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2001/02/09
平成13年度における公債の発行の特例に関する法律案、法人税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案に対する質問/五十嵐議員
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民主党・無所属クラブ 五十嵐 文彦

私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま趣旨説明のありました来年度の歳入関連三法案について、財務大臣及び関係大臣に質問いたします。

(米海軍原潜による宇和島水産高校実習船衝突・沈没事故について)

本題に入る前に、この度の宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」衝突事故の被害に遭われた方々とそのご家族に心からお見舞いを申し上げます。この際、事故に関わる政府及び官邸の対応につきまして、何点か質問致します。

まず、私たちはこの事故の重大性に鑑み、総理の答弁が欠かせないと考え、要求してまいりましたが、総理がこの場での答弁を回避されたことに強い遺憾の意を表明します。

総理は、先日、会見で、「危機管理の対象ではなく事故」と言っておられる。これは極めて由々しき発言です。この事故は、米原潜によるわが国民間船への衝突であり、米側の対応によっては、「いざという時に米軍は日本国民を守ってくれるのか」という根本的な疑念を日本国民に与えかねず、日米両国間の信頼関係にもとづく同盟関係に深刻な影響を及ぼしかねない発展性を当初から持っていました。米側の異例の迅速な陳謝はまさにそれを懸念したものであり、わが国総理に同等の懸念の感覚がないことは誠に恥ずべきことだといえます。総理はことの本質が全くわかっていません。福田官房長官、河野外務大臣、伊吹危機管理担当大臣の御所見を伺います。総理の判断を、指導者として適切とお考えでしょうか。

政府の米国に対しての対応についてお尋ねします。民間人が操舵をしていたというようなにわかには信じがたい事実が判明したことも受けて、政府は米国政府に対し、今後どのような対応をするのですか。また被害者の方々への補償等についてどのような折衝をされるのか、官房長官、外務大臣お答えください。

 さらに、これに関連し、森総理が原潜事故発生の際にプレーしていた神奈川県のゴルフクラブ「戸塚カントリー倶楽部」の会員権を知人から無償で借り受け自分名義としていた問題についてお尋ねします。多くの税務専門家が、贈与と見なすべき行為だと指摘しており、悪質な脱法行為の疑いをもたれています。国民に納税をお願いをする立場の総理のこのような行為について、どうお考えか、福田官房長官、宮沢財務大臣に伺います。


(特例公債法案について)

さて、特例公債法案についてお尋ねいたします。二〇〇一年度末の国債残高は三百八十九兆円、国・地方合わせた長期債務残高は六百六十六兆円にも上るとされております。「二兎を追う者は一兎をも得ず」と景気優先を掲げた小渕内閣、その路線を継承した森内閣のもとで、債務残高は約百兆円も増加し、その結果、わが国の財政赤字や債務残高の対GDP比は、いずれも先進国中最悪の水準に到達しております。政府・与党は将来世代に与える重荷をどのように考えているのか。第二臨調以降の赤字公債依存体質からの脱却努力はなんだったのか。その責任感、使命感の欠如に強い憤りを覚えます。

これだけの財政赤字を垂れ流しながら進められて来た景気対策ですが、結局、一兎を追いながら、その一兎をも得られなかったのではありませんか。株価然り、個人消費然り、雇用情勢然りであります。政府の楽観的な見通しとは正反対に、景気の下振れが懸念されてさえおります。それもこれも、政府・与党がわが国の経済構造改革や財政構造改革を先送りし続け、一時的な景気浮揚効果さえも怪しくなった公共事業中心のバラマキ景気対策を繰り返して来たからにほかなりません。

財務省の「財政の中期展望」によると、このままの政策を継続すれば、公債発行額、公債依存度は十四年度以降再び急激に増加し、もはや手のつけようのない発散状況に至るとしています。宮澤財務大臣は、この「中期展望」は、政策努力を加味しない機械的推計だと強調しておられますが、ではいったい今後どのような政策努力、政策転換をすれば、この中期展望に描かれた将来試算のような状況から脱却できるとお考えなのか。ぜひとも示していただきたい。


(税制改正について)

 次に、税制改正二法案についてお尋ねいたします。企業再編税制を盛り込んだ法人税法改正案につきましては、租税回避的な悪用には十分留意が必要であるものの、基本的に経済構造改革に資するものと考えております。他方、年度税制改正を中心とする租税特別措置法等改正案につきましては、多々問題があります。与党は、当面景気回復に重点を置くとの立場から、株式譲渡益課税の源泉分離課税の二年延長、大型住宅ローン減税の二年半延長などを決めました。しかし、これらは、総じて、何らの改革理念も財政健全化への道筋も示さず、無責任な減税や朝令暮改・改革先送りを寄せ集めただけのものではありませんか。このような政府・与党の姿勢は、放漫な財政支出とあいまって、近い将来の大増税を不可避にするものと言わざるを得ません。以下具体的に申し上げます。

