トップ > ニュース
ニュース
ニュース
2001/10/19
銀行等の株式等の保有の制限及び株式取得機構に関する法律案に対する質問(江崎議員)
記事を印刷する

民主党・無所属クラブ 江崎洋一郎

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました銀行等の株式等の保有の制限及び株式取得機構に関する法律案について質問します。

 「失われた10年」と言われる90年代、歴代自民党政権は、市場原理に対する強度の介入を繰り返してきました。その典型は、株価PKO(Price Keeping Operation;株価維持操作)に代表される、政府介入であり、その結果、市場原理は歪められ、金融機関も真の競争力を失い、不良債権問題はわが国経済にとって最大の重荷となるに至りました。このような環境の下、銀行等保有株式取得機構による銀行保有株式の買い取りを企図した本法律案が政府から提出されました。本法案は、企業と銀行との間に戦後形成された株式持合関係を、新しい時代の中で、より合理的関係に改める観点から、株式持合関係の解消を促進することに目的がおかれております。

株式持合関係を解消することにより、一つには、株式市場の効率化、活性化を図れること。そして、時価会計時代における銀行のバランスシートの健全化、いいかえれば、銀行の自己資本に対し、過大に保有している株式を、銀行の体力に見合った株式数まで減らすこと等の観点から、望ましいことであります。しかし、銀行による株式の大量売却が特定の期間に集中した場合、市場のプライスメカニズムを歪める恐れが強いと考えられます。それは、株価が企業業績等から算出される公正な価値、いわゆるフェアバリューを大きく下回って形成されてしまう状況などを言います。現在明らかになっている銀行株式取得機構のスキームを前提にすれば、今後約3年間で恐らく処分されるであろう銀行等の保有する株式、10数兆円 を一旦一時預かりの倉庫のような形で引き受けたうえで、それを10年間かけて再放出するものであり、それなりの激減緩和効果を有するものと思われます。しかし、銀行株式取得機構の存在自体が株価の押上げ効果をもつものではなく、株式市場活性化にも繋りません。

今後、一万円近辺の展開が続く危機的状況にある株式市場を活性化していくには、1、400兆円にも昇る個人金融資産をはじめ、内外の資金の取込みを積極的に図っていくことは喫緊の課題と言えます。今国会においては、政府は証券税制の見直し等を挙げておりますが、これだけでは株式市場の抜本的改革には至りません。今、株式市場に個人金融資産を取込むにあたり、国民の将来に対する不安を払拭する策が必要と考えますが、塩川財務大臣と竹中経済財政担当大臣にそれぞれ伺います。大臣は一万円近辺の取引が続く現状の株式市場をどのように認識されておられますか?また今後、株式市場活性化に向けどのような抜本策をお持ちなのか、具体的にご提示願いたい。

次に以下、本法律案の内容について順次お伺いします。まず、この法案のスキームが本当に活用されるのかについてお伺いします。本法律案は、森前内閣の政策を継承したものであり、はじめ構想が出たときは形を変えたPKOではないかという厳しい批判にさらされてきました。金融庁も否定的見解を繰り返し、法案化が決まってからも、表向き民間が自主的にやるものであるという形にしようと努めてきた経緯が漏れ伝わっております。このスキームを利用する主体である銀行が、そもそも積極的に活用するのか、疑問に感じざるを得ません。この株式取得機構の利用はあくまでも任意であります。従って、利用するインセンティブが銀行側になければ利用されないこととなるでしょう。現在のスキームでは、銀行が株式取得機構に株を売却した時の譲渡益課税の軽減措置がない一方で、株式売却の都度、売却額の8%の劣後拠出金の負担が求められます。つまり、株式を市場で売却した時は、100のお金を受取れるのに対し株式取得機構に売却した時は8%分が差し引かれ、92のお金しか受取れない仕組みとなっております。

また、そもそも持合解消売りが難しいのは、なかなか取引先の売却同意を得られないことがあります。企業にとって株式の持合関係を維持してきた背景は、安定株主の確保でありました。銀行株式取得機構は株式を持ち切る最終投資家ではありません。単なる一時預かりの倉庫でしかないため、安定株主を失う企業は売却には抵抗するものと考えられます。株式取得機構が企業と銀行の持合解消を円滑に進め、市場売却を補完するセーフティネットの役割を担うのであれば、銀行に活用されるインセンティブを与える必要があると考えますが、柳沢金融大臣にご見解を伺います。

