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1998/08/11
総理所信表明演説に対する代表質問
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民主党・新緑風会  本岡昭次

 私は、民主党・新緑風会を代表して、小渕内閣総理大臣の所信表明に対し、総理ならびに関係閣僚に質問いたします。

 質問に先立ち、甚大な被害をもたらした新潟県をはじめ集中豪雨の被災地の皆様に対し心からお見舞い申しあげます。わが党としても最善の努力を尽くしておりますが、政府においても万全の措置を講じられるよう求めます。
 まず総理、ご存知の通り、本院の首班指名は菅直人君であります。これが、直近の国政選挙である参議院選挙において、民意が直接反映した国民の選択であります。
 参議院選挙では、自民党政治が不信任され、自民党は大敗北し、自民党は過半数を21議席も下回りました。与党少数の参議院は小渕政権の命運を握っています。総理どうされますか。
 小渕政権は国民の審判を受けることなく、自民党の政権たらい回しで、登場しました。総理、小渕政権は一日も早く国民の審判を受けるべきです。

 私は、さる雑誌の1994年4月号に掲載されている「政界随一の竜馬が語る『わがバイブル』政治家の志ここにあり」という小渕総理の一文を読みました。
 その最後に「日本の近代の扉を開いてから百余年、今日また、世界国家として新たな『開国』の時期を迎えているといわれる。かって、争乱の幕末を駆け抜けた一人の男の、けれんみのない生きざまが、時代を見据えた雄大な行動力とダイナミズムが時として逡巡する私の心を鼓舞し続けている。その意味で、私の心の中で、『竜馬は永遠に生きている』ということがいえるだろう。」と書いておられます。
 この日本の危機存亡のとき、小渕総理の心の中に竜馬が生きているとして、いま、どのような志を胸に秘めておられますか。その志を「未来へのメッセージ」として、もっと具体的にわかりやすく、総理ご自身の言葉で国民に語ってください。

 総理、あなたは所信表明で、「一両年のうちに我が国の経済を回復軌道に乗せるよう、内閣の命運をかけて全力を尽くす」と断言されました。総理の演説のなかで、一番印象に残った部分であります。これは、おそらく総理ご自身の言葉であろうと思います。
 しかし、かかっているのは「内閣の命運」でなく、「日本の運命」です。「命運をかける」とは、小渕政権の退路を自らが絶つ、不退転の決意を表明したということです。小渕総理のご認識と決意をお聞かせ下さい。
 また、この深刻な経済危機のなかで、悪戦苦闘している国民が期待しているのは、言葉だけでなく、その実行力と指導力であることも強く申上げておきます。

