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2002/12/19
2003年度税制改正についての考え方
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民主党税制調査会 会長 峰崎直樹

1.はじめに

民主党は、少子・高齢化社会における持続可能な社会保障制度の構築や資源循環型社会への転換、産業競争力の再生、税財源移譲を伴う地方分権、地方自治体や NPO(特定非営利活動法人)の活動を通じた共助コミュニティの活性化など21世紀の課題に対応した抜本的な税制改革が必要であると考え、その基本的な考え方を「税制改革の基本構想(02.08.22)」として提示した。
一方で現下のわが国の経済状況は、小泉政権の経済無策によって、極めて厳しい状況にある。この状況を一刻も早く脱却するために、迅速かつ適切な対策を打つことが不可欠であり、税制においても大胆な取り組みが求められている。
よって、直面する2003年度税制改正においては、1.危機的な経済状況から脱却するための緊急対応措置と、2.中長期的なあるべき社会を目指した税制改革の二本立てで組み立てることが必要であると考える。

2.民主党の求める2003年度税制改革の課題

(1)経済有事脱却のための緊急対応措置

極めて厳しい経済状況から脱却するため、民間消費の喚起、中小企業の経営改善、産業競争力強化などに主眼をおいた税制措置を速やかに講ずる。

(所得税)
○ 住宅、自動車、教育費等を中心にキャッシュ・ローン以外のすべてのローンに係る利子を所得控除する「ローン利子控除制度」を創設し、資産デフレを軽減すると共に、将来的に金利が上昇した場合においても、消費を下支えする。
○ 住宅譲渡損失の繰越控除制度の拡充(賃貸住宅住み替え時への適用)、譲渡損失を前年度所得から控除できる繰戻還付制度の創設を図る。

(法人税)
○ 全産業を対象とした研究開発及び環境対策に対する政策減税を拡充した上で、恒久措置とする。また少額減価償却資産等の損金参入限度額引き上げ、償却期間の短縮、残存価値の見直し等減価償却制度の抜本的見直しを行う。
○ 企業の競争力を強化するために、平成4年から凍結されている「欠損金の繰り戻し還付制度」を復活させる。
○ 中小企業の競争力強化と自己資本蓄積による体質強化をはかるため、中小企業に対する同族会社の留保金課税を廃止する。
○ 連結納税制度の導入趣旨に反する連結付加税は廃止する。

(資産課税等)
○ 証券市場の活性化、直接金融の拡大を図るため、株式譲渡益課税の時限的なゼロ税率適用、損益通算範囲の拡大、損失繰越控除期間の延長を行う。特定口座制度は廃止する。
○ 売却損の損益通算範囲拡大等、エンジェル税制の大幅拡充を推進する。
○ 不動産取引等に係る登録免許税の定額手数料化、印紙税の廃止も含めた見直しを行う。不動産取得税についても軽減を図る一方で、都道府県の税収減については税源移譲で対応する。

(2)あるべき社会をめざした税制改革

○ NPO支援税制の抜本的強化
 NPOは公益を担う新たなセクターとして、わが国において真の市民社会を築くために重要な存在であり、その育成を支援するための税制面から支援は不可欠である。しかし現行の支援制度はNPOに対する政府管理の色彩が強い上、9000弱の全NPOの内、わずか9団体しか認定されていないという異常な状態にある。その主因は適用団体となる認定要件の厳しさにあり、例えば、ほとんどの介護NPOは「複数市町村をまたいだ広域で活動する」という要件を満たさない。
 現行のNPO支援税制を早急に改正し、認定要件の抜本的緩和、公平・中立な機関による認定、寄付者側における税額控除制度の創設等を行うべきである。こうした税制改正による、わずか数十億円の減収で、わが国に真の市民社会の実現が可能となる。

○ 「教育」に対する戦略的優遇策を
 わが国の最大の財産は「人材」であり、その育成に対する投資こそが最も有効かつ必要な投資である。このような観点に立ち、税制においても基礎的な教育を受ける時期から、社会経験を踏まえてさらに自己研鑽を図る時期までの生涯を通じて、広範にその投資を促進する措置をとる必要がある。
具体的には、子弟の教育ローンの利子を所得控除する恒久制度(再掲)や、国の保証による「二世代教育ローン」の創設及び税制優遇措置を創設する。就職後のリカレント教育を促進するため、現行の勤労学生控除の要件を緩和すると共に、高度な人材育成をさらに進めるために、大学院等(法科大学院を含む)の高度専門教育の学費を本人が負担する場合の税制上の優遇制度を創設する。

○ 環境保全
 環境保全は既に国際的な政治課題となっており、またわが国の優れた環境を後世代に引き継いでいくことは、現在の世代の責務である。同時に環境技術は、21世紀のわが国産業の国際競争力向上のために不可欠な技術であり、これによってわが国経済の活性化や国際貢献を促進できる戦略分野である。多面的な効用の期待できる環境保全対策、技術開発促進策に対して、税制面において大胆な施策を推進する。
温暖化ガス発生抑止など企業の行う環境保全に対する設備投資や技術開発に対して恒久的減税制度を創設する。(再掲)
 京都議定書の目標達成のため、2004年度中に炭素1トンあたり3000円程度の環境税を導入するとともに、電源開発促進税の現行税率の3分の1程度を環境・エネルギー税に組替える。
これに併せて、揮発油等の道路特定財源を暫定税率部分も含め一般財源化し、また複雑かつ過重な負担となっている自動車関連諸税について、自動車重量税の税率を本則に戻した上で自動車税と統合し、自動車取得税を廃止して消費税との二重課税を解消し、その抜本的な整理統合を図る。
なお今後の道路整備においては、国はその骨格となる道路の維持・補修を中心とし、その他の道路については地方が主体となって整備することとする。地方の道路整備財源については、民主党の地方分権政策に則り、自動車関連諸税の整理統合による減収分も含め、上記一般財源化された税収より確保する。


