参議院本会議で30日午前、各府省の幹部人事の一元管理などを柱とする国家公務員制度改革基本法案が審議入りし、民主党・新緑風会・国民新・日本の藤本祐司議員が、「議院内閣制のもとでの国家公務員の役割」「政官接触制限」「天下りと早期退職勧奨制度」「人事管理のあり方」「キャリア制度廃止」等に関して、渡辺行政改革担当大臣らに見解を質した。
藤本議員は冒頭、「民主党の考えを100%とは言えないが、存分に取り入れて下さったことを評価する」と述べ、民主党の主張を取り入れる形で基本法案の修正がなされたことに一定の評価を示した。そのうえで、難産の末に誕生させた政府案が修正されたことについて、渡辺行革担当相に感想を求めた。
渡辺行革担当相は国家公務員制度改革は官僚主導をとるか政治主導をとるかの大問題だとしたうえで、「多少の差異は乗り越えて、ともかく成立」を目指したいとして、修正は与野党の垣根を越えて大きく前進してものだと分析。「我が国のあり方をかえる転換点として大いに評価する」と語った。
続いて藤本議員は、政官接触制限に関して、「政府案では政官接触が制限されていた。しかし、修正案では政官接触制限条項が削除された」と指摘。その理由について藤本議員は、現在のような官僚が主導する「官僚内閣制」ともいえる状況下にあっては、政官の接触を制限すると官僚への情報集中がますます強化されるとの懸念が生じたことによるとの推測を示した。そのうえで、渡辺行革担当相に対し、政官接触の禁止を主張してきた大臣として、禁止どころか制限条項も削除されてことに関する見解を質した。
渡辺行革担当相は「基本的な問題認識は理解されている」として、政治家と官僚が接触した場合、修正案では記録作成、情報公開を求めているとして、実効性を確保すべく制度設計を検討していくとした。
藤本議員はまた、国家公務員の度重なる不祥事の原因のひとつが天下りだと指摘、その天下りに関する規定がないことを問題視するとともに、官民人材交流センターの設置が天下り是正に繋がるとする政府の主張に基く対策では不十分だとした。あわせて、天下りの原因は早期退職勧奨制度にあるとの見解を藤本議員は示し、修正案で「定年を段階的に65歳まで引き上げることを検討する」として、検討に留まっている点を残念だとした。
さらに、キャリア制度による幹部候補の固定化と横並び昇進が日本の国家公務員制度の大きな特徴だと藤本議員は指摘。幹部人事を一元管理する新組織を、当初の政府案では「内閣人事庁」としていたのを修正後には人事管理は内閣官房長官がその責を負い、その事務を行う「内閣人事局」を内閣官房に置くと改められた点を指摘。また、現行のキャリア制度を廃止して、新たな試験制度を実施する点について、「幹部の固定化と横並び昇進は本当になくなるのか」と述べ、渡辺行革担当相に実効性ある対応を強く求めた。
「本修正案でもまだ足りない部分がある。しかし、前進するためには初めの一歩がなければ先に進めない。その意味で本法案は必要不可欠」と主張し、「与野党を問わず、『官僚内閣制』を破壊し、『議員内閣制』へ近づく努力が必要」と述べたうえで藤本議員は、「最も手っ取り早く、効果的な方法は、実は政権が変わることである」と訴え、質問を終えた。
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