 また総理は、「この内閣を経済再生内閣と位置づける」と明言されました。しかし、その内容は、掛け声とは程遠いものです。
 まず、政府・自民党が進めている「金融再生トータルプラン」は、国民を欺くものに他なりません。宮沢大蔵大臣が表明したように、大手銀行は破綻させないという原則です。不良債権の実態を隠蔽し続け、国民の血税を資本注入という形で投入し、銀行やその経営者、株主等を守ろうとするものです。そこには、銀行業界が自民党に対して、長年にわたり巨額の政治献金をおこなってきた事情すら透けてみえます。
 民主党は、すでに2001年までに不良債権を処理するという内容の「金融再生法案」を準備しています。
 その基本方針は、大蔵省の密室裁量護送船団行政とは決別し、不良債権の情報を徹底的に開示した上で、経営内容が悪い銀行は存続させないというものです。もちろん経営者等の責任は、明確にする一方、預金者、健全な借り手はきちんと保護します。
 併せて、銀行の検査体制強化のために、検査官の大幅な増員は、欠くことのできない課題です。
 金融を真に再生し、我が国の経済社会を活発化する道は総理が勇気を持って、この我々の提案を実施する以外にありません。総理いかがですか。
 いうまでもなく、不良債権を生み出す原因は、1980年代後半のマクロ経済政策の失敗です。プラザ合意後の長期にわたる金融緩和政策により、株式や土地の価格が急騰し、いわゆるバブル経済が発生しました。金融機関は完全にモラルを失い、ひたすら土地融資にカネをつぎ込んだのです。
 1990年になって大蔵省は、「総量規制」を実施しました。しかし、抜け道だらけのこの規制は、金融機関をして「住専」やノンバンクを通じた迂回融資に走らせ、その結果が1996年の「住専」に対する6850億円の公的資金投入です。しかも、政府は、この春に至るまで、不良債権の処理は、順調に進んでいるとの発言を繰り返し、不良債権の実態を隠し続けてきました。
 大蔵省や金融機関による情報の隠蔽と問題の先送り、そして歴代内閣が、大蔵省の報告を鵜呑みにしてきたことが、不良債権問題を深刻にしたのです。
 今回、大蔵大臣に就任した宮沢喜一議員は、1986年7月から88年12月まで、大蔵大臣でしたが、この時期は、まさにバブル経済が発生した時期であります。さらに、宮沢議員は1991年11月から93年8月まで総理大臣でした。今度は、バブル経済が崩壊し、不良債権問題が発生した時期ではありませんか。宮沢議員が、不良債権問題の「A級戦犯」と批判されることは当然のことであります。
 宮沢大蔵大臣は、この不良債権問題を生みだした当事者として、自らの責任をどのように認識しておられますか。
 さらにこの場で、はっきりとさせたいのですが、経営危機が噂されている「長期信用銀行」も含めて、大手銀行で債務超過の銀行は本当にないのですか。大蔵大臣の明確な答弁をお願いします。
 また、政府は、現時点における不良債権の総額が、いくらあると認識しているのですか。あわせてお尋ねします。

 今一つ「国鉄長期債務処理法案」などの政府案は、一度撤回し、与野党で充分協議した上で、国民の納得のいく債務処理案を確立すべきであります。

 総理は、総裁選出馬に際して、所得税の恒久減税など6兆円超の減税を公約としました。これは、民主党がかねてより主張し、先の参議院選挙でも公約とした「6兆円減税」に、総理ご自身が賛同されたものとも、受け取れるのであります。
 しかし、総理は、所信表明演説では「恒久的減税」と軌道修正されました。この「的」とは、一体どういう意味ですか。報道されている「定率減税」という小手先の減税でなく、民主党が求める本格的な恒久減税を実施すべきであります。またもや、国民を欺くのですか、明確にご説明下さい。

 この度、中川農林水産大臣が、「従軍慰安婦問題」の教科書記載に疑問を呈した発言について伺います。
 総理は、その後に発言を撤回したから、問題はないとしております。しかしながら、中川大臣は、発言の趣旨を標榜する議員の会を結成して、代表を務めている議員であり、まさに政府方針に反する確信犯であります。これは、明らかに派閥推薦優先の人事がもたらした弊害です。
 外務大臣を務められた総理は、従来の政府方針、つまり「1993年8月、日本政府として軍の関与を認め謝罪した河野洋平官房長官談話」を熟知しておられながら、中川議員を閣僚に任命しました。小渕内閣は、この政府方針を転換されるのですか。
 また、我が国は今、世界から、とりわけアジア各国から大きな責務とリーダーシップが求められています。秋には、中国の江沢民国家首席の訪日や韓国金大中大統領を迎えて日韓漁業協定改定交渉が控えています。当然のことながら、わが国が、先の戦争の反省を踏まえ、近隣諸国との基礎的な信頼関係の構築をはかることは極めて重要です。
 総理と中川農林水産大臣の歴史認識もふくめ、ご見解をお聞かせください。教科書問題については、有馬文部大臣の見解もお願いします。

