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1998/08/11
「第143国会における小渕内閣総理大臣所信表明演説」に対する代表質問
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民主党  伊藤 英成

 私は、民主党を代表して、小渕総理の所信表明演説に関連し、総理並びに関係大臣に質問いたします。

◆総理としての自覚を問う

 さる7月30日、小渕総理を首班とする内閣が発足いたしました。本来であれば、新総理に対してお祝いを最初に述べるのが礼儀かもしれませんが、橋本内閣の六大改革の全てが失敗したことに象徴されるように、今日の戦後最大の経済危機を招いた根本原因が政府・自民党の失政にあることを斟酌すると、国民の多くの方々もお祝いという気になれないのではないでしょうか。事実、小渕内閣の支持率はマスコミの世論調査では25%〜30%台前半に低迷しています。また、小渕総理が自民党新総裁に選出された日、英BBC放送は「市場にとって適切な総裁ではない」、ドイツ通信は「国民も日本の金融関係者も外国報道機関もこの人選に納得していない」、フランスのルモンド紙は「カリスマ性のないコンセンサスの男」と報じています。
 まさに小渕総理の評価は、四面楚歌・内憂外患ともいえる惨状にあります。まず、総裁就任早々、このような内外の厳しい声を総理はどう受け止めておられるのか、その見解をお伺いします。

◆小渕内閣の性格と実行力を問う

 先の橋本内閣は、景気は冷えきっているにもかかわらず、「経済は回復基調にある」といって財革法を強行導入し、「桜の咲く頃には景気は回復する」といってデフレ予算を強行し、現在の戦後最悪の経済危機をもたらしました。橋本内閣の状況判断の誤り、官僚主導型の経済運営の誤りが国民に甚大な不幸をもたらしたのです。
 しかるに、小渕総理は、自民党三役人事、組閣人事において相変わらずの国民不在の派閥論理を優先するとともに、大蔵大臣に大蔵省OBの宮澤氏を任命し、さらに特別補佐官に、これまた大蔵省OBの行天氏を登用しています。私どもには、従来の官僚主導型の政策運営スタンスが維持された上に、極めて大蔵省の影響力が強い政権が発足したとみえます。「同じ轍を踏む」とはまさにこのことを言うのでありましょうか。
 また、特に後で指摘します政府の金融不良債権処理案では、破綻の認定基準、破綻認定時の責任処理、第二分類債権の分割基準、これら核心部分はすべて曖昧となっております。実際の運用に当たる大蔵省の裁量権により、我が国には巨大な闇社会が形成され、その当然の帰結として政治の恣意的な介入を招くことは明らかであります。こうした危険性を孕んだ内閣ともみえます。
 このようなな性格をもつ内閣において、そもそも「経済は得意でない」と自ら述べている小渕総理ご自身が、果たして「経済再生内閣」をリードできるのか、御所見をお伺いします。

