トップ > ニュース
ニュース
ニュース
1998/10/13
金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律案要綱
記事を印刷する

第一 総則
一 目的

 この法律は、我が国の金融システムに対する内外の信頼を回復することが現下の喫緊の課題であることにかんがみ、適正な資産の査定及び会計処理による金融機関等の経営の健全化を促進し、かつ、金融機関等の再編に資するための金融機関等の資本の増強等に関する緊急措置の制度を設けること等により我が国の金融機能の早期健全化を図り、もって我が国の金融システムの再構築と我が国の経済の活性化に資することを目的とするものとすること。(1条)

二 定義

1. 対象金融機関から、信用金庫、信用協同組合及び労働金庫を除き、各連合会のみを対象とすること。(2条1項1号)

2. 株式等の定義に優先出資を明示するものとすること。(2条3項)

3. 過少資本の金融機関等とは、国際統一基準に係る自己資本比率が2%以上8%未満、国内基準に係る自己資本比率が1%以上4%未満の金融機関等をいうものとすること。(2条9項)

4. 著しい過少資本の金融機関等とは、国際統一基準に係る自己資本比率が0%以上2%未満、国内基準に係る自己資本比率が0%以上1%未満の金融機関等をいうものとすること。(2条10項)

三 施策の原則

1. 金融機関等の経営責任及び株主責任の明確化を別号に規定するものとすること。(3条3号)

2. 金融機関等に資産の査定及び会計処理の基準を遵守させる旨規定するものとすること。(3条7号)


第二 金融機関等の資本の増強に関する緊急措置
一 経営健全化計画

1. 経営健全化計画を株式等の引受け等の申請後5年間に関するものとすること。(5条1項)

2. 経営健全化計画に定めるべき事項のうち経営の合理化のための方策をより明らかにするとともに、協定銀行が保有する優先株式に対する利益等の配当を確保するための方策を加えるものとすること。(5条1項1号、6号)

3. 経営健全化計画及びその履行状況の公表の除外事由を預金者等その他の健全な取引者の秘密を害するおそれのある事項に限定するものとすること。(5条2項)

二 金融再生委員会による株式等の引受け等の承認の要件等

1. 株式等の引受け等の承認の要件を次のとおりとすること。(6条1項)

(1) 金融再生委員会が、早期是正措置を講ずることにより多数の金融機関等の国際業務が廃止されることに伴い国際金融市場において重大な障害が生ずると認める場合又は多数の金融機関等の業務の全部の廃止等に伴い我が国の経済活動に重大な障害が生ずると認める場合であること。

(2) 当該発行金融機関等が過少資本の金融機関等であること又は当該発行金融機関等が著しい過少資本の金融機関等であるときはその業務の収益性及び経営健全化計画の履行による収益の改善の可能性に照らし、金融機関等としてその経営を維持することができると見込まれること。

(3) 代表取締役等の退任その他の経営責任を明確にするための措置をとること。

(4) 当該申請が株式の引受けに係るものであるときは当該株式の発行に先立って資本の減少を行うこと等既に発行されている株式の一株当たりの価値の適正化を行うための措置をとること。

(5) 経営健全化計画が金融再生委員会が定めて公表する基準に適合していること。

(6) 当該申請に係る株式等の引受け等により当該発行金融機関等の自己資本比率が次に掲げる区分に応じそれぞれ定める比率を超えることとならないこと。
イ 海外拠点を有する金融機関等にあっては、国際統一基準に係る自己資本比率 8%
ロ 海外拠点を有しない金融機関等にあっては、国内基準に係る自己資本比率 4%

(7) 発行金融機関等からの申請に係る株式等の引受け等が劣後特約付社債又は劣後特約付金銭消費貸借を含むものであるときは、当該劣後特約付社債若しくは劣後特約付金銭消費貸借の額又はその合計額が、主務省令で定めるところにより算定した株式又は優先出資の引受けに係る額を超えることとならないこと。

