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1998/11/30
第144国会における小渕内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問
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民主党 菅 直 人

 私は民主党を代表し、小渕総理の所信表明演説に関連し、総理並びに内閣法制局長官に質問いたします。

■小渕内閣の評価について

 質問に先立ちまして、この夏から秋にかけての豪雨や台風による災害でお亡くなりになられた方々と御家族や関係者の方々に深く哀悼の意を表明するとともに、被災地の皆様方に心よりお見舞いの言葉を申上げます。民主党は、災害の復旧に向け全力を傾注していく決意であります。

 さて、7月30日、小渕総理を首班とする内閣が発足して今日でちょうど4ヵ月が経ちます。この間、小渕総理は他党との間で2回、重要な合意を取り交わしています。第1回は、先の金融国会といわれた臨時国会で、私との間で行った金融再生法案についての合意です。この時、総理は「僭越ながらリーダーシップを発揮させてもらった」と発言されました。しかし、合意に至るプロセスでは小渕総理の意向は何も伝わってこず、合意直後の訪米中の総理の発言は、合意内容を理解していないとしか思えないものでした。

 第2回は、11月19日に小沢自由党党首と政権樹立に合意したことです。今回の合意も、総理はその意味内容を十分理解されて行われたものなのか、もしそうなら、先の所信表明において連立に関する説明があって当然です。一切言及がないというのはどういうことですか。

金融再生法案の時と同様、官房長官に全てを任されて進められたのだとすれば、小渕総理はリーダーシップのかけらもない指導者で、「人まかせ政権」と言わざるを得ません。総理、反論があるならお聞かせください。

■自自連立について

 そこで先ず、「自自連立」についてお伺いいたします。
 第一に、自民党単独政権から自自連立政権になる場合、政権の基本的性格が大きく変わります。従って、何故自由党と連立を組むのか、その理由をきちんと国民に説明する義務があります。「小渕・小沢政権」、「小渕・沢政権」と揶揄されてはいても、内閣総理大臣は小渕総理、あなたです。この場で国民に分かりやすくご説明願いたい。

 第二に、安全保障についての合意では、「国際連合の総会または安全保障理事会で国連平和活動に関する決議が行われた場合には、国連の要請に従いその活動に参加する」こととしております。

 これは、「国連軍の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されない」という従来の憲法解釈を変更することを意味します。小渕総理、あなたはこのように憲法解釈を変更するのですか、お答え頂きたい。

 そこで、内閣法制局長官にお伺いします。日本国憲法のもとで武力行使を伴う海外派兵に自衛隊の参加が許されるのか、法制局としての見解を求めます。

 第三に、政治・行政改革の合意についてであります。合意書では次の通常国会に向けて、閣僚の数を20人から17人に減らす、国会議員数を衆参ともに50人を目標に削減する、政府委員制度を廃止する、副大臣制度を導入する、ことになっています。私はこれらの点に必ずしも反対ではありません。小渕総理、あなたは本当に次期通常国会で責任を持ってやるという決意なのか、お聞かせ下さい。


■「緊急経済対策」、第三次補正予算について

 次に、「緊急経済対策」及び平成十年度第三次補正予算についてお尋ね致します。
先の臨時国会では金融以外の景気対策は何も講じず、今国会も我が党など野党が開催を要求してはじめて招集を決めるなど、景気対策の遅れが不況に追い打ちをかけていると言わざるを得ません。

 「緊急経済対策」の最大の問題は、景気対策の要である所得税、法人税等の恒久減税が欠落していることであります。これでは大きな効果は期待できるはずがありません。政府は、「向こう一年間の押し上げ効果は実質で2.3%」と試算していますが、多くのシンクタンクはそんな効果は期待できないと予想しております。小渕総理は国内外で恒久減税の実施を約束しており、減税抜きの景気対策は公約違反であります。このような対策で景気を早期に回復させ、わが国の信頼を取り戻せると本気でお考えでしょうか。総理の明快なるご見解を求めます。

 第二の問題は、貸し渋りが全く解消されていないことであります。先の臨時国会では、民主党や自民党の政策新人類の活躍により、自民党内の旧人類の抵抗を押しのけて、民主党案を基礎にした金融再生関連四法が成立しました。しかし、自民党などが成立させた「早期健全化法」は、甘い資産査定で中途半端な資本増強を行うに過ぎず、不良債権処理にも貸し渋り解消にも効果が期待できません。

