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1998/08/25
金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案についての質問
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民主党  畑 英次郎

 私は民主党を代表し、金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案について、質問をいたします。

 まず法案の質問に入ります前に、今月二十一日に米国がアフガニスタンとスーダンのテロ施設に対してミサイル攻撃を行い、戦争への懸念を世界中に広げている件についてお尋ねいたします。米国はケニアとタンザニアの米国大使館連続爆破テロに対する報復であるとしています。確かにテロは断じて許されるものではありませんが、一方で米国の攻撃も国際法等に照らし果たして正当なものだったかどうかという疑問が残ります。小渕総理に、この問題についてのご見解をお尋ねしたいと思います。

 さて、同じ二十一日、日本長期信用銀行が公的資金の投入を前提として経営合理化計画を発表しました。小渕総理は談話の中で、この話があたかも我が国にとって歓迎すべきものであるということを述べられております。その裏では、二十日に長銀の合併交渉先である住友信託銀行の社長を総理公邸に呼んで圧力をかけ、合併合意を急ぐよう促しています。とんでもないことです。しかも、長銀は今年三月、金融危機管理審査委員会により健全な銀行であるとのお墨付きを得て、一、七六六億円もの税金を投入されたばかりです。そのうえ政府は長銀が破綻したとは一言もいわず、「国民のみなさん、事情はいえないけど、とにかく税金で長銀を救済しましょう。一人あたり五千円程度ですが、それがみなさんにとってもよいことなんですよ」といって、すべてを国民に押し付けようとしているのです。年金生活者の方々などの毎日の生活に多大な打撃を与えながら、異常なまでに長く続いております超低金利政策も、もともと金融機関を救済するためのものといっても過言ではありません。直接間接を問わず、政府は金融機関救済のために国民の税金をおそろしいまでに流用してきました。もちろんこのような形で救済を受けて平然としている長銀の経営者はどう考えているのでしょう。不良債権問題については、なぜか金融機関経営者の声が聞こえてきませんが、自らは何も努力せず、政府の銀行優遇政策を喜んで受けることしか考えていないのでしょうか。まさにモラルハザードの極みです。隠蔽、ゴマカシ、責任逃れ、先送り、そして国民への負担押し付け。政府の対応は、まさに国民に対する背任背信行為に他なりません。

 今回の政府の対応は、我が国に対する海外の見方をも決定的にするでありましょう。日本という国は、政府が自らの失敗をすべて国民に押し付ける国だ。責任逃れをするためには、国民にいくら払わせてもよいと考えている、と。政府は長銀を救済したことが我が国の金融システムにとって好ましいことだと思っているのでしょうが、銀行救済に公的資金を青天井でつぎ込むような国は、海外マーケットの評価が大きく下がり、それがジャパンプレミアムの引き上げを招き、銀行の資金調達コストの増大となって間違いなくはね返ってきます。つまり、我が国の銀行の経営を一段と困難
にさせることは火を見るよりも明らかであります。
 小渕総理にお尋ねしますが、長銀が破綻していないとおっしゃるのなら、長銀に公的資金による救済が必要であると判断した根拠を具体的にお示しいただきたい。一体、国民を犠牲にしてまで長銀を救わねばならないのはなぜなのですか。今まで自民党が銀行業界から多額の政治献金を受けていたからですか。今後さらに別の大手銀行が破綻しても、また国民に負担を押し付けるのですか。総理の明確な答弁を求めます。

 次に、本法案を提出した理由についてお尋ねします。本法案の提案理由の冒頭に、「金融機関の破綻に際して」という文言があります。政府はこれまでに何度も不良債権処理は順調に進んでいると発言し続け、大手二十行は破綻させないと公約していました。昨年十一月、拓銀が都市銀行としては初めて経営破綻をするに至り、その公約はものの見事に破られました。いまこの時点で本法律案を提出するということは、長銀以外にも破綻の危機にある金融機関が存在するということなのですか。よもや今年三月に健全な銀行であると判定され総額一兆八千億円もの公的資金による資本注入を受けた二十一行の中には、長銀以外にも破綻の危機にある銀行があるとは考えたくありませんが、そのような銀行は本当にないのですか。小渕総理の認識を明確にお示しください。
 不良債権の抜本的な処理を行うためには、不良債権の実態について徹底した情報開示を行い、責任を負うべき者を明確にし、問題を先送りしないことが大前提です。米国の連邦準備理事会のグリーンスパン議長も、日本は金融問題への対処で従来の文化や慣行にとらわれない劇的な措置が必要だと述べております。しかし、政府は大手銀行を破綻させる気はまったくないと表明しております。
つまり、実質的に経営破綻状態にある大手銀行に対しては、破綻が表面化しないように税金を投入して救済するのです。今回の長銀のように。そうすれば、だれも責任をとらなくてすむのです。しかし、それは抜本的な解決には到底なりえません。すでに何度も失敗してわかっているはずではありませんか。われわれ民主党は、税金による銀行救済には一貫して反対してきました。そのため、それを可能とする金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律は、直ちに廃止すべきだと考えております。小渕総理のご見解をお聞きします。