◆現在の不況を招いた真因を問う

 現在の戦後最悪の危機を迎えている日本経済を立て直すには、金融システムの安定化対策、恒久減税、追加補正予算、財革法の凍結などの「財政出動プログラム」と、社会保障改革や地方分権、官から民への権限委譲などの行政改革、規制撤廃などの「経済構造改革」とのベスト・ミックスを何時、どのようなタイミングで実施するかにかかっております。
 そこでお伺いします。財革法の凍結や恒久的減税を行うというのであれば、その前に先ず、国民の前に現在の戦後最大の経済危機を招いた真因は、政府・自民党の経済情勢判断の誤り、経済・財政・金融政策の誤り、無為・無策にあったことを真摯に認めるべきであります。昨年始め、折角上向き始めた景気は消費税率の引き上げや医療費の自己負担の引き上げで急速に冷え込み、更に追い討ちをかけるように昨年11月、単なる財政一律カット法である財政構造改革法の成立を強行し、景気回復の芽を完全に摘み取りました。しかも、これらの政策は、アジアの経済危機や金融不安が深刻化するなかで打ち出されたのであります。
 また、金融不安は不良債権問題に何ら手をつけなかったことが原因で引き起こされたものでありますが、政府・自民党は金融システムの安定化という大義名分のもと、銀行救済のため国民の血税13兆円を投入するという金融安定化措置法を、われわれ野党の反対を押し切って成立させました。さらに平成十年度当初予算は財革法に縛られたデフレ予算であり、日本経済を一層悪化させることは火を見るより明らかであるにもかかわらず、政府・自民党は「平成十年度予算は最善のもの」と言い続け、そのうえで予算が成立するや否や直ちに16兆円の追加景気対策を発表し、補正予算を組むことを宣言したのであります。その内容は、前総理自らが「愚の骨頂」と認めた特別減税の追加であり、選挙対策のための国土破壊型税金浪費型公共事業です。このようなその場しのぎの政府・自民党の経済・財政・金融政策の失態が現在の戦後最悪の不況・失業率を招き、国際的な信用をも奈落の底へと失墜させてきたことは明白であります。
 小渕総理は自らの内閣を「経済再生内閣」と位置づけるのであれば、先ず昨年から今年にかけて政府・自民党の行ってきた経済・財政・金融政策の誤りを国民の前でお認めになるべきであります。即ち、総理は、所信表明で「国民の声を真摯に受け止め」と述べておられますが、そうであるならば先ず、財革法の導入は誤りであった、我々野党の要求した所得課税・法人税の恒久減税を退けたのは誤りであった、バラ撒き型の公共事業を行ったのは誤りであったと、この場で真摯にお認めになるべきではないでしょうか。総理は、つい先日まで橋本内閣の重要閣僚であり、すなわち橋本内閣の有力な意思決定者の一人であったことを思うと、一層その感を強くします。総理のご所見をお聞かせ下さい。
 次に、宮澤大蔵大臣にお伺いします。大蔵大臣は、バブルの形成期に大蔵大臣を務め、総理としてバブル退治に失敗し、「バブル失政の元祖」と巷間いわれております。また、今日の経済危機の引き金を引いた張本人ともいわれております。宮澤大蔵大臣とは、当時私自身、予算委員会でもこうした問題について厳しく議論したことを想い出します。すべてが宮澤大蔵大臣の責任ではないでしょうが、これから大蔵大臣としてリーダーシップを発揮なさるのであれば、その前に、日本は何故バブルを引き起こしたのか、何故バブル退治・不良債権処理に失敗したのか、国民の前に自らの政策の何が誤りであったのか、しっかりと、充分に説明すべきであります。大蔵大臣の忌憚のない明快なるご説明を求めます。

◆金融安定化対策

 次に、金融問題についてお伺いします。
 不良債権問題に対する政府、とりわけ大蔵省の金融行政を一言でいえば事実を隠すこと、即ち「隠蔽」、解決の「先送り」、「国民への負担押し付け」という言葉に集約されます。政府は、これまでに何度も繰り返し不良債権処理は順調に進んでいると発言してきました。例えば、97年1月22日の本会議において、ときの橋本総理はこう発言されております。「我が国の不良債権問題の緊急かつ象徴的な課題でありました住専問題への取り組みを突破口として、金融機関の不良債権の処理は着実に進んでおります。」また、1997年2月10日の本会議においては、時の三塚大蔵大臣がこういわれました。「20行というメジャーバンクについてはしっかりと支えていくこと、大蔵大臣として当然のこと、自助努力の中でリストラが進み、対応が進んでおることを考えればなおのこと、これを支持するのは当たり前だ、こう思っております。」
 しかし、政府がこのような発言を繰り返したにもかかわらず、三塚元大蔵大臣がいわれたところのメジャーバンクである日債銀と拓銀が、その直後に大きな経営危機に見舞われました。預金者や金融市場、そして株式市場は、だれも政府の発言を信用していなかったということであります。それはなぜか。政府が、これらの銀行の真の経営内容、とりわけ不良債権の実態を完全に隠蔽していたからであります。何故に総理や大蔵大臣の発言と銀行の経営実態の乖離が幾度も繰り返されるのか。まさに大蔵行政の隠蔽工作といっても過言ではありません。このような乖離・矛盾が何故に発生するのか、小渕総理のご所見をお聞かせください。

 それから半年後の11月13日、本会議において橋本前総理はまたこう発言されました。「現在、金融機関は、不良債権の早期処理に取り組んでおり、個々の経営状況はさまざまでありますが、全体の状況は改善しております」。しかし、この四日後、拓銀は都銀としては初めて、経営破綻に至ったのです。
 その後も、松永前大蔵大臣などが「全体としては不良債権の早期処理への取り組みが進められてきており、改善している」と表明してきましたが、こうした政府の現状認識の甘さが、事態を一層深刻にしていることは、ご案内の通りであります。

