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2002/08/29
民主党環境政策/地球と子どもたちの未来のために
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1.持続可能な社会をめざして
【はじめに〜地球は生命の共有財産・子孫からの預かりもの】

 地球温暖化をはじめとして、オゾン層の破壊、砂漠化、酸性雨、種の多様性の減退など、地球規模の環境問題が発生し、年々その規模を拡大しています。また、森林伐採や大規模公共事業、地域での開発行為による自然破壊やダイオキシン・環境ホルモンなどの化学物質汚染等による地域での環境問題も後を絶ちません。人間の活動が自然の復元力を超え、環境の悪化とそれに伴う脅威は増大し続けています。
私たちは、今こそ成長の限界・地球の有限性を、現実社会の不公平性を、環境保全なくして人類の生存があり得ないことを強く認識・自覚し、人類をはじめとする生命体の共有財産であり、子孫からの預かりものである自然環境や生態系を共同で守る方向に進まなければならないと考えます。そのためには、現在の価値観を転換し、科学技術、生産体系、経済・社会制度、教育制度などありとあらゆる社会システムや生活習慣を環境に調和したものへと変革し、人間生活の支持基盤である地球の環境・生態系に対するインパクトを最小限に抑えながら豊かな生活を営む文明・社会(=持続可能な社会)を構築することが急務となっています。
そして、環境問題を解決するために、大量生産、大量消費、大量廃棄社会を形成しているわが国の責務は非常に大きいものであると考えます。わが国は速やかに持続可能な社会をめざして行動しなければなりません。それには、政治がリーダーシップを発揮することが不可欠であると考えます。民主党は日本が、そして、世界が持続可能な社会を構築するために、政治として何ができるかを真剣に考え、具体策を提示し、積極的に行動します。


【持続可能な社会の条件】

 私たちのめざす「持続可能な社会」は、次の条件が充たされている社会であると考えます。持続可能な社会においては、環境面での持続可能性ばかりが強調されがちですが、社会的な安定性(=雇用、福祉、民主的意思決定)が確保されてこそ、人類の持続可能性が確保されるということに留意しなければなりません。

1.「環境面」での持続可能性

1. 地下資源による環境汚染を防止するため、地殻から掘り出した物質の濃度が十分に低いレベルで安定していること
2. 人工的に生産された物質を環境中に蓄積させないため、人工的に製造した物質の濃度が自然界で十分に低いこと
3. 自然の復元力・物質循環システムを傷つけないため、自然の循環と多様性を支える物理的基盤が守られていること
4. 効率的な資源利用と公正な資源配分が行われていること

2.「社会面」での持続可能性

1. 雇用が安定的・持続的に確保されること
2. 福祉面でのセーフティーネットが十分に整備されていること
3. 民主的な意思決定過程が十分に機能していること



 これらの条件を完全に充たしている社会は、今のところ実現されていません。そして、現在の地球環境の状況を考えるとき、日本は世界の先頭に立って、これらの条件を達成し環境と雇用を両立させた「持続可能な社会」をめざして、現在の社会のあり方を変革するべきです。また、日本は、そのことが可能な社会的基盤を十分に有していると考えます。


【環境と経済の統合・環境と雇用の両立】

 これまでも、環境と経済は両立しないという意見がありました。確かに、環境対策が企業のコスト増となり、国際競争力を失わせるなど、経済に影響を与えるという面があることも否定できません。しかし、日本は二度のオイルショックを経験し、世界最先端の環境技術・省エネ技術により環境負荷を低減しつつ経済の発展を図ってきました。たとえば、自動車の排ガス規制を世界にさきがけて実施したことが、日本の自動車産業の発展をもたらしたことは記憶に新しいところです。そして、現在の環境問題への対応を、農業革命・産業革命・情報革命に続く第4の革命=「環境革命」として肯定的に捉え、さらなる環境技術、省エネ技術、省資源・リサイクル技術等の開発・普及によって安定的な雇用を確保し、経済的発展を図るべきであると考えます。
たとえば、デンマークでは環境税や再生可能エネルギーの推進などの環境政策を導入する中で、二酸化炭素の排出量削減目標を達成しつつ経済成長も続けています。環境税などの経済的手法と規制を有効に組み合わせ、さらに税収をEUのように社会保険料に補充する雇用対策や環境負荷の少ない技術や商品の開発と普及に用いることによって、経済に与える影響を最小限に抑えつつ、環境負荷を低減し安定的な雇用を確保していくことが可能となると考えます。
従来の「経済」や「成長」の質を環境の視点から見直し、経済と環境を統合することによって、新たな社会システムの構築と安定的な雇用を確保する方向へと大きく舵を切るべき時期に来ています。


【ライフスタイルの転換と意識変革】

 これまでの日本は、大量生産・大量消費・大量廃棄社会でした。それを可能にしたのは、海外からの天然資源の無制限な利用ができたからです。また、市民の生活も、量的な消費生活に傾いた生活スタイルを幸福であり望ましいものであると考えてきました。日本が、環境負荷の少ない持続可能な社会を形成し、環境立国として生きて行くためには、資源の消費を抑え、廃棄物を可能な限り資源として活用する資源循環型の経済をつくりあげていかなければなりません。それは、大量廃棄物をそのまま循環する「大量循環経済」ではなく、生活の質を重視した生活スタイルへの変化に合わせた「循環経済」を目指すべきであると考えます。
 そして、日本が持続可能な社会を目指し、環境技術立国となるためには、それを担う市民の意識の向上が大切になります。EUの環境先進性を支えているのは、ゆとりと各人の価値観を大切にした生活スタイルを維持していこうとする市民の意識にあります。そのような生活スタイルにとって、美しい自然、きれいな水や空気、汚染されていない土壌、安心な食物、ゆとりと個性ある小さな町や村はかけがえのない価値があるものとなっています。アルプスが美しいのも、パリが個性的で、フライブルグが環境首都なのも、住んでいる市民の意識が根底にあります。また、このような市民意識に基づいて、まちづくりや合意形成に主体的に参加すること、自主的に環境保全活動に参加することが、持続可能な社会への近道であると考えます。そして、市民意識の変革を図るためにも、体験や合意形成過程を重視した環境教育の充実が非常に重要になると考えます。

【持続可能な社会に向けて〜基本的な考え方を変える】

20世紀は、環境より経済成長を重視し、生態系全体より人間の便利な暮らしを求め、未来の世代より自分たちの現在の世代を重視してきました。しかし、このような価値観では持続可能な社会を構築することはできません。「持続可能な社会」の実現のためには、基本的な考え方を転換する必要があります。したがって、1.人と自然との共生(生態系保全、環境汚染要素の低減・排除)、2.人と人との共生(開発途上国と先進国との間の公平)、3.現世代と将来世代との共生(資源利用の最大効率化・循環化)を強く意識しながら、以下のような考え方を重視して政策を組み立てるべきであると考えます。