次に、株式取得機構そのものについてお伺いします。機構は、法律に基づき設立される認可法人であります。特殊法人及び認可法人については、小泉総理から、廃止・民営化を前提にゼロベースから見直すよう指示があり、今年度中に特殊法人等整理合理化計画を策定すべく、作業を進めているはずです。その作業のさなかに、新たな認可法人を設立することは、本来、行政改革と整合的ではありません。また、他の特殊法人等と同様、機構が天下り官僚の受け皿になる懸念もあります。これらの点につき、石原行政改革担当大臣のご見解をお聞かせください。

次に、機構を通じた取引の公正性が確保できるかどうかという問題です。機構には、銀行界から役職員が派遣されるとお聞きしています。すなわち、銀行から株を買い取る機構は銀行の支配下にあり、機構は、金融再編により普通銀行とグループ化された信託銀行に株式の管理を委託することになるわけです。こうした中で、果たしてどのようにして公正な買取価格をルール化するのか、また厳正に守るのか、懸念がないとは言えません。また、倒産したマイカルが個人投資家向けに900億円の社債を発行したときも、社債管理会社となった銀行が融資を回収して
いたのではないかという話もあります。インサイダー取引、相場操縦、総会屋への損失補填など、証券市場の信頼を失わせるアンフェアな行為は、過去、枚挙にいとまがありません。公正制を確保するための機構の組織運営とコンプライアンスはどのようにお考えですか?この点について、柳沢金融担当大臣からご説明を受けたいと思います。

 次に、特別勘定による買取資金に対し2兆円の政府保証を付与することについてお伺いします。言うまでもなく、株は上がることもあれば下がることもあります。であれば、機構に株式を売却する銀行は、できるだけ株価が下がりそうな“株式”ばかり選ぼうとするインセンティブが働きます。その結果、機構の財産はどんどんと食いつぶされ、いずれ債務超過に陥る可能性も決して否定できません。本法律案では、機構の解散時に、機構が債務超過であれば、その不足分を政府が補填することとされており、要は最大2兆円の国民負担が発生するおそれがあるわけです。一方で、もし機構に財産が残れば、銀行に分配されます。儲けは銀行、損は政府という分配構造で果たして納税者は納得するのでしょうか?柳沢金融担当大臣のご見解をお伺いします。

次に、株式取得機構が買取った株式について伺います。一度買取った株式は、どのような判断基準で再売却されるのでしょうか?また、どのようなタイミングで売却されるのでしょうか?経済が右肩上がりならいざしらず、現状の経済環境では株式市場の上値は低く推移すると思われます。株価が低迷する中、株式取得機構の動向については株式市場の関心事であります。今後、売却の判断基準を公表するのか、また、公表するのであればどこまでお考えになっているのか、柳沢金融大臣にお伺い致します。金融システムの安定と信任を回復するために、必要悪として機構を設立するということ自体は、あり得ると考えます。しかしながら、そうであれば政府は、その必要性をはっきりとわかり易く国民に説明する義務があると思います。そして、そうした説明は、単なる総論に終始するものでなく、どのようにすれば機構が活用されるのか?公正制が確保できるのか?政府と民間金融機関との間に納得のいくリスクの分担が画られるのか?と言った具体的各論についてもしっかりと国会の場で議論を重ね、明確にしていく必要があります。

 (政府の検討する)整理回収機構(RCC)の機能拡充にせよ、この株式取得機構の設立にせよ、中途半端な機能しか担えないようなモノを作ったのでは、不良債権問題の解決を画るために、あえて政府が介入する意味は乏しいと言わざるを得ません。
 不良債権問題の抜本的な解決なくして、景気の回復はあり得ません!!
こうした考え方自体に,与野党の差はないと思います。ただ、問題解決のための具体的手段とその活用方法については、多いに議論の余地があるところです。そうした観点から、私ども民主党としては株式取得機構を含め、現在、政府与党が提案ないし、検討している諸施策の是非について、この国会の場で真剣な議論を戦わせ、国民の納得の行く結着をつけて行きたいと思います。
私の、今国会に臨む“覚悟”をお伝えし、質問を終わります。

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.