目次
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 地域金融の円滑化に対する寄与の程度に関する評価(第八条―第十七条)
第三章 地域金融円滑化評価委員会(第十八条―第三十三条)
第四章 罰則(第三十四条・第三十五条)
第五章 銀行法等の一部改正(第三十六条・第三十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条
この法律は、地域金融の円滑化に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び金融機関の責務を明らかにするとともに、地域金融の円滑化に対する個々の銀行等の寄与の程度に関する評価の制度を設けること等により、その推進を図り、もって地域経済及び国民経済の健全な発展並びに国民生活の向上に資することを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「銀行等」とは、次に掲げる者(この法律の施行地外に本店を有するものその他政令で定めるものを除く。)をいう。
一 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行(第八条第一項及び第十三条第二項において「銀行」という。)
二 長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行(第八条第一項及び第十三条第二項において「長期信用銀行」という。)
三 信用金庫
四 信用協同組合
五 労働金庫
(基本理念)
第三条
地域金融については、地域経済及び地域住民の生活におけるその果たすべき役割の重要性にかんがみ、中小企業者の事業活動、地域住民の生活その他の当該地域において社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金が十分に供給されることを旨として、その円滑化が図られなければならない。
2
地域金融の円滑化を図るに当たっては、地域経済における中小企業者の事業活動の活性化の必要性にかんがみ、この分野に効果的に資金が供給されるよう特に配慮されなければならない。
3
地域金融の円滑化を図るためには利用者が個々の金融機関の特性及び実態を簡易に知ることができる環境の整備が重要であることにかんがみ、金融機関に関する情報の開示が図られなければならない。
(国の責務)
第四条
国は、前条の基本理念(次条及び第六条において「基本理念」という。)にのっとり、地域金融の円滑化に関し必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条
地方公共団体は、基本理念にのっとり、地域金融の円滑化に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(金融機関の責務)
第六条
預金又は貯金の受入れを業として行う金融機関は、金融業務の公共性にかんがみ、基本理念にのっとり、その業務を行うに当たっては、当該金融機関が業務を行っている地域における資金の円滑な需給に資するとともに、信用の供与に当たっての均等な機会の保障、融資に係る苦情の適切な処理その他利用者の利便の向上を図るように努めなければならない。
2
前項に定めるもののほか、同項の金融機関は、基本理念にのっとり、その業務を行うに際し、国又は地方公共団体が実施する地域金融の円滑化に関する施策に協力する責務を有する。
(年次報告等)
第七条
政府は、毎年、国会に、地域金融の円滑化の状況及び政府が地域金融の円滑化に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2
政府は、毎年、前項の報告に係る地域金融の円滑化の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
第二章 地域金融の円滑化に対する寄与の程度に関する評価
(地域金融の円滑化に対する寄与の程度に関する評価)
第八条
地域金融円滑化評価委員会(以下この章において「委員会」という。)は、個々の銀行等の業務の運営に関する次に掲げる事項について調査を行い、その結果に基づき、個々の銀行等について、おおむね二年(政令で定める銀行及び長期信用銀行にあっては、一年)に一回、地域金融の円滑化に対する寄与の程度に関する評価を行うものとする。
一 融資の状況に関する事項
二 融資の手続に関する事項
三 その他地域金融の円滑化に関し必要な事項
2
前項の評価の基準及び方法は、政令で定める。
3
前項の政令を定めるに当たっては、あらかじめ、広く国民の意見を聴かなければならない。
(意見の聴取)
第九条
委員会は、前条第一項の評価を行おうとするときは、あらかじめ、当該銀行等から意見を聴かなければならない。
(通知)
第十条
委員会は、第八条第一項の評価を行ったときは、その理由を付して、政令で定めるところにより、遅滞なく、当該銀行等に書面で通知しなければならない。
(国会に対する報告等)
第十一条
委員会は、毎年、第八条第一項の調査の結果及び評価を記載した報告書を作成し、これを内閣総理大臣を経由して国会に提出するとともに、政令で定めるところにより、一般に公表しなければならない。
(報告書の提出)
第十二条
銀行等は、事業年度ごとに、政令で定めるところにより、地域金融の円滑化に関する事項で政令で定めるものを記載した報告書を作成し、委員会に提出しなければならない。
(報告又は資料の提出)
第十三条
委員会は、第八条第一項の調査を行うため必要があると認めるときは、銀行等(代理店を含む。)に対し、その業務又は財産の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができる。
2
委員会は、第八条第一項の調査を行うため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該銀行等の子会社(当該銀行等が銀行である場合には銀行法第二条第八項に、長期信用銀行である場合には長期信用銀行法第十三条の二第二項に、信用金庫である場合には信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第三十二条第六項に、信用協同組合である場合には協同組合による金融事業に関する法律(昭和二十四年法律第百八十三号)第四条第一項に、労働金庫である場合には労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)第三十四条第五項にそれぞれ規定する子会社(子会社とみなされる会社を含む。)をいう。次項及び次条において同じ。)に対し、当該銀行等の業務又は財産の状況に関し参考となるべき報告又は資料の提出を求めることができる。
3
銀行等の子会社は、正当な理由があるときは、前項の規定による報告又は資料の提出を拒むことができる。