1. 目標となる「持続可能な社会」を想定して政策を組み立てる
環境政策については、これまでのように事後的な対応を行うのではなく、長期的な視点に立って社会のあり方(目標)と計画を定め、その目標を達成するための障害を取り除くために、規制や経済的手法などの組み合わせて効率的に行われるようにすべきです。対応を先延ばしすることや目標を定めないまま場当たり的に対応してしまえば、対策に係る社会的費用は増大します。将来世代にツケを残さないような対応を行うべきです。

2. 安全性について「予防原則」を基準とするなど未然防止の徹底を図る
 これまでの日本は、生活の安全性に関係する価値判断の基準を、科学的知見によってリスクが明白になってからの防止に求めてきました。そのため、公害対策や化学物質汚染対策などが後手に回り、多大な被害が生じることもありました。したがって、リスクが不確実な段階から発動できる「予防原則」に安全性の基準をおくなど、環境被害の未然防止を徹底すべきです。

3. 環境と経済を統合した社会の実現を図る
   日本は、これまでも環境効率のよい技術や商品を生みだすことにより、環境負荷を低減しつつ経済成長を続けることができました。また、前述のデンマークの成功例もありますし、企業でも売り上げを伸ばしながら温室効果ガス排出量を減少させているところもあります。経済的手法と規制を有効に組み合わせることにより、環境負荷の少ない技術や商品が経済的に有利とすることで、環境負荷の少ない技術や商品が開発され、それらを普及させることにより雇用の確保を図るべきです。

4. 未来への責任を果たす
   現在の大量生産・大量消費・大量廃棄社会は、環境への負荷を考えないまま天然資源を無制限に使用した結果、環境の復元力を超え、環境破壊が進んでしまいました。今の私たちの決断が、その後の数十年の環境問題を決めてしまうことになるのです。私たちは、将来世代に対する責任を果たすことを考えて、とるべき施策を決定しなければなりません。そのためにも、私たちのライフスタイルそのものを厳しく見直し、意識変革を図らなければなりません。

5. 生態系を損なわない(生態系の維持が人類生存の基礎的条件)
 これまでの環境への取り組みは、人の健康、生活環境を中心としたもので、それを囲んでいる生態系に対する配慮がほとんどなされてきませんでした。生態系の保全が人の健康や生活環境を維持していくための基本的な条件であることを十分に認識して、生態系の保全にこれまで以上に取り組むべきです。

6. 国際的な取り組みの中で日本の環境問題を考える
  環境問題は日本だけで実現できる問題ではないことは、温暖化、酸性雨等の問題で明らかです。日本は、このような状況の中で、いち早く環境負荷の少ない持続可能な社会を実現し、それを可能にした社会システムや環境技術の移転、地球温暖化対策などの国際的枠組みに多くの国の参加を促す努力することなどを通じて、国際的に名誉ある地位を占めるべきです。その際には、特にEUとの協調を重視し、環境規制・基準などの制度を共通化することも必要であると考えます。さらに、日本はアジアの一員として、それぞれの国の経済状況を考慮し、貧困の撲滅や経済の発展と環境の保全が両立しうる形で、アジア地域の環境共同体形成を目指すべきです。

7. 民主的な意思決定過程、市民参加を重視する
   持続可能な社会を実現するためには、市民ひとりひとりが循環と共生の視点に立って、未来への責任を果たすために主体的に行動しなければなりません。そのための機会を保障する必要があります。日本における現在の市民参加プロセスは、形式的は保障されていることも多いのですが、実質的な意思決定に十分に結びついているとは言えない状況にあります。市民の主体的な行動が自治体や国のあり方を変えることができるよう、民主的な意思決定過程と市民参加の機会の保障がこれまで以上に重要視されなければなりません。

【持続可能な社会をめざして】

 私たち民主党は、今こそ政治がリーダーシップを発揮して、持続可能な社会の姿とめざすべき方向性を明示し、そのために求められる政策と価値判断を明確にしなければならないと考えます。ただし、持続可能な社会への道のりは決してやさしいものではありません。しかし、このままの社会・生活スタイルを続ければ、地球は近い将来環境破壊によって人類の生存が非常に難しくなることは明白です。しかも、今決断しなければ、将来世代の負担はさらに重くのしかかることになります。日本が今決断し、人類の未来への扉を開く先導を行うことが求められているのです。それが現在の世界に対する日本の責務であり、未来の子どもたちに対する責務でもあるからです。



2.環境政策の具体的な提案
【環境権の憲法への明記】

国の最高法規である憲法には、環境に関する記述がありません。しかし、人間は自然からの恵みを受けることなく生存を続けることはできません。憲法を改正し、憲法を頂点とする環境法体系を確立します。

1. 環境権の確立
高度経済成長下では、環境保全よりも経済成長・生活の利便性が優先された結果、各地で公害などの環境破壊が発生し、生活環境や自然環境が悪化することもありました。しかし、良好な環境を享受することは、生命体としての人間にとって必要不可欠です。日本国憲法に「人間の生存に不可欠の良好な環境を享受する権利」を明記し、人権としての環境権を実体的権利として確立させます。

● 環境権を憲法に明記します
   ・ 環境権=人間の生存に不可欠の良好な環境を享受する権利

2. 環境保全義務の明記
   日本の自然環境は、大規模な開発等により破壊され続けています。自然環境を今以上に破壊すれば、人間の生存の基礎自体が脅かされることになります。自然環境と生物多様性を将来に世代に受け継いでいくためにも、「将来の世代へと良好な自然環境を引き継ぐ義務」を日本国憲法に明記し、環境保全義務を確立させます。

● 環境保全義務を憲法に明記します
・ 環境保全義務=将来の世代へと良好な自然環境を引き継ぐ義務

【持続可能な社会への基礎的条件の整備】

 現在の社会は、技術革新と経済発展により豊かな物質社会と生活水準の向上をもたらしました。しかし、その一方で、経済成長や物質的な豊かさを重視したことにより、天然資源を大量に消費し化学物質を大量に排出した結果、環境の浄化能力や復元力をはるかに超え環境と生態系が破壊されています。人間を含む全ての生命体の生存基盤である地球を未来へと受け継いでいくことは、私たちの重大な責務です。私たちは、成長の限界と地球の有限性を認識し、環境効率性を重視し、環境容量内で豊かな生活を営むことができる社会制度をつくっていかなければなりません。個々の環境問題を解決するための政策だけではなく、それらの政策を支えるために、以下のような基礎的な条件を整備することが必要であると考えます。

1. 環境倫理(新たな価値観)の確立
   持続可能な社会を構築するためには、ひとりひとりの意識やライフスタイルを変え、環境負荷の少ない生活とは何かを真剣に考える必要があります。これからは、市民ひとりひとりが循環と共生の視点に立って自ら主体的に行動できるようにならなければなりません。そのためには、環境倫理の確立や環境教育の充実が不可欠です。環境教育法(後述)の制定や環境倫理確立のための研究体制の支援などを積極的に行います。