これではどんなに有効な景気対策を講じても、日本経済の真の再生はあり得ないと考えますが、総理のご所見を伺いたい。

 第三の問題点は、政府がビジョンも見通しもなく財政構造改革法を凍結しようとしていることであります。

 先の通常国会に、民主党をはじめとする野党は、「財革法を2年間停止し、その間に財政構造改革の在り方について見直す」という主旨の法案を提出しました。これを踏みにじっておいて、この期に及んで財革法の凍結法案を提出することは納得できません。橋本内閣の政策の誤りを認めた上で路線転換をするのか、小渕総理に明らかにしていただきたい。

 われわれは、大胆な減税、年金保険料の引下げ、子ども手当の創設、地方・民間主体の社会資本整備を柱とした、国費で20兆円ベースの景気・雇用対策を断行し、景気回復さらには構造改革につなげて日本経済を再生させ、その後財政再建を軌道に乗せるというはっきりしたシナリオを描いております。

 第四の問題は、旧態依然とした公共事業が対策の柱となっていることであります。21世紀型を強調していますが、従来型の公共事業が広くちりばめられており、対象事業が総花的になり、大きな効果は到底望めません。12月4日に提出される補正予算においても、都市型事業への大胆な重点配分は行なわれないと伺っております。
今後の経済成長につながる分野に集中しなければ、一時的な雇用増にはなっても、将来につながる新しい雇用を創出させることは期待できません。

 さらに中央省庁がいくら事業規模の拡大を打ち出しても、実際に多くの事業を行う地方自治体の協力は全く望めません。なぜなら自治体財政は危機的な状況であり、本年4月に政府から押し付けられた事業の消化もままならないのです。実際私は各地で「公共事業にはもうつき合いきれない」、さらには「如何に霞が関を怒らせずに、補助金を返上するかが最大の課題」といった声を聞きました。自治体財政の状況はここまで来ており、各地から公共事業に押しつぶされる悲鳴が上がっています。

 総理は本当に今回の経済対策が地方において円滑に実施されると自信をもって言えるのか、ご答弁をお願いします。

 併せて戦後最大の危機に直面している地方財政について伺います。この危機の最大の問題は、今後は、従来のような税収による地方財政の好転が望めないことです。地方財政が危機から脱却するためには、地方財政構造の抜本的改革が不可欠だと考えます。そこで総理に端的に伺います。総理は地方財政危機の原因と現状をどう認識しているのか、今後税収増が見込めない中でどのような対策をとるのか、特に金利が上昇した場合の影響をどう見込むか、更に地方への財源移譲を何時までに、どの程度の規模で行うのか、ご答弁をお願いします。

 政府が「緊急経済対策」を決めた翌日に、アメリカの大手格付け会社ムーディーズは、日本の国債と外貨建て債務の格付けを最上位の「Aaa」(トリプルエー)から一ランク下げ、「Aa1」(ダブルエーワン)に引き下げました。ムーディーズの国債格付け担当幹部は「政府の対策では景気は好転せず、単に赤字を増やすだけだ」と疑問視しています。

 政府の「緊急経済対策」と財革法凍結法の組み合わせは、経済再建も、財政再建も挫折させるという最悪の結果をもたらすことは明らかです。総理の明快なるご所見を求めます。


■税制問題について

 次に、税制問題についておたずねします。
 政府は、この臨時国会に減税案を提出をせず、通常国会への先送りを決め込みました。

 いったい、最初に方針表明してから4ヶ月経った今もなお内容を具体化できずに、どうして「思い切った施策を果断に決定した」と言えるのか。来年の1〜3月期の景気をどうするかが今後の経済動向にきわめて重要な意味を持っているにもかかわらず、なぜ、実際に1月の給料日から所得減税を実施し、1月決算の企業から法人減税が適用されるようにしないのか。私は、総理の景気に対する判断の恐るべき鈍感さを指摘せざるを得ません。いかがですか、総理。

 民主党は、活力ある経済活動へのインセンティブを与えるために、すべての課税所得層を対象に、所得税率を現行の10ないし50%から8ないし40%に引き下げるとともに、中所得層の負担緩和を考慮して最低税率区分の上限を現行の課税所得330万円から400万円に引き上げることを提案しております。

 その際には、いうまでもなく、納税者番号制度の導入による所得税の総合課税化について、実施の方向と時期を明確にすることが大前提であります。また、地方財政破綻を招く住民税減税については反対であり、当面の減税は基本的に国税の範囲内で国の負担によって行うべきです。

 加えて、民主党は、税率引き下げ等による所得税減税と同時に、所得税の扶養控除の見直しとセットで児童手当を抜本的に拡充した「子ども手当」を創設すること、さらに基礎年金国庫負担率2分の1への引き上げによって保険料をただちに引き下げることを提案いたしております。これは、今年実施したその場限りの4兆円の定額減税をやめることで、来年、とりわけ中・低所得層で負担増が生じることを回避し、しっかりとした社会的セーフティーネットを確立することで生活不安の解消を図ることが景気対策上も不可欠だと考えるからです。