 続いて、少子高齢化社会など、国民生活の将来に直結する諸課題を伺います。
 自民党が参議院選挙に敗北したのは、少子高齢化社会など将来に対する、国民の不安に応えきれなかったからであります。
 まず、橋本政権が進めてきた社会保障の構造改革は、財政対策だけに主眼が置かれ、国民は、ますます老後に対する不安を強めました。
 望ましい高齢社会とは、言うまでもなく高齢者が健康な老後を迎え、元気で働く意志と能力がある者は、働けるだけ働ける社会であると思います。そのために、病気や寝たきりにならないようにする予防活動に、もっと力をいれるべきです。
 また、六十歳定年制などは、年齢による人間差別であると考えます。年金問題を考えても、働くことを希望する人が、働けるだけ働けるようになれば、年金の支出も減り、保険収入も増えます。そのことは、個人にとっても財政にとっても、好ましい結果を生むことになると考えますが、総理、いかがですか。
 一方、拍車のかかる少子化傾向に対して、きめ細かい子育て支援の対策が求められています。
 女性の高学歴化の進行を背景に、女性の就業率がますます高まっています。したがって、女性の就業と子育てが両立でき、子育てのコストが高くない社会にすることが、少子化対策の重要な鍵であります。
 そのために、政府は少子化問題対策本部を内閣のもとに設置し、総合的な少子化対策を講じる体制づくりを急ぐべきです。
 そこでは、(1)妊娠から出産までの支援策。(2)保育所など保育制度の改善拡充。(3)労働時間の短縮など労働システムの改革。(4)育児休業時の賃金保障を25%から60%へ拡充。(5)奨学資金制度を改善し、生活費も含め希望者全員に貸与。
 などの諸対策を検討し、早急に実現すべきであります。
 
 なかでも、公的年金制度の改革は、少子高齢社会の最重要課題であります。
 年金改革にあたっては、何よりも公的年金財政の現状、今後の見通しなどについて、国民に対して正直にデータ・情報を公開する必要があります。その上で、国民的議論を行い、将来とも安心でき、高齢期における安定した所得を保障する、公的年金制度を国民合意で実現しなければなりません。

政府は、次期公的年金改革を、どのような視点から改革しようとしているのですか。年金生活者に年金額が減額されるのではないかという不安があります。減額はあり得ないと安心させて上げて下さい。

 また、医療制度や医療保険制度の抜本改革は、2000年度までの、できるだけ早い時期に行うと明言されています。しかし、少なくとも抜本改革までの間は、国民に、さらに医療費負担を求めるべきではありません。総理のご判断をお聞かせ下さい。

 さらに、国民が抱く不安として介護保険問題があります。市町村によって、介護サービスの供給量や質に、違いが生じるのではないかという点であります。新ゴールドプランを完全に達成しても、介護サービスの不足は明らかであるからです。
 私たちは、介護保険制度を、より国民の利用しやすいものに見直しつつ、充実した介護サービスの基盤を築くため、さらに、スーパーゴールドプランの策定を行なうべきだと考えます。
 この介護問題は、障害者問題と深く関っています。
 先日、総理府が発表した市町村障害者基本計画の策定状況を見ると、策定済み市町村が全体の約3割にとどまっているという、非常に残念な結果でありました。
 私は、地方分権、ノーマライゼーションの理念を実現するために、障害者基本法で努力規定となっている障害者計画の策定を、義務化する必要があると思います。

深刻な中小企業問題と雇用対策についてお尋ねします。
 昨年一年間、負債や事業不振などを苦にした自殺者は、全国で17.6%も増加し、過去十年間で最悪となりました。
 このように、深刻な不況が中小企業を苦しめています。景気の回復が絶対条件ですが、まず、金融機関の貸し渋り対策を緊急に講じることです。当面は、政府系金融機関を最大限活用し、信用保証協会の保証枠を拡大して、資金繰りに苦しむ中小企業を救済すべきです。
 また、下請け自立支援策の拡充、商店街活性化策、実効ある事業承継税制の確立、「ものづくり基盤技術振興基本法」などの積極的な施策により、中小企業の活力を取り戻さねばなりません。


