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2008/06/20
財務省の介護保険見直し案について(談話)
民主党『次の内閣』
ネクスト厚生労働大臣 山田正彦

 財務省は、5月13日の財政制度審議会で介護保険給付費の抑制に向けた試算を発表した。

〈財務省の介護保険見直し3試算のポイント〉
(1)軽度の要介護者を制度の給付対象外にする
  給付費の圧縮額(2兆900億円)国庫負担の圧縮額(6100億円)
(2)軽度の要介護者の家事支援など「生活援助」をなくす
  給付費の圧縮額(1100億円)国庫負担の圧縮額(300億円)
(3)軽度の要介護者の自己負担を1割から2割に引き上げる
  給付費の圧縮額(2300億円)国庫負担の圧縮額(700億円)

〈財務省の介護保険見直し案について〉
 介護保険法には、要支援認定、要介護認定を受けた者が、「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう・・・給付を行う」(第1条)、「要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない」(第2条)、とあるように、“軽度”のうちから自立を支援するという人道的かつ崇高な理念を掲げている。

 にもかかわらず、財務省の試算(1)(2)では、現在サービスを利用している約366万人中、要支援から要介護2までの約210万人(約6割)が対象外になり、65歳以上の約6%(現状は約13%)しか利用できなくなる。これは、介護保険納付者に対する背信行為である。これまで介護保険料を支払い続けてきた被保険者や国民から理解を得られるものではなく、介護保険法の趣旨を覆すものである。

 また、試算(3)でも約210万人の利用者が負担増になり、後期高齢者医療制度で苦しんでいる方々がさらに苦しむことになる。そもそも財務省の試算は、2005年の介護保険改正による軽度者へのサービス削減の実施前の古いデータを前提にしており、給付費の圧縮額が過大に試算され、不正確である。

 さらに、今年5月には、介護人材確保法が超党派の議員立法により成立した。立法府である国会が介護労働者の賃金引上げに向けて国会の総意として動き出した矢先に、給付費の削減や「賃金問題のみに焦点を当てるのではなく、(中略)多角的な観点からの検討が重要」「介護報酬が増加しても、必ずしも介護労働者の賃金が引き上がるとは限らない」(6月3日、財務省の予算編成の基本的考え方)といった賃金引き上げに消極的な考え方を示す財務省の姿勢は、立法府への冒涜であり、「財務省主権国家」のごとき横暴である。

 2005年の介護保険改正による軽度者へのサービス削減に引き続き、さらにサービスそのものを受けられなくすれば、我が国の介護保険制度は崩壊する。現在でも高齢者虐待や介護殺人が多発しているように介護サービス基盤は絶対的に不足し、利用しづらい保険制度になっている。

 いま求められているのは、介護保険給付費を抑制することではなく、逆に国庫負担を引き上げ、必要なサービス基盤を整備し、利用しやすい介護保険制度に改善することである。今回の財務省案は、後期高齢者医療制度に続く「お年寄りいじめ」であり、論外である。

以 上
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