 「子ども手当」は、子育ての経済負担の重い家庭の負担を緩和し、子どもを産み育てやすい社会的環境を整備することを通じて、少子化の進行にも歯止めをかけることを期待しております。具体的には、まず支給対象を現行の児童手当の3歳未満から18歳未満(学生は23歳未満)に引き上げます。給付額・年収制限も倍額に引き上げ、第一子・第二子は一人月額1万円、第三子以降は一人月額2万円を給付し、年収制限はサラリーマンの場合1200万円程度とします。これによって、サラリーマン夫婦で子どもが二人のいわゆる標準世帯に対し、年額24万円の給付となります。扶養控除の見直しと組み合わせることで、所得減税だけでは十分にカバーできない中・低所得層の実質負担を軽減することが可能になると考えます。給付総額は3兆円程度になると試算しておりますが、その財源の大半は、所得税の扶養控除の見直しでまかなえると考えます。

 また、基礎年金保険料の引き下げ幅は、国民年金加入の夫婦で年額7万2千円となります。国民年金保険料は、所得税を払っていない所得層に対しても定額制の負担となっており、所得税や消費税などの税制と比べてきわめて逆進性の強い負担になっています。つまり、これを引き下げることは、定額減税でもカバーできない低所得層も含めた負担軽減の効果を持つと考えます。国庫負担率2分の1への引き上げの財源は約2兆2千億円です。これは消費税率約1%分に相当しますが、消費税を今後福祉目的税に見直すことなどにより、財源の安定化を図るべきと考えます。

 民主党は、景気回復という観点からも、所得税率引き下げによって経済活動の活力を引き出すと同時に、地方財源の安定化を図り、国民生活の安心感を高める社会的セーフティーネットを確立するため、以上述べたような減税と社会保障充実のトータルなパッケージがきわめて重要と考えますが、総理のご見解はいかがでしょう。それとも、総理は、国民の多くが金持ち優遇の制度減税と一時的な定率減税で満足するとお考えなのですか。

 なお、自由党は、消費税率をいったんゼロにした後、福祉目的税に改めた上で毎年段階的に6%まで上げろと主張しています。福祉目的税については、民主党としても真剣に検討しておりますが、そうであればなおのこと、いったんゼロにするというような政策は採るべきではないと考えます。総理は、このようなやり方が本当に国民の理解を得ることができ、景気対策として有効だとお考えでしょうか。

 また、今回政府は「地域振興券」の配布を提案していますが、このような一回限りの措置では、国民の将来不安解消につながるものではありません。7000億円という金額からいっても、景気対策としての効果は乏しいといわざるを得ず、民主党は、今回の景気対策のための政策としては賛成しかねます。世間ではこれを「7000億円の国会対策費」と酷評しています。総理のご所見をお聞かせ下さい


■金融問題について

 金融問題についてお尋ねいたします。
 まず、先の臨時国会において成立した金融再生法の規定に基づき、特別公的管理銀行第一号となった長銀についてお尋ねいたします。やはりと言うべきか、長銀は債務超過でした。そして、ついに長銀は経営破綻しました。破綻後、不良債権の飛ばし等の実態が次々と明るみに出て、長銀が腐り切った銀行であったことが白日のもとに曝されました。小渕総理、あなたは、その長銀は健全な銀行だと言い続け、巨額の税金を投入して救済しようとしました。あなたは完全に判断を誤ったのです。まずは、小渕総理の反省の弁をお聞きいたします。

 長銀の破綻により、今年3月、旧金融危機管理審査委員会(いわゆる佐々波委員会)が税金による引受けを決定した優先株1300億円は、わずか半年余りで紙クズとなりました。佐々波委員長をはじめとする同委員会の委員は、国民に対して巨額の損害を与えたわけであり、これは防衛庁同様国民に対する背任に他なりません。この責任をだれがどのようにとったのか、あるいはこれからとるのか、小渕総理にお尋ねいたします。また、乱脈融資により長銀を破綻に導いた経営者の刑事・民事上の責任は、当然のことながら厳格に追及すべきでありますが、具体的にどのような方策を進めているのかお答え願います。

 政府は、大手銀行は巨額のデリバティブ取引を行なっており、その破綻は金融システムの混乱を招き、日本発の金融恐慌の引き金になるおそれがあると言い続けましたが、長銀が破綻しても、金融再生法を適用して国有化したことにより、混乱は生じませんでした。これは、われわれ民主党がつくった金融再生法が、すぐれた法律であったことを如実に証明するものであります。実際に施行してみての、金融再生法に対する小渕総理の評価をお聞かせください。