 一方、6月の完全失業率は、4.3%になり、1953年の調査開始以来、最悪の記録を更新しています。この雇用不安は、生活不安につながり、消費者心理を冷やして、不況との悪循環を引き起こしています。
 今後も雇用情勢は悪化し、6月で284万人となった完全失業者は、やがて300万人を超えて、完全失業率が5%を突破する恐れが強まっています。雇用情勢がここまで悪化したのは、政府・自民党が経済情勢の判断を誤り、有効な景気・雇用対策を実施してこなかったからであります。
 私たちは、雇用創出効果が期待される、情報通信・環境・福祉医療関連産業などの起業支援と育成、そして職業教育訓練の充実や、自発的教育訓練の助成を提唱しています。総合的で柔軟な雇用政策と、新ゴールドプラン強化を組み合わせることで、介護マンパワーを拡充することもできます。
 私たちは、このように思い切った、雇用政策の実施を求めていますが、政府の中小企業と雇用の対策をお示し下さい。

継続審議となっている労働基準法改正についてお伺いします。
 民主党は、長時間労働を是正するために、時間外・休日・深夜労働に関する男女共通の上限規定や、一年単位の変形労働時間制の導入要件などの修正を求めてきました。
 また、政府案の新しい裁量労働制の導入については、対象業務の範囲や運用に関する規定が曖昧で、労使委員会の機能が公正に機能せず、本人同意のないまま裁量権のないホワイトカラー一般に裁量労働制が拡大する恐れがあることから、裁量労働制のあり方やルールについて、労使で再協議するよう求めてきました。
 来年四月からは改正男女雇用機会均等法が施行され、女子保護規定撤廃後の激変緩和措置の制定が急がれます。労働基準法改正は労働行政の根幹にかかわ重要問題です。政府は、先に述べた修正と意見を受け入れるべきです。

農業政策についてお伺いします。

 ご承知のように、我が国の農業・農村は、過疎・高齢化、後継者不足、自由化の波による相次ぐ離農などにより、極めて先行き不透明な状況にあります。
 今日の状況を生み出した最大の原因は、ひとえに、哲学のない我が国の農政であります。先進各国が、軒並み高い食料自給率を維持しているのに対し、我が国の自給率は、42%と際立って低くなっています。これは、我が国政府が、食料・農業について確固たる見識をもたないまま、画一的な官僚主導農政を、農家に押し付けた結果であります。
 昨年末、新たな農業政策のあり方について、協議を続けてきた政府の「食料・農業・農村基本問題調査会」より、中間報告が出されました。しかし、ここでも農政の位置づけや食料自給率の向上などの重要な部分が明確にされず、結論は先送りされています。
 この際、食料安全保障とも言われる食料・農業政策について、政府の基本認識を明らかにすべきであります。

環境問題について伺います。
 有害な排ガスの排出差し止めと損害賠償を求めた「川崎公害訴訟」で、横浜地裁川崎支部は、8月5日、排ガス単独でも健康に害ありとし、国と首都高速道路公団の損害賠償を命じました。
 道路審議会も、道路づくりの基本を、環境保全に切り替えるように求めています。政府は、これまでの道路行政を見直すべきです。

 これからの環境政策は、市民参加と情報公開を徹底し、市民一人一人が責任をもってライフスタイルを、転換しなければなりません。先国会から継続審議となっています「地球温暖化対策推進法案」についても、基本方針を策定する段階からの市民参加と、企業の温暖化物質排出量についての情報公開を義務づけるべきです。
 現在、国民の関心が非常に高い、ダイオキシンなどの化学物質対策について、事実を隠蔽し、対策を先送りする手法は、まさに薬害エイズと同じであります。あの悲劇から、全く何も学んでいないと言っても、過言ではありません。
 私たちは、環境や人体に重大な影響を及ぼす化学物質の対策について、製造段階でのチェックの強化をはじめ、既に汚染された土壌の除去、住民の血液や母乳中のダイオキシン濃度測定の無料化など、多方面にわたる対策が必要だと考えています。