 以下、政府・自民党の不良債権処理策、いわゆる「金融再生トータルプラン」について、質問をさせていただきます。
 不良債権の抜本的な処理を行うためには、不良債権の実態を全面的に開示し、責任を負うべき者を明確にすることが大前提です。「金融再生トータルプラン」にも、そのような記述は確かにあります。当然のことながら、もし債務超過の銀行があるならば、その銀行は責任をとって清算されるべきと考えます。しかし、宮澤大蔵大臣は、就任直後いち早く大手銀行は破綻させないと発言されました。金融監督庁による検査が終わっておらず、債務超過でないのかどうかもわからない段階で、なぜ大手銀行は破綻させないといい切ったのでしょうか。これは、債務超過かどうかにかかわらず、大手銀行は潰さないから安心してくださいということなのでしょうか。つまり、大手銀行にはいわゆるブリッジバンク方式は適用しないということになりますが、であれば、債務超過の大手銀行に対しては税金を差し上げて、破綻しないように救済しましょうということなのでしょうか。宮澤大蔵大臣の真意を、ここで明確にしていただきたい。

 さて、宮澤大蔵大臣の発言から推察すると、政府が描いているシナリオが見えてきます。すなわち、政府は、大手銀行については税金を投入して救済し、責任も一切とらなくてすむようにする。今年3月に大手銀行21行に対し、1兆8000億円の公的資金を投入したようにです。これらの銀行の中には、長銀のように経営危機が噂されている銀行もあります。もし長銀が破綻すれば、いやもうすでに実質的に破綻して国家管理銀行になっているという説もありますが、長銀に対して投入した1766億円は二度と返ってきません。そのような形で、健全でない銀行に対しても健全だと偽って税金を投入していけば、その銀行の命は数ヵ月は延びるかもしれませんが、それは抜本的な解決には到底なりえません。しかも、だれ一人として責任をとることもなく、責任がないはずの納税者が責任をとらされることになるのです。宮澤大蔵大臣をはじめとする大蔵省・金融監督庁は、そのようなシナリオを考えているとしか思えません。総理のご所見をお聞かせください。
 われわれ民主党は、宮澤大蔵大臣が考えていると思われるような、税金による銀行救済には一貫して反対してきました。そのため、それを可能とする「金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律」は、いますぐ廃止すべきだと考えております。総理のご見解をお聞かせください。

 次に、だれが不良債権や破綻の認定をするのかということについてお聞きします。すでに金融監督庁が大手銀行に対する検査を開始しておりますが、現行の体制のままで金融監督庁が検査を行うことについて、私は重大な問題があると考えております。それは、金融監督庁に対し依然として大きな影響力を及ぼしている大蔵省が、不良債権の実態を隠蔽し、問題の先送りを続けてきた当事者であるからです。
 われわれ民主党は、不良債権問題を今度こそ本当に解決するためには、もはや大蔵省主導の裁量行政に任せておけないと考えます。かれらが問題の当事者であるという事実が厳然としてある限り、第三者が公正な立場から解決に当たることが必要です。そのような考え方から、民主党は、金融監督庁をコントロールし、破綻処理に当たる金融再生委員会という新たな機関の設置を提案しております。
 政府提出のブリッジバンク法案にも新しい機関がいくつか盛り込まれているようですが、根本的な考え方が違うと思っております。われわれの考えについてどう思われるか、総理のご所見をお聞かせください。

 次に、銀行の破綻に対してだれを保護し、だれの責任を明確にすべきかという問題についてお尋ねします。
 当然のことながら、銀行が破綻すると各方面に大きな影響を与えます。そのうち預金者については、2001年3月までは預金を全額保護することになっております。次に、銀行は預金者から集めたおカネを企業や個人に融資するという重要な役割をもっていることから、この金融仲介機能を守ることも、非常に重要であると考えます。そのために政府は破綻した銀行を金融管理人の管理下に置き、あるいはその後公的ブリッジバンクを設立し、「善意かつ健全な債務者」に対する融資を継続するとしていますし、民主党が破綻銀行を場合によっては一時的に公的管理下に置くとしているのも、そのような考えに基づくものです。
 一方、銀行が破綻すると、株主や出資者はその出資の範囲において損失を被る、すなわち株主責任を果たすことになるはずです。さもなくば、税金によって株主まで救済されることになります。政府案で金融管理人が破綻銀行を管理することになった場合、この問題はどう扱われるのですか。また、破綻銀行の経営者や従業員はどう扱われるのかについてもお聞きします。普通の企業が倒産すれば、経営者や従業員は当然職を失います。破綻銀行が金融管理人の管理下に置かれた場合はどうなるのでしょうか。仮に業務を続けるために従業員は解雇しないとしても、いままで通りの給与を支払い続けるのですか。もしそうであれば、税金によって従業員まで救済されることになります。これらの責任を明確にすることが、公的資金投入の大前提であります。総理のお考えをお聞かせください。

