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2000/04/27
自賠責保険制度改革
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民主党自賠責保険PT

第一  自賠責保険料を乗用車で、5600円値下げします!

政府再保険制度は廃止します。約2兆円の滞留資金は保険契約者に還元します。現在の乗用車保険料(2年間)27,600円を22,000円に5年間引き下げます(20%相当)。6年目からはノーロス・ノープロフィット原則を徹底し、自動車事故率と保険料率の対応関係が明白となるような仕組みを作ります。

第二  被害者救済を後退させることはしません!

無保険者や重度後遺障害者等への被害者救済のために必要な事業は、自賠責保険料の中に「保障事業共済金制度」を新設し手当します。重度後遺障害者に対しては、全国あまねく平等に対応できるようにします。また、後遺障害認定の見直しや介護料等の改善も行います。なお、最終的には国の社会保障事業に統合し、公平・公正な社会保障制度と被害者救済の調和を図ります。

第三  官僚の天下り先はつぶします!

省庁の縦割りを廃した行革を徹底します。自動車事故対策センターは廃止し、民間でできることは民間に任せます。事故対策業務は交通事故総合分析センターなどへ統合し、従来の政府による保障事業や自動車事故対策センターの事業の一部は自動車保険料率算定会(自算会)に移管します。

第四  自算会を、保険契約者と被害者のために機能させます!

 自算会の業務を見直し、「自動車事故救済センター(仮称)」(独立行政法人)に改組して総合的な機能を持たせます。従来の自算会の業務に、1.従来の政府による保障事業(無保険者・ひき逃げ事故救済)や被害者救済事業、2.損害賠償額の算定や裁判外紛争処理機能、3.任意保険に対する助言・判定・勧告機能、4.自動車事故対策センターの廃止に伴う一部事業、を加えます。

第五  自賠責保険審議会の機能・権限を強化します!

自賠責保険審議会は、制度全体の事業について審議し、金融庁長官に答申するものとし、毎年の事業の計画について建議・勧告を行う権限を与えます。審議会の委員も見直し、被害者代表・保険契約者代表・有識者・関係業界代表のバランスの取れた委員構成とし、行政府の委員は廃止します。

第六  不必要な役所の権限は大胆に廃止!

本制度の監督官庁は、金融庁に一本化します。金融庁は、保険料率と事業計画を、毎年国会に報告するものとします。
    
民主党・自賠責保険プロジェクトチーム 委員名簿

座  長寺崎 昭久
事務局長中川 正春
委  員(衆議院議員)
伊藤 英成    前原 誠司
岩田 順介    岡田 克也
赤松 広隆    山本 孝史
今田 保典    高木 義明
城島 正光    日野 市朗
田中 慶秋    細川 律夫
玉置 一弥    金田 誠一
上田 清司    鍵田 節哉
奥田 建     吉田 治
北橋 健治    藤村 修
坂上 富男    中野 寛成
五島 正規    大畠 章宏

(参議院議員)
海野 徹     山下 八洲夫
福山 哲郎    峰崎 直樹
木俣 佳丈    浅尾 慶一郎
直嶋 正行    桜井 充
吉田 之久    簗瀬 進

以上 36名 (順不同)


民主党自賠責保険プロジェクトチーム会議議事経過
第1回目 平成12年3月 9日(木)9:30〜11:10 ヒアリング及び質疑応答
  金融監督庁 保険監督課長 樋口 俊一郎 氏 他
  テーマ:「自賠責保険制度の概要について」

第2回目 平成12年3月16日(木)9:30〜10:30 ヒアリング及び質疑応答
  運輸省自動車交通局保障課長 大野 裕夫 氏 他
  テーマ:「運用益の使途の決定過程について」

第3回目 平成12年3月23日(木)9:30〜10:30 ヒアリング及び質疑応答
  日本損害保険協会 専務理事           荒木 襄 氏
     同     交通リスク業務部会 部会長  三浦 昭一郎 氏
     同               副部会長 西川 茂樹 氏
  テーマ:「損保協会の自賠責保険の見直しについて」

第4回目 平成12年3月30日(木)9:30〜10:30 ヒアリング及び質疑応答
  全国交通事故遺族の会 副会長 戸川 孝仁 氏
  テーマ:「交通事故被害者から見た自賠責保険の見直しについて」

