(目的)
第一条
この法律は、証券取引委員会の設置並びに任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するため必要な組織を定めることを目的とする。
(設置)
第二条
内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、内閣府の外局として、証券取引委員会を設置する。
(任務)
第三条
証券取引委員会は、証券取引及び金融先物取引の公正を確保し、有価証券の投資者及びこれに準ずる者の保護を図るとともに、有価証券の流通等の円滑を図ることを任務とする。
(所掌事務)
第四条
証券取引委員会は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
一
国内における証券取引及び金融先物取引に係る制度の企画及び立案に関すること。
二
次号イからヌまでに掲げる者の行う国際業務に関する制度の企画及び立案に関すること。
三
次に掲げる者の検査その他の監督に関すること。
イ 証券業を営む者
ロ 証券金融会社
ハ 投資信託委託業者
ニ 投資法人
ホ 有価証券市場を開設する者
ヘ 証券業協会
ト 投資顧問業(有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(昭和六十一年法律第七十四号)第二条第二項に規定する投資顧問業をいう。)を営む者
チ 金融先物取引業を営む者
リ 金融先物市場を開設する者
ヌ 特定目的会社、特定譲渡人及び原委託者(それぞれ資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項、第百五十条の三及び第百六十三条第一項に規定する特定目的会社、特定譲渡人及び原委託者をいう。)
四
投資者保護基金の業務及び組織の適正な運営の確保に関すること。
五
投資者保護基金による返還資金融資に係る適格性の認定を行うこと。
六
証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二章から第二章の四までの規定による有価証券届出書、有価証券報告書その他の書類の審査及び処分に関すること。
七
企業会計の基準の設定その他企業の財務に関すること。
八
公認会計士、会計士補及び監査法人に関すること。
九
株式、社債その他の有価証券の保管、振替及び登録に関すること。
十
証券取引及び金融先物取引に係る知識の普及に関すること。
十一
証券取引及び金融先物取引に係る犯則事件の調査に関すること。
十二
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第五章の規定に基づいて、届出及び通知を受けた事項並びに提供を受けた情報の整理及び分析並びに疑わしい取引に関する情報の提供を行うこと。
十三
所掌事務に係る国際協力に関すること。
十四
政令で定める文教研修施設において所掌事務に関する研修を行うこと。
十五
有価証券の流通等の円滑を図るための環境の整備に関する基本的な政策に関する企画及び立案並びに推進に関すること。
十六
前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき証券取引委員会に属させられた事務
(組織)
第五条
証券取引委員会は、委員長及び委員四人をもって組織する。
2
委員長は、会務を総理し、証券取引委員会を代表する。
3
委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(委員長及び委員の任命)
第六条
委員長及び委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2
委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員が生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、委員長又は委員を任命することができる。
3
前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならない。
(委員長及び委員の任期)
第七条
委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2
委員長及び委員は、再任されることができる。
3
委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
(委員長及び委員の身分保障)
第八条
委員長及び委員は、証券取引委員会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められた場合又は職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認められた場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
(委員長及び委員の罷免)
第九条
内閣総理大臣は、委員長又は委員が前条に該当する場合は、その委員長又は委員を罷免しなければならない。
(委員長及び委員の服務等)
第十条
委員長及び委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
2
委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3
委員長及び委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。
(委員長及び委員の給与)
第十一条
委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(会議)
第十二条
証券取引委員会は、委員長が招集する。
2
証券取引委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。
3
証券取引委員会の議事は、出席者の過半数をもってこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
(勧告)
第十三条
証券取引委員会は、必要があると認めるときは、証券取引又は金融先物取引の公正を確保するため行うべき行政処分その他の措置について内閣総理大臣に対し勧告することができる。
2
証券取引委員会は、前項の勧告をした場合には、内閣総理大臣に対し、当該勧告に基づいてとった措置について報告を求めることができる。
(建議)
第十四条
証券取引委員会は、必要があると認めるときは、証券取引又は金融先物取引の公正を確保するために必要と認められる施策について内閣総理大臣又は財務大臣に建議することができる。
(公表)
第十五条
証券取引委員会は、毎年、その事務の処理状況を公表しなければならない。
(事務局)
第十六条
証券取引委員会の事務を処理させるため、証券取引委員会に事務局を置く。
(関係行政機関との協力)
第十七条
証券取引委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2
証券取引委員会及び証券等関連業者(証券取引委員会の所掌に係る事業に類似し、又は密接に関連する事業を営む者をいう。)に対する検査を所掌する行政機関の長は、効率的な検査の実施のため、意見の交換を図るとともに、それぞれの求めに応じ、それぞれの職員に協力させることができる。
(公認会計士審査会)
第十八条
別に法律で定めるところにより証券取引委員会に置かれる審議会等は、公認会計士審査会とする。
2
公認会計士審査会については、公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号。これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。
附 則
(施行期日)
第一条
この法律は、平成十四年一月一日から施行する。ただし、次条第一項の規定は、公布の日から施行する。
(最初の委員長及び委員の任命)
第二条
第六条第一項の規定による証券取引委員会の委員長及び委員の任命のために必要な行為は、この法律の施行前においても行うことができる。
2
この法律の施行の日以後最初に任命される証券取引委員会の委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第六条第二項及び第三項の規定を準用する。
(政令への委任)
第三条
前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(関係法律の整理)
第四条
この法律の施行に伴う関係法律の整理については、別に法律で定める。
理 由
証券取引及び金融先物取引の公正を確保し、有価証券の投資者及びこれに準ずる者の保護を図るとともに、有価証券の流通等の円滑を図るため、内閣府の外局として証券取引委員会を新たに設置することとし、その任務及び所掌事務並びに組織を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
本案施行に要する経費
本案施行に要する経費としては、平年度約百三十億円の見込みである。
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