菅直人代表代行は10日午前、衆議院予算委員会で質問に立ち、福田首相らに対し、沖縄戦で日本軍が集団自決を強制したとの記述が削除された教科書検定問題、農林業政策のあり方、テロ特措法に基づくインド洋上の補給活動の実態等に関して議論した。
菅代表代行は教科書検定問題に関して、自らも参加した9月29日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の印象を踏まえ、同大会で示された沖縄の意思、採択された「教科書検定意見の撤回と記述の回復を求める」決議をどうとらえるか首相の認識を質した。首相は「極めて悲惨な戦いであったことは承知している」などとしたが、「検定意見の撤回と記述の回復」への対応については明言を回避。菅代表代行が重ねて、「教科書の内容について直接、政治が力を及ぼすのは望ましいことではない」と述べ、そうした認識を踏まえて民主党が提示している「教科書検定の見直しを求める国会決議案」の採択を迫ったが、首相はあくまでも自らの考えを明らかにしなかった。菅代行は重ねて、文部科学省の政治介入が垣間見える教科書検定のやり直しを強く求めた。
続いて菅代表代行は民主党農林漁業再生プランを取り上げ、参院選のマニフェストでも示した民主党の農業政策に関して、2点を大きな目標として設定していることを首相に説明。(1)「戸別所得補償制度」の創設により、安定営農を実現し、農山村地域で子どもを産み育てられる環境を整え、地域再生につなげて行くこと、(2)自給率の向上につなげる農業の実現――を柱としているとした。同時に、4ヘクタール以上の大規模農家のみを対象とし、小規模農家を切り捨てる自民党農政とは相反することも明らかにした。こうした主張に対して首相は、抽象的すぎてわからない、農業だけで地域がよくなるわけではないなどとする認識を示し、二世議員特有の生活実感のなさを浮き彫りにした。菅代表代行はまた、自民党農政は、農業土木重視で税金のムダづかいを重ねてきただけで、何ら地域活性化には繋がっていない現状を指摘し、民主党が示す「戸別所得補償制度」こそが、有益な税の使い方であるとした。
菅代表代行はさらに、インド洋での海上自衛隊の補給活動に関し、米国側に提供した燃料がイラク戦争目的に転用されたとされる疑惑を追及した。首相は官房長官当時、03年2月の海上自衛隊補給艦から米補給艦への提供燃料が80万ガロンだったにもかかわらず、5月の会見で20万ガロンだと明言。「問題の燃料はキティホークの一日の燃料消費量にあたる20万ガロン、補給をしたのが2月下旬で、ペルシャ湾に行くまでずいぶん間があり、イラク関係のことで使われることはありえない」とも発言していた。首相は、「データの取り方に間違いがあった。お詫びする」と陳謝したが、菅代表代行は、同年5月、当時の石破防衛庁長官が「イラクとの戦争に使われていたということになるとテロ特措法に反する」と発言していることも踏まえ、データの間違いを陳謝すれば済むことではなく、給油活動に関する誤った実態認識を根拠に、テロ特措法の延長の手続きをとった政治責任こそが大問題であると指摘した。
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