第5回目 平成12年4月 6日(木)9:30〜10:30 ヒアリング及び質疑応答
  自動車総連:加藤裕治氏(事務局長)、田崎剛彦氏(産業政策局長)  
  自動車保険料率算定会:水野芳信氏(損調業務本部損害調査部長)他
  テーマ:「自動車ユーザーから見た自賠責保険の見直しについて」
      「自動車事故損害賠償額の実状と算定基準について」

第6回目 平成12年4月13日(木)9:30〜10:30  意見交換
 「自賠責制度改革の概要(案)」(事務局作成)に基づき議論

第7回目 平成12年4月20日(木)9:30〜10:30  意見集約
 「自賠責制度改革の概要及びポイント(案)」(事務局作成)に基づき議論



自賠責保険制度改革の概要
我が国の自賠責保険制度が創設されたのは昭和30年である。それから40年以上経過する間に、モータリゼーションの進展と自動車事故の増加、国民所得の向上、保険や保障制度に係る考え方や、ニーズの変化などに見られるように、自賠責を取り巻く情勢は発足時には想像し得ないほど様変わりした。しかし、これまで、そうした変化を踏まえた制度の抜本的な見直しは殆どなされなかったため、種々の問題が生じている。
そうした中で、近年、規制の緩和・撤廃の観点から「政府再保険制度の廃止」問題がクローズアップされている。もとより、大事な問題提起であるが、しかし、問題はこれだけではない。
即ち、
(1) 自賠責加入者や自動車事故件数の増加に伴い、被害者の迅速・確実・公平な救済といった制度の運用面に支障が生じていること。
(2)被害者・家族の納得が得られる損害賠償を担保するためには、自賠責保険と任意保険を一体的に捉えて制度設計を行い、救済措置を講じる必要がある。現状において、自賠責と任意保険とは、相互補完的な関係にあるが、その役割分担が合理的かどうか、不断の見直しが必要であること。
(3) 保険契約者の間に、自賠責保険から生じる巨額の累積運用益の存在とその使途について疑義が生じていること。特に運用益を自動車事故対策センターの運営や交通安全行政事業に充当することとの関係で、行政の独善性、恣意性が指摘されている。
(4) 自賠責と政府保障事業の過失相殺は同等に取り扱うべきではないか。
(5) 賠償保険制度の円滑な運用のためには、自賠責保険に関する専権と任意保険への助言・判定・勧告機能を持つ独立・中立の第3者機関の創設が必要ではないか。さらには、自賠責保険審議会の機能強化等が必要ではないか。

――――― など、多岐にわたっており、損保制度は、契約者たる自動車ユーザーと被害者の双方から、そして有識者からも制度見直しと改革が迫られている。

民主党「自賠責保険プロジェクトチーム(PT)」は、こうした背景のもとに、関係者から改めてヒアリングを行い、自賠責保険制度のあり方について見直しを行った。


1. 自賠責保険制度改革に対する基本的考え方

(1) 自動車事故により、人の生命、身体が害された場合、被害者に対して最低限の損害賠償を保障し、被害者が保護されるよう、自賠責保険の強制保険制度、自賠責保険と任意保険との二本建て制度を維持する必要がある。
 またその際、保障事業の維持、自動車ユーザーの負担軽減等の観点からも、ノーロス・ノープロフィット原則も維持する。
 但し、損保会社、農協共済、全労災等、自賠責保険取り扱い団体の相違によって構造的に生じる保険の収支差益については、引き続き改善を必要とする。

(2) 損害保険業界の担保能力の向上に鑑み、リスクヘッジとしての政府再保険を存続させる必要性が消滅していること、また「民で可能なことは民で行う」という民主党の理念・哲学に照らして、政府再保険制度は廃止する。
 一定の準備期間をおいて、自賠責保険特別会計・保険勘定の全額を損保に移管する。
  
(3) 無保険車・ひき逃げ事故の救済のための、政府保障事業の事業そのものは、今後も継続すべきである。
 但し、実態から見て、運輸省が所管する必然性がないことから、自動車保険料率算定会(自算会)を発展的改組した、『自動車事故救済センター(仮称)』(独立行政法人)に移管する。又、一定準備期間をおいて、自賠責保険特別会計・保障勘定の全額を『自動車事故救済センター(仮称)』に移管する。

(4)現行の政府保障事業の守備範囲は、基本的には・加害者が無保険の場合、・加害者不明の場合、の二つの場合に適用される。死亡無責事故・自損事故に対する救済、ノーフォルト保険の導入については、官民の役割分担や保険制度の創設趣旨を勘案し、今後さらに検討を要する課題である。
  
