力ある経済活動へのインセンティブを与えるためです。そのためにはすべての所得層を対象に、とりわけ中堅所得層に厚く恒久減税を実施する必要があると考えますが大蔵大臣の見解をお聞かせください。
 また減税の実施時期について、現時点で具体案が提示されていない状況では、特に法人税減税は政府の日本経済再生の道筋で言う「回復軌道に乗せる平成一二年」になってしまいます。回復軌道に乗ってからでは遅いのであって、企業は今年、来年をいかに乗り切るかということが迫られているのです。これでは期待感だけ持たせて結局何もしないのと同じであります。減税の実施時期についてどのように考えておられるのか、併せて大蔵大臣にお聞きします。

(将来ビジョンについて)

 今回の緊急経済対策の最大の問題点は、将来ビジョンが欠けている点であります。
現在の個人消費の低迷は、国民が将来に対して明確な見通しをもてないからであります。そのような状態でいくら減税しても国民の財布の紐は緩みません。
 少子高齢社会を前に、医療・年金等の将来ビジョンを国民に明確に示し、不安を取り除く事こそ最大の景気対策のはずであるのに、なぜ緊急経済対策には盛り込まれなかったのですか。
 政府が現在取り組んでいる内容も、年金については抜本対策にはほど遠く、医療改革の検討も遅れています。政府として緊急経済対策の一つとして明確に位置づけ、
具体的な社会保障のビジョンを国民に示すべきと考えますが総理のご所見を伺います。

(結び) 

 最後に、これまで繰り返し強調してきたように、今求められるのは時間との競争であります。我が国の経済は四・四半期連続してマイナス成長を続けており放置しておけば益々悪化の度を深めていきます。何も決めない、何も実行しない、全てを先送りするといった状況は許されません。
 そうした認識に欠け、様々なしがらみで身動き出来ないような政権であれば即刻退陣し、総選挙を行うべきであると申し上げて私の質問を終わります。

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