2. 市民参加の保障
環境問題を解決し持続可能な社会をつくるためには、市民やNGOが積極的に政策づくりや具体的行動に参加できるような社会システムを構築する必要があります。まちづくりや地域の環境保全活動への市民参加を実質的に保障することにより、ひとりひとりの地域を守り環境を守る意識の向上にもつながります。環境政策をつくる際にも、できるだけ市民参加を取り入れることが望ましいと考えます。開発や公共事業、まちづくり、環境アセスメントなどの制度の中に、市民参加と合意プロセスの重視を一層盛り込んだ制度改正を検討するとともに、市民参加に関する基本的な法律についても検討します。

● 市民参加法(仮称)を検討します
・ 市民参加と合意形成に関する基本原則の確立
・ 環境政策等への市民・NGO の参加の保障

3. 情報公開の徹底
   お互いの持つ情報が対等で、情報ができる限り外に開かれていなければ、市民参加のプロセスを設けてもそれは単なる市民の意見を聞いたという儀式になってしまいます。また、環境に関する情報は、行政や企業に集中的に存在し、市民は自由に情報を引き出すことができません。ひとりひとりの環境に対する問題意識を高め、環境負荷の少ない商品や企業を選択してもらうためにも、環境に関する情報は、広く市民に公開されていなければなりません。したがって、国や地方自治体に関する情報だけではなく、企業等の持つ情報についても、企業秘密に十分な配慮をしつつ、広く公開してもらわなければなりません。また、国や地方自治体は、科学的知見の集積や情報収集を積極的に行い、市民に広く公開するような法制度(=環境情報公開法)を検討していきます。

● 環境情報公開法を制定します
・ 環境に関する一定の情報の公開・表示義務
・ 環境に関する一定の情報の報告義務
・ 国・地方自治体による環境情報の収集・開示

4. 公正な市場の構築
   市場メカニズムでは、効率的な資源配分が確保され、価格競争や技術革新による活力ある経済発展が可能となる一方で、環境に対する配慮が十分になされないまま資源が利用され環境負荷を増大させるなどの外部不経済の問題が発生します。地球を未来へ引き継ぐためには、環境を利用し負荷をかけるコストを市場に組み込まなければなりません。環境コストを組み込んだ公正な市場を構築し、市場のメリットを十分に活用しながら、環境負荷を低減させていきます。このことにより、環境技術の発展を促し、雇用の安定を確保することで、環境と経済の統合を図ります。

● 経済的措置の導入をすすめます
・ 環境税(炭素・エネルギー税)の導入
・ フロン税の導入
・ 焼却税・埋立税の導入
・ 容器包装リサイクルへの経済的措置の導入 など

5. 政府の役割の見直し
   現在の縦割り・中央集権的な政府の役割を見直し、環境問題の対応が後手に回ることのないよう、また、地域での環境問題への取り組みが阻害されることのないようにしなければなりません。そのためには、政府の現在行っている政策・権限について、環境の視点から再評価を行い、省庁間の権限・中央と地方の権限のあり方を見直していきます。

● 地域主導の環境政策を促進します
・ 地域性を重視した環境政策の確立
・ ローカルアジェンダの普及、促進

6. 政策への「環境」の組み込みと環境を優先する法体系・指標の構築
   環境基本法をはじめとする各種の環境法が策定された現在においても、環境破壊が後を絶ちません。これは、事業や開発などを行う法律の中に、「環境」の視点がほとんど組み込まれていないからです。政策・法律に対して、環境の優先性や「環境の保全」・「生態系の保全」などの環境の視点を組み込み、環境重視の法体系へと変えていきます。また、経済成長(GDP)に変わる、環境成長(green GDP)の指標を確立し、社会の成長の指標として定着させていきます。

● 事業にも「環境」の視点を組み込み、環境重視の法体系を確立します

【調査・研究、環境保全制度の充実】

1. 調査・研究の充実と適正な科学技術の振興
   科学技術は、一方では環境に対し大きな影響をもたらしますが、他方で環境保全のため大きな役割を果たしています。また、環境の現状を客観的かつ科学的に正確に把握することは、環境保全を進める上で極めて重要です。特に、地球温暖化や地球レベルでの化学物質循環、生態系等については、科学的に未解明の部分も多く、環境に関する科学的知見をさらに充実させなければなりません。そして、収集されたデータや知見は、情報として広く提供されるべきです。環境問題に対する科学的知見の集積を今まで以上に積極的に行わなければなりません。そのための情報収集や国際協力などの予算を大幅に増額します。また、現在の環境をさらに良好なものに改善するために、科学技術を用いることも有効な手段であり、環境負荷の少ない科学技術を普及させるためにも、経済的措置等の導入による誘導策や財政支援策を積極的に行います。

● 環境問題に関する研究・技術開発を促進します

2. 環境影響評価制度の拡充
  現行の「環境影響評価法」(環境アセスメント法)では、どのような方法でアセスを行うのかを事業者が作成する「方法書」と、アセス実施の結果の原案を示した「準備書」について、市民は意見書の提出により意見を述べる事ができます。また「準備書」については説明会を開催することになっており、この説明会への参加が市民に保障されています。しかし、環境アセスメント法で定められた市民の参加の機会は大変少なく、自治体ではそれを補填すべく条例で市民参加の機会を定めています。また、アセスの実施と評価を事業者が行う制度となっており、評価の客観性に疑問があります。
   環境アセスメント法の改正により市民参加の機会を拡充します。また、自治体による市民(住民)参加機会の拡充を支援します。
   現行の環境アセスメント法は、主に事業アセスについて定めたものとなっており、個別の対象事業の実施にあたり環境アセスメントを義務づけたものです。しかし、個別の事業の累積的な環境影響については対処できず、その対策のためには上位計画や総合計画段階環境アセスメントが必要です。近年では、諸外国においても事業段階だけでなく政策・計画・プログラム段階での環境アセスメントが主流になりつつあり、EUでも「戦略的環境アセスメント(SEA)」を共通ルール化するよう2001年6月にその指令が成立しました。個別の事業はもとより、政策・計画・プログラム段階においての環境配慮、すなわち環境アセスメントを義務づけるため「戦略的環境アセスメント」を法制化します。
   さらに、特に公共事業への計画段階からの市民参加を定めるため、既存の法律を見直すとともに、市民の参加を促進するための法律(市民参加法〜前述)の制定を検討します。

● 環境影響評価法を改正します
・ 対象事業の拡大、追加
・ 市民参加の拡充、合意形成手続きの重視
・ 第三者機関による評価の実施
● 戦略的環境アセスメント制度を導入します
・ 政策立案・計画初期段階での環境影響評価

