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1999/08/12
高嶋良充議員の住民基本台帳法反対討論
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参議院本会議議事速報から


○高嶋良充君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま提出をされました暴挙とも言える中間報告を求めることの動議に対して、怒りを込めて反対の討論をいたします。

 今、提出された動議のように、確かに国会法の第五十六条の三では「各議院は、委員会の審査中の案件について特に必要があるときは、中間報告を求めることができる。」となっています。しかし、動議の趣旨には「特に必要がある」との理由は全く見当たらないのであります。

 私は、本日、昭和二十二年の第一回国会から昨年の第百四十四国会までの審議状況と中間報告について調べさせていただきました。参議院においては、約七千件の議案がこの間審議をされてまいりましたが、そのうち中間報告を求められたのはわずか十三回しかないのであります。初めての中間報告は、昭和二十八年の第十六回国会の電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案であり、最後の第十三回目の中間報告は、昭和五十年の第七十五国会における公職選挙法の一部を改正する律案及び政治資金規正法の一部を改正する法律案であり、それ以降二十四年間も使われていない、まさに禁じ手であります。

 国会において異例中の異例の、まさに禁じ手である中間報告を求めるには、それだけこの法案を成立させる緊急性がなければなりません。

 しかし、皆さん、この住民基本台帳法改正案には全く緊急性があるとは考えられないのであります。なぜならば、この法律の施行期日は「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」となっているからであります。公布の日から起算して三年の猶予とは二〇〇二年からの施行であります。二〇〇二年から施行する法律に対して、今なぜ中間報告を行う必要があるのでしょうか。全く理解に苦しむものであります。

 この住民基本台帳法の一部を改正する法律案は、国民の利便性と逆にプライバシーにかかわる法案であるため、今まで与党の皆さん方も、そして野党の私どもも真摯に、かつ慎重に審議を行ってまいりました。

 さらに、地行・警察委員会は八月九日、十日、そして昨日も委員会を設定しており、審議を残していることを理事懇で合意をしているわけであります。これは当然、与党の理事も認められたことであります。

 それなのに審議が行われなかったのは、通信傍受法、いわゆる盗聴法が法務委員会での採決なしの強行採決によって国会が不正常な状態に陥ったためであります。不正常な状態に陥って二日間の審議ができなかった理由は、まさに法務委員会における暴挙が原因であります。これはすべて自民、自由の与党と公明党の責任であります。

 住基法改正案にとって今必要なのは、国会の審議の基本である委員会審議を尽くすことであり、会期が切れれば、三年間の猶予があるわけでありますから、次回国会で審議を尽くすことであろうと思います。院はその審議のありようを慎重に見守るべきでありましょう。それが良識の府と言われる参議院のとる道ではないでしょうか。

 この法案の審議になぜ慎重を期さなければならないのか、その理由について申し上げたいと思います。

 この住基ネットの導入が個人情報の漏えいの危険性を持つとともに、将来なし崩し的に利用分野が拡大することで、結果として国民総背番号制となり、国家が多様な国民の情報を一元管理するためのシステムになるのではないか等の懸念が国民の中に大きくあるためであります。国民の基本的な人権にかかわる問題だけに、何よりも国民の皆さん方の理解を得ることこそが必要なのであります。

 なのに、参議院においては、六月二十八日に本会議で趣旨説明、質疑が行われて以来、審議時間は二十七時間二十五分でしかありません。そして、審議が深まれば深まるほど問題点がクローズアップされてきたのであります。

 この法案が衆議院より審議時間をなぜ参議院で多くとらなければならないのかという理由についても申し上げたいと思います。

 その理由は、衆議院において修正されているからであります。修正内容は、附則第一条に第二項を追加して、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」という全く意味不明の修正が行われたわけであります。そして、この「所要の措置」について、自治大臣と総理大臣答弁でその内容が補強されたというのが衆議院の実情であります。