 阪神・淡路大震災の復興対策についてお伺いします。
 大震災から3年4ヵ月たって、自然災害の被災者に公的支援する画期的な「被災者生活再建支援法」が、先の通常国会で成立しました。阪神・淡路大震災の被災者には、この支援法と同程度の公的支援が兵庫復興基金により実施されています。
 しかし、被災者の生活再建や被災地経済の立て直しは、問題がますます個別化して、見えにくくなくなってきています。仮設住宅の被災者は、4年目の暑い夏を迎えています。住宅や店舗再建の二重ローン返済をはじめ、景気低迷に加えて、地域経済への震災後遺症が、失業、売り上げ減など、経済的、精神的な苦しみとなって、被災者に降りかかっています。なかでも被災したお年寄りや子供たちを苦しめているのが、心的外傷後ストレス障害であり、長期に特別な対策を必要としています。

 さらに、21世紀のモデル都市として被災地を復興させる十年計画の着実な進展をはかるために、被災地自治体の権限や財源の見直しが必要です。
 また、「被災者生活再建支援法」には、検討事項として、住宅の再建がもりこまれています。自然災害列島に住む日本国民の安全システム問題として、早急に「住宅再建共済制度」などの法制化の検討を急ぐべきです。
 
外交・防衛政策について伺います。

 我が国の平和と安全に、重大な影響を与える事態においては、「日米防衛協力のための指針」を実効あるものにする法整備は必要であります。しかし、政府は、周辺事態に必要となる措置の基本計画を、国会に報告するにとどめ、閣議のみで、日本の対応を決定することにしています。
 シビリアン・コントロールの観点や、対米防衛協力が国民生活に与える影響の大きさを考える時、基本計画を国会承認とし、不都合があれば、国会が修正できる仕組みにすべきです。事後承認を認めれば、緊急の場合にも対応できます。

 周辺事態の範囲に関して、クリントン大統領の訪中時に米国が明らかにした「二つの中国を支持しない、台湾の独立を支持しない、台湾の国際機関への加盟を支持しない」という三つの「ノー」政策があります。日米ガイドラインの性格が、どのような影響を受けるか、ご見解をお伺いします。


 先のインド・パキスタンの核実験は、核保有国、とりわけ米ロ二大核保有国による核管理体制が、事実上、行き詰まっていることを明らかにしました。我が国が、米ロ両国をはじめ核保有国に、期限を定めた核弾頭の削減数に合意することを求めるなど、核軍縮を積極的に働きかけるべきではありませんか。

 日米安保条約は、我が国の安全保障体制の基軸であります。しかし、そのことは、我が国に米軍基地が、現状のまま存在し続けるということではありません。現実に米国内にも、在日米軍基地のあり方を見直すべきだとの議論が、増えてきていると聞いております。
 総理は、在日米軍基地の整理・縮小・移転をどのように進めていくのですか。また、橋本前内閣で行き詰まった沖縄普天間基地の移転問題に対する対応をお聞かせください。

 また、日ロ関係の改善が今後の日本外交の重要な課題であることは言を待ちません。表面的には、橋本前総理時代に日ロ関係は前進したように見えますが、その実態は、首脳間の個人的パイプにたより重層的なものになっておりません。スタンドプレーに走ることなく、国民の理解の上にたった様々なレベルにおける信頼関係の確立に努めるべきと考えますが、いかがでしょうか。