【価値観・ライフスタイルの転換に向けて〜環境教育法の制定】

環境教育は環境保全を推進するための社会的制度的基盤であると考えます。
 環境問題の解決のためには、「生活の質」や「人間の幸福」の意味を「環境」との関係において明らかにしなければなりません。また、どのような行動が環境と調和しながら社会的・個人的幸福を増進させうるのかをひとりひとりが真剣に考える必要があります。そして、他者を慈しむこころ、自然に対する豊かな感受性を育むとともに、自然や環境に対する理解だけではなく、自然や社会と自分自身との関わり合いを理解し、それをより適切なものへと変革することを学ぶ機会が保障されなければなりません。
 そこで、国や地方自治体の役割を明確化し、環境教育プログラムの開発や環境保全を推進するための社会的制度的基盤を整備する環境教育法を制定し、地域やNGOと一体となった環境教育を推進します。

● 環境教育法を制定します
・ 国・自治体・学校・地域が一体となった環境教育の推進
・ 環境教育の基本原則の明示
・ 国による環境教育基本計画の策定
・ 国・地方自治体による環境教育プログラムの整備
・ 学校・地域における環境教育の推進
・ 教員研修の計画的実施

【地球温暖化・エネルギー対策】

1. 地球温暖化対策
地球温暖化の影響により、21世紀末までに地球の平均気温が最大5.8℃上昇、平均海面水位が最大88cm上昇すると予測されています。日本においても、都市化の影響を除いて過去100年あたり約1.0℃上昇、都市部では2倍以上の上昇が観測されています。65cmの海面上昇で日本全国の砂浜海岸の8割以上が浸食されるという試算もあり、その他健康への悪影響、農林業へのダメージ、生態系破壊などを引き起こすと言われています。
民主党はこれまでも、地球温暖化問題に積極的に取り組んできました。国際会議に政府とは異なる考え方で臨み、また、アメリカが離脱した場合でも日本は京都議定書を早期に批准すべきであると主張してきました。京都議定書で定められた削減目標は、温暖化対策の第一歩にすぎません。地球温暖化を防止するためにはさらに大幅な二酸化炭素の排出削減が必要となることから、国内における人為的な温室効果ガスの削減を原則とすべきです。
京都議定書の目標を達成するためにも、炭素税・エネルギー税の早期導入と、環境負荷低減のための技術開発・技術や商品の普及への補助の拡大などの措置を講じることにより、経済に与える影響をできるだけ回避しながら、温暖化対策を強力に推進します。また、離脱を表明しているアメリカやオーストラリアなどが環境負荷に対する責任を果たすよう、働きかけを続けます。

● 炭素税・エネルギー税を導入します
・ 導入時の炭素税は3000円/tC程度
・ 政府と協定を結び実行した場合、炭素税を減免する
・ 再生可能エネルギーについてはエネルギー税を免除
● 環境技術開発、環境負荷低減技術・商品の普及を進めます
・ 環境技術開発への予算の大幅増
・ 環境負荷低減技術・商品への補助の大幅拡大(特に、省エネルギー、再生可能エネルギー関連)
・ アーヘン・モデル(環境負荷の少ない商品の普及を市民が負担することによって進めるルール)の導入

2. 省エネルギーの徹底・再生可能エネルギー導入推進
   私たちの現在の「豊かな」生活は、エネルギーの大量消費に支えられていると言っても過言ではありません。しかし、現在のような化石燃料に依存するエネルギーの大量消費型文明が永久に維持できるものではありません。したがって、持続可能な社会を構築するためには、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入を今まで以上に促進しなければなりません。
   産業部門ではかなりの省エネルギーが進展していますが、現状では省エネルギーへの取り組みは停滞しています。したがって、炭素税・エネルギー税の導入と併せて省エネルギー機器導入補助の大幅拡大や環境投資に対する減税などの経済的措置(goods減税、bads課税)を導入することで、省エネルギー機器・技術やコジェネレーション導入を強力に支援します。運輸部門においては、都市部での路面電車(LRT)の活用、自転車道の整備促進などモーダルシフトの推進のための法整備等、環境負荷の少ない総合的な交通体系を確立します。民生部門では、待機電力の大幅節減や、省エネルギー型の電化製品の普及、エネルギー消費の少ない住宅の建築を促進し、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及への補助の大幅な拡大を行います。また、一定規模以上のビルについては断熱構造とすることを義務づけ、省エネルギーを徹底させます。
   地球温暖化問題等の環境問題に対応するためには、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへとシフトする必要があります。そのためには、公的施設での太陽光発電施設等の設置や省エネルギー機器設置を義務づけ、民間での導入の起爆剤とします。また、民主党では自然エネルギー促進法を提案しました。それは、再生可能エネルギー発電に対する買電価格を引き上げるとともに、回避可能原価との差額については、国による補助を行うことにより、商業ベースでの再生可能エネルギー導入を一層推進するものです。民主党は、これらの施策により、2010年までに再生可能エネルギーの一次エネルギー総供給に占める割合を 10%程度に向上させます。

● 省エネルギーを徹底します
・ ビルの断熱構造義務化
・ 計画的なモーダルシフトの法制化
・ 省エネ技術・商品普及促進(補助率拡大、アーヘン・モデル)
● 再生可能エネルギー導入を強力に推進します
・ 公的施設への導入義務づけ
・ 補助率の大幅拡大(太陽光発電導入補助を2分の1程度に)
・ 商業ベースでの再生可能エネルギー導入推進(買電価格との差額補助)

3. オゾン層保護対策
オゾン層は熱帯地域を除き、ほぼ全地球的に減少しており、特に高緯度地域で減少率が高くなっています。南極では2000年に過去最大規模のオゾンホール(南極大陸面積の2倍)が観測されました。日本では札幌でオゾン層の減少傾向が確認されています。オゾン全量が減少すれば、有害紫外線の地上照射量は増加し、生態系や人体に様々な悪影響を及ぼします。オゾン層破壊物質であるフロンの規制を徹底させる必要があります。
   民主党はこれまでも、フロン回収を義務化する法律の必要性を結党以来主張してきました。そして、2001年になってようやくその法律ができました。しかし、オゾン層破壊の問題は、対応を先延ばしすればするほど将来世代につけが回る典型的な環境問題であり、対応を先延ばしすべきではありませんでした。
   今後は、代替フロンについても強力な温暖化物質であることから、国内での脱フロン化を進めるために、フロン税を導入し、フロンの回収・再利用の促進と脱フロン化を強力に推し進めます。また、途上国においては、特定フロンの製造が続けられていることから、脱フロン化のための技術的支援、フロン回収システム構築のための支援などを進めることにより、オゾン層保護を世界的に推進する主導的役割を果たします。

