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2000/12/08
2001年度税制改正について
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民主党

1.基本的視点
景気はゆるやかな改善を続けているが、景気回復感は広がっていない。政府・与党が景気対策を繰り返せば繰り返すほど、わが国経済の構造改革は先送りされ、財政規律を失って国・地方の財政赤字をいっそう拡大させている。

自公保政権は、何らの改革理念も財政再建への道筋も示さないまま、景気対策と称して無責任な減税、高額所得者を優遇する相続税の累進税制緩和、キャピタルゲイン課税などの改革先送り策を続けているが、こうした方策は、もはや景気刺激に積極的効果ももたらさないばかりか、税制のゆがみと不公平、モラル・ハザードを拡大させるだけである。

今求められているのは、これまでの無責任で場当たり的な租税回避路線から経済活動に中立型の税制に転換し、まもなく到来する21世紀に向け、国民が安心できるしっかりとした社会保障の財源基盤を確立するとともに、税制を簡素でわかりやすいものにあらため、税制の公平感と信頼を取り戻すことである。

また、地方分権のための国から地方への税源移譲、活力あるニュービジネス・ベンチャー企業等の新規創業支援、地球環境保全のための資源循環型経済・社会システムへの転換、NPO等による市民中心のしなやかな地域コミュニティーの形成等の課題に対応して、小手先でない思い切った制度改革を進めるべきである。

2.2001年度税制改正の主要項目について
(1)NPO寄付金控除

1. 市民のニーズに合致し、新しく多様できめ細かな社会的サービスを供給する主体として、また、市民による自由な社会貢献活動として期待される特定非営利活動法人(NPO法人)について、その育成を支援するため、寄付金税制・法人税制上の特例を設けるべきである。
2. 税制上の特例の適用にあたっては、法人の収入・支出、活動内容、情報公開等について客観的な基準を設け、第三者機関等がこれを審査するものとし、制度の適正さを担保するものとすべきである。
3. 寄付金控除については、小額寄付についての裾切り等は行わず、また所得控除に加えて一定の範囲での税額控除を選択できるものとすべきである。(詳細別紙)

(2)株式譲渡益課税

1. 申告分離課税一本化は、不公平税制是正の観点から、すでに2年前に有価証券取引税廃止とセットで法改正を行ったものである。株式譲渡益に対する源泉分離課税を設けている国は主要国中わが国のみであり、その存続は国際的な流れにも逆行する。与党の源泉分離課税存続という方針は、このような改革の先送りにほかならず、賛成できない。
2. 申告分離課税一本化の株価への影響について懸念する意見があるが、株価の低迷は、経済構造改革の遅れなどわが国経済の現状と政府の経済運営への不信感を表したものというべきであり、このような朝令暮改の税制改正が株価対策になるとは考えられない。個人投資家を育み、わが国企業の資金調達を直接金融にシフトさせることが重要であることは言うまでもないが、そのためにも、安定的な税制の確立が必要である。
3. 今後はむしろ納税者番号制度の導入により他の所得と合算し総合課税する方向で抜本改革を進めるべきである。総合課税化までの間は、多様な金融商品間のバランスに配慮しつつ、個人の資産投資における税制の中立性を確保するという観点に立ち、株式譲渡益を申告分離課税とした上で、利子・配当とともに一律20%の税率で課税することとすべきである。

(3)住宅ローン減税

1. 2001年6月に期限が到来する控除期間15年間の住宅ローン減税については、実施当初こそ住宅着工戸数の増加をみたが、当分の需要を相当に先食いした結果、本年に入ってからは横ばいで推移しており、景気対策としての効果は薄れてきている。期間を限ってこそ景気対策としての効果が期待できるのであり、このように思い切った拡充措置をずるずると継続することはモラル・ハザードを生むと考えられる。与党の方針は、当初の建設省案よりも控除期間を若干短縮したが、基本的に景気対策型の住宅ローン減税を継続しようというものであり、賛成できない。
2. 持ち家取得政策のために長期にわたって毎年の所得税をゼロにするような税制上の優遇措置は、持ち家取得者と民間賃貸住宅居住者等の間の負担の公平の観点から見ても問題があり、これを正当化しうる合理的な政策目的も見出せない以上、当初の方針通り来年6月居住分までで終了し、01年7月以降は、景気中立型の6年間合計限度額150万円程度の制度に戻すべきである。
3. なお、今後、持ち家取得政策として、引き続き税制上の優遇策を維持していく必要があるかどうかも検討課題と言えよう。

