衆議院予算委員会で7日午前、菅直人代表代行が質問に立ち、小沢一郎代表はじめ民主党が示している政権公約を財源も含めて明らかにするとともに、金融危機への対応および後期高齢者医療制度等に関して、麻生首相はじめ政府の見解を質した。
菅代表代行は冒頭、総選挙の顔として天命を果たすため自民党総裁となったとされる麻生首相に対して、安倍、福田両首相同様に国民の信を得ないまま政権に居座ることのないようにと釘をさした。
続いて、自民党の国会対策委員会が、民主党から資料要求があった際は事前に自民党側に相談するよう全省庁に求め、省庁側では内部文書で指示が出ていた問題を取り上げた。菅代表代行は「自民党国対が認めない限り、資料が出てこないとなると、汚染米の問題なども明らかにすることはできなかった」と述べ、この問題の根深さに言及したうえで、答弁を求めた。首相は、議院内閣制のもとで政府と与党との関係のなかで行われたものであるとして、「内容の判断は各省庁の大臣が行うので検閲には当たらない」と述べた。
石破農林水産大臣は「自民党国対は公権力の主体ではないので検閲にはあたらない」などと述べたが、「(資料を)出すか出さないかあくまで大臣が行う。自民党国対の判断に左右されるものでない」と答弁。さらに、誤解を招く表現だったとの認識を示し、「省内の文書は改める」と語り、河村官房長官も同様の発言を行ったが、麻生首相は明言を避けた。
続いて菅代表代行は小沢代表が代表質問でも述べた、民主党政権での基本方針である「新しい生活をつくる民主党5つの約束」(下記ダウンロード参照)を示し、「明治以来の国の形を変えることになる」として、ガソリンの暫定税率廃止、高速道路の無料化、農業者戸別補償制度、子ども手当などを段階的に実施していくことを明らかにするとともに、民主党の打ち出した政策に関して財源規模を詳しく説明し、年度ごとに必要な財源についても詳細に語った。
そのうえで菅代表代行は「少なくとも我が党については、21年度からの財源についても明確に出した。(政府は)国庫負担の引き上げについて、『今は言えない』というのはやっぱりフェアじゃない」と指摘。しかし、麻生首相は「我々としては年末の税制調査会等々、きっちり政府与党と詰めたうえで話をさせて頂かなければならない」などと明言を避けた。
また、菅代表代行が基礎年金の国庫負担引き上げのための財源を明らかにするように迫ったのに対しても、麻生首相は明示せず、さらに、政府・与党が約束した定額減税の財源を選挙前に明確にするよう追及したのに対しても、麻生首相は「(菅代表代行の)質問のすべての前提が11月早々の解散・総選挙になっている」などと述べるだけで、財源には一切言及しないままだった。連立与党を組む公明党の斉藤環境大臣も明言しなかった。
菅代表代行は政教分離についても取り上げ、内閣法制局の答弁では憲法20条第1項が示され、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と説明があり、宗教団体が政治上の特権を行使することは憲法違反であることをその答弁から改めて確認。麻生首相も「内閣法制局長官の答弁が基本的な考え方」と答弁した。
菅代表代行はまた、株価の1万円割れなどに関しても政府の対応を質し、「間違いなく日本の輸出に影響が出てくると想像しておかなければならない」と、麻生首相は懸念を示した。中川財務・金融大臣は「欧米の金融情勢を反映した株価や為替(への影響)を非常に警戒している」と答弁。菅代表代行は内需拡大につなげる政策を民主党が提案していることを明らかにするとともに、「民主党5つの約束」にもあるように雇用の不平等を是正していくべきと指摘し、麻生首相も賛意を示した。
菅代表代行は「後期高齢者医療制度を廃止する法案を民主党は出し、参議院では通過している」として、民主党政権確立後は実現させていく考えを表明。官僚主導の政治が行われる中、問題が続出している現状に対し、菅代表代行は首相へのアドバイスとして「自由民主党を官僚依存体制から脱却させる最高の策は一旦野党に下るべきだ」と指摘した。
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