● フロン税を導入します
・ 温室効果に応じてフロン製造に対して課税
・ 回収・再利用と脱フロン化を強力に推進
・ 脱フロン技術開発と普及を促進

【地球環境問題への対応】

1. 砂漠化対策、森林保全
人為的な影響等により世界中で砂漠化が進展し、生産に適さない土地が増大しています。現在、砂漠化の影響を受けている土地の面積は、地球上の全陸地の約4分の1、耕作可能な乾燥地域の約70%に当たる約36億haに達し、世界人口の約6分の1、約9億人がその影響を受けています。これは、草地の能力を超えた家畜の放牧、土地の能力を無視した過度の耕作、薪炭材の過剰な採取、不適切な灌漑による農地への塩分の集積などが原因です。その背景には、開発途上国の貧困、人口増加、対外債務の増加、貿易条件の悪化など社会的、経済的要因があり、砂漠化問題の解決を一層困難にしています。その結果、食糧不足などの生活条件の悪化や環境難民の発生による社会的な混乱が各地で起きています。
世界の森林面積は、1990年から2000年の10年間では約9400万ha(森林全体の約2.4%)もの森林が失われました。特に、熱帯地域の天然林は、1990年から2000年までの10年間で年平均1,420万ha(日本の本州面積の約3分の2)が減少しました。熱帯林の面積の消失により、多くの野生生物種が絶滅の危機に瀕しています。また、森林消失により放出される大量の二酸化炭素は地球温暖化を加速する一因ともなっています。我が国の木材輸入は世界の45%(うちほぼ半分が開発途上国からの輸入)という事実から見ても、日本が負う責任は重大です。
砂漠化防止・森林保全のために、植生の回復等の積極的支援を、その地域の住民の生活も考慮し、重要な国際貢献事業として、NGO と協力しながら進め、自然を守りながら持続可能な生活が可能となるような支援を積極的に行います。また、日本国内の木造住宅の耐用年数や紙のリサイクル率を向上させ、持続可能な木材利用が可能となるよう、建築基準法やリサイクル法等の法制度の改正を行います。

● 世界の森林面積がこれ以上減少しないよう支援します
・ 森林(特に熱帯林)の再生の支援
・ 砂漠化を防ぐための支援(周辺の植林等)
● 国内での木材使用量を削減します
・ 住宅の耐用年数を向上(100年住宅の普及)
・ 建築基準法に耐用年数向上の基準を設定
・ 紙の古紙混入率を法定(資源有効利用促進法)

2. 生物多様性の保全
   生物多様性の宝庫である森林は、伐採速度が過去最高の水準に達しています。このまま現在の速度で伐採が進むとすれば、現存する原始熱帯林は50年以内に消滅する可能性があります。また、人間活動による影響で、種の絶滅速度が100年前と比べて4万倍になっているともいわれています。そして、世界全体の4分の1にあたる6万種もの動植物が2025年までに絶滅する可能性も指摘されています。さらに、地球温暖化により二酸化炭素濃度が現在の2倍となった場合には、陸上の現存する生物生息地の35%が破壊される可能性があるという研究もあります。
   人間生存の基盤である環境は、生物の多様性と自然の物質循環を基礎とする生態系が健全に維持されることによって成り立っています。二酸化炭素の吸収、気候の安定化、土壌の形成、水源の涵養、水質の浄化など、様々な生態系の働きによって現在と未来の人間の生存に欠かすことのできない基盤が整えられています。しかし、人間の活動により生態系が急速に破壊されています。生態系を保全するためには、その生存環境そのものを保全する必要があります。豊かな生態系を育む自然環境を国際的に保全するための基金等への拠出、また、生物多様性に関する国際的な調査研究をNGOと協力しながら積極的に支援します。

● 生態系保護、生物多様性に関する調査研究を推進します

3. 海洋環境の保全
   海洋は、地球の全面積の4分の3を、海水は地球上の水の97.3%を占め、重要な生物生産の場であるとともに、大気との相互作用により気候に影響を及ぼすなど地球上のすべての生命を維持する上で不可欠なものとなっています。特に近年、漁獲高の増大などの海洋資源への依存度の増大や人間活動に伴う汚染の拡大に伴い、海洋環境の保全は重要な課題となっています。海洋資源の持続的な利用に向け、科学的知見を充実させるとともに、海洋汚染防止のための枠組みの充実に向けた積極的に行動します。

● 海洋資源の保全に関する調査研究を促進します

4. 環境保全等の国際貢献
  地球温暖化やオゾン層の破壊、砂漠化、酸性雨、種の多様性の減退などはもとより、森林、土壌、草地などの再生可能な自然資源の劣化や、急速な都市化や人口増加に伴う環境悪化、工業化に伴う汚染物質の排出や有害廃棄物の問題と健康への影響など、世界での環境問題は先進国、開発途上国を問わず認識され、開発途上国をめぐる環境問題は深刻化、複雑化しています。その解決のため1992年リオ・デ・ジャネイロで開催された「国連環境と開発会議」をきっかけにして、日本の政府開発援助(ODA)においても環境ODAの支援が促進されています。しかし、その協力内容が、「持続可能な開発」の実現のための長期的・総合的な視点の欠如や、事業中心で環境分野の政策・人材育成支援型援助が少ない、プロジェクト形成段階での地域住民等の参加・協力が少ないなど、その問題点も多く見られます。また、インドネシアのコトパンジャン・ダム問題など、日本のODAにより開発され、その結果自然環境への影響のみならず生活環境をも脅かす状況となった事例も見受けられます。世界での環境問題の解決に向け、日本のODAを抜本的に見直します。開発中心のODAから人材育成型のODAにシフトするとともに、すべてのODAに環境影響に対する配慮を促すため「ODA環境配慮ガイドライン」を作成し、“環境保全型国際協力活動”を促進します。さらに、「ODA環境配慮ガイドライン」を世界統一的なものとするよう、援助国(ドナー)、開発途上国を問わず関係各国に働きかけます。
  また、ODAに対して事業の必要性や現地住民との協力、事業の評価など、さまざまな課題があげられています。その原因として、透明性の確保がなされていない、援助の理念と原則などが明確でない、開発途上国や住民のニーズが多様化しており合致していない、事業の評価が徹底されていないなどがあげられています。今後ODAを進め世界の環境問題解決また開発途上国・住民のニーズに合致した援助を行うため、国際協力に関する基本的な法律を策定します。

● 日本のODA・開発途上国支援を抜本的に改革します
・ 人材育成を中心としたODA
・ 世界的に保全すべき自然を保護するための基金創設
● ODA環境配慮ガイドラインの世界標準化を提唱します
・ 国際協力活動における環境配慮の徹底
・ 環境配慮に関する世界標準化
● ODA基本法の制定をめざします
・ ODAに関する基本理念と原則の明確化
・ 開発途上国や現地住民のニーズをもとに計画立案
・ 政策・計画段階からの環境影響評価
・ 透明性の確保と情報公開の徹底
・ NGOや現地住民と協同の事業遂行

