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2002/01/24
当面の経済財政政策に関する考え方
民主党ネクストキャビネット

1.
経済・財政に対する基本的考え方
1.民主党の目指す真の構造改革

経済も政治・行政も、本来、社会の変化に合わせて常に変化し続け、時代に適合した姿となってゆくものである。

ところが、経済や政治等の構造が既得権益に縛られている場合、本来変化すべき状況を迎えても、時代に合わせようとする努力よりも既得権益を守ろうとする圧力が大きくなり、結果的に、時代遅れの構造として生き残ってしまう場合が少なくない。

今、日本が抱えている問題はここにある。高度経済成長の終焉、中国や東南アジア諸国等の経済成長、経済のグローバル化、米ソ冷戦の終結等、旧来の枠組みでは対応できない事態が次々と生じながらも、自民党を頂点とする、既得権益と結びついた古い構造が生き残り、さらに公益が族益化・官益化し、そのしわ寄せで、新しい構造への転換の芽が摘まれてしまっている。

民主党は、こうした状況を打破するために、既得権益と化した古い構造を破壊し、新しい構造への転換の芽を育むよう、動機付けをし、少子・高齢化の時代であっても持続可能な発展を促す。ただし、既得権益を持たない人々への配慮=セーフティネットが、その大前提であることは言うまでもない。

(1)既得権構造の破壊

1. 財政構造改革

もはやほとんど余力のない財政を、時代に即さない部門の延命のためだけに投入する、自民党政権の経済政策に終止符を打ち、旧来型公共事業を経済構造改革に資する公共投資に組替えるなど、国による資源配分の最適化を目指す。また、不安を解消するためにも、年金や介護保険、医療の制度設計見直しを早急に行う。

2. 規制改革

公正な市場を形成し、すべての人に開かれた競争条件を確保するために、すべての経済的規制を原則として撤廃する。そして、ルールを整備し、点検・監視を強化する。また、社会的規制とされてきたものについても、積極的に見直しを行うが、環境・安全等、安心な社会を築くための基盤となる分野については、規制強化も検討する。

(2)新しい構造への転換

1. 既存の企業の再生

深刻な経済不況と急速な産業空洞化から、比較的国際競争力を有するわが国の産業、雇用を守るため、知的財産権保護、技術開発(環境保護の視点も含む)、創業支援、人材育成などの国家戦略を確立するとともに、能力開発、雇用安定のためのセーフティーネットの拡充を急ぐ。

2. 我が国経済の牽引役

ハイテクや金融、通信サービス、バイオ等、グローバルな市場で高付加価値を創出してゆくような分野が、我が国経済の新たな牽引役を担っていくよう、現在、こういった分野での発展を阻害しているものを取り除いてゆく。

3. 地域経済の活性化と雇用の安定

経済構造改革による環境変化に対するセーフティネットという意味でも、地域経済を活性化させ、雇用問題の解決を図ることが重要である。民主党提出の「地域金融円滑化法案」等により、地域金融の円滑化を図ること等によって、中小企業やNPOが育つ環境を整備する。

4. 人への投資

 少子・高齢化の時代であっても持続可能な発展を目指すためにも、教育等、人への投資を重視する。

2.小泉「構造改革」の問題点

1. セーフティネットが不十分

小泉「構造改革」は、国民の生活の安心を支えるセーフティネットを十分に張っていない。これでは、安心してチャレンジを行えず、効率化推進の障害にもなりかねない。

2. 非効率な部門の延命のためだけに財政を投入

財政構造改革と言いながら、自民党と癒着した業者救済のための旧来型公共事業に終始している。

3. 我が国経済の将来に対するビジョンが不明確

小泉「構造改革」は、何をこれからの我が国経済のリーディングセクターにしようとしているのか、ビジョンも施策も不明確である。

4. 財政の不透明さを増す手法を復活

今回の第二次補正予算に象徴されるように、30兆円枠を守っているように見せかけるために「隠れ借金」などの粉飾を行うことは、財政の不透明さを増し、不健全である。

2.
民主党の目指す予算編成のあり方
民主党は、「活力ある経済」と「安心の社会」を構築するために、一律的な削減ではなく、「官から民へ」「国から地方へ」という改革を進める中で、歳出の効率化を大胆に行う。そのための基本方針として、以下のようなものを考える。

