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1998/12/04
宮沢蔵相の財政演説に対する質問
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民主党  玉置 一弥

 私は、民主党を代表して、宮澤大蔵大臣の財政演説に関連し、総理並びに関係大臣に質問いたします。

 昨年来の景気低迷に対する政府の対応は財政構造改革法の成立を強行し、平成十年度予算は緊縮財政型予算でスタートするなど、景気に対する現状認識の甘さから、まさに政策の失敗の上塗りで、国内景気をますます悪化させてしまいました。また、バブル崩壊の原因をつくったのも政府の政策判断のミスですが、それ以降に発生した不良債権問題を放置し、低金利政策でき長らえようとした結果、今日の金融機関の経営体質悪化から一部金融機関の破綻・金融不安となっています。
 今、私達政治家が国内外のどんな会合に出ても、金融不安解消と景気回復に話しが集中していて、政府の景気対応の遅れが指摘され、信用もどんどん低下している状況です。

 そこで、まず政府の政策の失敗の責任の所在とその取り方について総理にお伺いします。
本年七月の参議院選挙で自民党が国民の批判を受け敗北し、橋本政権から小渕政権へと変わったことは橋本前総理が責任を取られたのはわかりますが、自民党政権の中でのタライまわしとしか国民には映らず、責任の取り方であり、政府・自民党としての責任はどのような形であらわされるのか。明確にお答え願います。

 緊急経済対策についてお伺いします。
 政府は、十一月十六日に事業規模約二十四兆円の緊急経済対策を発表し、これによってGDPを二.三%押し上げ、平成十一年度はプラス成長が実現するとしていますが、従来型の公共事業が主体で、個人消費や民間の設備投資拡大に繋がるような内容にはなっていません。また、今回の補正予算には私達民主党と他の友党が揃って要求していた所得税・法人税の減税が含まれておらず、国民の期待に応えたものではありません。

総理・大蔵大臣にお伺いします。
今回の補正予算における公共投資八.一兆円、住宅投資一.二兆円、貸し渋り対策五.九兆円による経済効果としてGDPをそれぞれどの程度押し上げるのか。
また、減税を平成十一年に先送りしていますが、国民の消費マインドに影響し、実施されても効果が薄れると思うが、どうお考えかお答え下さい。
また減税の実施の規模と期日を明確にお答え下さい。

本年だけでも数回にのぼる経済・金融対策を実施されていますが投下された金額
とその効果についてお答え下さい。

(新規事業活性化策について)
 次に、新規事業活性化策についておたずねします。
 今、日本社会は未曽有の雇用不安に直面しており、新しい付加価値が創造され、雇用が創出されるための対策が不可欠であります。中長期的に新規事業、ベンチャー企業育成策に取り組むことが不可欠ですが、廃業率が開業率を上回る現状においては、新規事業だけで必要な雇用を確保することは困難であります。即効性のある景気対策として、過剰設備、過剰雇用に悩む製造業を念頭に置いて、既存技術や労働力の新規分野への進出を促す政策を集中的に実施すべきだと考えます。
 今回政府が提出した「新事業創出促進法案」において、既存企業の分社化に対応した産業基盤整備基金の債務保証制度の創設などが盛り込まれていますが、こうした措置を一層拡充すべきであります。
 さらに、中小企業新分野進出等円滑化法、特定事業者事業革新円滑化法を抜本的に強化して、関連する融資、補助金、税制措置等を充実することが不可欠と考えます。また、M&Aによる中堅・中小企業の新分野進出を促進して、廃業・清算を回避し、他社に経営や雇用維持を引き継がせる施策も重要であります。
 以上の提案にどう政府は応えるのか、総理の御所見をお聞かせ下さい。

(金融ビッグバン後のわが国金融市場のビジョンと現状について)
 次に、金融ビッグバン後のわが国金融市場のビジョンについて、おたずねします。
今月から、いわゆる金融ビッグバン法が施行されました。銀行による投資信託の窓口販売が解禁になるなど、千二百兆円ともいわれる個人金融資産をめぐって、外資系も含め金融機関による大競争が始まります。しかしながら、わが国の金融機関は、未だに不良債権の重荷から逃れられず、しかもその重荷はますます重くなるばかりであります。公的資金を注入してまで金融機関を支えなければならない状況の中で、今までの不動産担保でしか融資できず、借り手や投資先の将来性・収益力・技術力等の分析・評価も出来なかった国内の金融機関が対外的に信用度を落とした状況で、重荷のない外資系金融機関と金利の競争も含め、正面から勝負ができるのか、はなはだ疑問であります。金融ビッグバンに方針の変更があるのか、今後のわが国の金融市場がどのように変化すると考えているのか、総理および大蔵大臣のご認識と判断を御聞かせください。

(今後の公共投資のあり方について)
 次に公共投資のあり方についておたずねします。
 政府が策定した「緊急経済対策」の社会資本整備事業は四月の総合経済対策と同じ規模でありますが、地方の財政状況は危機的であり、この四月分の事業が現在でも円滑に消化できていません。一次補正予算で追加された分は、十月末で契約率が二五%という有様です。
このような未消化の最大の理由は地方財政の危機的状況にあります。最近相次いで「財政危機宣言」を行った東京、大阪、愛知、神奈川の四都府県だけでわが国の行政投資の四分の一を占めます。

