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2008/06/11
民主党農林漁業・農山漁村再生に向けて〜6次産業化ビジョン〜
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 国会内で11日午後、民主党『次の内閣』閣議が開かれ、報告・協議において筒井信隆ネクスト農林水産大臣が「民主党農林漁業・農山漁村再生に向けて〜6次産業化ビジョン〜」について説明。概要を確認するとともに、「農林漁業・農山漁村再生に向けて〜6次産業化ビジョン〜」については、法案化作業に着手することとした。

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農林漁業・農山漁村再生に向けて
〜6次産業化ビジョン〜(概要)

(※2008年6月11日 民主党『次の内閣』閣議・中間報告)

(1)農林漁業・農山漁村の位置付け
 農林漁業は、米、肉、乳製品、野菜、果物や魚介類などの食料や、生糸、麻等の天然繊維、また、建築資材となる木材を国民に供給するなど、国民が生きていく上で必須の衣食住をまかなっている唯一の産業(食料の安全保障等)であるとともに、エネルギー及びプラスチック等の原材料も供給しています。

 農林漁業はその展開を通じて、空気・水・土壌の維持保全等、国土や自然環境の保全、水源のかん養、災害の防止といった多面的な機能を発揮し、都市生活者の生命、身体、財産の保全に貢献している唯一の産業でもあります。

 また、その農林漁業が営まれている農山漁村においては、日本各地の気候・風土を反映し、集落という地域社会の結びつきを基礎に、家族経営を中心に、集落営農、大規模経営、法人経営等の様々な主体によって、多様な農林漁業を展開しながら、日本の文化・伝統等を育んでいます。

(2) 農林漁業・農山漁村を取り巻く事情と3つの課題
 このように、重要な役割を果たし、多様な農林漁業・農山漁村を取り巻く事情をみると、近年大きな変化がみられます。

 第一に、地球温暖化や地球規模での資源問題の関係です。

 二酸化炭素等の温室効果ガス濃度がこのまま増加し気温の上昇が続いた場合、中長期的には地球環境に著しい悪影響を与え、生物多様性の喪失や食料生産性の低下を招くとともに、今後、飢餓問題が深刻化するのは必至です。

 現に起きている現象としては、中国、インド等の力強い経済成長や、石油埋蔵量が充分であっても経済的に利用できなくなる結果生産量がピークを迎える(「オイルピーク」)のではないかとの予測により、石油価格が急激に上昇しています。また、石油代替燃料の原料である穀物の価格高騰も起き、一部の途上国では食料暴動がみられるほか、食料輸出国の中には自国民への供給優先のため輸出規制の強化や輸出禁止を行う国も出てきています。しかも、このような事態は一過性ではなく、相当の期間継続するのではないかと懸念されています。

 このような資源価格の高騰は、海外からの石油や飼料穀物に依存し、大規模効率化を優先させてきたこれまでの日本の農林漁業の在り方について、安定的な食料生産、気候の安定化、生物多様性を確保する観点から、抜本的な見直しの必要性を突きつけています。

 さらに、海外からの食料調達面で、諸外国に「買い負ける」状況も出てきており、国際分業論の前提条件が成り立たなくなっています。

 第二に、食料自給率の低下が続き、食の安全・安心が大きく損なわれていることです。

 2007年のミートホープ事件等食品企業による一連の偽装問題に加え、2008年に入ってからの中国産餃子の中毒問題等を契機として、輸入食品をはじめとする食に対する消費者の不安・不信が高まっています。

 地球温暖化や資源問題を背景に国民の安全・安心を確保する観点からは、食料自給率向上を含め、「食料安全保障」の確保が国家戦略上の重要課題と位置付けられますが、特に、食の安全・安心を担保していくためには、効率性の観点から構築された大量生産・大量消費の体制、多段階流通を経ることや長距離輸送体制等による「顔」の見えない関係等に大きく依存する体制から、「地産地消」の推進とともに、国産・輸入を問わず、生産から加工・流通、そして、消費に至る一連の「フードチェーン」における食の安全と消費者の信頼を構築していくことが求められています。

 第三に、農山漁村が崩壊の危機に瀕していることです。

 石油価格や飼料穀物価格等資源価格の高騰は、農林漁業にとってコスト上昇要因となります。欧米諸国等では農林水産物への価格転嫁が一定程度実現していますが、日本では同様に資源価格の高騰がみられるものの農産物・水産物等の食料価格が下落傾向にあります。その結果、農林漁業や関連産業の収益性は著しく悪化し、また、食料自給率の低下傾向に示されるように、農林漁業は衰退の道を歩んでいるといえます。このような農林漁業とその関連産業の危機的状況が続けば、後継者難、離農、離村等が進み、農山漁村の崩壊が懸念され、その期待される役割を発揮することがきわめて厳しい状態にあるといえます。