1. 単なる需要追加策としての公共事業は行わない

公共事業による乗数効果は、極めて低くなってきている。また、財政出動による需要創出策には、既存の供給過剰の産業構造を温存させ、デフレ要因解消を阻害する側面もある。巨額の財政赤字を抱え、国債暴落リスクも高まる中、民主党は、一時的な効果しかない、単なる需要追加策としての公共事業は行わない。

2. 公共事業改革

公共事業は、補助金の一括交付金化や税源移譲により、地方自治体が自主的自立的に必要な事業を効率的に進められるように改める。また、上請け丸投げや談合等を防止するよう、執行面における改革等を行う。

3. 経済構造改革に資する公共投資を重点的に行う

旧来型公共事業ではなく、新たな産業が生まれるような公共投資に重点的に予算配分を行う。

4. 政策減税による消費・投資の活性化

マクロ政策としての減税にあまり効果がないことは、小渕内閣時の失敗により明らかである。民主党はローン利子控除等、直接、個人消費や投資の拡大を目指すような政策減税を通じて、消費・投資の活性化を図る。

5. 補正予算を乱発しない

補正予算は、一時的な支出にすぎない。子育て支援など、恒常的な支出が必要となるものについては、補正ではなく、本予算をしっかり組む形で行う。

6. 予算制度の改革

 特別会計・財政投融資を含め、今までの予算編成のあり方を全面的に見直し、国の会計制度の透明性を高めることによって、国民が直接財政状況を監視できる環境を整える。

3.
第二次補正予算に対する考え方
年度末なのに、一時的な支出にすぎない補正予算を組むこと自体に意味があるのか、甚だ疑わしく、補正を組む労力があるなら、本予算を充実させることに向けるべきである。また、デフレスパイラル回避を二次補正の理由にするなら、政府の経済見通しは極めて甘かったといわざるを得ない。

民主党は、第二次補正予算の内容に関しては、以下の点で問題があると考える。

1. 今までと変わらないバラマキ

法改正により、補助金型は、対象事業が構造改革推進に資する7分野となるとしているが、官僚の宿舎整備の費用なのに、「改革推進」の冠をつける等、およそ「改革推進」とかけ離れている。本二次補正の実態は、地方の業者の救済策、つまり、「需要追加」から「改革」に看板をかけかえただけで、今までと何ら変わらないバラマキにすぎない。

2. 30兆円枠堅持に見せかけるために粉飾を行っている

第二次補正予算で、平成14年度予算の公共事業関係予算削減分の埋め合わせをしている。見かけ上は、30兆円枠を堅持しているが、粉飾予算であると断言せざるを得ない。

3. NTT無利子貸付事業は「隠れ借金」

NTT無利子貸付事業は、補助金型、収益回収型、民活型のいずれであっても、負担を先送りする「隠れ借金」といわざるを得ない。

4. NTT無利子貸付事業は、過去ズサンな資金管理をしてきた

収益回収型とは名ばかりで、「問題3セク」に貸しつけているケースが多々見られ、税金で補填されているのが現状であり、しかも、情報が十分に開示されていない。

5. 補助金型は、地方自治体に裏負担を強制するもの

補助金型は、地方自治体に裏負担を強制するものであり、逼迫している地方財政をさらに窮地に追い込むものである。

6. 内閣のイニシアチブが発揮されていない

「改革推進」と言うのなら、内閣府主導で、各事業を波及効果の観点から精査すべきだが、その形跡が見られない。

4.
平成14年度予算に対する考え方
今までとあまり代り映えのしない予算であり、組替えが必要である。予算委員会等でこれから議論が必要であるが、現時点での組替えの基本方針としては、以下のようなものを考える。

一、歳出の規模は維持する。
二、公共事業及び従来型の支出を削減する。
三、雇用対策に重点を置き、その他企業再建や起業支援等も拡充する。
四、民主党税制調査会が打ち出したものを中心に、ローン利子控除等の政策減税を検討する。
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