【循環型社会の構築】

 持続可能な社会は、循環型の社会でなければなりません。現在の大量生産・大量消費・大量廃棄の一方通行型から、資源循環型の社会システムへと転換するとともに、自然の水循環・物質循環を阻害しない社会システムを早急に構築します。

1. 物質循環(総合的な化学物質対策)
日本で10万種類、世界では15万種類の化学物質が流通しています。さらに、毎年2000種類以上の新規化学物質が生産されていると言われています。このように化学物質が大量に生産されているのも関わらず、既存の化学物質の安全性評価は不十分であり、生態系に対する影響は定かではありません。生態系への影響排除、物質循環の確保、化学物質に関する情報公開を原則とし、化学物質の持つ有害性や蓄積性等の程度に応じて化学物質を分類し、分類に応じた化学物質に関する規制(製造禁止、製造規制、用途規制、代替物質への転換、回収、表示、製造量の届出、有害性の把握等)を実施することが必要です。また、未知の化学物質についても使用する前に最大限できうる限りのリスク評価を行い、予防原則を導入しなければいけません。
また、化学物質がどこに存在し、どの程度のリスクがあるかについて、地域でのリスクコミュニケーションを通じて、理解を深めることも重要です。そのため、民主党ではPRTR(化学物質排出移動登録)制度についても、地域がリスクコミュニケーションを行いやすい形を提案しました。
さらに、工業的に生産される化学物質だけではなく、ダイオキシンなどの非意図的に生成される化学物質のリスク対策も十分に行わなければなりません。民主党は、ダイオキシン対策についても、ダイオキシン対策緊急措置法を提案し、これがきっかけとなりダイオキシン対策特別措置法の制定につながりました。化学物質の環境リスクを低減させる対策を体系的・総合的に講じるために、現在の「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」を改正し、化学物質法を制定します。

● 化学物質法を制定します
・ 化学物質に関する政策の原則を確立
      予防原則の確立
      健康被害の未然防止と生態系への影響の排除
物質循環(有害化学物質の環境中への蓄積・拡散防止)を確保
化学物質に関する有害情報の公開・表示
化学物質に関する科学的知見の充実
・ 化学物質の危険性に応じた適切な規制
化学物質の持つ有害性や蓄積性・拡散性の程度に応じて分類
分類に応じて化学物質に対する規制を実施

・ 環境リスクの計画的削減
国による有害化学物質拡散防止計画の策定
一定規模以上の事業者による有害化学物質拡散防止計画の策定

・ 新規化学物質の登録手続の充実等
有害性や蓄積性・拡散性の程度に応じた規制を実施
既存化学物質について、知見の集積を図る

・ 情報公開・リスクコミュニケーションの促進

2. 物質循環(シックハウス・化学物質過敏症対策)
建築物に由来する化学物質などによって健康被害が生じています(=シックハウス症候群)。また、様々な理由から微量の化学物質に対して敏感に反応してしまう症状(=化学物質過敏症)の人が増加しています。民主党はかねてからシックハウス対策、化学物質過敏症対策の充実を求めてきました。また、シックハウス被害者がこれ以上増加することを防ぐために、建築物完成後の居室内の有害化学物質濃度測定を義務化と基準を超えた場合の改善を求めることができる法律と、大規模な公共建築物についての有害化学物質の定期的な測定を義務づける法律を国会に提案しました。また、化学物質過敏症やシックスクールなどの実態調査や患者の療養施設の確保などについて、政策をとりまとめています。
化学物質による健康リスクを低減させるために予防を徹底し、実態調査を行うなど科学的知見を充実させるとともに、被害にあった方々の療養施設を建設するなど、対策を進めていきます。

● 化学物質過敏症・シックハウス対策を充実します
・ シックハウス症候群・化学物質過敏症の原因究明・治療療養体制の確立
実態調査
メカニズムの徹底調査・有効な治療方法の確立
診断基準づくり・医療保険の適用
都道府県毎に長期滞在型の療養所の建築
相談窓口の設置

・ シックハウス症候群・化学物質過敏症対策のための法律整備
室内における有害化学物質濃度規制基準の設定
新築・改築時の有害化学物質濃度測定の義務化
大規模公共建築物における有害化学物質の定期的測定

・ シックハウス症候群・化学物質過敏症対策のための施策の充実
有害化学物質フリー製品の普及促進
公共建築物・職場における対策の推進
広報・啓蒙活動の充実

・ 安心・安全な学校づくり(シックスクール対策)
実態把握・調査研究
学校における環境の維持(学校環境衛生基準の改定)
施設・設備の整備(学校施設設備指針の改定)
教育関係者への指導の徹底
関係者の意見の反映

3. 水循環の確保
  地球上の水のうち、日常的に使われる淡水は2.5%、河川や湖沼など利用しやすい淡水は0.01%しかありません。世界で10億人以上が清潔な飲料水を確保できず、2025年には48カ国で水不足が深刻化すると言われています。日本では河川の枯渇、地下水汚染はあるものの、世界の水危機には未だに鈍感ですが、実際は無縁ではありません。日本が輸入している農畜産物を国内で生産したとすると、年間1千億トンの水が必要であり、それは国内の総水資源使用量の約900億トンを上回る量です。ミネラルウォーターとして輸入もしています。国内の食料自給率を上げ、貧困層にも十分な水が供給されるよう、水不足が深刻な国々の上下水道事業への積極的に援助します。
   一方、日本国内でも、省庁縦割りの水管理によって、自然環境を活かした水循環とはなっていません。循環する水全体、森・川・海を一体としてとらえ、流域全体を視野に入れた健全な水循環の確保が重要です。そのために、現状では細分化され、目的も異なる森林、河川、海岸等の各法律を水循環という観点から、環境指向的な立法(水法)の中に統合します。その際には、住民参加と情報公開により、地域の自然的・文化的・社会的特性に応じて、住民が森林や河川の問題に真剣に取り組むことのできるシステムを法律上組み込みます。
   また、河川環境を復元するための「河川環境復元計画」を策定し、コンクリートで固められた河川を自然環境豊かな形を取り戻す事業を市民事業として導入します。

● 安全な水が供給されるよう、国際的な支援を充実させます
● 水法について検討を進めます
・ 森・河川・地下水等について、水循環を一体的に捉える
・ 自然の保水力や河川の自然環境の重視
・ 縦割りではない水利用に関する調整
・ 都市部での浸透ますの普及など地下水涵養の促進
・ 建築物における雨水利用の促進