 国際人権問題について総理伺います。
 本年は、「世界人権宣言五十周年」の記念すべき年です。
 私は、「二十一世紀を人権の世紀に」という人類共通の願いの実現に、日本が積極的に取り組むことによって、大きな国際貢献を果たすと確信しています。
 しかしながら、我が国が、国連の人権に関連する諸条約23のうち批准したのは、わずか9条約のみです。これでは、世界の経済先進国として恥ずかしい限りです。早期に人権諸条約の完全批准を求めます。
 特に重要な、個人通報を認めた人権の基本文書である「市民的及び政治的権利に関する国際規約に関する第一選択議定書」を、いまだ批准していません。私は、十年来、参議院で毎年のように、政府に批准を求めてきました。世界では、すでに93か国が、アジアでも韓国、フィリピン、モンゴルなど9カ国が批准しています。
 もう我が国が、批准を遅らせる正当な理由はなく、政府の決断あるのみです。


 また、第139国会で成立した「人権擁護施策推進法」による、人権擁護推進審議会では、国の責務として、部落問題をはじめ、さまざまな差別問題の「差別意識の解消に向けた施策のあり方」の議論がされています。答申までに、幅広い国民的論議をするため、政府は審議会に中間報告を求めるべきです。

 今年の1月下旬に来日しました、メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官は、各国政府に国内人権機関の設置を強く働きかけておられます。我が国も、政府から独立した権威ある国内人権機関を設置すべきです。

 さらに、日本国内における身近な国際人権問題として、外国人学校差別問題があります。文部省は、在日の外国人学校卒業生に対して、国立大学への受験資格を与えていません。公立や私学は、すでに半数近い大学が受験資格を与えています。
 国連「児童の権利委員会」からも、改善勧告が日本政府に送付されています。兵庫県の外国人学校協議会は、この問題を国連人権小委員会に来週にも直訴するようです。政府は、人権擁護・差別防止の観点から、早急に解決すべきです。政府の決断をもとめます。
 また、国連人権小委員会に、「戦時における女性への性暴力について」報告を求められていた特別報告者が、旧日本軍の従軍慰安婦問題も取り上げ、日本政府に勧告したことが報道されています。事実関係を明らかにして下さい。

 教育問題について伺います。
 1997年度の文部省の学校基礎調査によると、「不登校」の小中学生は10万5414人となりました。私は、1986年1月、本院の代表質問において、小中学生の「不登校」問題を取り上げ、「この10年間で3.5倍と激増し、3万192人に及んでいる」「この子供たちのうめき声が、総理や文部大臣に聞こえますか」と問題の解決を迫りました。
 それから、小中学生の数が減っているのにもかかわらず、「不登校」は、12年前に比べ、遂に3.5倍の十万人を超してしまったのです。今日、小学校にまで「学級崩壊」がおこり、義務教育制度の崩壊の危機を感じます。
 総理は、所信で「次代を担う子供たちが、逞しく心豊かに成長することは、21世紀を確固たるものにするための基本である」と発言されました。まさにそのとおりです。しかし、その一方で、義務教育崩壊にも繋がる「不登校」に歯止めがかからず、増大の一途をたどっているのです。
 この際、大胆な制度改革の断行が必要です。それは、「三十人学級」の実現です。第六次教職員定数改善計画完了のめどがつき、さらに、小中学校の児童生徒の減少により、教職員定数の自然減が続くという現状にある今こそ、実現すべき最重要の国民的課題であります。
 「三十人学級」実現によって、総理の言う「子供たちが自分の個性を伸ばし、自信を持って人生を歩み、豊かな人間性を育むよう『心の教育』も充実させる」ことを可能にします。
 これこそ、総理の「今日の勇気なくして明日の我が身はない」の問題です。三十人学級実現への勇気ある決断を求めます。

