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2009/02/28
甲府市で緊急雇用対策・対話集会を開催 深刻化する雇用情勢改善のあり方を意見交換
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 山梨県連緊急雇用対策本部主催の「緊急雇用対策・対話集会」が28日午後、山梨県甲府市内で開かれ、党緊急雇用対策本部長の菅直人代表代行が参加し、パネルディスカッションを通じて雇用のあり方、求められる働き方について語った。

 パネルディスカッションはコーディネーターの米長晴信参議院議員、同県第2区の坂口たけひろ総支部長が進行し、パネリストには菅代表代行のほか、参議院厚生労働委員会委員で働く現場の実態に詳しい川合孝典議員、連合山梨の渡辺一彦会長、派遣事業者の出井智将ヒューコムエンジニアリング代表取締役、同日付で派遣打ち切りとなってしまった電子関係の会社で働いていた小俣桂さんらが参加し、それぞれの立場からの意見を交換した。

 冒頭、開会の挨拶に立った同対策本部事務局長で山梨県連代表の同県第1区の小沢鋭仁衆議院議員(国民運動委員長)は、県連としても金丸直道同県議会議員を対策本部長として街頭署名活動等を実施してきたと報告。また党対策本部事務局長の立場からは、各地の視察等を通じて、求められる対策の実現にむけ、現地の実情を調べるとともに、党本部では講師の方を招いての勉強会などで、施策の問題点を掘り下げていると表明。「全国でこの雇用の問題を議論し、政策にしていこう。その一環として対話集会をやろうということで今回の開催となった」とも述べ、活発な意見交換を求めた。

 続いて党本部代表として挨拶した菅代表代行は、厳しさを増す雇用状況の背景として「ふたつのことが重なった」との認識を示した。ひとつは1985年に専門職等については派遣という労働形態を認めようという規制緩和が行われ、その後法改正が重ねられて「日雇い派遣」などいろんな労働形態も認める、規制緩和が広がったと説明した。

 さらに、景気がいい間は雇用は繋がっていたが、米国発の景気の悪化に伴い、製造業等を中心に一挙に雇用を失う人が増加したと指摘した菅代表代行は、「かつてであれば退職金を1・5倍出すからといった形での早期勧奨退職が行われていたが、現在は職を失うと同時に住むところもなくなるという状況になった」とも分析した。

 そのうえで菅代表代行は民主党としての同対策本部の取り組みについて、「運動」「政策」の両面での展開を重ねているとした。(1)すぐやらなければならないこと、(2)できればこの国会中にやりたいこと、(3)もう少し中期に取り組むこと、に分けて提案しているとも表明。

 (1)については3月末にさらに雇用を失う人が大量に出てくる恐れが高いなか、都道府県所在地など各都道府県内に少なくとも一カ所は一時的に緊急避難所として暮らせるシェルターや相談窓口を置く緊急対策を提案し、昨日27日に行われた予算委員会でも舛添厚生労働大臣に改めて申し入れを行ったことを明らかにした。

 もうひとつの(1)に関する提案として、「働いている人は全員が雇用保険に入ることになるような制度の変更を行う」と語った。同時に、民主党としてはより一歩進んだ「トランポリン法」と題する「求職者支援法案」の提出を予定していると報告。従来の失業者を支えるセーフティネットは雇用保険・生活保護であるが、その現状をより進化させ、失業期間中に半年程度は月10万円程度の生活費を支給し、その間に研修などを受けて新しい分野の仕事に就けるよう資格を取得するなどして、失業前よりも能力がついてトランポリンのように跳ね上がってより成長分野の仕事に就けるようにする「求職者支援法案」を説明した。

 また、生活保護のあり方を見直していくべきだとも指摘。「家がないから就職活動ができない」状況にまで落ち込んでしまった人などは受給対象者とし、早急に支給することで、早くちゃんとした仕事を見つけて自立して生活保護から離脱できるようにする。「こうした積極的な活用を提案していきたい」と強調した。

 さらに、製造業等に対する派遣をどうするかの視点で労働者派遣法の改正に向けて、社民、国民新との野党3党で勉強会をつくり、関係者から現状について話を聴いていると明かし、今後も「議論を進めていきたい」と述べた。

 川合議員は、そもそもなぜ「派遣」という形態の働き方が出てきたかについて言及。終身雇用・企業への忠誠心といった企業文化のなかで日本は世界第二の経済大国にまで発展したが、バブル崩壊後、経済発展を極めた日本において「日本人の賃金が高くなっていることが国際競争力を失わせている」という議論が出ると同時に、生産性向上を目指すなかで一番手っ取り早く削れるのが人件費だという考え方も出て、「多様な働き方」という名の下に派遣労働が出てきたと説明した。

 「いつでも採用できるし、場合によってはいつでも切れる。それを認めることで企業が人件費を自由自在に操れるシステム」だとも川合議員は指摘し、企業が固定費の削減を求められるなか、派遣労働者の賃金は物品費としてモノとして扱われることで、変動費にカウントされる実態があるとした。人を人として扱わない雇用が成り立っているとも述べ、「立法した当時の国もまさかここまで来るとは思わなかっただろう」との見方を示した。

 意見交換のなかで菅代表代行はまた、年収200万円前後といった低賃金にある介護労働現場の実態も取り上げ、「最近の労働形態の多くは長くいても給料が上がらない。特殊な能力があっても、年収200万円ではなかなか結婚して子どもを生むことができない」と述べ、少子化の背景にはこうした低賃金の問題も潜んでいると語った。

 連合山梨の渡辺会長も、悪化する雇用情勢の背景には「国際競争を含めた企業の収益優先の考え方がある」と強調。成長期にも労働者には還元せずに経営者、株主などに厚く還元してきたことが格差拡大に繋がったとも説明した。同時に、「終身雇用、年功序列、企業内組合が安定的な雇用を支えてきたのは確かで、利益優先の考え方がこれを壊していった」と語った。また、雇用法制は不備なまま、派遣という労働形態が可能なように法的に緩和してきたのは政治の責任だと断じた。

 さらに、労働組合の問題としては組織率の低下をあげ、非正規雇用者へのアプローチ、組織化が弱かったと分析。あわせて、雇用形態の多様化や企業の規模によって認識の違いがあり、非正規雇用は認めざるを得ないという考え方をもっていた企業があったと指摘した。今後はパートの組織化等に力をいれていくこと、最終的には働くうえで同一の労働条件を確保してパートは時間が短いだけという労働による福祉社会の構築が必要だとした。

 派遣切りにあった小俣さんは、派遣先で昨年の11月ぐらいから派遣切りが始まり、1月末に「今月いっぱいで契約を延長できない」と言い渡されたこと、契約更新は1カ月毎であったが働き出した昨年4月当時は不安はなかったこと、派遣先の会社の景気がいいときは残業代もプラスされ給与・待遇面では不満がなかったこと、気持ちの面では「派遣元」の社員という認識は薄く「派遣先」会社の一員として生産力アップに寄与するという思いであったことなどが語られた。

 また、派遣事業者の出井さんは派遣元の立場からシステム等の説明を含めて発言するとともに、派遣労働者の労働力への対価を中間搾取するような悪質業者の抜け道をふさぐような法整備と政治主導での規制の必要性が問題提起された。

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