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2001/11/09
塩川財務大臣の財政演説に対する代表質問(仙谷議員)
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民主党・無所属クラブ 仙谷由人

(総理の政治姿勢について)

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、塩川財務大臣の財政演説と、今年度補正予算案ならびに関連する諸法案に対する質問を行います。
まず、総理の政治姿勢について伺います。
 自民党内部のいわゆる抵抗勢力と目される政治家の方々の「活躍」が、改革課題をめぐって顕著になってきました。
 小泉政権に期待した多くの国民は今、小泉総理は「改革」を本当に遂行するのだろうかとかたずをのんで見守っています。

 第一に、国債発行限度を単年度30兆円以内にするとの総理の公約は、今年度も貫き通すと改めて約束されますか。与党内では景気対策のための財政出動を行う「第2次補正予算」に取り組むべし、あるいは「15ヶ月予算編成を」との主張が声高に語られていますが、小泉総理は自らの信念にもとずく「国債発行30兆枠」を投げ捨てて、このような主張を受け容れることはあるまいと考えますが、いかがですか。
 第二に、今やあの勇ましかった道路特定財源の一般財源化は私たちの視界から消え去っていますが、来年度からは必ず実行されるのでしょうか。

 第三に、高速道路を建設、経営してきた日本道路公団ほか3公団の民営化は、自民党道路調査会の頑強な抵抗に遭遇しているように見えます。小泉総理がその初志を貫徹されようとすれば、民営化方策と同時並行で「道路整備5カ年計画78兆円」という平成10年の閣議決定を直ちに見直し、変更することです。そのことが、公共事業の効率化・適正化をもたらし、それによる歳出構造の転換へ道を開き、総理が渇望する財政健全化への第一歩と考えますが、そうなさいませんか。答弁を求めます。以上三点について小泉総理と塩川財務大臣に伺います。

 第四に、郵政三事業の民営化まで声高に叫んできた小泉総理に対して、自民党総務部会は郵政公社においても、信書・配達分野への民間開放について、全面否定の挑戦状をたたきつけています。このような抵抗を打ち破って「民営化」に突き進むことに内閣の命運をかけるのでしょうか。明確にお答えをいただきます。

 第五に、小泉総理の一内閣一閣僚という方針は、議院内閣制のもとにおける政党政治としては至極当然であるとは言え、派閥均衡、順送り、たらい回しの光景に辟易していた国民にとっては斬新に映りました。加えて、派閥の領袖の了解を求めず一本釣りで組閣するという手法の鮮やかさは、国民の喝采を呼んだのです。

 ところが、与党内には年末「内閣改造」期待のマグマは充満し、総理の公約を押し潰すかに見えます。まさか、年末に内閣改造をして、旧来の自民党政治である派閥談合−族議員政治に堕すことはあるまいと考えますが、いかがでしょうか、小泉総理、お答えください。

 第六に、先月末、党利党略だけの与党三党による選挙制度改革をめぐる醜いドタバタ劇は、総理が危うく毒を飲まなかったことによって、一年先延ばしされました。驚くことに、この与党3党合意は、向後一年間小泉総理の解散権を縛り、さらに本年末の衆議院議員選挙区画定審議会が一票の格差ならびに定数是正の区割り案を勧告しても、これを無視し、放置する合意の成立をも意味するとの言説が与党内で流布されています。まさか小泉総理がこのような同審議会設置法第5条に反し、国民の期待に真っ向から挑戦するかの言に組することはありますまい。

 総理大臣として、この与党3党合意に縛られて解散権は行使しえないと考えているのか否か、そして同勧告を尊重して、速やかに区割り画定法案を提出するという内閣の義務を果たす意志はあるのか明確にお答えいただきたい。

(補正予算の内容  雇用対策について)

次に、補正予算の内容について伺います。

 この補正予算は雇用対策5500億円を目玉としています。しかし、その中核を占める地方自治体に3500億円を交付し、短期的な雇用の場を作り出させようとする新公共サービス雇用は、この間の失敗の歴史を全く反省しない代物だと考えます。

 総理は少なくとも平成11年から開始された本年度末まで実施されている緊急雇用対策の実態を自治体や厚生労働省からお聞きになったことがあるでしょうか。

 自治体公益法人施設の駐車場の誘導員なども多いのですが、例えば緊急ため池パトロール事業、民間企業に事業費2000万円で委託し、3ヶ月間に新規雇用は3人。一人当りの一ヶ月当りコストは160万円という例などが報告されています。こうした各市町村からの報告を見る限り、「雇用のミスマッチ」解消どころか、安定的就業のある雇用につながっていないものが極めて多く、事業費コストは嵩んでいます。

 さらに、先日報道されたように、ある自治体においては雇用された人のうち3分の2は非失業者であり、他の自治体でも本来の通常業務処理にこの交付金を使用しています。ある県の総括表を精査しますと、一人の新規雇用のための事業費は60万円のコストがかかっています。