行政改革及び地方分権について伺います。
 地方分権は、時代の要請であり、新しい日本社会を築く基礎であります。私たちは、この改革なくして、活力ある21世紀の日本社会はあり得ないと、地方分権を強く主張しているのです。
 さて政府は、昨年末まで四次にわたる地方分権推進委員会の勧告を受け、本年5月に「地方分権推進計画」を閣議決定しました。
 まず伺たいのは、この「地方分権推進計画」に対する総理ご自身の評価であります。
 確かに、この「地方分権推進計画」にある「機関委任事務の廃止」は、画期的な事であり、地方分権の推進においては不可欠です。しかし、法的な枠組みは変わっても、自治体の事務の細部まで規定する、それぞれの法律はそのままです。実際の行政事務や財源は、まったく移譲されていないのです。
 政府は、昨年末に地方分権推進委員会に対して、行政事務の移譲を盛り込んだ勧告を要請しました。現在「第五次勧告」として、本年秋の勧告に向けて作業が進められています。

「第五次勧告」は、主として公共事業における地方分権が内容です。この勧告の取り扱いと、勧告の内容である公共事業における地方分権について総理のお考えをお聞かせください。 


一方、省庁再編においては、設置法が一つの焦点となっています。橋本前総理は、重ねて2001年に新体制への移行を表明されていましたが、小渕総理はどうされますか。

 また、行政の行動を国民自らが監視するための「情報公開法案」制定も緊急の課題であります。
 橋本前内閣が提出した政府案は、特殊法人を対象にしない、非公開の範囲が広いなど、まさに欠陥法案であります。
 参議院選挙に示された国民の意思は、自民党の官僚主導型政治に対する不信任であり、官僚による情報独占の否定です。野党四会派案の優れている点を、柔軟に取り入れて審議の促進と早期成立をはかることが、国民の期待に応えることだと考えます。

政治倫理問題について伺います。

 私たちは、先の国会に、政治腐敗防止策として、国会議員が、役所に口利きをして報酬を得ることを処罰する、「地位利用収賄罪に関する法案」を提出しています。国会議員の株取引を規制する法案も準備しています。自民党では、あっせん利得をしても、政治資金として届け出れば、罰則を免れるという骨抜きの法案すら、国会提出に至っておりません。
 この際、民主党案を軸に議論を進めることが、国民の批判に応える唯一の道だと考えますが、総理の決意をお聞かせ下さい。

最後に、政治と民主主義について伺います。
 文部省は、敗戦後間もない1948年、軍国少年として育てられた私たちに、文部省著作の教科書「民主主義」を与え、軍国主義から民主主義への変革を迫りました。私たちの世代は、軍国主義と民主主義を学んだ貴重な世代です。
 その教科書には、「民主主義の理想は、人間が人間たるにふさわしい生きがいのある生活を営み、お互いの協力によって経済の繁栄と文化の興隆をはかり、その豊かなみのりを、すべての個人によって平和に分かち合うことのできるような世の中を、築いていくことにある。」とありました。
 私たちは、この五十年、教科書が示した民主主義の理想を求めて、懸命に歩んできました。しかし、日本の社会・経済構造が大きく変化する今、私たちは、政治システムとして「どのような民主主義を選ぶのか」を、改めて問い直す時に来ています。
 私は、私たちが選ぶ民主主義として、まず第一に、官僚主導の政治から、政治家が政策責任を持つ政治へ。第二に、利益誘導型の政治から、国民生活優先の政治へ。第三に、社会・経済構造を集権型から分権型へ。の三点を、民主主義改革の要点として挙げたい思います。

 小渕総理、我が国は、新しい時代、二十一世紀を目前に、大きな改革を迫られています。総理は所信演説で、「鬼手仏心」を信条に、次の時代を築く決意も表明されました。
 何が「鬼手」で、何が「仏心」なのですか。残念ながら、総理の哲学と改革を成し遂げる勇気が全く伝わってきません。言葉の遊びであります。
 果たして総理に、改革への哲学と勇気がおありなのでしょうか。
 私たちは、改革をおこなう勇気なき総理には、ただちに退陣を求めます。総理に、改革の決意を求めて質問を終わります。

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