参議院予算委員会公聴会で25日午前、小林正夫、森田高両議員が、公述人の山崎養世氏(シンクタンク山崎養世事務所代表)へ質問を行った。
小林議員はまず、(1)何故、高速道路の無料化の約束が守られていないのか(2)高速道路無料化にあたっての財源(3)地方経済活性化のための対策――の3点を質問、山崎氏に見解を求めた。
山崎氏は、高速道路の制度は従来、道路整備特別措置法で決められており、その料金は、一定の路線に対する建設費等の借金返済に充てるものであったと説明。路線の借金返済が完了した暁にはその高速道路の料金は無料化されることが国際的な約束を法律で担保しているプロジェクトファイナンスの原則であるとしたうえで、1972年に田中角栄首相が政省令を改正、法律改正もないまま、ある道路の料金を全国の道路の借金返済に充てるとしたため、現在まで高速料金の無料化が実現できなくなったている経緯を述べた。
財源については、道路財源を捻出していくのが筋であるとの考えを明示。また、少子高齢化社会が進む中で最も影響を受けるのは東京など都心であると指摘、「途上国型首都集中が続くことは極めて危ない」として、地方が求める高速道路の無料化こそが地域発展のメリットになると強調した。これに対して小林議員は、マニフェストで掲げている「高速道路無料化」の実現に向け、努力していくと明言した。
続いて森田議員は、少子高齢化、人口減少の社会状況のなかで、GDP費の伸びを上回っている医療費など社会保障費の伸びを抑制すべきとの政府の見解に反論。対GDP比における医療費等の社会保障費と公共事業費について、その歳出構造のバランスの悪さを指摘したうえで、山崎氏に対してその評価と、対策について質問した。
山崎氏は、医療費と公共事業費の関係について、企業、医療介護を提供者の側からみると、4階建ての構造になっているとの持論を展開し、施設、病院は土地の上に建ち、土地の上に建物、その上に医者や看護師、そして事業者の利益があると説明。大都市圏では医療費支出の原価計算をすると多くが土地代に消えていると明かし、「医療費介護の実質を増すためには土地代の安いところに介護施設を作れるようにしなければならない」と主張、国土政策、交通政策と医療費削減すべてが連動していると述べ、一見無関係に見える高速道路無料化により日本どこでも住める環境をつくることが可能になるとした。
森田議員はこれに関連し、医療と福祉事業は安定的な雇用にもつながり、数百万人の雇用維持マーケットになるとして、医療、福祉を媒介とした所得移転をすべきとの考えを表明。山崎氏は、日本の産業をどう発展させていくかとの観点で、諸外国における例を紹介、医療、福祉、農業、観光等土地を使う産業が土地の安いところに拠点を置くことで活性化し、海外からの進出も多くなっていると説明した。一方、日本では国内よりアジア諸国など土地の安い国に工場用地などの拠点を移した企業が成功していると分析。そうした視点に立って、企業の地方分散化のみならず、逆にアジアの企業が日本の地方町村に進出できるような状況にすることで、日本経済の活性化、次の経済戦略に繋がるだろうとの見解を示した。
森田議員は最後に、JRと私鉄とが組んで高速道路の出口を街中につくるなどモーダルシフト、交通の移転を進めるべきである主張、交通網体系、街づくりの整備を行うことでさらに効果的な道路政策が行われるべきだと述べ、山崎氏もこれに賛同した。
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