 第一に、株式譲渡益課税問題についてお尋ねします。改正案は、経過措置として二年間存続が認められた源泉分離選択課税制度をさらに二年間延長しようというものであります。この制度は、その時々の損益に応じて有利な方式を選択できること、実際の利益とは無関係に譲渡代金の五%を利益とする「みなし課税」であること、超過累進税率の適用されない分離課税であることの三重の意味で、主要国に類を見ない不公平税制であり、不公平是正の観点からその廃止が決定されたものだったのではありませんか。今回の改正案は、まさに改革先送りの典型ではないでしょうか。

 申告分離課税一本化の株価への影響を懸念する意見もありますが、株価の低迷は、基本的に経済構造改革の遅れなどわが国経済の現状と政府の経済運営への不信感を表明したものというべきであり、このような朝令暮改の税制改正が株価対策になるとは考えられません。個人投資家を育み、わが国企業の資金調達を直接金融にシフトさせるという証券市場改革の重要性は言うを待ちませんが、そのためにも、むしろ安定的な税制の確立こそが必要と考えます。その意味でも、民主党は、納税者番号制度を早急に整備し、株式譲渡益等を他の所得と合算し総合課税する方向での抜本改革こそが求められていると考えます。また、総合課税化までの間は、多様な金融商品間のバランスに配慮しつつ、個人の資産投資における税制の中立性を確保するという観点に立ち、申告分離課税とした上で、利子・配当と同じ二〇%の税率で課税することが適当と考えますが、これらの点につき、宮澤財務大臣の所見をお聞かせ下さい。

 第二に、新住宅ローン減税制度についてお尋ねします。景気対策のため二年前に導入された控除期間十五年間という大型ローン減税の期限が到来することから、控除期間を若干短縮するなどした上で、さらに二年半継続するというものですが、そもそも、期間を限ってこそ景気対策としての効果が期待できるのであり、このような拡充措置をずるずると継続することは、モラルハザードを生むと言わざるを得ません。また、持家取得政策のために長期にわたって毎年の所得税をゼロにするような税制上の優遇措置は、過去のローン返済に苦しんでいる人々や民間賃貸住宅居住者等との間での負担の公平という観点から見ても問題があります。民主党は、当初の方針通り本年六月居住分までで現行制度を終了し、その後は少なくとも景気中立型のローン減税制度に戻すべきと考えますが、これらの点につき、宮澤財務大臣の所見をお聞かせ下さい。

 第三に、NPO支援税制についてお尋ねいたします。価値観が多様化し複雑化した現在の社会において、政府や行政の単一的・独占的な公益概念は崩れ、市民公益を実現する民間非営利・公益セクターの役割の重要性は今後ますます増大していきます。特定非営利活動法人(NPO法人)については、市民のニーズに合致し、新しく多様できめ細かな社会的サービスを供給する主体として、また、市民による自由な社会貢献活動として、その育成を支援しなければなりません。
ところが、今回提案されたNPO税制案は、ほとんどのNPO法人がその認定を受けることができないような案となっており、全く不十分です。

私たち民主党は、NPOとは多様な市民公益を実現しする自立した組織であるとの認識から巾広く税制支援措置を組み立て、現在対案を作成中です。一方、政府・与党は、NPO活動とは無償のボランティア活動であり、財政的に自立する必要もないという認識であるとのメッセージが税制措置の中に見て取れるのです。

今からでも遅くはありません。NPO法人に対する税制支援措置、とりわけ認定NPO法人の要件を見直すつもりはありませんか、宮澤財務大臣の見解をお伺いいたします。

最後に、消費税の今後の見直しについてお尋ねします。消費税は、人口の高齢化がいっそう進む中、増大する社会保障費等の負担を広く国民が分かち合う上で重要な税目であります。しかし、現在の消費税は国民から信頼される公平な制度になっているとは言えません。免税点、簡易課税制度、滞納問題、そして逆進性の問題などについて抜本的な改革が求められているのではないでしょうか。民主党は、仕入税額控除の仕組みについて欧州諸国のようなインボイス制度を導入し、免税点については大幅に引き下げ、簡易課税制度も適用事業者を大幅に限定すべきだと考えます。また、滞納を防止するため、一度滞納した事業者については毎月納付とすることが効果的ではないでしょうか。逆進性の解消策としては、カナダのGST(消費税 Goods and Service Tax)で行われているような世帯人員数等に応じた税額還付方式を導入すべきと考えます。これらの点も含め、政府としては今後消費税の見直しを図るつもりがあるのかどうか、宮澤財務大臣の答弁を求め、質問を終わります。

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