 金融再生法は、事実上われわれ野党案を政府・自民党が丸呑みした結果生まれたものです。もう一つの早期健全化法についても民主党案の方がスジが通っているという意見は政府・自民党の中にも相当ありました。しかし結局「二度丸のみをしたら小渕政権は持たない」という政局判断に加え、他の野党の政治的妥協もあって、中途半端な自民党案が成立してしまいました。

 この早期健全化法に沿って、先ごろ、大手18行は、公的資金による資本増強の方針を表明しました。申請額は最大5兆7000億円にのぼる模様です。しかし、政府は、この金額は真に必要な金額の半分に過ぎないとみて、大手銀行に対して申請額の上積みを促しているといいます。つまりは、大手銀行の経営内容は本当はもっと悪いことを政府は知っていて黙認し、もっと公的資金を上積みせよと迫っているわけです。しかし、銀行業界には反省の弁もなく、逆にもっと貸し渋りをするぞと開き直る始末です。貸し渋りに効果のない資本注入では、完全な無駄金です。

 民主党の早期健全化法は、厳しい資産査定と引当てを行ったうえで、金融システム不安を一気に解消するために必要十分な思い切った資本注入を行うというものでした。もちろん、経営者の責任は明確にし、厳しいリストラ努力を義務づけることにより、モラル・ハザードを防ぐことが大前提です。小渕総理、民主党の主張の方が正しかったと思いませんか。今からでも遅くはありません。不良債権処理も貸し渋り解消も不十分な現行の早期健全化法を、民主党の主張通りすぐにでも改正すべきではないですか。小渕総理のご見解をお伺いいたします。


■政治倫理、選挙制度について

 次に、政治腐敗防止に向けた小渕総理の決意についてお伺いします。
 この間、政治家及び官僚の不祥事、汚職事件が相次ぎ、代表質問のたびに新たな事件の責任を追及しなければならない事態は、憤りを通り越して、情けない限りであります。

 ご承知のように、通常国会では腐敗防止のための議員立法が数多く提出されましたが、一度も審議されないまま先送りとなっております。国会議員の地位を利用したあっせん利得の処罰や、公務員倫理法などは一刻も早く実現すべきであります。自民党総裁たる総理のご決意を明確にお示し頂きたい。

 今回逮捕された中島洋次郎衆議院議員の事件は、政党助成金の不正使用、虚偽報告、選挙買収など極めて悪質であり、そのうえ、政務次官当時の収賄容疑も明らかになりつつあります。同議員が自民党の比例代表選出であることの責任をどう考えているのか、お聞かせ下さい。

 これも自民党の比例代表選出議員ですが、拡大連座制の適用を受けた野田実衆議院議員の当選無効の判決が最高裁で下されました。拡大連座制は、その導入後、買収事件が大幅に減少するなど成果を挙げておりますが、自民党内では、緩和すべきという意見があると伝えられています。事実とするならば由々しきことです。ここで、腐敗防止策を徹底するご決意と、その具体的方策をお示し頂きたい。

 防衛庁調達本部をめぐる背任及び証拠隠滅疑惑に関連して額賀防衛庁長官が辞任し、秋山事務次官以下責任者の処分が発表されるとともに、疑惑にかかる最終報告が提出されました。本来、総理は、先の国会における参議院の防衛庁長官問責決議を受け、即刻罷免すべきであり、とうとう一院の決議の重みに耐えかね辞任に至ったことは当然のことであります。また、最終報告においても、組識的証拠隠しの実態、過大請求をめぐる疑惑の全容は解明されておらず、贈収賄事件を含めて新たな疑惑も浮上しています。総理、疑惑の全容解明、物資調達制度の抜本改革にどのように取り組まれるのか、お尋ねします。

 最近、一部に中選挙区制回帰を模索する動きが胎動しております。その裏には、政党の存続のため、派閥共存のため、という、党利党略が透けて見えております。総理は、次期総選挙までに現行制度を変えるお気持ちをお持ちなのか、あるいは、現行制度の枠組のもとで総選挙を迎えるお考えなのか、いま国民の前にはっきりとご認識を明らかにして頂きたい。


■外交問題について
 最後に、外交問題について伺います。
 総理、今日帰国された江沢民中国国家主席との首脳会談は、残念ながら失敗だったと言えるのではないでしょうか。例えば米国のワシントン・ポストが「アジアの二大国間の重要問題は未解決のまま残った」と論評し、ニューヨーク・タイムズにいたっては今回の首脳会談が「逆に敵意をあおったようだ」と酷評しているのを総理はどう思われますか。

