国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)の一部を次のように改正する。
目次中「第一節 通則(第一条―第四条)」を「第一節 通則(第一条―第四条) 第一節の二 税務行政の基本理念等(第四条の二―第四条の四)」に、
「第三節 賦課課税方式による国税に係る税額等の確定手続(第三十一条―第三十三条)」を「第三節 賦課課税方式による国税に係る税額等の確定手続(第三十一条―第三十三条) 第四節 質問又は検査の事前通知等(第三十三条の二・第三十三条の三)」に改める。
第一条中「公正な運営」を「運営における公正の確保と透明性の向上」に改め、「履行」の下に「及び国民の権利利益の保護」を加える。
第一章第一節の次に次の一節を加える。
第一節の二 税務行政運営の基本理念等
(税務行政運営の基本理念)
第四条の二 税務行政の運営は、国民の納税義務の適正かつ円滑な履行が確保されるよう、公正を旨として行われなければならない。
2 国税当局は、税務行政に関する国民の理解を得るため、必要な情報の提供を行うとともに、税務行政に関する国民の意見、苦情等に誠実に対処しなければならない。
3 国税当局は、その職務の執行に当たつては、国民のプライバシーを尊重しなければならない。
4 国税当局は、その職務の執行に当たつては、国民の権利利益の保護に常に配慮するとともに、国民が納税に関して行つた手続は、誠実に行われたものとして、これを尊重することを旨としなければならない。
(税務行政運営の基本方針)
第四条の三 国税庁長官は、前条に定める税務行政運営の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのつとり、税務行政の運営の基本となる方針を定め、これを公表しなければならない。
(基本理念等に関する文書の作成及び普及)
第四条の四 国税当局は、基本理念及び納税の主体たる国民の権利利益の保護のために必要な事項に関する文書を作成し、及び普及しなければならない。
2 前項の文書は、平易な表現を用い、納税の主体たる国民の立場に立つて書かれたものでなければならない。
第二章に次の一節を加える。
第四節 質問又は検査の事前通知等
(税額の確定に係る調査等のための質問又は検査の事前通知等)
第三十三条の二 国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員は、納付すべき税額の確定に係る調査等のための所得税法第二百三十四条第一項の規定その他の政令で定める国税に関する法律の規定による質問又は検査(以下この条及び次条においてそれぞれ単に「質問」又は「検査」という。)をしようとする場合には、質問又は検査をする日の十四日前までに、その相手方に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。ただし、検査をしようとする物件が隠滅される等調査の目的を達成することが著しく困難になると認めるに足りる相当な理由がある場合は、この限りでない。
一 相手方の氏名(法人については、名称)及び住所又は居所
二 当該職員の氏名及び所属する官署
三 調査を必要とする主たる理由
四 質問又は検査の根拠となる法令の条項
五 質問をする事項又は検査をする物件
六 質問又は検査をする日時及び場所
七 次項に規定する変更の申出に関する事項
八 その他財務省令で定める事項
2 前項の通知を受けた者は、当該通知をした国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員に対して、質問又は検査をする日時又は場所の変更を申し出ることができる。
3 国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員は、第一項ただし書に規定する場合において、質問又は検査をしようとするときは、その相手方に対し、同項第一号から第五号まで及び第八号に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
(税額の確定に係る調査の結果に関する情報の提供)
第三十三条の三 国税庁長官、国税局長、税務署長又は税関長は、当該職員が質問又は検査を行つた場合には、当該質問又は検査の相手方に対し、当該質問又は検査に係る調査の結果に関する情報を提供するものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
2 この法律による改正後の国税通則法第三十三条の二の規定は、この法律の施行の日から起算して二十日を経過した日以後に行われる同条第一項に規定する質問又は検査について適用する。
理 由
税務行政の運営について、基本理念を明らかにし、及び基本方針を策定することとするとともに、国税に関する法律の規定による質問又は検査の事前通知制度を定める等の措置を講じ、もって税務行政における国民の権利利益の保護に資する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
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