2. 金融再生委員会は、資本の増強に係る早期是正措置を講じた過少資本の金融機関等について、適正な債権の償却のため必要があると認める場合は、申請に係る株式等の引受け等の額を超えて株式等の引受け等の承認をすることができるものとすること。(6条2項)


三 新株発行の届出

 発行金融機関等である銀行は、当該承認に係る株式等の引受け等が行われた後、株式を発行する場合においては、金融再生委員会に届け出なければならないものとすること。(7条)


第三 預金保険機構の業務の特例等
 機構が行う借入れ及び預金保険機構債券の発行の限度額を国会の議決を経た額とするものとすること。(16条1項)

第四 雑則
一 経営健全化計画の履行を確保するための措置等

 金融再生委員会は、被引受け実施金融機関等に対し、協定銀行が取得株式等又は取得貸付債権の全部につきその処分をし、又はその返済を受けるまでの間において、経営健全化計画が履行されていないと認めるとき又は協定銀行が保有する優先株式に対する利益等の配当を確保することが困難であると認めるときは、当該被引受け実施金融機関等の取締役(銀行以外の金融機関等にあっては、理事長、副理事長又は理事)の解任を命ずることができるものとすること。(19条2項)

二 資産の売却命令

 金融再生委員会は、被引受け実施金融機関等の経営の健全性の確保のため必要があると認めるときは、回収不能となる危険性のある資産を機構に売却するよう命ずることができるものとすること。(20条)

三 株式等の引受け等の申請義務

 資本の増強に係る早期是正措置が講じられた金融機関等は、当該早期是正措置が講じられた後2月以内に必要な資本の増強を行わないときは、株式等の引受け等の申込みを行わなければならないものとすること。(21条)

四 自己資本比率の算定に係る有価証券の評価

 発行金融機関等の株式等の引受け等の申請に係る自己資本比率の算定においては、その保有する有価証券(満期まで保有するものを除く。)の評価はその取得価額と時価のいずれか低い価額により行うものとすること。(22条)

五 著しい過少資本の金融機関等の特別公的管理等

1. 金融再生委員会は、著しい過少資本の金融機関等である銀行が、その業務の収益性等に照らし、その経営を維持することができないと認める場合であって、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(以下「金融機能再生緊急措置法」という。)第8条第1項各号に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは、当該著しい過少資本の金融機関等である銀行に対し、同項に規定する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分をすることができるものとすること。(23条1項)

2. 金融再生委員会は、著しい過少資本の金融機関等である銀行が、その業務の収益性等に照らし、その経営を維持することができないと認める場合であって、金融機能再生緊急措置法第36条第1項各号に掲げる要件のすべてに該当すると認めるときは、当該著しい過少資本の金融機関等である銀行につき、同項に規定する特別公的管理の開始の決定をすることができるものとすること。(23条3項)


第五 政府保証の限度額等
 平成10年度における政府保証の限度額等の規定を削除するものとすること。

第六 金融機能再生緊急措置法の一部改正


 同法第6条に一及び二の規定を加えるものとすること。(附則5条)

一 債権その他の資産を次のように区分する規定

1. 2から4までに掲げる資産以外の資産

2. その回収について通常の度合を超える危険を含むと認められる債権等の資産
(1) その回収に十分な注意を必要とする債権等の資産で、(2)に掲げるもの以外のもの

(2) 債務者の財務状況、担保の状況等に照らし、その回収が十分に確保されていない債権等の資産

3. 最終の回収又は価値について重大な懸念が存し、損失の発生の可能性が高く、その損失額について合理的な推計が困難な資産

4. 回収不能又は無価値と判定される資産

二 次の基準による一により区分された資産に係る適正な引当ての割合を金融再生委員会規則で定めることとする規定

1. 一の2の(1)に掲げる資産 10%

2. 一の2の(2)に掲げる資産 20%

3. 一の3に掲げる資産 75%

4. 一の4に掲げる資産 100%

記事を印刷する
▲このページのトップへ
Copyright(C)2024 The Democratic Party of Japan. All Rights reserved.