 だから、私どもは、これらの修正が衆議院の、そしてさらに採決直前に行われたために、参議院ではこの内容を十分に解明する審議時間が必要であるとの認識に立っていたわけであります。そのため、私どもは審議冒頭から修正内容を解明するための慎重審議を続けてまいりました。 

 そうした審議ので、個人情報保護措置について、修正案を提出された自民、自由、公明党の三党が民間利用も含む包括的な個人情報保護措置を合意されていたということが明らかになりましたが、しかし政府側を追及すると、政府内の小渕総理を本部長とする高度情報通信社会推進本部の検討部会では、分野別に法制化を検討しており、整合性がなく大きな隔たりがあることも判明したのであります。だから、いまだにマスコミも報道しているように、個人情報保護法の具体像はない、また国民総背番号制への不安は消えていない、このような問題点を指摘しているのであります。

 こうした意見は、国民の間にも幅広くある住基ネットに対する懸念や不安を代弁していると言っても言い過ぎではないと思います。

 また、与党である自由党の小沢党首が、住基ネットは安全保障や治安維持に使わなければ意味がないと経団連で講演をされました。いわゆる盗聴法との関連で、治安維持に利用されるのではないかといった疑念も払拭をされていないわけであります。

 本来、住民基本台帳にかかわる業務は地方自治体の自治事務であります。その地方自治体からも、住民基本台帳オンライン化について多くの問題点も指摘をされているわけであります。一つは、オンライン化に要する費用は四百億円、その後のランニングコストは二百億円とも言われており、地方負担が懸念をされているわけであります。地方れだけの費用をかけるだけの市民サービス面での価値があるのかという素朴な疑問も生まれているわけであります。

 また、もう一つには、個人情報保護条例を施行している自治体では、オンライン等個人情報の新規取り扱いについては個人情報保護運営審議会に諮らなければならないことになっていますが、法改正はこうした制度の否定を意味しているわけであります。

 さらには、住民基本台帳の大量閲覧を認めていない自治体もあります。これは、個人情報保護の観点から、長年にわたる行政努力の成果であったわけですが、オンライン化されることによって、今後は全国どこでも住民票がとれると同時に、全国どこでも大量閲覧を許すことになり、これらの市の努力はすべて水泡に帰してしまうことになるのであります。

 以上挙げましたほかにも、今回の法改正によって地方自治体はさまざまな問題に直面をすることとなります。法改正は直接当事者である地方自治体や地方議会の十分な議論をも保障しなくてはならないと思います。そのためにも、国会審議は慎重かつ十分な審議を必要としているのであります。

 このように、本法案はまだまだ国民の十分な理解を得るに至ったとは決して言いがたく、委員会でより一層審議を尽くさなければなりません。そして、何よりも、まだ中央公聴会も開いていないのであります。国会が直ちにやらなくてはならないことは、今すぐに中央公聴会を開いて国民の意見を聞き、国民の不安や疑念にこたえることであろうと思います。

 地方行政・警察委員会の小山峰男委員長は、この法案を成立させる前提として、社会的合意が必要だということをしっかりと認識され、議会制民主主義のルールにのっとりながら中立公平な立場で、沈着冷静に、そして真摯に審議を進行されてまいりました。それにもかかわらず、ここでなぜ中間報告を求められなければならないのか、私たちには全く理解できないのであります。

 国会法の第五十六条の三に基づいて、今、中間報告を求めることのねらいは、報告後直ちに本会議による審議と採決を強行しようとするのではないか。もしそうであるならば、この法案の今までの委員会での審議の積み重ねが全く無に帰することになるでありましょう。このような委員会審議を軽視することは、委員会の審議権を侵害することであり、絶対に容認することはできません。今後の国会運営にも大きな禍根を残すこととなるでしよう。(拍手)

 私は、禁じ手である無謀な中間報告の強要に断固反対をいたします。また、参議院本会議においてもし直接審議、採決が行われるならば、それは議会制民主主義をみずから否定することであり、自殺行為であると言わねばならないと思います。私は、このような委員会の議権を侵害する中間報告の強要に断固抗議を申し上げ、反対討論といたします。

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