4. 資源循環型社会の実現(総合的な廃棄物・リサイクル対策)
   日本では毎年、4億5000万トンもの廃棄物が発生しています。リサイクル率は、一般廃棄物が13.1%、産業廃棄物が43%(1999年度)であり、資源の節約と循環的な利用を一層推進しなければなりません。一方、廃棄物の不適正処理や不法投棄も後を絶たず、廃棄物に関する規制や監視を十分に行わなければなりません。さらに、回収する資源の価格が下落するとリサイクルに回らない資源が多くなるなどの問題も指摘されています。
   民主党は、持続可能な資源循環型社会を目指すために、現在の廃棄物・リサイクル法制度を統合した新たな法制度である「資源循環・廃棄物管理法」の制定を目指しています。現在、第二次案がとりまとめられており、2003年に向けて最終的な法案のとりまとめを進めていきます。

● 資源循環・廃棄物管理法案を制定します
・ 廃棄物・リサイクル政策の原則を確立
      未然防止の徹底
      廃棄物の国内・区域内処理
廃棄物・リサイクル対策の優先順位を確立
熱利用(燃料化)が認められる要件を確立
有害物質を含む製品に関する原則を確立

・ 省資源・リサイクルを実質的に担保
事業者に対して省資源計画策定を義務づけ
製品アセス製造規制、目的・用途規制、引取義務等の規制
経済的手法(デポジット、焼却税、埋立税)の導入
リサイクルが技術的に可能なものは埋立処分を禁止(例外あり)

・ 製品・廃棄物に関する情報公開による施策の透明化
製品の環境負荷情報についての情報公開
製品に対する表示制度(分別回収、素材、有害物質等)
廃棄物についての情報公開を義務づけ

・ 廃棄物の定義の見直し
有価・無価・占有者の意思に関わらず客観的に廃棄物を定義
・ 一般廃棄物と産業廃棄物(限定列挙)の区分の見直し
事業者の排出する廃棄物はすべて事業系廃棄物とする

・ 廃棄物を巡る問題への対応
市町村による廃棄物の認定制度の導入
廃棄物処理施設の許可要件に、周辺住民との協定締結を義務づけ

・ 排出者責任の徹底
排出者は委託した場合にも免責されず、責任を負う

・ リサイクル施設への環境規制の適用
リサイクル名目の不適正処理を防止

・ 国、地方自治体による計画的な省資源化・資源循環の推進
国が省資源・リサイクル・廃棄物管理に関する基本方針を策定
国がマテリアルバランスに関する目標を設定
国全体のリサイクル目標を業種毎に設定
市町村は、国の基本方針に沿って廃棄物減量計画を策定
国・地方公共団体の率先実行

・ リサイクル率・回収率の引き上げが必要な製品を指定(=特定製品)
目標達成がなされない場合の措置(強制デポジット、個別法)
回収率が設定できない製品(医薬品等)の自主的回収制度

・ デポジット・焼却税・埋立税などの経済的措置

・ リサイクル財の規格化による利用の拡大

・ リサイクル施設の届出義務化、廃棄物処理施設の業の許可の廃止等による規制の適正化

・ 罰則の強化等による廃棄物管理の徹底

5. 資源循環型社会の実現(個別リサイクル法の改正)
   現在、容器包装リサイクル法をはじめとして、家電、自動車など多くのリサイクル法が制定されています。また、再生資源利用促進法においても、パソコンと二次電池が自主回収品目に指定されています。ところで、個々の製品のリサイクルシステムは、その製品特性に応じて一定程度の違いが認められるべきものではありますが、同様な製品(家電とパソコン)であっても、その費用負担の時期が異なるなど、リサイクル法制度自体が複雑化しており、事業者や消費者が混乱するケースも考えられます。
また、容器包装リサイクル法は、再使用容器(リターナブル容器)の経済的負担が相対的に重いことから、環境負荷の大きいリサイクル容器(ワンウエイ容器)の割合が増加しています。これらの問題を解決するために、民主党が提案している「資源循環・廃棄物管理法」の考え方に沿った形で個別リサイクル法を改正します。
これからのリサイクルは、製造事業者に一定のリサイクル責任が課される(=拡大生産者責任)場合が増えることになります。そのためのリサイクル費用についても製品販売時に徴収されることが多くなると考えられます。しかし、製品が廃棄されリサイクルされるまでにタイムラグがあります。事業者が徴収したリサイクル費用についてはその一定額について引き当てを認め、リサイクルによる経済的負担を軽減します。

● 個別リサイクル法を改正します
・ 家電とパソコンのリサイクル費用徴収時期を調整
・ 携帯電話や電子レンジなど、家電のリサイクル対象品目を拡大
・ 家庭系廃棄物と事業系廃棄物の取り扱いをできる限り同じに
● 容器包装リサイクル法を改正します(リターナブル容器の推進)
・ 主に飲料の用に供する内容物を販売するために用いられる容器等で、再使用を促進すべき容器(=飲料用等容器)を指定
・ 飲料用等容器について、事業者は、販売される容器の一定割合以上、再使用可能な容器(=再使用容器)を使用(その旨の表示を行う)
・ 飲料用等容器全体における再使用容器の販売割合が、再使用容器使用率を下回った場合には、強制デポジット制度を導入
・ 再使用容器使用率を上回る再使用容器の販売を行わなかった場合、再使用容器使用率を下回った割合に応じた額を国に支払う
・ 再使用容器に入った飲料を消費者に販売する者の再使用容器を引き取り義務
・ 再使用容器を使用した製品を製造する者の再使用容器引き取り義務
・ 引き取られた再使用容器は、再使用が困難であると認められる場合を除き再使用
● 製造事業者によるリサイクル支援のための税制を創設します
・ 将来のリサイクルに充てる費用についての引当金制度の創設

6. 環境調和型公共事業
   公共事業についても、環境アセスメント法の成立により、一層の環境配慮がなされることとなったものの、未だに公共事業による自然破壊は進んでいるのが現状です。また、従来行われた公共事業についても、環境への影響を検討し、環境復元措置等の対策を施さなければなりません。民主党では公共事業について国の事業を限定するとともに、ダムについては2年間その建設を凍結し、抜本的に見直しを行うべきであると主張してきました。また、ダムに頼らずに森林の保水力などによって治水を行うようにするための、緑のダム構想を発表しています。また、諫早湾干拓事業や吉野川河口堰改築事業など環境負荷の大きい公共事業については、再評価により見直しや中止を徹底させます。
一方で、河川の再自然化や湿地の復元、ビオトープネットワークの整備など、環境再生のための公共事業を地域のNGO と協力しながら積極的に行い、循環と共生のための社会資本整備を推進すべきです。

● 国の公共事業を限定し、民主的なコントロールを徹底します(=公共事業コントロール法)
・ 国が行うべき公共事業を法律上限定
・ 国の公共事業計画についての国会承認
・ 時のアセス・事後評価システムの整備
● ダムに頼らない治水を実現します(=緑のダム)
・ ダム事業を2年間凍結し、再評価
・ ダムに頼らない治水の支援(森林の保水力向上)