 ブリッジバンク法案と同時に、不動産に関連する権利等の調整に関する臨時措置法案が提出されました。これは、不動産関連権利等調整委員会という新たに設置する機関が、不動産に関連する権利について、債権・債務者間の調停・仲裁を行うというものであります。
 非常に素朴な疑問として、我が国には裁判所というれっきとした債権・債務者間の調停・仲裁を行う機関があります。なぜ裁判所がありながら、不動産関連権利等調整委員会などという新たな機関を設置するのか、その理由を総理にお尋ねします。
 また、不動産関連権利等調整委員会の調停・仲裁により、関係当事者が債務の弁済可能性を高める公正かつ妥当で遂行可能な合意を得たときは、銀行が債権放棄をする際に無税償却を認めることとしていますが、公正かつ妥当かどうかの判断は、どういう基準で行うのですか。法人は認めるが個人は認めないとか、大企業は認めるが中小企業は認めないとか、ゼネコンは認めるがそれ以外の業種は認めないとか、どういう基準でそれを決めるのですか。だれにでも認めるわけではないのなら、債務者間の公平という問題はどうなるのですか。総理にお尋ねします。

 政府案については、ざっと考えただけでも以上のような大きな疑問点があります。それに対して、民主党案は、不良債権問題の当事者である大蔵省及び密室裁量護送船団式大蔵行政とはきっぱりと決別し、真に抜本的な不良債権処理、金融大手術をすることを提案しています。国民の前にすべてを明らかにし、責任者にはきちんと責任をとらせ、一部の人間だけが利益を受けるようなやり方は絶対にしない。それが民主党のポリシーであり、政府案とは真っ向から対立するものです。
 国民の一部には、「与野党が国会でいたずらに対立しないで、お互いに協力して早く法案を成立させるべき」との声もあります。しかし、ここで明らかにしておきたいことは、政府案では不良債権の抜本的な処理は決してできないということです。
 政府・自民党こそ、民主党の金融再生計画に素直に耳を傾けるべきであります。総理ならびに宮澤大蔵大臣のご所見を求めます。

◆税制改革

 次に、税制改革についてお尋ねします。
 総理は、総裁選出馬に際して、所得税の恒久減税など6兆円超の減税を公約として掲げました。一見いたしますと我々が先の参院選挙で公約として掲げた「6 兆円減税」とウリふたつの公約です。しかし、私どもは、総理の六兆円減税の内容につきましては、様々な矛盾・疑念を禁じ得ません。
 現在の不況は、循環的不況と構造的不況が同時に発生しており、これを解決し日本経済の自律的成長を実現するには、所得税・法人税の恒久減税を行い官主導から民主導に転換するための経済の構造改革が不可欠と私どもは考えます。このような経済構造改革に対する理念が政府・自民党に欠落しているから、定額減税や定率減税などといった場当たり的、姑息な手法を取りつづけてきたのではないでしょうか。今回、どのような理念のもとに税制改革を行おうとしているのか、小渕総理の明快なるご所見をお伺いします。
 また、小渕総理は、自民党総裁選に際して、国・地方を合わせた所得課税の最高税率を現行の65%から50%に下げるという公約を掲げましたが、総理となった今、これを具体的にどのように実現していこうとお考えなのか、お伺いします。

