11日の参議院予算委員会で、民主党・新緑風会の福山哲郎議員は、午前中に行われた鈴木宗男議員に対する衆議院予算委員会の証人喚問を踏まえ、外務省との癒着による不正疑惑を追及した。
福山議員は冒頭、北方四島へのプレハブ診療所建設問題に関連し、鈴木宗男衆院沖縄・北方特別委員長(当時)が西田外務省欧亜局参事官に対して行った発言を記録した外務省の文書を取り上げた。それによると、鈴木氏は「北方領土問題というのは、国の面子から領土返還を主張しているにすぎず、実際には島が返還されても国としては何の利益にもならない。そうであれば、戦後50年もたって返還されないという事実を踏まえ、わが国は領土返還要求を打ち切って、四島との経済交流を進めていくべきと考える」などと発言している。
福山議員は国の政策と異なる発言ではないかと指摘した上で、「こういう考えをもった議員であることをわかった上で、北方四島人道支援事業を継続してきたのか」と外務省の姿勢をきびしく批判した。
実際、7日の同委員会質疑で、北方四島支援事業の実施主体である「支援委員会」の事務局長は、外務省内で鈴木議員に近いとされる前駐コンゴ大使であることが判明したが、これに加えて福山議員は、現在の外務省ロシア支援室の主席事務官についても追及。これも鈴木議員との密接な関係が指摘されている佐藤優前主席分析官がいた国際情報局分析第一課の人物であることが明らかになり、鈴木議員の外務省人事への介入が鮮明になった。
次に福山議員は、2000年4月3日〜5日にテルアビブで開催されたロシア外交政策に関する国際会議の参加費用を、東郷欧亜局長の指示で支援委員会が捻出したと報道された問題について質問。「支援委員会が支出した」とする斎藤欧州局長に対し、ロシア側代表が空席のまま97年から5年近く委員会の会合も開かれていない状況の中で、どのように参加費用捻出の決定が下されたのかを追及した。
決裁書やメモの提出を求めた福山議員に対して、川口外相は「今までとまったく別の監査法人をつかって監査を行い、適切でないものはすべて挙げ、改めていく」とし、「今までの姿は決してあるべき姿ではない」などと答弁した。しかし、福山議員は「改めていく、改革をしていく、ちゃんと調査する、というのは当たり前。不適切だと(外相が)述べているにもかかわらず、起こった問題に対して誰も責任をとっていない。改革しますだけでは許されない」として、厳しく批判した。
さらに、いわゆるムネオハウスやディーゼル発電施設をつくった場所は国有地か私有地か、と追及。「四島の固有の主権を主張しているわが国が、なぜ無断で建物を建てることができるのか」、「百歩譲って国有地であるとしても、国有財産法14条1項の『財務大臣との協議』はなされたのか」などの問題点を質した。
追及に対して斎藤欧州局長は「戦後50年以上にわたり、わが国固有の領土であるがロシアが不法に占拠している。ロシア側の法律を前提にしたような支援をするわけにはいかない。であるがゆえに、支援委員会という国際機関を設立し、支援をしてきた」といった答弁を繰り返し、土地の帰属についてあくまで明確な答弁を回避した。
福山議員は「地権者に国として何の手続きもしないで建築してしまうと、ロシアの主権を認めてしまうことになりかねない」と指摘。そうであるからこそ、河野外相(当時)は支援事業に対して当初は慎重に対処していたことを明示した上で、国益を損なう事態を招きかねない鈴木議員の暴挙を改めて指摘した。
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