(立入検査)
第十四条
委員会は、第八条第一項の調査を行うため必要があると認めるときは、当該職員に銀行等(代理店を含む。)の事務所その他の施設に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2
委員会は、前項の規定による立入り、質問又は検査を行う場合において特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該職員に当該銀行等の子会社の施設に立ち入らせ、当該銀行等に対する質問若しくは検査に必要な事項に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3
前二項の場合において、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
4
第一項及び第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
5
前条第三項の規定は、第二項の規定による銀行等の子会社に対する質問及び検査について準用する。
(政令への委任)
第十五条
この章に定めるもののほか、第八条第一項の調査及び評価に関し必要な事項は、政令で定める。
(権限の委任)
第十六条
委員会は、政令で定めるところにより、この章の規定による権限(第八条第一項の評価を除く。)の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。
2
前項の規定により財務局長又は財務支局長に委任された権限に係る事務に関しては、委員会が財務局長又は財務支局長を指揮監督する。
(経過措置)
第十七条
この章の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第三章 地域金融円滑化評価委員会
(設置)
第十八条
内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、内閣府の外局として、地域金融円滑化評価委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(任務)
第十九条
委員会は、第八条第一項の評価の適正を図ることを任務とする。
(所掌事務)
第二十条
委員会は、前条の任務を達成するため、第八条第一項の調査及び評価に関する事務をつかさどる。
(職権の行使)
第二十一条
委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。
(組織)
第二十二条
委員会は、委員長及び委員四人をもって組織する。
2
委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3
委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(委員長及び委員の任命)
第二十三条
委員長及び委員は、地域金融及び地域経済に関して優れた識見と経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2
委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員が生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。
3
前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならない。
(任期)
第二十四条
委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2
委員長及び委員は、再任されることができる。
3
委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
(身分保障)
第二十五条
委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 破産の宣告を受けたとき。
二 禁以上の刑に処せられたとき。
三 委員会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認められたとき。
(罷免)
第二十六条
内閣総理大臣は、委員長又は委員が前条各号のいずれかに該当するときは、その委員長又は委員を罷免しなければならない。
(服務等)
第二十七条
委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
2
委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3
委員長及び委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。
4
委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(会議)
第二十八条
委員会は、委員長が招集する。
2
委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3
委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
4
委員会が第二十五条第三号の規定による認定をするには、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。
(規則の制定)
第二十九条
委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、地域金融円滑化評価委員会規則を制定することができる。
(事務局)
第三十条
委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
2
委員会の事務局の内部組織は、地域金融円滑化評価委員会規則で定める。
(資料提出の要求等)
第三十一条
委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、日本銀行、預金保険機構又は銀行等に対し、資料の提出、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2
委員会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(意見の申出)
第三十二条
委員会は、内閣総理大臣又は関係行政機関の長に対し、その所掌事務の遂行を通じて得られた地域金融の円滑化に関する施策についての意見を述べることができる。
(委員会の運営)
第三十三条
この章に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、委員会が定める。
第四章 罰則
第三十四条