(3)農山漁村の6次産業化への兆し
 こうした厳しい状態にはありますが、(1)例えば米の生産について、従来の主食用一本ヤリの生産から飼料用やバイオ燃料用の超多収品種の導入、有機栽培等の環境保全型農業への取組といった消費者・実需者のニーズに対応した生産への質的転換に加え、(2)米の生産出荷だけの狭い意味の農業(「米の生産(1次産業)」)から、米粉や米菓といった「米の加工(2次産業)」や、米をファーマーズマーケット(直売所)で販売したり、消費者に直接宅配便で販売するなど、「米の販売(3次産業)」に主体的に取り組むことを通じて、1次産業・2次産業・3次産業を総合化し、新たに「起業」する「農業の6次産業化」、また、(3)農林漁業者と農山漁村地域における他産業従事者とがともに手を携え、協同した取組を行い、農林漁業者と2次産業者・3次産業者との融合・連携による「新たな業態」(=ニュービジネス)が創出され、さらには、(4)農山漁村という地域の広がりの中で一定の地域が全体として取り組んでいく、「農山漁村の6次産業化」への「内発的発展」の兆しがみられます。

 このような「農山漁村の6次産業化」への内発的発展は、「東京」と「それ以外」とからなる大規模フレームワーク型関係から、地域の「中心市街地」とそれを取り囲む「農村部」とが有機的に協働する経済圏により形成されるネットワーク型関係に日本社会を転換することを促進します。すなわち、(5)この一定の広がりのある地域の経済圏において、農山漁村の6次産業化を実現し、地域での「新たな業態」への取組や近隣の地域との「分業」や「連携」等を通じて、付加価値のより多くの部分を東京ではなくその地域に帰属させることが可能となり、いわば「地域自立経済圏(仮称)」が確立されることになるからです。

(4)6次産業化ビジョンの策定と着実な実行−3つの主要対策
 民主党は、現下の緊急課題として農林漁業・農山漁村の再生に取り組むこととし、その取り巻く事情の変化等を十分に踏まえ、農山漁村の6次産業化を推進する観点から、「農林漁業・農山漁村再生に向けて〜6次産業化ビジョン〜」を策定し、これを強力に実施していきます。

 すなわち、安全で安心な国内産のシェアを拡大する食料自給率向上の目標を設定し、その実現を図るために3つの対策を一体として講じていきます。

 第一は、民主党が提案している「戸別所得補償制度」です。これは、意欲のある販売農業者を対象に「所得補償交付金」を交付することによって、自給率の向上を図るものです。農業が無償で国民に提供している多面的機能を根拠にするものですから、やはり多面的機能を果たしている林業、漁業にも同様の制度を導入します。環境保全型農林漁業の推進や加工・販売への取組等の6次産業化を促進する等、農山漁村の活性化の基本条件を確保するものです。

 第二に、「品質」、「安全・安心」、「環境適合性」という消費者ニーズに適った生産体制に転換することが重要です。これは、国産農林水産物やこれらを原料とする加工品等の「商品としての差別化」と農林漁業の「事業としての異質化」を確保することになるからです。特に、食の安全・安心の観点から導入する「トレーサビリティ・システム」や「HACCP」、「GAP」といった措置は、こうした「差別化」、「異質化」の実現にも役立ちます。いずれにしても「品質」、「安全・安心」、「環境適合性」という消費者ニーズに適う生産体制への転換は、食の安全・安心の確保や地球温暖化への対応に加え、食料自給率向上の確保にもつながります。

 第三に、意欲のある農林漁家をはじめとする多様な主体が、バイオマス事業を含めた新たな起業やニュービジネスに取り組めるよう支援措置を講じ、農山漁村の6次産業化を実現することです。このような農山漁村の6次産業化は、付加価値のより多くの部分を農山漁村地域に帰属させ、農林漁業の再活性化と農山漁村の再生を実現することにつながり、安全・安心な食の供給と食料自給率向上を確実にするだけでなく、化石燃料の消費削減、温室効果ガスの吸収源としての役割の発揮、再生可能エネルギーの供給といった側面で、地球温暖化問題に大きく貢献することが期待できます。

 以上の対策を推進する際留意すべきことは、まず、農林漁業は地域毎の気象条件、土壌条件等自然条件に大きく左右されるものであることから、適地適作を基本として、地域条件に配慮した政策を構築することが重要であることです。

 また、農林漁業と農山漁村とは前述のように相互に密接な関係にあること、家族経営、集落営農、法人経営等多様な主体の中には、与えられた条件の下で、大規模効率化を目指すものもいれば、規模が小さくても加工や販売にも取り組むこと等により特色のある経営を展開しようとするものもいるということを十分に理解することです。

 民主党は、規模拡大や効率化、あるいは集落営農化を否定するものではなく、むしろ推進します。しかし、それらに限定することは間違いです。一定規模以上の「大規模効率経営」や、経理を一元化し法人化を前提とする「集落営農」が唯一の正しい道であるかのように、政府が一つの経営タイプを押しつけることがあってはならず、現場の主体的判断を尊重して多様な努力・取組を支援することが重要なのです。

 民主党は、以上の基本的な考えのもと、日本の農林漁業・農山漁村の再生に取り組ん
でまいります。

以 上

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