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1998/12/08
平成10年度第3次補正予算案に反対する討論
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民主党 海江田 万里

 私は民主党を代表して、政府提出の平成十年度第三次補正予算案に対して反対の討論を行うものであります。

 わが国は未曾有の長期不況にあり、国民は不安な気持ちで毎日を送っております。右肩上がりの経済成長、官主導の経済システム、年功序列・終身雇用制度が揺らぎ、日本経済の仕組みそのものが瓦解しつつあります。
 私たちは、現下の経済危機の原因が単なる循環的なものではなく、冷戦構造崩壊や大競争時代の到来による世界経済の大転換、そして成熟・少子・高齢時代を迎えた社会構造の変化などにわが国の経済システムが適合できなくなっていることにあると考えているところであります。

 民主党は、先の臨時国会を延長し、恒久減税を含む抜本的な景気対策を早急にとりまとめ、補正予算を成立させるよう提言いたしましたが、政府は早々と先の国会を閉じ、不況に追い打ちをかけました。そして、景気対策と補正予算の編成に手間取り、国会開会を遅らせた政府・自民党の責任は重大であります。
 このように、政府・自民党は甘い経済見通しを続けて景気対策を先送りし続け、経済構造改革を後退させて、経済危機をいたずらに深刻化させております。さらには、年金・医療制度、国家・地方財政に対する国民の不信・不安が人々の消費マインドを冷え込ませ、不況を倍加させる悪循環を作り出しております。

 ところが、政府の行った今回の経済対策においても、今までの失政を省みることなく、場当たり的なその場限りの取り繕いを行っているだけであり、日本全体を破綻に向かって加速させるだけの施策を繰り返しているのであります。
 私たち民主党は、十一月十二日に「減税、安心、未来への投資」をキーワードに、国費で総額二十兆円規模の「構造改革につながる景気・雇用対策」を発表いたしました。私たちの主張に誠実に耳を傾ければ、このような対処療法にすぎない補正予算になるはずがありません。政府は、日本経済を再生させるという名目で、自民党が戦後築き上げてきた自らの利権を保持するためだけに経済対策を行っていると言っても過言ではありません。以下具体的に反対の理由を申し述べます。

 第一に、来年一月からの減税が何等措置されていないことであります。現在の経済情勢を考えた場合、目先の需要喚起の補正予算だけではなく、減税についても速やかに前倒しをして行うべきであります。私たち民主党は、中堅所得階層に手厚い所得税減税と、経済への波及効果が大きい住宅減税、法人税が国際水準となるような引き下げなど、約六兆円の減税を提案しております。
 にもかかわらず、政府は目先の需要喚起の予算措置のみを先行させ、減税を通常国会に先送りしてしまったのであります。これでは、景気に対する刺激としてはあまりにも不十分であると言わざるを得ません。今までの政府の景気対策の失敗は、大胆な対策を講ずることなく、場当たり的に小規模の対策を続けてきたことにあります。「トゥーリトル・トゥーレイト」であり、その失敗を今回もくり返すものであり、愚の骨頂と言わざるを得ません。

 第二に、今回の経済対策も公共事業中心の従来型予算編成であることであります。本年四月の総合経済対策における事業消化すら円滑に行われていないにもかかわらず、さらに公共事業を追加することの意味は一体何なのでありましょうか。四月の総合経済対策の都道府県分の契約率は、十月末現在でわずか二五・二%にすぎません。このような状況でさらに追加的な公共事業を行っても、即効的な景気刺激策になるはずもありません。また、今回の経済対策の公共事業についても、国が事業の種類・箇所付けまで決めて行うものであり、地方の自主性は全く尊重されておりません。国民が本当に必要とする社会資本とほど遠い、単なる利権保持のための公共事業が延々と続けられているのであります。
 私たち民主党は、公共事業を柱とする社会資本整備は、あくまでも国民の豊かさを実現するためのものであり、環境・安全・福祉等に配慮しながら、透明性・効率性を確保し、限られた資源をニーズが最も高い分野に最適配分することが、景気刺激・雇用増にもつながると考えております。そのためには、中央官庁による過度なコントロールを改め、地方自治体が主体的に事業を選択できるシステムの構築を主張しているところであります。このような主張を全く取り入れず、従来型の公共事業を続けても、早期の景気回復が望めないことは論を待たないところであります。