 今回の日中共同宣言は両国首脳の署名もなく、首脳会談後六時間もたって夜中に発表されました。官邸でのレセプションには私も出席いたしましたが、総理の挨拶は未来のことしか言っていないのに対し、江沢民主席は過去のことに重ねて言及しました。こうした両者の認識の隔たりが日中間に溝として横たわっていたことで共同宣言の取りまとめ作業が難航したのではありませんか。それに対して総理が、自民党の党内事情に拘束されて必要な政治的リーダーシップを全く発揮できず、外務官僚任せにした挙げ句に、日中間の信頼関係を損なったのではないかと大変懸念しています。日中共同宣言取りまとめの経緯と問題点について、総理の明確な答弁を頂きます。

 本来歴史認識は日本自身の問題だと私は考えています。明確な歴史認識を持つことは二国間の基礎的信頼関係を構築するのに必要な大前提です。過去の我が国の誤った行動を素直に認め、反省することは当然で、その上で初めて、日中が現在と未来の課題について率直に発言しあうという、建設的な関係が築かれるのだと私たちは信じています。「相手に言われたから」とか、「自民党内の意見がこうだから」と右往左往していてはいつまでたっても明確な歴史認識を持つことなどできるわけがありません。総理の日中関係の改善と深化にかける決意を、総理の歴史認識と合わせてお聞きします。

 私は、日中交渉において何でも中国の要求する通りに譲歩しろと言っているわけではありません。先週江沢民主席と会談した折、「江主席は日米が中国に対抗しようとしているという中国側の懸念ばかりを表明されるが、昨年の真珠湾における江主席の発言などは、逆に米中が日本に対抗しようとしているかに聞こえる面もある。お互いに一方的な見方をするのはやめよう。」という主旨のことを申し上げておきました。

 近年の中国の姿勢は、ソ連と対立していた冷戦時代とは変わってきています。つまりソ連との対決時代には、日米安保は中国にとってプラスの要素であったのに対し、冷戦が崩壊してソ連の脅威が無くなってからは、台湾問題にとって日米安保が「目の上のタンコブ」と映り始めたと見るべきでしょう。こうした冷静な観点から、日中の関係をいかに良好に保つかを考える必要があります。

 日本外交はよく「戦略がない」と批判されますが、私の見るところ小渕外交は「かわし外交」と呼ぶべきです。「かわし外交」とは、この国をいかに導くか、相手国といかに付き合うか、という外交戦略を欠き、相手国の圧力をかわすことにエネルギーの大半を費やす外交のことです。しかし、外交戦略を欠く故に「かわし外交」は「その場しのぎ外交」となり、結局相手にズルズル押されて終わる宿命にあります。

 総理が得意そうに説明される対ロ外交も、半年毎に首脳会談を開いては領土問題についての提案をお互いが繰り返し、日本側にとっては意味のある前進が見られないままに、ロシアだけが日本から経済協力の実を取っているのではありませんか。下手をすれば小渕総理の対ロシア外交は、半年ごとにロシア大統領と会っては千億円規模の対ロ融資を表明するだけに終わる可能性すらあります。これでは何のための日ロ首脳外交なのか国民は首をひねるばかりです。

 「外交の小渕」を自任される総理は、就任以来わずか四ヶ月の間に米国、中国、ロシア、韓国の国家指導者と首脳会談を持つチャンスに恵まれました。しかし、外交戦略の欠如したままに首脳会談の回数を重ねても国民はしらけるばかりです。総理、四カ国との首脳会談に臨まれた際の日本の外交目的は何だったのですか。 まさか、首脳同士で何度も会ったこととファーストネームで呼び合えるようになったことに意義があった、とだけおっしゃるのではないでしょうね。


■終わりに

 終わりに、自自連立について一言申し添えておきます。自自連立政権の樹立に総理が同意したことは、結果として民意にはかることなく政権の枠組みを変えたことになります。前回の総選挙は、自社さ政権で闘った選挙であり、自自連立政権は国民の信任を得た政権ではありません。しかも、自自連立の合意内容は、冒頭述べましたように税制・安全保障など国政の根本、国家の将来を左右する極めて重い内容です。

 そのため、私たち民主党は、早急に解散・総選挙を行うことを要求するとともに、総選挙後には自自連立政権に取って代わり、政権を担い得る「民主中道」を軸とする政治勢力の結集を必ずや実現することを国民皆様にお約束し、代表質問を終わります。

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