(4)相続税・贈与税

1. 80年代末以来、所得課税から消費課税へのシフト、所得課税の累進税率構造の緩和が相当程度進んできたが、相続税・贈与税まで累進税率構造を緩和することは、機会の平等の確保、所得再分配政策の観点から問題が多い。フローの勤労所得に対する課税と、相続によって生じる資産への課税とは、収入の性質、課税の根拠も異なっており、これらの最高税率を近づけなければならない必然性、政策的必要性はない。むしろ、バブル期の地価高騰等への配慮から基礎控除や宅地の評価を見直してきた結果、相続税の課税ベースが著しく狭まっており、これを適正な水準に戻すことを検討する必要がある。
2. 中小企業の事業承継円滑化のために相続税率を引き下げるべきとの議論もあるが、すでに事業用宅地の評価の特例があり、非上場株式の評価方法や利子税についても今年度改正においてすでに措置済であること、税制以外に起因する問題も少なくないこと、確実に事業承継される保証もないこと等の問題点も考慮すべきである。今後、状況の変化に応じて、課税ベース・税率構造など相続税の基本的なあり方の議論に絡めずに、納税猶予、課税繰延などの課税上の措置の見直しを検討すべきである。
3. 贈与税の基礎控除、住宅取得資金贈与の特例については、親の援助を受けられる者についてのみ税制上もさらに優遇することが公平と言えるか問題があるものの、現行の基礎控除額60万円が四半世紀にわたって据え置かれてきたことも踏まえ、基礎控除額を100万円程度に引き上げることは容認できる範囲であると考える。世代間の資産移転や住宅投資の促進につながるというという理由から、基礎控除額を200万円程度に引き上げるべきとする主張もあるが、住宅投資の促進という景気対策上の理由からこのように税制をいじることは歪みや不公平を拡大するものであり、不適切である。

(5)企業再編税制

1. 経済情勢に応じた企業の組織再編を容易にするため、商法改正により会社分割制度が創設されたことを踏まえ、企業分割・合併等による資産移転のうち、通常の資産の移転とは異なり、分割・合併等の前後で経済的実態に実質的な変更がないような企業組織再編については、税制上も中立的な取り扱いを行うことが適当である。
2. ただし、組織再編成の形態は多種多様であり、租税回避の手段として濫用されるおそれも少なくない。このため、企業分割・合併税制を整備するにあたっては、実効性のある租税回避防止策を講じることが不可欠である。

3.その他の項目
(1)消費税納税の適正化

1. 消費者の負担した消費税が事業者の運転資金等に流用され、資金繰りの悪化から国庫に納められずに滞納となってしまうケースが頻発している。このような事態を放置することは、消費税を負担する国民から見れば著しい不公平と言わざるを得ず、消費税への国民の信頼を根底から損なうものである。消費税の納付回数、ペナルティ等について早急に検討し、実効性ある滞納防止策を講じるべきである。
2. また、仕入れ税額控除におけるインボイス制度の導入と簡易課税の見直し、免税点の引き下げ等を進めるべきである。

(2)法人事業税外形標準化

1. 法人事業税は、都道府県税収の中で大きなウェイトを占める反面、その税収が景気の影響を強く受けるため、都道府県財政の不安定化を招いている。外形標準課税の導入は、地域における応益課税という意味での税負担の公平に資するだけでなく、都道府県財政の安定化という面でも有力な選択肢の一つである。
2. しかし、来年度税制改正に向けて自治省が提示していた具体案は、導入を急ぐあまり、複雑な例外措置等を組み合わせた中途半端なものとなっており、本来の応益課税としての外形標準課税の考え方から見て賛同しがたい部分がある。引き続き、外形標準課税の具体的なあり方、導入時期について、中小企業等の状況等にも留意しつつ検討を進めるべきである。

(3)酒税

酒類についての消費者の嗜好が多様化する中で、酒類間での税負担の格差はできるだけ縮小し公平かつ簡素な仕組みに改めていくべきと考える。現在、ビールについては突出して重い酒税額が課されており、これをそのままにして発泡酒の酒税額をビールに合わせる方向で引き上げることは、現行税制の枠内でのメーカーの商品開発努力を踏みにじるアンフェアなルール変更であるだけでなく、中低所得者層狙い撃ちの大衆増税となり、容認しがたいものである。

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