 第三に、今回の緊急経済対策では、地方に二兆八千億円の支出を強制しているのであります。現在、地方自治体の財政状況は極めて苦しくなっております。そのような状況下で、地方自治体の支出を強制するという政府の態度は全く理解できないものであります。最近相次いで「財政危機宣言」を行った東京、大阪、愛知、神奈川の四都府県だけでわが国の行政投資の四分の一を占めております。現下の状況で、今回の経済対策の迅速な実施は不可能に近いと言わざるを得ません。
 また、今回の経済対策における一般公共事業の地方負担分は全て地方債で負担することとされており、既に公債費負担比率が警戒ラインである一五%を超えている団体が全体の五六%、千八百四十七団体という異常な状況であり、これ以上地方に地方債の発行を強いることは、政府が自治体を強制的に倒産させるものであり、非常識きわまりない政策であるとと言わざるを得ません。

 第四に、弱者の切り捨てであることであります。平成十年度における社会保障関係費については、平成9年度からの自然増が八千億円であったにもかかわらず、従前から民主党が凍結を主張していた財政構造改革法のキャップにより三千億円に圧縮されたのであります。平成十年度当初予算において五千億円の福祉切り捨てがなされたのであります。今回の経済対策においても、その中の三千八百億円程度が復活したにすぎず、残りの千二百億円は未だに圧縮されたままとなっております。
 私たち民主党は、所得税減税と同時に、所得税の扶養控除の見直しとセットで児童手当を抜本的に拡充した「子ども手当」を創設すること、さらに基礎年金国庫負担率二分の一への引き上げによって保険料をただちに引き下げることを提案いたしております。また、先般の参院選では、育児休業給付を現行の二五%から六〇%に引き上げる提案を行いました。これは、小手先の景気対策よりも、しっかりとした社会的セーフティーネットを確立することで生活不安の解消を図ることが景気対策上も不可欠だと考えるからであります。
 ところが政府は、金融システム安定と称して、充分な情報公開もないまま銀行に公的資金を湯水のごとく注入する一方で、弱者を切り捨てているのであります。これでは、国民は安心した暮らしをおくることができず、消費を増やそうという気持ちがおこらないことは明白であります。

 第五に、財政赤字がさらに拡大することであります。平成十年度の国債発行額は三十四兆円程度で、公債依存度は三十八・六%となり戦後最悪となります。また、国債残高はさらに増加し約三百兆円となり、将来の負担がさらに増加しております。
 戦後最悪ともいえる今日の不況は、まさに自民党歴代内閣の経済政策の失敗によるものであることは明らかです。土木工事主体の公共事業が中心の景気対策は、もはや時代遅れの効果の乏しい経済対策なのであります。
 私たちは、経済構造改革を行った上で将来の日本社会のビジョンを明確に示し、積極的な財政出動を行うのであれば、それは許されるものであると考えます。ところが、先程来指摘させていただいております通り、今回の経済対策も従来型の場当たり的な自らの利権保持のためだけの景気対策にすぎないのであり、このようなことに莫大な予算を投入し、将来の世代にツケ送りをすることは、国民に対する裏切りであると言わざるを得ません。

 政府は私たちの提言した景気対策を全面的に受け入れ、直ちに予算案を出し直すべきであります。さもなければ、日本経済はますます混迷の度を深めることとなるでありましょう。今行うべきことは、これまでの利権構造にしがみつき従来型の景気対策を行うことではなく、日本経済の構造的な改革につながる抜本的な景気対策を行うことなのであります。このような根源的な改革を行い得ない小渕政権の延命は、不況をさらに悪化させ、経済危機を拡大することにしかなりません。小渕総理の退陣・政権交代こそが最大の景気対策なのであります。そのことを強く申し上げて、私の討論を終わらせていただきます。

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