【地域の環境保全】

1. 豊かな自然の保全と生物多様性の確保
日本の動植物の総種数は9万種以上で、約240種の哺乳類の20%、約700種の鳥類の13%、約8800種の維管束植物の19% が絶滅のおそれがあるという危機的状況です。原因は海岸線の人工化・埋め立て、里地里山の荒廃、移入種などが挙げられます。
   日本の自然公園は、国や自治体が所有している部分はごくわずかで、大部分が民間の所有となっています。このような状態では、核心的な地域を十分に保全することはできません。したがって、日本に残された価値の高い自然を保護するために、その核心地域を国・自治体で所有・管理するよう、その取得を国の費用で計画的に進めます。しかもそれは、遺伝子的な生物多様性を確保するという観点から考えて、孤立した形ではなく、それぞれがつながった形で確保されなければなりません。「緑の回廊」が確保され、生物が自由に移動できるように地域指定を行うことによって、生物の多様性の確保を図ります。
   特に、湿地は様々な生物が生息し、渡り鳥の中継基地になるなど、生物にとって重要な空間となっているのですが、埋立等により多くの湿地が失われてしまいました。残された貴重な湿地を保全し、失われた湿地を回復するために、湿地保全法を制定します。
また、良好な生息環境を保全し、野生生物と人間の共存を図るために、鳥獣保護法を廃止し、野生生物保護法を制定します。さらに、移入種によって破壊された生態系を回復するための法律の制定についても検討を進めます。

● 湿地保全法を制定します
・ 保全すべき湿地の指定と周辺環境の保全・整備
・ 回復すべき湿地の指定と回復計画の策定
・ 回復のための事業実施とモニタリング
● 野生生物保護法を制定します
・ 野生生物の貴重な生息地の指定と保全
・ 科学的知見に基づいた野生生物保護計画の策定
・ 野生生物生息に関するモニタリングの実施
・ 野生生物による農作物被害等への補償
● 移入種により破壊された生態系を回復する法律を制定します
・ 生態系を破壊する移入種の指定
・ 生態系回復計画の策定と事業の実施
・ 生態系回復事業のモニタリング
・ 各種規制の強化(輸入禁止、繁殖禁止等)

2. 里地・里山保全
人が手を入れることにより歴史的にも独特の生態系が確保されてきた里地・里山の自然が、生活の変化や過疎化等の原因により荒廃している地域が増大しています。山は地域や人を写す鏡とも言われています。山を再生することは、地域を、人を再生することに他なりません。また、里地・里山は日本の原風景でもあり、多くの外国人もその美しさを世界に伝えています。世界的にも認められた里地・里山を保存するために、その地域の伝統や文化を活かした地域循環型の経済や農業を支援します。
   一方で、日本の穀物自給率は29%と先進諸国で最低です。また、人口が一億人を超える国の中でも最低で、次に低い国がブラジル(89%)となっています。ヨーロッパは年々自給率を向上させ、1970年には85%だったものが、1990年には115%に増加しています。ところが、日本の田畑の土壌荒廃は進み、持続可能性が危ぶまれています。全国の耕作放棄地は増加の一途をたどっています。日本の農業を質・量ともに再興し、有機農業の推進によって育まれる命あふれる健康な大地を取り戻さなければなりません。農薬や化学肥料の使用量を減らし、里地・里山を活用した循環的で地域の生態系を保全できるような農業を推進します。

● 里地・里山の保全を行います
・ 地域循環型の経済・農業の構築
● 循環型の農業を支援し、自然と調和した農業とします
・ 有機農業に転換する農業者への助成の実施
・ 循環型農業への支援

3. 森林保全と持続可能な森林経営
   森林は、保水機能や防災機能、生物多様性の確保など、非常に重要な公益的機能を有していますが、それに見合う管理が十分に行われていません。森林から受ける恩恵を将来の世代に受け継ぐためにも、森林の整備を十分に行う必要があります。間伐などの森林整備を公共事業として行い、環境の視点からの森林管理と持続可能な森林経営を行うことができるようにします。

● 森林整備への支援を拡大します
・ 間伐事業の公共事業化(支援の大幅拡大)
・ 複層林への転換の促進
・ 自然林の保全

4. 海洋保全
   自然状態を保持した海岸は、生物の繁殖・生息の場として重要であるにもかかわらず、都市化や工業用地の確保のために、人工海岸が急速に増加しました。現在、日本の海岸の55.2%が人工海岸となってしまっています。しかし、いったん人工海岸としてしまうと、もとの生態系に戻すことは不可能に近く、これ以上の人工海岸化は厳に慎むべきです。特に、干潟と珊瑚礁については、その周辺も含めた保全を図り、日本に残された貴重な自然・生態系を保全します。

● 自然海岸保全法を制定します
・ 海洋資源の保全
・ 自然環境、生態系の保護

5. 循環と共生のまちづくり
   循環と共生をひとりひとりの市民が実践するためにも、それぞれの地域において、これらの思想が活かされていかなければなりません。また、地域の歴史的な景観や環境が保全され、その地域の特性に応じて環境と調和した循環型のまちづくりがなされなければなりません。そのためにも、環境負荷の少ない持続可能な社会を目指すための原則を明記するとともに、情報公開と市民参加を徹底した、地方主権型のまちづくりのシステムを、都市計画法や建築基準法を抜本改正することによって構築します。

● 環境負荷の少ない持続可能なまちづくりを義務づけます
・ まちづくりで環境負荷を低減(目標設定)
・ 地域の伝統や文化を活かした循環型のまちづくり
・ 情報公開をふまえた市民主体のまちづくり
・ 無秩序な開発を防止し、街並みや景観の保全

6. 都市の緑の回復
   都市は、緑地も少なく夏はヒートアイランド化し、そのために冷房用電力消費が増えるという悪循環を続けています。しかし、都市緑化により夏の気温を下げることができ、屋上緑化や壁面緑化により断熱効果を高めることもできます。東京23区の可能な屋根のわずか20%を屋上緑化すると、23区の気温が 0.3℃程度下がるそうです。また、86%屋上緑化すると1.2℃程度気温が下がり、23区だけで40万kwの電力が節約できると言われています。さらに、東京都区部で壁面緑化も屋上緑化も行った場合、11万t(日本の年間総排出量の0.47%)以上の二酸化炭素が吸収できると考えられています。省エネルギーのための屋上緑化と美しい都市景観をつくるために都市緑化法(仮称)の検討を進めます。

● 都市緑化法(仮称)を制定します
・ 一定規模以上の都市に新設される建物の屋上緑化・壁面緑化義務化
・ 生垣の設置に対する大幅な助成
・ 都市緑化の推進
・ 一定規模以上の建築物の雨水利用義務化(公共建築物は全て義務)


以 上

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