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1998/05/21
バーミンガム・サミット報告に対する質問
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民主党 横路 孝弘

私は民主党を代表して、ただいま報告のありました先進国首脳会議並びに関連する重要施策について橋本総理に質問いたします。

まず、バ−ミンガムサミットの重要案件として議論された、わが国の経済運営について質問いたします。共同声明では世界経済の成長を継続するためには、アジア市場の早急な構造改革が欠かせないと強調されています。

いうまでもなくアジア市場の中にあって、わが国が果たすべき役割は非常に重要であり、その意味においても、わが国経済が健全かつ力強い発展を続けることが必要であります。

総理は「我国の経済対策は強い歓迎を受けた」と喜んでおられるが、それは、今まで、サミットなどの国際会議のたびに我が国は「消費税を上げても景気にさしたる影響はない」とか「不良債権問題はメドがついた」と約束し、常に期待を裏切られてきた各国が、本当に景気回復という効果が出るかどうか見てみようという、冷ややかな反応に過ぎないことに、総理は気付いていないのではないでしょうか。

日本経済は本年3月の失業率が3.9%、有効求人倍率は0.58倍と最悪の数字を示したように、昨年の急激な国民負担増を引き金とした景気の後退は、金融危機、消費不況の深刻化という下降の悪循環となっており、政府の後手後手の対策によって、いまだ底入れの展望は見えていません。需要不足、需給ギャップの拡大への対策が当面の課題であって、現状では下降悪循環を止めることはできません。

1997年度の成長もマイナス0.4〜0.5。今のままでは1998年度も、アジア金融危機の影響、消費マインドの萎縮、貸し渋りの継続などの要因で多くを期待できません。

要するに単発的な景気対策を超えた系統的、かつ中長期的な展望にたつ、本格的な政策展開が不可欠となっています。

継続的な家計負担の軽減により消費マインドの好転が期待できる恒久的な減税の早期実施、福祉後退の心配を打ち消す制度改革のあり方、将来の活力につながる生活雇用重視型の新しい社会資本の整備、21世紀にふさわしい人的能力開発や社会経済のインフラ投資が、今こそ必要であり重要であります。日本経済の現状についての総理の認識と考え方を明確にしていただきたいと存じます。

さて今回のG7では、日本が特に不良債権問題の解決と構造改革の促進の重要性を対外的に約束したことを盛り込んでおります。

そして総理はイギリス記者団に16日夕「これから本気で取り組んでいかなければならない。これをやり遂げないと、本当に信頼を取り戻すことはできないし、ここできちんと処理できなければ、本当にどうしようもない」と述べ、「抜本処理に全力をあげる方針を表明した」という記事を読んで、私はビックリいたしました。

バブルが崩壊して不良債権問題が深刻化して、いったい何年たっているのですか、これから本気でとはいったい何事ですか、ただただ呆れることばかりです。

金融機関が金融機能を発揮できるようにするためには、金融機関自身の経営効率化によって不良債権の償却を積極的に進めることが必要であります。そのために貸付債権や担保不動産の売却市場の整備や特定目的会社(SPC)方式による貸付債権などの証券化をはかって債権流動化の推進をはかることが必要です。

政府の総合経済対策で示された不良債権処理のためのト−タルプランは我々が先に主張した日本版RTCなどの強力な機関が盛り込まれず効果は疑問です。また、最近のみどり銀行の債務処理も失敗したケ−スであります。

政府は不良債権処理を検討するための新機構を設置するという方針を明らかにしていますが、それこそ今回のト−タルプランが不十分であることを裏ずけるものであります。

アメリカは明確なル−ルに基づいた透明な処理、不良債権の流動化、金融機関の監督を質、量ともに向上させる必要性の三点を指摘しているが、この点も含めて、不良債権処理にどのような対策を講じていくのか総理のお考えをお聞かせください。

次に金融システムの改革と金融行政のあり方についてお伺いいたします。

魅力ある国内金融マ−ケットを確立するために金融機関は情報の開示を推進するとともに、護送船団行政からの脱却や市場原理と自己責任原則に基づく利用者重視の業務運営を行なうこと、改革を進める上で発生する国民経済コストを最小限に抑え、更なる雇用不安や経済不安が発生する事のないように環境整備を進めることが必要であると考えます。