(5)事故責任の所在と過失割合の認定について、公平・正確を期し、併せて透明性の確保の観点から、警察の事故調書を、自動車事故救済センター(仮称)の損害調査員、事故当事者、あるいは当事者が立会いできない場合はその家族でも見ることが出来るように「刑事訴訟法第47条」を改正する。(現在は弁護士に対してのみ開示している。)
 
(6) 現行の政府保障事業に係わる被害者についての過失相殺は、適用が厳格すぎるため、同じ自動車事故の被害者でありながら、自賠責保険に比べると不利な救済条件となっているが、公平性の観点から自賠責保険と同等に被害者が救済されるよう改正する。

(7)保険の収支差益、保険料収入から発生する利息、及びこれまでの積立金・累積運用益から生まれる利息は、全額翌年の保険料で還元・反映させることを原則とする。従ってこれまでの、保険勘定、保障勘定合わせて約2兆円の滞留資金は、全額早期に保険料金の引き下げ原資に充当し、保険契約者に還元する。併せて、この滞留資金の運用益活用事業は廃止する。

(8)上記の措置に伴い自動車事故対策センター及び療護センターは廃止されることになるが、その後も療護を後退させないよう、国の責任において、交通事故による傷害・後遺障害についても社会保障制度の中に適切に組み込み、健康保険の完全適用、重度後遺障害者の入院、国の介護保険制度の適用などにより、社会保障制度の整備充実を図る。
 尚、廃止されるセンター等の職員の雇用問題も含め、当面の必要な経過措置を講じる。
  
(9)自算会を改組し、自賠責保険を専権する機能を持つ実施機関とする(仮称:自動車事故救済センター)。 併せて、現行の損保会社が自賠責保険と任意保険を一括査定し、自算会が事後チェックする現行方式を改める。自動車事故救済センター(仮称)の運営費用は保険料で賄うものとする。

(10) 自賠責保険審議会の機能・委員等を見直し、強化する。

(11) 本制度の監督官庁は金融庁に一本化する。


2. 具体的な改正内容

(1) 政府再保険の廃止、政府保障事業の自動車事故救済センター(仮称)への移管に伴い、一定期間経過後、自賠責保険特別会計は廃止・終了する。終了時に残金がある場合には、損保会社及び自動車事故救済センター(仮称)へ移転させる。

(2)自賠責保険料は、1.損保会社の純保険料(保険金支払いの原資)、2.損保会社への付加保険料(損保会社の社費・代理店手数料)、3.自動車事故救済センター(仮称)への損害調査費(社費)4.保障事業共済金で構成する。但し、この純保険料、付加保険料、損害調査費、保障事業共済金、そして構成比のあり方については自賠責保険審議会で検討し、新制度スタート時までに見直す。

* 「保障事業共済金」とは、従来の政府保障事業経費及び重度後遺障害者対策費用、その他必要な被害者救済事業を賄う経費。

(3)純保険料及び保障事業共済金については、従前どおりポリシー・イヤー決済方式(契約年度の5年後に決済)とする。保険料収入により毎年発生する利息とプール金により発生する運用益は、翌年の保険料収入に繰り入れる。5年後の決済時に利益が発生した場合は、これを翌年の保険料に還元する。(結果として毎年保険料改訂することになる。)これら毎年の利息分、運用益分、5年後の利益分等については税制上非課税措置を講じる。
  
(4)自賠責保険審議会の機能・役割を見直し、自賠責保険制度に係わる全ての案件についての建議、勧告を行う審議会へと改組する。委員構成については、平成7年9月の閣議決定も踏まえ、行政府の委員は廃止し(事務局の一員とし)、被害者の代表等も含めた幅広い関係者から構成する。
  
(5)自動車事故救済センター(仮称)は、現在、自算会として1.自賠責保険の基準料率の算出・検証・届出、2.自賠責保険の損害調査、3.各種データのデータバンク、の三つの機能を有している。これに今回の改革により、1.保障事業共済金に関わる事業、2.自賠責保険に係わる被害者損害賠償金の決定、仲裁・不服審査の受け付け・判定等自賠責保険の専権、3.任意保険に対する助言・判定・勧告、4.自動車事故対策センター廃止に伴う一部継承事業、の四つの機能を加える。
 自動車事故救済センター(仮称)の機能・組織のあり方及び予算・決算は自賠責保険審議会で審議し承認する。
  