次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一 第十二条の規定による報告書の提出をせず、又は当該報告書に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしてその書類の提出をした者
二 第十三条第一項又は第二項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
三 第十四条第一項又は第二項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第三十五条
法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの(以下この条において「人格のない社団等」という。)を含む。以下この項において同じ。)の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する。
2
人格のない社団等について前項の規定の適用がある場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につき当該人格のない社団等を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
第五章 銀行法等の一部改正
(銀行法の一部改正)
第三十六条
銀行法の一部を次のように改正する。
第三十一条に次の一項を加える。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による審査に当たつては、公聴会を開き、利害関係人の意見を聴かなければならない。
第三十七条に次の一項を加える。
4 内閣総理大臣は、第二項の規定による審査に当たつては、公聴会を開き、利害関係人の意見を聴かなければならない。
(金融機関の合併及び転換に関する法律の一部改正)
第三十七条
金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和四十三年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。
第六条第八項を同条第九項とし、同条第七項中「第四項」を「第五項」に改め、同項を同条第八項とし、同条第四項から同条第六項までを一項ずつ繰り下げ、同条第三項中「前項第二号」を「第二項第二号」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 内閣総理大臣は、前項の規定による審査に当たつては、公聴会を開き、利害関係人の意見を聴かなければならない。
附 則
(施行期日)
第一条
この法律は、平成十三年十月一日から施行する。ただし、第二十三条第一項中両議院の同意を得ることに関する部分は、公布の日から施行する。
(最初の委員長及び委員の任命)
第二条
この法律の施行後最初に任命される委員会の委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第二十三条第二項及び第三項の規定を準用する。
(評価に関する経過措置)
第三条
第八条第一項の評価は、銀行等の平成十四年四月一日以後に開始する事業年度における業務の運営に関する同項の調査の結果に基づいて行うものとする。
(報告書の提出に関する経過措置)
第四条
第十二条の規定は、銀行等の平成十四年四月一日以後に開始する事業年度に係る同条に規定する報告書について適用する。
(銀行法の一部改正に伴う経過措置)
第五条
第三十六条の規定による改正後の銀行法第三十一条第二項及び第三十七条第四項の規定は、この法律の施行の日(以下この条及び次条において「施行日」という。)以後に申請があった同法第三十条又は第三十七条第一項の認可に係る審査について適用し、施行日前に申請があった第三十六条の規定による改正前の銀行法第三十条又は第三十七条第一項の認可に係る審査については、なお従前の例による。
(金融機関の合併及び転換に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第六条
第三十七条の規定による改正後の金融機関の合併及び転換に関する法律第六条第三項の規定は、施行日以後に申請があった同条第一項の認可に係る審査について適用し、施行日前に申請があった第三十七条の規定による改正前の金融機関の合併及び転換に関する法律第六条第一項の認可に係る審査については、なお従前の例による。
(政令への委任)
第七条
附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
第八条
特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第九号の次に次の一号を加える。
九の二 地域金融円滑化評価委員会の委員長及び委員
別表第一中「大臣政務官及び長官政務官」をに、「公害等調整委員会の常勤の委員」をに改める。
(長期信用銀行法の一部改正)
第九条
長期信用銀行法の一部を次のように改正する。
第十七条中「第三十七条第二項」の下に「及び第四項」を加える。
(銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律の一部改正)
第十条
銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律(平成九年法律第百二十一号)の一部を次のように改正する。
第十二条第四項中「第三十一条」を「第三十一条第一項」に改める。
(内閣府設置法の一部改正)
第十一条
内閣府設置法の一部を次のように改正する。
第四条第三項中第六十一号を第六十二号とし、第六十号の次に次の一号を加える。
六十一 地域金融の円滑化に関する法律(平成十三年法律第 号)第二十条に規定する事務
第六十四条の表中金融庁の項の次に次のように加える。
地域金融円滑化評価委員会
地域金融の円滑化に関する法律
(財務省設置法の一部改正)
第十二条
財務省設置法(平成十一年法律第九十五号)の一部を次のように改正する。
第十三条第一項中「各号に掲げる事務」の下に「及び地域金融の円滑化に関する法律(平成十三年法律第 号)第二十条に規定する事務」を加える。
第十四条第二項中「掲げる事務」の下に「及び地域金融の円滑化に関する法律第二十条に規定する事務」を加える。
理 由
地域経済及び国民経済の健全な発展並びに国民生活の向上に資するため、地域金融の円滑化に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び金融機関の責務を明らかにするとともに、地域金融の円滑化に対する個々の銀行等の寄与の程度に関する評価の制度を設けること等により、その推進を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約六億円の見込みである。
|