民主党道路特定財源・暫定税率問題対策本部(本部長:菅直人代表代行)は7日午前、『道路の経済学』の著者、松下文洋氏(都市交通総合分析モデル開発者)を招いて勉強会を開催。松下氏は英国、オランダなど諸外国と比較しながら日本の道路政策の問題点を指摘、参加した議員らは熱心に聞き入り、道路特定財源・暫定税率にとどまらず国家戦略のひとつとして交通政策に取り組む必要性を確認した。
冒頭、挨拶に立った菅代表代行は、日本においては政官業の様々なしがらみの中、道路の建設コスト等について的確な数字が示された資料がほとんどないとの現状を述べ、参議院予算委員会での審議を前に、道路問題の実態を把握することが重要であるとの認識を示した。
松下氏は、(1)巨額な道路偏重の公共投資(2)日本の道路はなぜ高い(3)監査機関の必要性(4)2兆6000億円減税は多大な経済効果生む(5)「道路を作れ、造れ」の政策からの転換(6)道路を安全にすれば医師不足は解消される――の6点をキーワードに講演。日本の道路はルートと工法は役所が決定し、地域で本当に必要とされていないものが建設される場合も多いため市民が反発し、結果として土地収用費が上がり、時間的にも長期化するため高額の道路になると説明。
一方で英国の事例をあげた松下氏は、「少ない費用と少ない人材」が原則であり、優先順位をつけて毎年の税収の範囲中で道路を造り、建設時間を短くする仕組みになっているとして、建設前の合意形成の重要性を述べた。道路建設にあたっては監査機関の必要性を強調、「ぬかに釘」の議論にいくら時間を費やしても成果は得られないとして、専門家の目で具体的に正していくべきであると主張した。
また、費用対効果分析の重要性は認めた上で、それには含まれない地球環境保護、資源エネルギー、弱者・貧しい人々の視点からの政策の必要性を明示。民主党議員に対しても、そうした視点での取り組む姿勢を示すべきとの提案があった。
そのほか、オランダでは交差点の改造により交通事故の発生が半減、警察、救急医療機関といった行政コストの削減にもつながっている例も紹介。根底にあるのは「自治」であり、道路がソーシャルゾーンとして活用されていることにも言及、外国から専門家を呼び、「人と車のコミュニケーション」のノウハウを学ぶようにとの提言が示された。
質疑応答では、英国、オランダの道路政策について具体的な説明を求める声が多く上がるとともに、日本においては費用対効果分析などに関する明確な資料がない実態も改めて露呈。講演により、道路政策の問題点とともに、発想を転換することで道路に新たな機能を生み出せることを確認した。
最後の挨拶で菅代表代行は、松下氏の提言に「グサッとくる」と述べ、これまで国土交通省に対抗する姿勢を改め、審議を通して「日本の姿として道路づくり、街づくり、生活のある将来的イメージを訴えていきたい」と表明。松下氏の協力を得ながら、海外の専門家たちに意見を聴くなど、道路政策への取り組みを強化していくとの思いを語った。
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