(6)強制保険を維持する性格から、保険料改訂時には、従来通りの公告・縦覧制度を採用する。又、金融庁長官は毎年、保険料率、収支の状況、共済事業の事業計画及び実施状況について国会に報告するものとする。

(7)上記の改革に伴い、以下の法律等の改正を行う。


1. 「自動車損害賠償保障法及び施行令・施行規則の改正」
2. 「自動車損害賠償責任再保険特別会計法の改正」【廃止】
3. 「農業協同組合法、消費生活協同組合法、中小企業等協同組合法の改正」
4. 「自動車事故対策センター法の改正」【廃止】
5. 「自動車事故救済センター(仮称)設置法の制定」【新設】
6. 「損害保険料率算出団体に関する法律の改正」
7. 「道路運送法第93条の改正」
8. 「自動車損害賠償責任保険審議会規則(大蔵省令)の改正」
9. 「自動車損害賠償保障事業賦課金等の金額を定める政令の改正」
10. 「刑事訴訟法第47条の改正」
11. 「法人税法に関する国税庁の通達の改正」


※ 「民法」「商法」「保険業法」「道路運送車両法」「道路交通に関する条約の実施に伴う道路運送車両法の特例等に関する法律」等は改訂せず。


3. 経過措置

(1)これまでの約2兆円の滞留資金と今後発生する運用益の取り扱いについては、その全額を5年間で保険料に還元する。その結果、自家用乗用車の保険料は(24ヶ月)、平成12年9月1日より22,000円とする。またその際、ノーロス・ノープロフィット原則を徹底し、今後の自賠責保険料は自動車事故の増減に比例する方式を採用することを、自動車ユーザーに分かるようにPRする。

(2) 上記をスムーズに運用できるよう(国の特別会計の資金を民間に移転させるため)、次の国会で自賠法の改正を行う。

(3)自動車事故対策センター及び療護センターの当面の経過措置に関しては、平成12年度末までにその結論を得て措置する。当該センターは平成15年度末までに廃止する。自動車事故対策センターは、その一部の事業が自動車事故救済センター(仮称)に継承される。療護センター廃止に伴う措置は、国公立病院を中心とする「一般病床契約方式」とする。そのため契約した病床への一定の交付金を予算化する。

(4) 自動車事故対策センターが支給している介護料は、一定の要件があるとはいえ二重支給であり、公平を欠くものであるが、これまでの実績を踏まえ、自動車事故救済センター(仮称)は任意保険の介護料の充実・改善を指導・勧告する。

(5) 自動車事故対策センター廃止に伴う財産処分により発生した資金は、出資に応じた処分とする。国の分は全額、その年の保険料の収入として計上する。

(6) 一般会計への貸付金(平成12年度末の元本額で8,848億円)は、来年度予算で全額返却させる措置をとる。

4.その他の個別案件

(1) 保険金限度額の見直しは、自動車事故救済センター(仮称)が企画・立案し、それを自賠責保険審議会が承認する制度に改める。

(2) 損保会社の社費について、その基本的なあり方等についての改訂が制度創設以来なされていないため見直す。

(3) 後遺障害の認定等級のあり方について、一部実態に合わない事態も発生していることから、家族介護等の要件、高次脳機能障害(情緒傷害、記憶傷害、運動障害等)の実情を見極めた上で見直す。

(4)現在の四つの損害賠償基準(1.自賠責保険、2.損保会社の基準、3.東京三弁護士会基準、4.日弁連基準)は、その目的は異なるとはいえ、被害者の自動車保険制度への不信感・不公平感の醸成と混乱の原因となっている。これらの是正を図るとともに自賠責保険の賠償算定基準のあり方を一部改善する。

(5) 原付二輪車などの自賠責保険付保率が、70数%と低い現状に鑑み、加入率向上のための政策的な制度改訂(初回加入5年の保険料義務化・政策保険料設定の措置など)を検討する。

(6)自動車事故対策センターの事業のうち、「自動車安全情報提供事業(自動車アセスメント)」「自動車運送事業の運行管理者に対する指導・講習」「自動車運転者に対する適性診断」は、即刻廃止する。また、保障勘定からの支出対象事業の、「自動車事故防止事業(交通事故総合分析センター)」「運転者安全運転指導事業(タクシー近代化センター)」「交通安全指導事業(全国ダンプカー協会)」等についても、廃止を検討する。

以上

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