 雇用期間が最長6ヶ月に限定されており、かつ新規事業を対象としていることを主たる原因として、この事業が安定的な雇用機会の提供につながらない一時しのぎのバラマキであるとの批判は正鵠を射ています。

 このような過去3年間に2000億円をかけた緊急地域雇用特別基金事業をどのように総括しているのか、厚生労働大臣に答弁を求めます。
 
 問題は、357万人の失業者のうち92万人の長期失業者が就業できるようにするために、何をしなければならないかです。かつまた非労働力人口4094万人のうちの就業希望者568万人、とりわけこの568万人のなかで非求職理由を「適当な仕事がありそうにない」とする216万人が、継続して就業しうる仕組みを立ち上げるしかないのです。

 また数々の事業主への助成を柱とする施策も、平成10年4月の「緊急雇用プログラム」、同年11月の「雇用活性化総合プラン」、平成11年6月の「緊急雇用対策」、平成12年5月の「ミスマッチ解消を重点とした緊急雇用対策」が、何故に効果を表さなかったか、何故に5.3%の失業率になってしまったかを深刻に反省し、中期的視点で教育訓練と職業紹介が有機的に統合された仕組みをつくり、民間の事業としても開放することから始めなければならないと考えますが、総理及び厚生労働大臣のお考えをお聞きします。

 厚生労働省はようやくホワイトカラーの再就職、転職のあっせんのためにキャリアカウンセラーを養成することを言い出しました。しかし、これも、付け焼き刃で、厚生労働省の権益の内側でハローワークの生き延び策としてあわてて取り組み始めたとしか評価しようがありません。外国ではキャリアカウンセラーは大学院終了を要するプロフェッショナル専門家です。アメリカにはすでに17万人も存在すると言われていますが、日本では辛うじて百数十人くらいしかいません。直ちにとりかからなければならないことは、キャリアカウンセラー養成のための教官と講座をつくることだと考えますが、厚生労働大臣はそのような構想をお持ちかどうか、そして実行をされるつもりがあるかお聞きいたします。

(不良債権処理とペイオフ)

 不良債権問題についてもおたずねします。「改革先行プログラム」には、特別検査や整理回収機構の機能強化が盛り込まれました。しかし、いずれも、実効性に乏しいかあるいは問題が多く、これで不良債権処理が進むとは考えられません。

 新生銀行の瑕疵担保履行のために5500億円支払われた(追加払い額3120億円)責任、要注意債権の要管理先・破綻懸念先以下への低下が一年以内に55%になったことなどは、金融再生委員会の査定がいい加減なもの、政治的な査定だったことを表しています。柳沢大臣は、国民に謝罪すべきだと考えますが、ご所見を伺います。

 また、みずほグループの不良債権償却予定が2.5倍に激増していることは、資産査定ー引き当てーの甘さを露呈したものです。査定の適正さを広言してきた柳沢大臣の責任は重大です。出処進退を含め、お考えを聞かせてください。

 特別検査は、「これまでの金融庁の検査が適切であった」というフィクションを前提としなければならないため、前回検査のあった今年3月末以降に株価や格付けが著しく低下した企業だけを対象にすると聞いております。すなわち、大手30社などと呼ばれている問題企業は、もともと株価も格付けも低迷しているのであって、その多くは対象外ということになってしまうのではありませんか。そもそも、柳沢金融担当大臣は、99年3月、早期健全化法違反の公的資本増強を強行し、その後も資産査定と引き当ては適切に行われていると平気で述べ立てた張本人です。自らを否定するような結果を出すはずがありません。総理及び柳沢担当大臣に反論があればお聞きします。

 また、RCCの機能強化についても、さすがに不良債権の簿価買い取りなどという恥知らずなプランは自民党もあきらめたようですが、形を変えた銀行救済のための税金投入につながるという点で、「国家的飛ばし」以外の何ものでもありません。その証拠に、この案にはRCCに不良債権の買い取りの入札に参加させ、市場実勢価格を自らつりあげて「時価」と呼ぼうという魂胆の見え透いた仕組みが入っているではありませんか。柳沢金融担当大臣は、そうならないと保証できますか。

 総理、今、不良債権処理は急務です。
全ての問題は、不良債権を大量にふところに抱いた銀行を「健全な銀行」と称して、これに対する公的資金を注入し健全化計画を実行させるという虚構にとらわれたところに始まっています。金融仲介機能を取り戻すためには、銀行の財務体質が健全化されなければならない。そのために厳格な資産査定、貸し倒れ引当金の引き当てが肝要です。 これまでの金融行政を総括し、過ちを率直に認めるべきです。

 今、永田町で聞こえるのは、「第二次補正」、「高速道路9342kmの完遂」、「年末内閣改造」、「ペイオフ凍結延期」の与党の大合唱です。
  日本が断崖絶壁に追いつめられているという危機感のない人達の「なかなか直らない習性」丸出しの、昔覚えた歌のリフレインというべきでしょう。「失われた10年」を繰り返してはならない、「改革なくして成長なし」の前提として「総括なくして改革なし」を指摘し、質問といたします。

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