同時に金融機関の再編は従来のような、密室裁量行政により進めるのか、あるいはこれまでの反省を踏まえて透明なル−ルに基づいて進めていくのか金融機関の再編についての、総理の明確なお考えをお聞かせください。

次にアジア経済危機についてお伺いいたします。総理はアジア経済危機に対して総額420億ドルという各国で最大の支援をしていると強調されたようですが、日本の援助よりも輸出先として市場を提供するほうがアジアの経済目的には効果的であります。我国の円安がアジア諸国へ大きな打撃を与えているのです。

サミットでのアジア経済の議論ではあくまでもIMF主導の経済改革が必要との論議に終始したようです。しかし、IMF主導下の経済構造改革を推進する中で、韓国、タイ、インドネシヤアの人々は厳しい現実に直面しています。

これらの国の失業率は2倍から3倍になり韓国では現在120万人、タイではこの2年間で50万人から200万人へ、インドネシアも現在900万人に達するといわれております。

しかもこれらの国は社会保障制度が充分ではなく、失業保険制度等のセ−フテイネットがないのが現実であり、あっても恩恵を受ける国民の数は少なく給付額も充分ではありません。

今回のインドネシアの暴動の直接の発端はIMFプログラムの一環である公共料金の引き上げでした。こうしたアジアの現実を踏まえて、IMFプログラムの見直しが必要であると思いますが、総理はどうお考えですか、また総理は「IMFプログラムを実行するにあたって、社会的弱者に配慮すべきだ」と主張されたとのことですが、これはプログラムの内容を変更すべきということなのですか、また、他の国から賛同を得られたのですか、明らかにしていただきたいと思います。

私はアジアの通貨不安に対して貿易通貨問題でアジア諸国との協力関係を一層緊密にしていくことが望ましいと考えます。

今後アジア域内での通貨為替切下げ競争や伝染病的な短期資本移動を回避し、相互共存関係を作っていくには地域内における為替安定が不可欠な条件となります。

このままビックバンを実行すれば日本とアジア諸国はドルとユ−ロ−の谷間になり外資の餌食になっていくのではないでしょうか、アジア版のIMFを速やかに作る必要があると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。

 さて今回のサミットで初めて本格的に雇用と社会的一体性ということが戦略的に取り上げられました。

これは一連の雇用会議、即ち97年10月のOECD労働大臣会議、神戸会議そして本年2月のロンドン雇用会議で議論されたものを「成長、雇用可能性、社会的一体性」としてまとめたのです。

欧米諸国は今日まで様々な規制の撤廃に取組み、効率的で競争の激しい市場を作り上げてきました。その結果、社会は2極化が進み、特に中間層が減少し3分の2社会といわれる社会、即ち失業が増え労働意欲をなくす人々が増え、3分の1近くの人が社会的に疎外されている状況がうまれつつあるといわれています。

 こうした中で生涯雇用を含む長期雇用と良好な雇用機会が強調されているのです。日本も雇用問題は、よそ事と言っている状況ではなくなってきていると思います。

 私は橋本総理の改革の一番大きな問題は、改革を進めた結果どんな社会になるのかという構想がまったくないことです。あるのはただただ、自己利益の最大化を追求する人からなる市場モデルであって、そこには社会が欠落していると言わざるを得ないのであります。

 「グロ−バルスタンダ−ドが大切」、「雇用の流動性を」と言っているうちに、日本やアジアの伝統的な地域社会がさらに崩壊し、人々がバラバラになるのではないか、社会の一体性や連帯感はどうなるのか。サミットで、ブレア首相が提起しているこの問題は、これからの日本とアジアの問題と考えますが、総理はどう受けとめておられるのか、ご所見を承りたい。

 インドネシア情勢についてお尋ねします。本日スハルト大統領が辞任を表明いたしました。それは32年間にわたる側近政治、軍の支配、一族の利権支配といった体制が余りにも長く続いた事への民衆の怒りの前に辞任せざるを得なかったわけです。賢明な当然の選択だったと思います。