地方財政は過去五年間毎年七兆円前後と大幅な財源不足が続いています。
 平成十年度は、特別減税分七千六百億円の減収が上積みされる状況であります。
 バブル崩壊以後数次にわたって実施された景気対策の一環としての公共事業の財源を補うために、近年地方債が大幅に増発されたり、地方交付税特例会計からの借入れなどで、平成十年度末で借入金合計は百六十兆円に達する見込みです。
 また今回の経済対策における一般公共事業の地方負担分はすべて地方債で負担するということでありますが、既に公債費負担比率が警戒ラインである十五%を超えている団体が全体の五十六%、千八百四十七団体という異常な状況であり、これ以上地方に地方債の発行を強いることは、自治体を強制的に倒産させる羽目になりかねません。
 政府として景気対策の地方財政負担を支援するために、消費税財源の配布を現行地方財政分一%相当を二%相当に引き上げることや、特例交付金の上積みを考えるべきと思いますが、どうお考えか。また、今のままの地方財源で今回の経済対策が迅速に実施できるとお思いか、大蔵大臣・自治大臣のご所見をお伺い致します。

(雇用問題について)
 次に、雇用問題についておたずねします。
 雇用不安の深刻化に早急に歯止めをかけ、大胆な雇用創出策を実施することは、景気対策のもっとも重要な柱の一つであります。まず、総理から、今回の「百万人雇用創出策」の具体的積算根拠をお示しいただきたいと思います。
雇用保険の失業給付積立金は、この三年ほどの間の雇用情勢の悪化によって急速に取り崩されておりますが、一方、過去の状況から平成五年度以降は保険料軽減措置が実施され、本年度からは国庫負担率の切り下げ措置も行われております。雇用情勢が戦後最悪の事態を迎えている現在のような時のためにこそ、積立金はあるのではありませんか。景気回復後に保険料軽減措置等を見直し、財源安定化を図るという方針を明確にした上で、今は何よりも雇用不安解消のために積立金を使い切る覚悟で思い切った施策を講じることが必要と考えます。総理ならびに労働大臣のご所見をお聞かせ下さい。不況および産業構造変革に対応するためには、地域間・産業間・企業間での労働力需給調整機能を強化し、情報収集とともに雇用創出・労働移動が円滑に行われるよう支援する必要があります。
政府関係機関と各産業の労使ならびに地方自治体との連携をどの様にお考えか総理ならびに労働大臣・自治大臣にお伺いします。

(減税と社会保障、少子化対策等について)
 次に、税制問題についておたずねします。
 民主党は、活力ある経済活動へのインセンティブを与えるために、すべての課税所得層を対象に、所得税率を一律に二割程度引き下げるとともに、中所得層の負担緩和を考慮して最低税率区分の上限を現行の課税所得三百三十万円から四百万円に引き上げることを提案しております。その際には、いうまでもなく、納税者番号制度の導入による所得税の総合課税化について、きちんと実施の方向と時期を明確にすることが不可欠の大前提であります。また、地方財政破綻を招く住民税減税については反対であり、当面の減税は基本的に国税の範囲内で国の負担によって行うべきであると主張してまいりました。
 
 民主党は、所得税減税と同時に、所得税の扶養控除の見直しとセットで児童手当を抜本的に拡充した「子ども手当」を創設すること、さらに基礎年金国庫負担率二分の一への引き上げによって保険料をただちに引き下げることを提案いたしております。また、先般の参院選では、育児休業給付を現行の二五%から六〇%に引き上げる提案を行いました。これは、小手先の景気対策よりも、しっかりとした社会的セーフティーネットを確立することで生活不安の解消を図ることが景気対策上も不可欠だと考えるからであります。
 数日ほど前になりますが、自民党内の有志議員の皆さんも、民主党の主張に共鳴してか、少子化対策として育児休業給付の引き上げや児童手当の対象年齢拡充などに取り組むとのお考えをまとめられたようです。税制だけでなく、こうした社会保障や雇用政策上の措置とのパッケージで将来不安解消のビジョンを示すことがきわめて重要だと考えますが、総理のご所見をお聞かせください。また、政府がこれまで繰り返し答弁していることに関連し、子育ての全期間を通じて、三歳未満児の経済的負担が一番大きいという実態認識の具体的根拠、英独仏など欧州諸国における児童手当の対象年齢・給付額の水準とわが国の制度との比較についてご説明下さい。

(財政構造改革法の凍結について)
 冒頭に述べたように、昨年十一月、大型金融機関の破綻が続く中で時の橋本内閣は財政構造改革法の成立を強行しました。
 その後も野党は景気下降の状況の中で政府の政策の転換を迫り、財革法を凍結し、景気対策の拡充と財政再建へのビジョンを明確にするよう政府に要求してまいりました。
なぜ、景気が悪くなってから財革法なのか、今年の通常国会冒頭から財革法凍結が野党統一した要求であったのに何故、一年も引っ張ってきたのか。
 財革法実施のために福祉や社会保障関係の費用まで削減されてしまいましたが、今回の補正予算に復活された様子もありません。これらの費用はこれからどう扱われるのか。
 また、金融不安と景気対策のために膨大な費用が投下され、すべて公債として将来の負担となりますが、将来の国民の税・社会保障等の負担率はどのように変化し、それぞれ何%位が、わが国にとって上限なのか、総理・大蔵大臣にお伺い致します。

 最後に今は、わが国の危機的状況であることを民主党はじめ野党の議員も十分認識し、政府・与党に対して積極的な提言も行い、審議については迅速な対応を心得ているところであります。
 政府・自民党も一部の人に頼るだけでなく、素直に野党全体に協力を求めるべき時だと思います。
 以上をもちまして、私の質問とさせていただきます。

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