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1998/04/30
御挨拶
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  散りぬべき
  時知りてこそ
  世の中の
  花は花なれ
  人も人なれ
       (細川ガラシャ)

 桜も南の方ではもう散ってしまいましたが、いつものことながら、その散りぎわの潔さに心魅かれます。

 さて、私は、本日、衆議院議員の職を辞する決意をし、衆議院議長宛に辞職届を提出してまいりました。
 三十三歳で参議院に議席を得てから六十歳の今日まで、知事時代も含めいつも変わらぬ御指導御鞭撻を賜りましたことにつき改めて感謝の意を表するとともに、心より御礼申し上げる次第です。

 人生五十功無キヲ愧(は)ズ
 花木春過ギテ夏己(すで)ニ中(なかば)ナリ
 満室ノ蒼蠅(そうよう)掃(ほう)エドモ尽クシ難キ
 去リテ禅榻ヲ尋ネテ清風ニ臥(が)セン

 これは将軍足利義満の管領であった細川頼之の『海南行』ですが、権力の争奪に青バエが群がってぶんぶん飛び回っている様は、六百年前も今日もいささかも変わるところがないということを改めて強く感じます。

 細川政権で手がけた政治改革の目指したものは、いうまでもなく「政権交代のある民主主義」を実現するということでありました。しかしながら新進党の顛末といい、よかれと思ってやってきたことが、必ずしもいい形となって結実し得なかったことは誠に残念であり、また申し訳なく思っております。
 長期にわたる一党支配によってもたらされたものは、政官業の癒着、利益誘導、官僚主導の政治等々、枚挙にいとまがありません。今日の経済の危機的状況も、まさにその積年の病弊によってもたらされたものであります。
 だからこそ、「政権交代のある民主主義」をつくることこそ日本政治の最大の課題であって、それをなんとか現実のものとしなければとの一念で、今日まで政治活動を続けて参りました。

 この度、改革を目指す諸勢力が結集して政権の選択肢として「民主党」立ち上げまでこぎつけることができたことは、その意味でまともな民主主義の政治に向けての確かな一歩だと考えております。
 薩長土肥がばらばらではとても倒幕はかないませんが、これでようやく政権交代への軌道がまがりなりにも敷かれたわけで、私もなにがしかその責めの一端をはたせたのではないかと内心ホッとしている次第です。

 政治の現況を考える時みずからの力の足りなさをただ愧じいるばかりですが、かといって政治に携わる者はただその地位に長きをもって、尊しというものでは断じてありません。
 政治の世界に入った当初から、私自身六十歳を区切りにしようと思い定めていましたが、新「民主党」の発足は、私にとっては何よりもその当初からの思いを達する一つの機会となりました。もちろん政治から身を退くとはいえ、今後とも政治に強い関心を持ち続けますし、日本の政治が真に国民の期待に応えられるものになりますように、私なりに野にあって努めていく所存です。

 ただちに晴耕雨読というわけにもいきますまいが、とにかくこれからは明末の碩学・酔古堂剣掃の

 那(なん)ぞ人の是とし
 人の非とするに管せんや
 春来 尚一事の心に
 関するあり
 只 花の開くと
 花の謝するとにあり

 そんな一節を思い起こしながら過ごしていければとそう希っています。

 重ねて心より御礼申し上げ、御挨拶とさせて頂きます。

四月三十日
 細川 護煕

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