 次に、所得税減税の具体的な内容ですが、もしも政府が単純に最高税率のブラケットだけを廃止して4段階、最高40%というような改正を行おうと考えているのであれば、やはり「金持ち優遇の所得減税」との批判を浴びることは避けられないでしょう。「中間所得層に重点をおく」という観点から、それぞれのブラケットの延長や一時的な定率減税を組み合わせるということも考えられますが、それでも現在10%のブラケットに収まっている年収700万円台半ばまでのサラリーマン等にとっては、恒久的な減税の恩恵はほとんど生じません。
 所得税減税の具体的内容として、年収700万円台から1000万円ぐらいまでの所得層及びそれ以下の所得層について、それぞれどのように考慮しようとお考えなのか、宮澤大蔵大臣にお伺いします。
 次に、個人住民税ですが、私どもは、これまで、地方分権の観点から、国が地方財源を奪うような住民税減税を行うことには強く反対してまいりました。国・地方の合計最高税率を引き下げるためには、少なくとも地方税収を損なわない形での個人住民税率の単一税率化など改革を進めることが必要であると考えます。もちろん、その際には、低所得層に増税とならないよう、所得税との間での部分的な税源移譲なども含めた調整も不可欠です。個人住民税の今後のあり方について、西田自治大臣のお考えをお聞かせ下さい。

 合わせて課税最低限の問題についてお伺いします。
 現在の平年度の課税最低限361.6万円という水準は、主要先進諸国とくらべて著しく高いことは事実であり、これまでのところ、これを現在以上に引き上げることについては、各党概ね共通して否定的であります。他方、課税最低限の引き下げについても、現在の経済情勢の下ではきわめて困難と見られております。
 しかし、この問題について、留意しなければならないのは、例えば日本よりも課税最低限の低いイギリスやフランスでは、扶養控除がない代わりに日本よりもはるかに充実した児童手当があるということです。課税最低限が約320万円とされるフランスを例にとると、いわゆる標準世帯に対して年額40万円余の児童手当が支給されておりますが、これを日本の所得税の扶養控除に換算すると、課税最低限は実にあと400万円ほど上昇する計算になります。課税最低限が約 106万円ときわめて低いとされるイギリスも同様です。わが国でも児童手当制度はありますが、支給対象年齢や金額の点で、まったく比較になりません。
 以上の事実を逆の面から見れば、わが国でも扶養控除を英独仏などの諸国並みの児童手当に振り替えれば、ほぼ同じ財源で課税最低限をただちに約100万円引き下げることが可能なのではないでしょうか。課税最低限問題を考える上で、今申し上げましたような税制上の扶養控除の社会保障給付への転換による課税最低限の引下げの可能性について、宮澤大蔵大臣及び西田自治大臣のご所見をお聞かせ下さい。

◆結び
 最後に、「世界における日本の位置づけ」に関して、小渕総理の認識を伺います。
 総理は、所信表明演説で、「我が国は、対外純資産残高120兆円、個人金融資産は概ね1200兆円、年間GDPは500兆円を超え、世界第2位の規模云々……」と、そして我が国の経済・社会が力強い基礎的条件を有していると述べています。しかし、我が国の経済・社会に対する国際社会からの評価は近年急速に低下してきております。
 例えば、昨日のわが党の中野議員の質問でも触れましたが、スイスの調査機関の98年の「国際競争力調査」によれば、日本は94年までは世界のベストスリー、95、96年は世界第4位。ところが97年には第9位、そして本年98年には第18位まで急落しています。目を覆うばかりです。また、世界の格付け機関の評価も、マスコミ報道でみる限り、いつトリプルAから格下げになるのか時間の問題とさえいわれております。
 このような状況を見るにつけ、やはり日本の経済社会のシステム、政治のシステムに何か大きな欠陥があるように思えてなりません。

 私は、変革の時代、あるいは大競争の時代にあって、自民党政治が国民に対し、事実を伝え、変化に適用可能な法整備や社会システム改革を怠ってきたからだと考えます。即ち、先ほど述べました金融不良債権問題に象徴されるように、政府は正に事実を隠蔽し、問題の先送りに終始してきました。処理の無責任さ、けじめのなさ、その結果、待っていたものは「国家財政の破綻」「国際競争力の著しい低下」「優良企業の海外逃避」、そして市場からの「日本売り」であります。
 また米ソ冷戦構造の終焉、ベルリンの壁崩壊などを見ればお分かりのように、民主主義の進展や情報化社会がもたらしたのは「スピード」であり、「ウソを見抜く力」であります。こうした社会の変化や時代感覚に対応できなかったのが橋本前総理であり、官僚政治であります。
 これらについての問題意識、これからどういう国家をめざし、どのようにそれを実現していこうとするか、小渕総理大臣に伺い、私の質問を終わります。

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