3.政府与党が検討している2003年度税制改正の個別検討項目について

(1)総論
小泉総理は、昨年予算編成が終了すると同時に平成15年度における「税制の抜本改革」を宣言し、従来年末に集中していた税制改革論議を年初からスタートさせた。しかし税制改革においても中身を丸投げした総理の無責任さが、複数の検討機関による議論の混乱を生み、基本的な理念の部分で整理のつかぬまま、結局は例年のように年末のゴタゴタを繰り返している。その上、自らの経済失政が招いた減収がもたらす、さらなる財政危機を取り繕うために税制をさらに歪めてしまった。当初威勢良く掲げた「抜本改革」は、その背景となるわが国の将来像も示さぬままに雲散霧消し、残されたものは国民をさらに不安の奈落へと陥れる巨額の財政赤字と歪んだ税制となってしまった。
「国債30兆円枠」破綻後、小泉政権がかろうじて財政規律の維持を示すために急遽浮上した「多年度税収中立」は、景気回復に資するものではない。近視眼的な「税収中立」論は、いたずらに政策手段を縛り、有効な政策、経済対策が打てなくなる。「控除から給付への転換」などを含め、歳入・歳出全体で捉えることが、政策効果を高めるために必要であり、このような政策判断に基づいた財政構造改革を行えば、結果的に景気浮揚による増収が期待できるものと考える。

(2)所得課税

○ 控除の整理について
 減税財源を求めるために、配偶者特別控除、特定扶養控除の縮小・廃止を行うべきではない。相対的に高所得者に有利な世帯単位の「控除主義」を改め、必要な人に対し確実な支援が可能となる「給付主義」へと転換することを基本的な理念とし、人的控除の見直しによって生まれる財源を子育て支援策など社会保障給付の財源とする制度の改革が必要である。

(3)法人課税関係

○ 外形標準課税の導入
 現在の総務省の外形標準課税案を、緊迫した経済状況の中で来年度から導入することには反対する。地方財政の安定化を図る観点から、現行の法人事業税の改善は必要であるが、導入にあたっては雇用抑制課税とならない配慮や地方消費税との関係を整理すべきである。

○ 不良債権処理に係わる税制
 不良債権処理の加速化にあたって、税制における環境整備が議論されるが、米国の損金算入制度は直接償却を前提としており、間接償却を中心とするわが国とは環境が異なることを留意した上で、不良債権処理の加速化とあるべき税制のバランスを保った制度の構築が必要である。
なお欠損金の繰戻制度の凍結は速やかに解除されるべきである。(再掲)

(4)資産課税

○ 相続税・贈与税
 相続の高齢化が進む中、国民資産の有効活用の観点から、相続税・贈与税の一体化は行うべきである。また最高税率については現行70%から50%程度への引き下げは環境変化から適当であるが、富の偏在・固定化を回避するとの観点から累進構造の維持は必要である。基礎控除の引き下げは、小規模宅地の特例等一般国民の生活維持に配慮を行った上で、容認しうるものの、共同で富を形成してきた配偶者間の並行移動については控除を拡大すべきである。今後の相続税の制度設計にあたっては、被相続人の介護者に対する配慮や介護保険とのリンクを重視すべきである。
NPOに限らず、個人レベルで市民が直接に公益に寄与する社会が形成されつつあり、相続時においても、その促進が現実的な課題となっている。相続遺産を自治体やNPOなど公益を実現する団体に寄付する際に、大胆かつ使いやすい税の減免制度や寄付者を讃える制度を創設することによって、このような市民の高い志を社会が受け止める必要がある。
循環型社会の形成促進、地域の良好な生活環境維持の観点から、里山、雑木林等の身近な緑の相続に対し、利用制限・保全義務を課した上で、相続税・固定資産税の軽減措置を図るべきである。

○ 固定資産税
 税に対する信頼感を高めるために、固定資産税の評価替えを毎年行うと共に、これに伴う行政事務の繁雑化を軽減するために、地価評価制度の一本化を図る必要がある。また、建物評価についても実勢価格よりも高く評価されがちで国民感覚との乖離が指摘されており、適正化に向けた措置が必要である。

(5)酒税・たばこ税
 酒類業者の商品開発努力に水をさす発泡酒税の引上げに反対する。またワインに対する増税についても、増税の根拠、酒税に対する理念が乏しいことから、反対する。
 間接喫煙、青少年に対する影響、医療費増大、吸い殻のポイ捨てなどにより、わが国でも喫煙に対して厳しい視線が浴びせられている。たばこ税については、分煙社会実現のための教育・啓蒙活動、タバコ葉産業の転換支援の財源確保策として、税率を引き上げる。


以上

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