30日、北海道・釧路市において、シンポジウム「民主党ネクストキャビネットin釧根」が開催された。同地域では、酪農、水産・漁業といった基幹産業の振興策、および地元の鈴木宗男議員が関与した北方四島返還問題をめぐって、自民党と小泉政権に対する批判が急速に高まっていることから、民主党の政策と政権交代実現への決意を広く訴えるために、同地で北海道初の“地方版ネクストキャビネット(NC)”を開いたもの。NC閣僚からは、鳩山由紀夫首相、伊藤英成外相兼安全保障相、峰崎直樹財務相、そしてBSE対策本部から郡司彰事務局次長が参加し、300名におよぶ参加者とともに、熱心な議論を繰り広げた。
シンポジウムは、民主党釧根の仲野ひろ子代表の司会で始まった。冒頭、仲野代表は、「太平洋炭鉱の閉山、BSE問題による酪農不振などによって地元経済は非常に厳しい状況だ。これを打開するために政治に求められているものは何か。みなさんとともに、釧根地域から日本を考えたい」と呼びかけた。
■小泉内閣1年の失政と民主党の責務を提起
続いて4名の国会議員がそれぞれに問題提起を行った。最初に発言したNC首相の鳩山代表は、まず小泉政権成立後1年を経た今日の政治状況について提起。「自民党を潰してでも、日本を変える」と豪語して登場した小泉首相は、結局自らが抵抗勢力に成り下がり、従来の自民党と何ら変わらない政治を行っている、と厳しく指摘し、先に成立した2002年度予算についても「どういう改革が盛り込まれるのかと思っていたら、何もなかった。縦割り行政の枠内で、予算配分の比率もほとんど変わらない。こんなことで経済が良くなるわけがない」と喝破した。
鳩山代表はさらに、小泉内閣の具体的な経済失政に言及。釧根地域の地元産業がおかれている深刻な状況に触れながら、「地域で頑張っている中小企業を切り捨て、大企業だけを守るという正反対のことをやっている。不良債権処理も一向に進めようとしない」と強く批判した。その上で、田中角栄元首相による「日本列島改造論」以来の政官業癒着による利権政治の構造を根本的に変え、地域主権の国家づくりに踏み出すという民主党のビジョンを提起し、「政権交代を実現するために、みなさんの力を貸してほしい」と熱く訴えて発言を締めくくった。
続いて発言した伊藤英成衆院議員は、2月に訪米した際に米政府首脳らから「日本は本当に改革ができるのか」などと深刻な危惧の念をぶつけられたエピソードを紹介。小泉政権に対しては今や海外からも厳しい視線が向けられている、と指摘した。さらに、釧根地域と結びつきの強い北方四島返還問題をめぐって、「多くの人が四島返還で頑張ってきたにもかかわらず、鈴木宗男議員の疑惑で明らかになったように、二島先行論などという形で歪められてしまった」とし、沖縄基地問題、北朝鮮拉致問題なども含め、日本外交のあり方が厳しく問われているという認識を明らかにした。
峰崎直樹参院議員は、開口一番、「混迷する政府の財政・金融政策の一番の問題は、“先送り”にある」と指摘。バブル崩壊以降、大蔵省、金融庁が金融危機の実態を隠蔽し、解決を先送りし続けてきた結果が、いまだに100兆円を下らないと言われる不良債権の蓄積であり、今また“3月危機”を株価操作によって表向き回避したことで「一息ついた」などとしているのは、先送りの継続に他ならない、と批判した。そして、兆単位の不良債権を抱えた大企業を守り、経営体質の改革が進まない銀行にも甘い政府に対して、日本経済の中心である中小企業の再起を支援する観点から打ち出した民主党の金融財政政策を、「金融再生ファイナルプラン」に沿って紹介した。
最後に発言した郡司彰参院議員は、従来の農業政策の問題点について提起。まず、「北海道と他の地域の農業は違う」と述べ、後者では「選択的規模拡大」政策によって農業そのものの衰退を招いたのに対し、前者では規模拡大による負債問題が最大の懸案となっている現状を明らかにした。その上で、生態系・環境と農業は切り離せない、北海道を含めて全国に単一の農業政策を当てはめるのは間違っている、生産者団体・族議員・官僚の癒着による弊害が大きい、などの視点を示し、民主党の農業政策の骨格を明らかにした。
■外交・安保問題を中心に参加者と議論
続く参加者との討論では、外交・安保問題などを中心に、熱心な議論が行われた。標津町からの参加者は、民主党政権になったら対米追随の歴代自民党政権とは違って米国にものが言えるか、と質問。伊藤議員は、2月のブッシュ米大統領訪日を前に、米側に同時多発テロ事件以降の米国外交について「一国主義になりすぎている」と指摘し、「悪の枢軸」発言についても「言い過ぎだ」などと伝えたことを紹介。「民主党は、おかしいことはおかしいとしっかり言える」と答えた。
釧路市の教員組合員は、「平和を愛する党として、有事法制化に反対してほしい」と要望。鳩山代表は、日本が侵略を受けて自衛隊が出動する場合でも、超法規的に行動するのではなく、国民の最低限の基本的人権を保障するようなルールに従わせる必要があるという問題意識を説明、民主党の緊急事態法制への取り組みに理解を求めた。
根室市の市会議員は、北方四島返還問題について、「帰属の問題がはっきり決まれば、あとは四島一括でなくても、柔軟に考えていいのではないか」と質問。鳩山代表は、質問者に同意しながら、「最終的に四島がもっとも早く返ってくるシナリオをまず確立すべきだ。それなしに無責任な二島先行論を唱えたり、私腹を肥やすために利用するなどというのは、言語道断だ」などと答えた。また鳩山代表は、代表としては初めての北方四島視察への意欲も併せて表明した。
討論のまとめに立った鳩山代表は、「いただいた意見を政策づくりに反映したい」と参加者に謝意を表し、今年中に政権交代を実現する決意を改めて表明してシンポジウムを締めくくった。
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