 そこでハビビ副大統領が大統領に就任したわけですが、インドネシアの長期的な安定と繁栄のためには、政府が国民と対話を深め、より開かれた政府の実現や政治改革を断行していくことが重要であると考えます。スハルト大統領の辞任がこうした改革を加速することにつながることを期待しています。我が国としてはインドネシアの政治改革、経済改革にできる限りの協力をすべきと思います。
総理はこの事態をどう受け止めているのか、これから政府としてインドネシアの政治改革、そして経済危機にどんな協力をしていくのでしょうか、お伺いいたします。

 次にインドの核実験とその影響について伺います。インドがわが国や国際社会による再三の抗議にもかかわらず、二度にわたって地下核実験を実施したことに対し強い怒りを覚え、核拡散と軍拡競争を引きおこすことを憂慮しています。

 冷戦期の超大国間の核競争は、冷戦の終焉とともに「核保有国」と「非核保有国」の対立という構造に形態を変えました。インドの核実験実施で、所謂「核疑惑国」は核武装を断念していないという事実を突き付けられた感がいたします。3月にインドに誕生したバジパイ政権は核保有を選択肢とする安全保障政策を発表し、4月にパキスタンが北朝鮮のミサイル技術を導入し中距離弾頭ミサイルの発射実験を行い、今日インドは2回にわたる核実験を実施しました。

 そしてパキスタンはインドに対抗して核実験を実施することを示唆しております。今後、核開発や大量破壊兵器の軍拡競争はインド、パキスタンを中心とした南アジア地域だけでなく核開発をもくろむ他の国々、たとえば中東や北東アジアにも波及する恐れがあります。核拡散はまた、偶発的な核戦争のリスクを引き上げることになります。今回の一連の動きは、全世界に対する脅威であると認識し深刻に受けとめなければなりませんが、政府はどのように認識しているのか、総理にご所見を伺います。

 また、世界は核拡散の新たな時代に入り、米国が主導する核拡散防止体制は崩壊したと考えざるを得ません。現行の核不拡散体制は核保有国が核兵器を保持したまま、非保有国に不拡散を強いるという「不平等」なものだ、ということを理由にインドは核不拡散条約(NPT)にも包括的核実験禁止条約(CTBT)にも署名していません。

 今日、核不拡散体制を立て直すには、この問題を棚上げにせずに検討するべきだと考えます。まずなにより核保有国が大幅な核軍縮を進めることであります。核保有国は米国・ロシア間の軍縮交渉以外の努力は行なっておりません。また、同時に非核国家の安全保障のために、ノ−ファ−ストユ−ス体制の確立や、非核地帯の拡大など必要であります。カットオフ条約交渉の早期開始や全世界的な核兵器の使用禁止・廃絶・核拡散防止に向けて日本政府は、どのような努力をなされるのかお伺いいたします

 そうした核政策を踏まえ、インドとパキスタンに対して国際社会が結束して厳しい態度で抗議、あるいは牽制するとともに、日本も独自に働きかける事が必要であります。サミットでの共同声明は、制裁措置の発動を巡って意見が一致せず、非難声明にとどまりました。日本としては国際社会の歩調を整えるためにどのような提案をしていくのでしょうかお伺いいたします。

 日本はインドに対して新たな円借款の差し止めなどをしていますが、ODAの全面見直しなど断固たる態度を示すべきではないでしょうか。パキスタンは核実験を断念すると表明しておりません。今後どのような形で説得を続けるのか総理の所見を伺います。

 さて、最後にロシアのエリツイン大統領との会談についてお伺いいたします。北方領土についての川奈における総理の新提案は、いったいどんなものなのか、明らかにすべきではないでしょうか。

 秘密の約束ができるものではないし、4島は日本の主権ということを前提にすれば国境線をはっきり引いて、あとは施政権をロシアにある期間、認めるという内容以外ありえないと思いますが如何でしょうか。

 橋本総理は7月の日米首脳会談、11月の日露首脳会談に向けて張り切っていらっしゃるようですが、残念ながらあなたには、日本の代表として外国に出かける資格はありません。最近の世論調査では、総理の国民の支持率は20%台です。このことをどう受けとめられていますか、総理の率直な答弁を求めて、私の質問を終わります。

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