 次に、だれが不良債権や破綻の認定をするのかということについてお聞きします。すでに金融監督庁が大手銀行に対する検査を開始しておりますが、金融監督庁が検査を行うことについて、私は重大な問題があると考えております。それは、金融監督庁、いわば金融機関との癒着が次々と明らかになった大蔵省が、不良債権の実態を隠蔽し、問題の先送りを続けてきた当事者であるからです。金融監督庁が不良債権の分類基準を恣意的に操作すれば、不良債権の金額はいくらでも変えることができるからです。同様に破綻の認定基準を恣意的に操作することにより、実質的に破綻しているはずの銀行も「健全である」というお墨付きをもらえることになります。いや金融監督庁と大蔵省がそんなことをするはずがない、といい切れるでしょうか。長銀に対する現在の取り組み姿勢がまさにそうではありませんか。いま最も重要なのは、銀行に対する徹底した検査とその結果の公表であります。検査結果の速やかな公表について、言を左右にする金融監督庁を私共は信頼できるので
しょうか。われわれ民主党は、不良債権問題を今度こそ本当に解決するためには、もはや金融監督庁や大蔵省に任せておけないと考えます。第三者が公正な立場から解決に当たることが必要です。そのような考え方から、民主党は金融再生委員会という新たな機関の設置を提案しています。われわれがいっている金融再生委員会とは、金融監督庁や大蔵省がそっくり移行するものではなく、むしろ過去の大蔵行政を断罪するものなのです。小渕総理にお尋ねしますが、不良債権の分類も銀行とご相談、早期是正措置の発動も銀行とご相談、などという監督官庁の役割を放棄するようなことを平気でいう金融監督庁に、銀行の検査をさせることが適当と考えているのですか。国民の信頼が寄せられているとお考えですか。しかとしたご答弁をお願いいたします。

 次に、大手銀行の破綻に際してブリッジバンクは使えるのかという点についてお尋ねします。もっとも、政府は大手銀行は税金を投入して救済するのだから、ナンセンスな質問ではありますが。政府案では、金融機関が破綻すると、第一段階として金融管理人が破綻銀行を管理することになっております。しかし、この時点では他の金融機関への営業譲渡がうまくいくかどうかわかりませんから、預金者や優良な債務者は自分から他の金融機関へ取引を移したいと考えるでしょう。大手銀行の場合、営業地域は大都市周辺ですから、周囲に他の金融機関はいくらでもあるでしょう。したがって、大手銀行の場合、第一段階で多くの優良な顧客は逃げてしまいます。すると残るのは不良債権や要注意債権ばかりということになりますから、営業譲渡は困難になります。第二段階として公的ブリッジバンクを設立しても、優良な顧客がいない銀行をどこに営業譲渡しようというのでしょうか。したがって、政府のブリッジバンクを大手銀行に適用することは非常に困難です。大手銀行の破綻に適用されないのなら、本法案そのものが金融不安解消には役に立たない法案であるといわざるを得ません。宮沢大蔵大臣のご見解をお伺いします。
 このように、政府案は実際には役に立たない代物であることは明らかです。しかも、経営者等の責任追及があいまいなため、国民の負担も際限なくふくらみます。それに対して、民主党案では、不良債権問題の解決に正面から取り組むための新たな機関、金融再生委員会が中心となります。それに加えて、強力な権限をもつ公的債権回収機構、いわゆる日本版RTCを設立し、かの中坊公平氏が率いる住宅金融債権管理機構のように不良債権の回収を全力で進めます。宮沢大蔵大臣は、ハードランディングならだれでもできる、ソフトランディングをしなければならないんだとおっしゃいますが、政府・自民党のやり方ではそもそも着地ができません。つまり、ネバーランディングです。そして、そのうち燃料が切れて墜落するに違いありません。ここまで不良債権問題が深刻になった以上、着地することが大切です。政府・自民党は、不良債権問題の迅速かつ抜本的な解決を可能にする民主党の金融再生計画を正しく評価し、総理ご自身の決断をもって受け入れ、実行すべきであります。総理のご見解を求めます。

 最後に、今年の二月に成立したばかりの金融機能安定化法をわずか半年足らずで改正しなければならなくなった責任について、自民党総裁としての小渕総理にお尋ねします。あの財政構造改革法も、昨年十一月に成立したばかりでありながら、やはり半年で改正を余儀なくされました。重要な法律が猫の目のようにクルクルと変わる、これはまさに自民党に政権担当能力が欠如していることを如実に証明しています。小渕内閣は、ブリッジバンク法案を成立させることができずに解散に追い込まれるか、われわれ民主党の金融再生法案を全面的に受け入れて総辞職するか、選択肢は二つしかありません。そのどちらを選択するのかをお尋ねして、私の質問を終わらせていただきます。

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