衆議院本会議で29日、民主党・無所属クラブの田中真紀子議員が麻生首相の施政方針演説に対する代表質問に立ち、「優れたディベート力をもつ、優秀な国会議員を多数擁する民主党が会派を組む私に代表質問の機会を与えてくれたことに感謝する」としたうえで、首相に明確な答弁を迫った。
冒頭、田中議員は細田自民党幹事長が代表質問で民主党の戸別所得補償制度を批判したのを問題視し、「そのような制度を導入しなければならないような日本の状態に、いったいどの政党が、だれがやったのか」と語気を強めて指摘。農地が荒れて、貧しい農家の痛みや農地のきびしい状況を認識せずに、こうした発言をする強弁の仕方も教えてもらったと皮肉ったうえで、国民軽視のその姿勢を改めてきびしく批判した。
急降下する一方の麻生内閣支持率についても取り上げるとともに、かつての内閣のような威厳のある、国民から尊敬される存在ではなくなっていると指摘。とりわけ、第2次補正予算成立時、慣例であり、閣僚としてのマナーである閣僚揃って議場への一礼さえも行われていなかったことに唖然としたとして「政権末期の麻生内閣の緩みが出ている」と断じた。
そのうえで田中議員はパレスチナ問題について、「これ以上、無辜な人びとが殺傷されることを防ぐためにも、国連安保理の非常任理事国になった日本は積極的に動く義務がある」との見解を示し、具体的に何ができるか質した。首相は「今後とも永続的な停戦の実現に向け、関係国とも緊密な協議を行い、建設的な役割を果たす」と答弁するに留まった。
続いて、ブッシュ前米国大統領が退陣間際に「在任中の最大の痛恨事はイラクに関する情報の誤り」と述懐し、イラク戦争開戦の大義とされたイラクにおける大量破壊兵器の存在に関する誤認識を認めた問題を取り上げた。そのうえで、この大義に基づく米国によるイラク攻撃を支持した日本外交のありようについて「正しいものであったか否か」として、当時の外相、現在の首相としての見解を麻生首相に質問した。同時に、開戦以来15万人をはるかに超すイラクの民間人の死亡が報道されているとして、「誤った思い込みに基づく憎しみや政治判断が、本来尊重されるべき人としての尊厳と、慎ましやかな日常の営みと幸せ、健康な肉体の精神の破壊という結果をもたらした」と指摘した。
首相は「当時イラクは12年間にわたり国連安保理決議を批判し続け、国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力に応えようとしなかった」との認識を示し、その認識に従った行動だったと述べ、「今日振り返っても妥当性を失うものでない」と強弁した。
朝鮮半島問題については「総理はどのようにすれば朝鮮半島の安定が実現すると考えるか」と問いかけ、「日朝国交正常化を図る。そのためにはすべての拉致被害者の早期帰国が前提」と安倍、福田、麻生内閣と三代にわたって繰り返して述べているが、そうであるならば、6カ国協議の場で日本はどれほど主導権を発揮できているのかと問題視し、日本政府の外交の不作為を批判した。
また、2011年度からの消費税率引き上げに関する附則についても取り上げ、政府が増税の前提として「経済状況の好転」をあげているのを踏まえ、首相が想定している、好転させるための政策を示すよう迫った。首相は「経済状況をよく見極めて判断する」などと述べるにとどまり、具体策は示されなかった。
田中議員は首相に対し、「もうこれ以上いたずらに解散を先送りすることによって、無為に時間を空転させ、税金のムダ遣いをすることは断じて許さないと自覚してほしい」と一喝。麻生内閣の存在そのものが外国人にとってリスクだとする外国の知人とのやりとりも紹介してみせた。
「日本国民は政治に『あたたかさ』と『安心』を求めている。諸外国の人びとも同じことを希求している。その声に情熱をもって、具体的に応える準備のあるベテラン政治家、小沢一郎代表が率いる民主党に政権を委ねたいという声が日本の全国津々浦々に充ち満ちていることは嫌でも総理のお耳に達しているはず」と強調。いつまでもグズグズと「場所ふさぎ」をして、醜態を天下にさらしていることは日ごろからスタイルを気にする首相には似つかわしくないと断じ、「即刻、潔い退陣表明を」と迫り、質問を締めくくった。
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